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【51】スペースボール対真・ブラックホール

スペースボールが被弾したという一報が、それの乗組員から入った。地球滞在中に何者かの攻撃を受けたと。にわかには信じがたい話だった。彼らの船はオーバーテクノロジーの塊で、軍隊どころか魔法少女たちでも太刀打ち出来ない。真相を探るべくカリスト星で修理中のスペースボールの元に、遙と有希が向かった。


「彼らから説明を受けた場所はもうすぐです」

ブルー・オリオンがレッド・ペガススに説明した。

「こんな文章出しちゃっていいのかな。また襲われたら大変だ」

安易にLINEを使う円盤乗組員をレッドが不思議がった。


その場所には明らかにスペースボールと分かるイラストが描かれており、その地下に彼らは居る様だった。ここには隠匿性の欠片もなく、彼らの危機管理能力に問題があることが見て取れた。それでも二人は地下に向かって飛んだ。


そこで二人が見たものは、半壊したスペースボールこと円盤だった。

「これだけ壊れてても宇宙を飛べちゃうんだね」

遙が感心して言った。

「それよりもここまで被害を受けたことが問題です」

有希は問題を矮小化したくなかった。


持って来たパンダの着ぐるみに二人とも着替え、スペースボールに二人とも乗り込んで行った。すると乗組員が誰も居ないので有希は訝しんだが、もう一度円盤を出て見た。

「あの溶接している方々ですかね、乗組員っぽくないですが」

「遙が聞いて来るよ」

遙が話しに行くと緊張で脂汗を流している。間違いなく彼らが乗組員だ。


彼らを過度に緊張させないよう、二人は着ぐるみを着た上でサングラスも掛けた。

乗組員兼溶接工が言うには、ドーンと言う音がしてスペースボールが破損したと言う。要領を得ないので遙は聴取を断念した。

「有希ちゃん、コスモ・ソードで突き刺して見て」

遙がそう言うと溶接工が慌てて止めた。シールドがないので吹き飛んでしまうと。


状況だけは確かめることが出来たので、二人はコスモモードになり地球に引き返した。


「二人の国語力が無さ過ぎてこんな報告書になったんだな」

そう決め付けると二人が全身を噛んで来た。そうではないようだ。

有希に噛まれた頭から大量の血が流れたので遙がヒールを掛けてくれた。二人に噛まれるのは嫌いではないが、命を大事にしなければならなかった。


まさか溶接で破損個所を直すとは思っていなかった。自動修復機能とかが付いていて、時間が経てば直るものだと思っていた。スペースボールがかなりアナログなことが判明し、驚くと同時に不安になった。

「これからの戦闘で頼りになるのかな彼らは」

スペースボールには魔法少女たちの戦いに介入してくれることを期待していた。


「円盤さんは見守るだけでしょ?遙たちの戦いを」

彼女の言うとおりなのだが、先日の巨大魔の木との戦いでは助力する気満々だった。

「意思疎通出来る仲間だしね。期待しちゃうんだよ」

有希は俺の意見に同意してくれた。


「とにかくお疲れ様でした。二人ともお風呂入って休んでおいで」

風呂から出た遙だけが俺の部屋に来てくつろいでいた。

「飲み物なら冷蔵庫から勝手に取って飲んでいいよ。暖かい物がいいなら一階で作らないとダメだけど」

すると彼女はコーラを取り出してコップに注いだ。


「遙は二番目かな。真琴ちゃんの次」

彼女の発言に少し驚いた。これはたぶん嫉妬だ。

「一番は遙だよ?真琴は気になるだけ。そもそももうこの家には居ないし」

疑いの眼差しを向けられたが事実だ。それよりも嫉妬されたことが嬉しかった。


「そっか」

そう言う彼女は嬉しそうだった。他人の恋愛を応援していた彼女とはもう違うんだ。

真琴の件はまだ心の中ではくすぶっていたが、親友の彼女を寝取ったという罪悪感はかなり消えた。このままでいいのだ。


「お夜食です。って、遙いたのですね。随分ご機嫌なようで」

有希の夜食便が来たが、彼女も彼女の変化に気が付いたようだった。

「有希もしばらくいていいよ」

そう言っておにぎりを半分に分け二人に与えた。


今更ながら自分に複数の彼女がいることが不思議だった。しかも四人と同居している。初めは遙だけだった。しかし気が付いたらこうなっていた。

その遙だって押しかけ同居人で、一緒に暮らそうと言ったことは無かった。

「遙、一緒に住んでくれてありがとう。もちろん有希も」

ありきたりの言葉だが二人に感謝したかった。


気が付いたら二人とも絨毯の上で眠っていた。姉妹のような二人に毛布と布団を掛けしばらく眺めていた。そして変なポーズで二人の安全を祈願した。


「スペースボールがやられた。だからうちの子たちは次の魔物には出撃させない。もう全員に通達済みだ。だが真琴は出たがるだろう。なんとか止めろよ」

俊にそう注意を促した。

「出来るかはわからん。お前が言った方がたぶん言うことを聞く」

俊に伝えることはした。弱腰ヘタレについては責任を持ちかねる。


「お兄ちゃんが真琴にメッセージを入れたらいいんじゃない?」

春香がそう言ったが却下した。俊が何とかしなくてはいけないからだ。

「俺と真琴は直に連絡を取らない方がいいの。お互いのためだ」

彼女は無理をしている兄が痛々しいと思った。


魔界の雨季の終わりを告げる雷がいくつも轟いていた。

ペットたちはずっと春香の部屋に入りっぱなしだ。本格的な夏が来たらペットも一緒に旅行をしてあげよう。彼らも家族だ。


しかしその日魔物は襲来し、遙と真琴が出撃していた。

基地に行きモニターで確認すると、遙は真琴を説得しようとしていた。二人とも暴走した訳ではなく、真琴の独断先行だった。

「レッド・ペガススもういい。帰って来い」

そういうとポルックス・イエローだけを残して彼女は帰還した。


スペースボールを襲った相手ならイエローだけでは歯が立たない。援軍を出すかどうか迷っているところで真琴が動いた。

「行くわよ!『ブリザード・レールガン!』」

一撃で敵は焼け焦げ沈黙した。雑魚に分類される魔物だったようだ。


「あれじゃ真琴が危ないよ。次からは出るからね」

遙がリーダーとして決断を下した。これには従うしかなかった。



「入るぞ真琴」

そこは以前俊と真琴がたまに訪れていた魔界の家だ。

我が家を出て行った彼女は当初実家に戻ったと思っていた。だがプライドが高い彼女が今更家に戻る訳もなく、ここにいると確信出来た。


「何なのよ。迎えに来たって無駄なんだからね」

お馴染みの口調が懐かしかった。

「お迎えじゃない。だがなんで一人でここにいる?俊を呼べば喜んで来るだろう」

呼ぶほど仲が進展していないのは分かっていた。聞いてみただけだ。


無言で真琴に睨まれた。

真琴に帰ってこいとメッセージもした。そもそも出て行くことを勝手に決めたのも真琴だった。俺のどこに落ち度があるっていうのだ。


「ああ、そうか面倒くさい奴だな」

問答無用で手を強く引っ張った。

変身すれば簡単に振り切れる筈だが彼女はそうしなかった。雷雨の中二人は歩いて我が家に向かった。すすり泣くような真琴の声が小さく聞こえて来た。


「バスタオルだ。今夜は泊まっていい。明日からどうするかは自分で決めろ」

俺が無理矢理奪って来た形は避けたかった。それに彼女の意志表示も大事だ。


「遙、真琴を連れて来たので呼んでくれないか?俺が言ってもたぶん来ないだろうから。あいつはお前と同じくらい面倒くさいんだ」

遙はふくれっ面をしたが、思い当たる節がたくさんあったので従った。

「連れて来たよ遙は邪魔になるからごゆっくり」

ちょっと嫌味っぽい言い方をしたのは嫉妬だろう。


「少し久しぶりだな真琴。追及したりしないからのんびりしててくれ」

彼女は黙っていたが少しリラックスした様子だ。

別宅のドアから入ったので、彼女が家に居ることは啓子しかしか知らない。なので一階のキッチンに連れて行った。まだ真琴の椅子が置いてあること確認してもらうために。


「部屋も椅子もそのままにしたんだ。もっともキッチンの椅子は一度しまったんだが、一つ無くなることが辛くて元に戻した」

そこに彼女が座ったのでココアを出してあげた。

「メッセージだけじゃダメだったのか?改めて帰って来い、真琴」

親友を二度も裏切る行為だが、真琴の思いが最優先だ。


真琴が大粒の涙を溜めたので指で拭いハンドタオルで拭いてあげた。

真琴が出て行った夜は、彼女とそういう行為をしようとしている真っ最中だった。そこに魔物化した俊が現れ、仕方なく彼女は出て行ったのだ。


再び部屋にあげ、後ろでソファに座ってもらった。今度は穏やかな顔だった。

「雨止んだな、これで魔界の夏が来る。人間界も夏になるが」

ここまでは完全に俺の勝ちだ。だがもう一度俊がおかしくならないとは断言できない。言葉や仕草に注意をしながら真琴に接した。


「俊も呼ぼうかこの家に。男が増えるのは悪いことじゃない」

真琴が何も言わなかったので、彼をこの家の住人として呼んだ。

真琴に取っては二股になるのかも知れない。だが最大五股していた俺は涼しい顔で彼を迎え入れた。これからが本当の正念場だ。


俊は突然の同居人として迎え入れられた。もはや母屋のキッチンはいっぱいだったので俺と俊、啓子と真琴が増築キッチンで食事をすることにした。

「明義、機会をくれて感謝する。この恩は忘れない」

「お前と真琴の交際続行に賛成はしてないぞ。敵だと言うことを忘れるな」

それでもと言って俊は深々と頭を下げた。律儀な男だ。



「また大きな雷だな。天候の変化がめちゃくちゃだし大物魔物が来るな」

どの程度大物なのかが問題だった。相当強くても彼女たちはもう倒せる。だがスペースボールを半壊させるような力を持っていたら勝てないかも知れない。

「逃げるぞと言っても、主に真琴と遙が言うことを聞かないので出撃させる」

全員距離を置いて強力であろう魔物に対峙した。


それは真・ブラックホールとでも呼べるような代物だった。物質や光を吸い込むだけでなく、光や電磁波を放出していた。

「あそこに中性子星クラスを放り込めば敵が処理できずに勝てる気がするな。そんなものはないが。思い辺りはあった。スペースボールのビームだ」


「はあああ!『レッド・ウィング!』」

以前よりは格段の質量があったが、真・ブラックホールはそれを容易く呑み込んだ。

「危ない!敵の電撃だ」

そう言う前にレッド・ペガススはシールドを張っていた。だがその威力は凄まじく数分しか持ちそうもなかった。


「そのブラックホールに呑み込まれるぞ。帰って来い」

魔法少女たちを一旦引かせた。

「あの魔物、地球すら飲み込み兼ねないよ?戦わないと」

脳筋の遙を撫でてなだめた。先ほど円盤にメッセージをしたのでもうすぐだ。


雲や大地を飲み込もうとする真・ブラックホール。放って置いたら地球存亡の危機だ。だがもうすぐ頼もしいはずの助っ人が来る。


やっとカリスト星から帰って来たスペースボール。まだ修理が終わっておらず半壊していて痛々しかった。それでも有希が交信したところ戦ってくれると言う。

ちょっとダメージ受けてるな。遙と啓子、シールドだけ助けてあげてくれないか。そう言って限定戦闘に二人を送り出した


二人のシールドを得たスペースボールは、巨大な質量を持つビームを射出した。真・ブラックホールのサイズに合うように調整してるようだった。最大出力だと太陽程度の星は潰してしまうからだ。

口を開けてるだけでは負けると感じたブラックホールが動いた。スペースボールとレッド・ペガスス、ピンク・プレアデスに猛然と迫り電撃を放って来た。


「『ブリザード・レールガン!』」

ポルックス・イエローはブラックホールの後部目掛けて発射した。

前だけがブラックホール本来の力を発揮できるようで、後ろを攻撃され敵は動揺した。

「今だよ円盤さん、ビーム叩き込んで!」

ちょうどいい強さのビームを真・ブラックホールに叩き込み、物質を飲み込み過ぎたブラックホールは自爆した。


情けない一面もあったが、やはりスペースボールは規格外に強かった。あの敵は魔法少女たちではどうにもならなかった。


翌日は雨が完全に上がり夏が始まった。人間界の暦でも七月である。

「明日から夕飯は啓子と俺は元に戻るからな。その間二人でどうぞ」

真琴の気持ちは分かっていたが、俊を見捨てられないことも分かっていた。

それは真琴の心の揺れだ。俺が無理矢理連れて行っても永遠に傷が残ってしまう。この際俊の気持ちを真琴にぶつけてもらいたかった。


「私がシェフとして全員分の食事を作るからご安心ください」

もう彼女だけいてくれたらいいんじゃなかろうか。口に出したら大問題なことを考えていた。家事を覚えてくださいみんな。


「私を取り返しに来て来れればそれで済むじゃない。明義さんはどうしてそうしてそうしてくれないの」

「俊が魔物化したようにそれでは禍根が残る。お前にも傷がな」

本当のことだったので真琴は黙った。簡単じゃないんだよ。

「気持ちはお前の部屋をそのまま残したこととキッチンの椅子で分かるだろう?俺はお前を愛している。それはずっと変わらない」

直接は言わなかった言葉を混ぜて真琴を口説きに掛かった。

多分これは俊には出来ないことだ。


真琴がどっちを選ぶのか、あるいは選ばないのか。それはもう誰にも分からない。彼女の問題のようで三人の問題だった。だから祈りを込めて真琴を返してくれと願った。



























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