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⑥二人のハルカの心

ラブh、もとい、我々の拠点の城は使いやすかったが煩悩に弱かった。啓子はガラスに黒い生地を巻きつけた。それでもジャンプすれば見えるのだが、俺はもうしないし俊も懲りただろう。

「もう負けないし俺たちの出る幕はないんじゃないかな」

そういうと真琴と有希がその話に猛反対した、「あなたのお陰で私たち強くなったんだし、それに...」

有希の言葉に遙は猫の目になって威圧していた。

それよりも俊は真琴のことはもういいのだろうか。めんどくさい女子中学生に嫌気が差してしまったのか、とても気になっていた。


「俊、真琴のことどうするんだ。最近は俺に抱きついてきて困ってる」

「ちゃんと考えてるから大丈夫だ。お前に迷惑掛けてすまん」

彼はまだ真琴を諦めていないことに安堵した。


啓子と有希、街の散策に付き合ってくれないか。この異空間に何かしら敵のヒントがある気がするんだ。そういうと二人は付いてきてくれた。近場はもう見飽きたので、謎街道の奥まで行くことにした。そこには森がありとても落ち着いた。更に奥まで行くと怪しげな小屋が見えた。

「明らかに怪しいので二人で見て来てくれないか」そういうと守ってあげるからおいでと言われ渋々入っていった。

そこには占い師がいたので話し掛けたのだが、魔物は知らないという。

だが恋愛については占えるというのでそうしてもらった。結果は有希とは最高に相性が良く、末永く幸せになるだろうという結果がまず出た。啓子とは女難の相が出てるのでお勧めはできないそうだった。

「・・・」

啓子が占い師に襲い掛かりそうだったが、有希はうっとりと喜んでいた。


「遙とは上手くいってるの?」啓子にそう聞かれ軽く頷いた。

「遙は独占欲の塊だからトラブルが多いと思ってた」有希の言ってることは概ね正しいが、今は最高に幸せで順調だと答えた。

「遙をいつ抱いていいのかな。やはり18才になるまで待つべきかな」二人はお互いの目を見合ってから、「同棲がやたらと早いんだから、いい感じになったらやっちゃっていいんじゃない」

そう答えたが俺は何も言わなかった。

「あと4年待つのは現実的じゃないよ。遙はもう待ってるだろうし」それももうわかっていたことなので頷くだけで何も言わなかった。


「あれ、どこだここ」三人でお喋りしているうちに道に迷っていた。嫌なオーラが辺りを包んでいて、敵襲の予感がした。

二人は変身して攻撃に備えた。啓子の変身は男らしく、キックとパンチを繰り出しながら白い光に包まれ、右ストレートが決まったポーズでブルー・オリオンが顕現した。

「明義は隠れてて、レッドとイエローが来るまで時間稼ぎをするから」ピンクに言われた通り、俺は近くの小さな小屋に逃げ込んだ。

まだ晩夏なのにハロウィン型の敵が出現した。ブルーとピンクは攻撃を仕掛けようとしたが、敵のビーム攻撃で近寄れずにいた。

「遙と真琴の登場が遅すぎる。まさかこの変な紫のガスでここがわからないんじゃ」俺が心配してる時に、ピンクが攻撃を避けながらカボチャにキックを入れた。

「同時に行くよ」そう言ってブルーも敵に接近してパンチを叩き込んでいた。だが攻撃を入れた敵の足が再生し、我々は攻め手がなかった。


「ブルーとピンクはもう一度空に飛んで。相手の急所はたぶんあのでっかい顔にあるから」そういうと二人は宙に舞った。

防御もなかなか鉄壁の相手だったので出来ることはひとつだった。俺は敵に向かって走り、相手の視線を引き付けた。

「同時攻撃でやっつけて。さもないと俺は死ぬ」のっぴきならない状況に二人は意を決してダブルキックを放ち、敵は粉々になり破壊された。

「本当に無茶し過ぎ!戦いは私たちに任せて」そう言ってピンクが俺の唇にキスをした。ブルーはそれを驚きの目で見ていた。


啓子のキスは嬉しかったが、遙は嫉妬深いので知られてはいけなかった。

「気持ちは嬉しかったけど、このことは遙には黙っておいてね」

戦闘後ずっと腕を組んでくる啓子、前に俺を狙ってたと言ってたけど黙っていてくれるか心配だった。有希は何も言わずに付いてきていた。

結界が消えたので遙と真琴も駆け付けたので急いで腕を振り払った。


城に帰ると啓子がやたらと近い。猫の目になって遙がそれを見ていたので俺は観念した。嘘を付くことが異常に苦手だったし問題はすぐに解決したいからだ。

「遙ごめん、啓子にキスされた。隙が多い俺のせいだ」すぐに遙は啓子の元に歩み寄ったが、啓子も引く気配がなかった。

それを見て遙を荷物のように抱えて城を出た。


家に帰って遙に二時間説教を受けた。

「明義さんはちょっとどころじゃなく隙があるんだよ」

「俺に隙が多いのはわかる。でも勝手にキスされたんだしこんなに怒らなくてもいいじゃないか。悪いのは啓子だろ」

そう言うと部屋から出て外に出て行った。

アパートの階段を降りると妹の春香がこっちに向かっていた。

「春香か久しぶり。俺の家に用があるのか」そう聞くと彼女は頷いたので連れて行くことにした。トラブルなんか知ったことか。


家に案内すると甘いカフェオレを春香に作った。

「お兄ちゃんと何かあったんだね。ずっと一緒だったら何でもわかるんだ」

「二人の問題なんで春香ちゃんは黙ってて。上手く行ってるんだから」

春香の煽りに遙も反撃していた。俺は布団に入って毛布を被った。

「怒ってる訳じゃないんだよ。遙だからお兄ちゃんを託したの」

そう言われると遙は黙るしかなかった。


部屋を開け二人はベッドに腰を掛けた、「お兄ちゃんはそこで寝てて。遙に聞きたいことがたくさんあるんだ」

遙は喧嘩に来たものと勘違いしていたので言葉がなかった。

「遙は今子供ができてもちゃんと産んで育てられる?」

「育てるよ。明義さんの子どもを降ろす気なんてまったくない」

遙の言葉が嬉しかった。でも中学生の母になんてさせない。

「それ聞いたらもういいや。お兄ちゃん、遙とお幸せにね」

思ったよりずっと早く春香は帰った。


「明義さん、まだ春香ちゃんのこと好き?」今カノに言うべきではないのかも知れない。だけど俺は言いたいことはきちんと言う。

「昨日までは好きでしたと言って次の女に移っていく男のがいいか?俺にとって春香はずっと一番好きな女の子だった。今もあまり変わらない」

スーパーシスコンカミングアウトに遙は耐えられるか。すると遙は強く抱きしめてきた。その目にはうっすらと涙があった。

「春香ちゃんのがずっと辛いのに我が儘だった。もう小さなことで怒ったりしないよ」その華奢な身体を俺は抱きしめ返した。


「いきなりちょっと現実的な話をします。最近は城に行くことが多かったんだけど、これはバイト代のためね。けれどそのせいで随分塾をサボってるのは問題なんだ。だから塾に通う回数が増えて城には週に1,2回しか行かなくなると思う。その間は洗濯もみんなでやってね」

遙はわかったと了解してくれた。

「似たような話だけど遙の方ね。突然の家出だから仕送りはない。魔法少女のバイト代だけでお金足りてる?」

遙は困った顔をしてぎりぎりですと言ってきた。

「うん、わかってた。だから休みの日を中心に家庭教師を俺はやります。たいした稼ぎにはならないけどそれでも生活を少しだけ楽にしたいんだ」

「会う時間が減るのは寂しいけどいいよ。どうせ夜は会えるしね」


久しぶりに城に行くと、真琴と俊が仲良さそうに隣り合って座っていた。

仲直りができてホッとしたがどうやってよりを戻したのか俊に聞いてみた、「真琴の家に行って静学館の生徒会長で成績トップだと言ったら親御さんに認められたんだ」

確かにこの制服だけで威力がある。本人より親を攻略するあたりが俊らしかった。そして真琴は迎えに来るのを待っていたんだろう。


それよりも啓子と遙がまだぎくしゃくしていることが気になった。確かに啓子の行動は横恋慕で褒められるものではない。気持ちはわかるが...

「啓子本気なんだよ。あまり嫌わないで」有希にそう言われ、嫌ってないしむしろ気持ちが嬉しかったと伝えた。

有希と啓子をもう一度連れて森を避けて奥まで進んだ。遙は何も言わなかった。森を避けて一周するとなんとまた村のような街が出現した。

「驚いたね、振り出しに戻った気がする」そう言うと二人も頷いた。


街で使えそうな武器を買うと、もと来た道を引き返して帰った。

「明義さん、この間は...」そう啓子が聞いてきたので、付き合うことはできないと丁重にお断りした。彼女が膝から崩れ泣き出したので有希が慰めた。

これほどのモテ期はもう来ないだろう。スーパーシスコンだった自分が普通に女の子から好かれていることがまだ信じられなかった。


「使えそうなの持って行っていいよ。バールや鎌、ライフルと危険なものがいっぱいあったが、みんな品定めして持って行った」

遙がバールを持ち帰ったのが不安だった。あれ俺に使うんじゃ...


「ところで今日の本題に入る。強くなる敵に対抗するために新しい子を仲間に引き入れたいんだ。候補は前から目を付けてる明義の妹だ」

俊の言葉に一瞬固まった、「他にはいないのか?春香は確かに頭も運動神経もいいけれど気性が荒い。だから俺は反対だ」

「適性があるらしいんだよ。彼女が最適らしいんだ」

「海で見ただろう。ああいうことが平気で出来ちゃうのが春香なんだ」

この間部屋に来た時は穏やかだった。けどまだ俺への気持ちは消えてなかった。その春香を仲間に引き入れる話に乗れるはずはなく、「だったら代わりに俺がここを出る」

そういうと俊も頭を抱えていた。


「今の春香ちゃんなら入れてもいいんじゃないかな」遙の一言に俺は釘を刺した。

「この間の晩来たのが春香の本性じゃない。俺を手に入れるためならなんでもやる。それが彼女の本性だってこと忘れちゃいけないと思う」

ダイニングに置かれたソファで珈琲を飲みながら二人は黙った。

いくらちょっと前まで一番好きな女の子だったとはいえ実妹だ。それを知ってて俺が好きになるように誘惑していた。今考えてもそれは狂気だ。妹が危険な女になったことは悲しかった。それよりも今は遙がいるので守らなくてはならなかった。


「今夜も一緒に寝るのか?」そういうと嬉しそうに遙は頷いた。

遙に軽くキスをした。もっと触れ合いたいがダメだ。

春香をチームに入れることを考えた。魔法少女たちの戦力強化は大歓迎だ。だがそのために遙が犠牲になっていいはずがない。もやもやしながらそのまま寝てしまった。


よく眠れず夜中に起きてしまった。ダイニングに行きまた珈琲を飲んだ。春香を入れたくない本当の理由を俺は知っていた。彼女をまだ愛していたからだ。今でも彼女のことを思い出すとパニックになる。彼女の笑顔を見たかった。愛くるしい笑顔も怒った顔も見たかった。狂っているのは俺だということを認めてはいるんだ。


「春香ちゃんはそんなに可愛かったんだ。私にも教えて」

すべて見抜かれていた。でもそれでいい。

「こんなことになって済まない。実妹だとわかっていてもまだ好きだ。騙されたとわかってもそれは変わらないんだ。気持ち悪いだろう」

「愛にはいろいろな形があるんだよきっと。だからそんなこと言わないでいいよ」

遙のパジャマの両手を引っ張りながら話を続けた。

「戻りたいんだあの家に。でも親にもバラした今ではそれは無理だ。なんでこんなことになってしまったんだ。きっと俺は気が狂ってるんだ」

遙は俺の頭を撫でながら言った、「春香ちゃんを魔法少女にしよう」


翌日、遙が春香をこの謎空間に連れてきた。春香は俺に気が付きこちらを向いて笑顔で手を振ってきた。俺も手を振り返した。

「山根春香です。よろしくお願いいたします」彼女が挨拶したので、みんなも春香に挨拶を返した。懐かしく愛おしかった。俺は優しい目で彼女を見た。


「ところで魔法少女するってどうやってやるんだ」俊が核心を突いた。

「わりと簡単だけど男子は出て行って」年長の啓子が言った。

俊が覗こうとしたので本気で蹴りをいれた。春香の裸を見ていい男は俺だけだという独占欲がつい出た。


薄紫色のドレスはとても瀟洒で見とれてしまった。

「遙は制服で練習してたが、そういうのはいいのか」

「彼女は即実戦で戦えるわ。だからそれは省いたの」

啓子の言葉にみんな感嘆の声を出した。そんなに魔法少女適性が高いのかと思い俺は驚いていた。そして魔性でもあるけどと小さく呟いた。


「なんで春香がうちにくるんだ?俺が引っ越した意味知ってるよな」

「今夜は友達のうちにお泊りと言ったから平気だよ。それとも春香がいたらどきどきしちゃうのかな?お兄ちゃんは」素直にそうだと答えた。

「お客さんは誰でも歓迎だよ。春香ちゃんいらっしゃい」

遙は張り合うつもりは毛頭ないようだった。なにか大きな決意のようなものを感じ、きっとそれは俺への信頼に依るものだと思った。


先に遙が風呂に入ったので、久しぶりに兄妹二人きりになった。

「春香...」

「お兄ちゃんはそんなに会いたかったんだ。春香はもう慣れちゃったよ」

春香が嘘を付いている。俺が何を考えてるのかお前がわかるように、俺にもお前が何を考え欲しているかわかるんだ。

「バレちゃったからもういいや。お兄ちゃんは何して欲しい?」

「キス...」

初めての春香とのキスだった。すごく欲しかったものなので何度もねだった。


「出たよ。次誰が入る?」俺が手を挙げてすぐに風呂場に行った。

「二人とも幸せそうだね。あんな明義さん初めて見た」遙は自分の気持ちを素直に伝え、改めて兄妹の絆の深さを思い知った。

「私たち血が繋がってるんだよ。どう思っていたってダメなんだよ」それでも現状完全に負けているのは自分だ。遙は唇を噛みしめた。

「出たぞ。春香入れ」春香ははあいといい風呂に急いだ。


「春香ちゃんを覗きに行こうか」遙の提案は魅力的だったが、倫理的に大きな問題があったので断った。

「遙は俺と春香に現実と向き合わせようとしているのか。どうあがいても地獄しか見えない未来になんて向き合えないぞ。あと妹の風呂なんて見たいと思っちゃダメなんだよ」

「でも見たいんでしょ」今夜の遙はとことん意地悪なので何も言わなかった。あんまり深く踏み込んで欲しくはなかったが、もう彼女は全部知ってるようだった。


「お待たせ。ちょっと時間掛かっちった」春香は少しだけ長風呂していた。

袋小路に入ってしまったように、我々は会話がなかった。

言おうとしていた言葉があった。だが簡単に言えるものでもなかった。それでもいつか言わなきゃいけない言葉が確実にあった。今夜でもいいはずだ。


結局へたれな俺は言えず、三人で寝ることになった。

「狭くないか?二人とも布団からはみ出ちゃうぞ」そう言ったものの、二人とも密着してくるのでそうでもなかった。

横になって少し考えた。モテモテ小学生だった春香は、告白を随分受けたがすべて断っていた。俺という存在があったからだろう。その頃裸で部屋をうろついたりして俺の気を引こうとしていた。その作戦はまんまと成功し俺はスーパーシスコンになった。ただその後どうするつもりだったんだ。答えがまったく見えなかった。

遙ごめんな。必ず決着は付けるからそれまでは待っていてくれ。そうして俺は遙の方を向いて寝た。






























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