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【48】衛星カリスト

スペースボールに翻弄される魔法少女たち。遙とその母が円盤で彼らと宇宙に旅立った。なかなか返ってこない遙に危機を覚え彼女たちは宇宙へ旅立つ。

遙の母の家に行くと、まるで俺の訪問を待っていたかのように彼女はキッチンの椅子に座っていた。何も言わずに彼女は俺も椅子に座らせると、遙の幼い頃の写真を見せてくれた。夫婦に連れられ池に遊びに来ていた彼女は幼く可愛かった。


「考えていることくらいは分かる。わしはこの星の人間ではなかった。じゃが誤解するなよ坊主、遙もわしも立派なホモサピじゃ」

やや予想と違ったので更に話を聞いた。

「最初からこの姿で降り立ったからな。爺さんのお茶のみ友達だと思ったんだろう旦那は。実は20代と言うことが分かると襲われた。最も合意の上じゃが。お前さんみたいに若い子だけに興味を持つなんとかっていう病気だったんじゃろう」


遙の父は俺に似ていた。だが遙たちが婆さんになっても愛す予定なのでそこは違うはずだ。そう思いたい。

「というか普通に喋ってもらえませんかね。30代の母親として」

魔女は首を傾げたが、姿も年齢に合わせ普通になった。むしろすごく可愛い。


「遙は普通に魔界で育てたわ。でも中学受験させて墨田女子に行かせたのよ」

「こっちの学校だと何か不都合があったんですか?」

見た目が違うと虐めがあるでしょ。そこは宇宙共通なのよ。

宇宙にも虐めがあると聞いてげんなりした。幼い頃から虐めっ子を狩っていたがいくらでも奴らは沸いて来た。宇宙規模ならもう仕方がなかったんだ。


「スペースボールの目的は何ですか。前は白を切られましたが今度は喋ってもらいます。遙がピンチなんです」

「あれの名前は円盤よ、身も蓋もなくそのままね。で、あの中の人たちが遙に興味を持っているのよ。魔法少女は彼らの技術だけど、今まであの子ほど強い子は現れなかったのよね」

そういうことか、なら話し合いは可能そうだ。余談は許さないが。


「次に来た時にあの船に私と遙が乗るわ。会わないとどうしようもないでしょう。必ずあなたの元に返してあげるから」

そう言われて母親に全てを託すことにした。遙が中で暴れなきゃいいが...


魔女に遙に円盤に乗り込む話をした。彼女は母親の言うことには素直に従った。


遙は浮かない顔をしていたが、みんなに手を振って母親と円盤に乗り込んで行った。

他の魔法少女たちもみんなで手を振って無事を祈った。

「お兄ちゃん、本当に信用していいの?罠だったりしない?」

「俺の同乗は拒否された。遙の母を今は信じるしかない」

祈るような気持ちで送り出した。本当は渡したくはなかった。


「ちゃんとしっかり食事をして学校に行きましょう」

有希は今日も気丈だった。

俺はそんな気分にはとてもなれず、家で遙を待つことにした。早ければ三日くらいで帰れると母親は言っていた。それを信じたい。


「明義さんは遙が心配なのね。私も一緒に待っててあげるわ」

学校のが大事だから行けと言ったが、遙同様真琴も言い出したら聞かない。

「高速で飛ぶ円盤なのよね?彼らの母星に逃げられたら大変だわ」

「遙は嫌だったら外壁を蹴破って帰って来れる。それが彼女だ」

最近は願望ばかり語っている気がする。


そもそも母星に連れ帰ったとして遙に何をさせるんだ?新人の教育係りでもさせるのだろうか。円盤の中の人の考えが全く読めなかった。


一週間が経ったが円盤は戻って来ない。流石にこれはおかしい、魔法少女たちの会議が開かれた。議事進行はまた有希だ。

「遙が連れ去られたまま戻りません。我々も太陽に行った時に光速に近い速度が出せました。出動して奪還作戦を進言します」

「どこの星だか分かるっていうの?むやみに宇宙に出たって無駄じゃない」

啓子は否定的だった。


「それならたぶん分かるの。神殿にはKSなんとかっていうおとめ座方向にある星と記載があった。問題は150光年も離れているの。肉体を冷凍保存してここまで来たのかは分からない。でも遙のお母さんは母星から来たと言っている。30代のお母さんが150光年離れた星から来たとはとても考えられない」

春香の話だと計算が合わな過ぎるし、そんな遠くから来る価値がそもそもあったのだろうか。


「それとこの絵、AIで画像を解析させたら、木星の衛星カリストがヒットしたの。生命は居ないとされてるけど、彼らの技術力なら大深度地下に生命が暮らせる環境を作れるんじゃないかしら」

突拍子が無さ過ぎたが、ヒントがあるなら行くしかない。


「太陽系内なら日帰りで行けるわ。すぐに出るわよ」

コスモモードに着替えた魔法少女たちは、カリストに向けて出発した。

「食料は二日分しかないからね。それと眠れる場所がなかったら帰ろう」

啓子は不安で一杯だった。


「こんな氷と岩しかない衛星に潜んでるってちょっと考えられないわね」

そう言いながらコスモ・イエローは調査を始めた。

「木星がよく見えます。スーツがあれば寒くないのでいい場所ですね」

コスモ・ブルーは前向きに考えて衛星の周りを探査した。


「居たあああ!」コスモ・イエローは大袈裟に言った。

円盤がカリスト星の表面に足を出して停車していた。

「誰もいないね。どこに行ったのかな」

パープル・コスモはハッチをこじ開け円盤の内部に侵入し探索した。


「ここよ。この穴を通って行くように出来ているわ」

コスモ・イエローが円盤作ったと思われる通路を発見した。

「障害物がないし出入りするならここだね。真琴でかした」

コスモ・ピンクは不安から好奇心に代わり衛星を下降して行った。


かなり深く表面から下ったところに生命を発見した。というよりこれは魔界と酷似していると真琴は感じた。衛星の核に近いため気温は地球と同等だった。

「遙を探すわよ。コスモモードから通常モードに変身し直して」

ポルックス・イエローはみんなに指示を出した。


「気を付けて!円盤が追って来たわ」

イエローは皆に伝えた。魔界で家に来た時と同じように、円盤は目を出し魔法少女たちを眺めた。遙以外には興味がないのか、それは彼女たちに攻撃を初めて仕掛けてきた。ビームを出し先頭に居た真琴を狙ったので、ピンク・プレアデスがシールドを展開し守った。


「こんな威力じゃないはずだよね、威嚇なのかな」

パープル・スターはまだこの円盤の意図が分からなかった。

「帰れってことだよね。おっかないから帰りたいよ」

ピンクは萎縮してしまった。


「ねえ、ここで遙に何をさせる気?それとももう返さないつもりなの?」

パープルは円盤に大声で質問した。しかし円盤は無視した。

「遙と同じサイズの私が交渉します。その中に入れなさい」

するとハッチが空いたので、ブルー・オリオンは円盤に入って行った。


「何なのあれ。まるで明義さんじゃない」

イエローは憤慨した。


一時間後に円盤のハッチが開き、ブルーが帰って来た。なんの危害も加えられていないようだったので皆は安心した。

「遙の居場所が分かりました。すぐに行きましょう」

地球の魔界とほぼ同じだったので進むのは楽だった。

「あの小屋かも知れません。魔女の小屋に似ています」

ブルーがその方向に指を差した。


すると遙がレッド・ペガススの姿でそこに居た。ただ雰囲気がだいぶ違っていた。

逆立つ赤い髪に圧倒的に輝くオーラ。そして敵意があった。


「レッド、帰って来て。そんな姿はあなたらしくない」

パープルが話し掛けたが彼女は聞いていなかった。

「何かされてるね。あんなのはレッドじゃない」

ピンクは戸惑っていた。


レッドは攻撃を仕掛けて来た。いつものレッド・ウィングよりも強化されたものを魔法少女たちに放った。急いで彼女たちは散開して避けた。

「今のレッドが普通の状態じゃないのは分かるけど、やろうって言うのね。エースだからって調子に乗らないで」

「行くわよ!『ブリザード・レールガン!』」

レッドはイエローの攻撃をレッド・ウィングで相殺した。余裕があるのはレッドだった。イエローは屈辱に震えた。


「仲間割れしている場合ではありません。引きますよ」

ブルーがイエローを無理矢理連れ去った。


「遙のお母さんと合流したいのですが、どこにいるのでしょう」

変身を解いた有希がみんなに問いかけた。

「それよりも、洗脳されてるみたいだったわ。なんとか出来ないかしら」

「直接触れれば真琴のヒールで治せるんじゃないかな」

「危ないよ。遙が元に戻るのを待とうよ」

魔法少女たちの間でも意見が別れた。最強の遙だ、無理をしたら危ない。


「ごめんねみんな、彼らの実験の失敗で暴走しちゃったのよ」

誰?と皆が思ったが、遙の母と自己紹介され魔女だと分かった。

「どうにかならないんですか?なぜ実験なんて」

有希が問いかけた。

「強化実験なのだけど、注射一本で済むっていうから許可したの。でもあの子注射嫌いで、怒って暴走しちゃったのよ。結果的にもの凄く強くなったから成功なんだけどね」

馬鹿馬鹿しい理由で問題に巻き込まれ皆呆然とした。


「あと真琴、さっきのは仲間割れと言うより殺し合いよ。自重してね」

春香にそう言われても、最大出力のレールガンを簡単に止められたことがショックだった。彼女はプライドを打ち砕かれた気持ちだった。


「力で捻じ伏せればいいのよ。さっきのは本気じゃないんだからね」

真琴は強がりを言った。

「暴走を放って置く訳にはいきません。この星を壊しても不思議はないですからね。遙は太陽核へ辿り付けるシールドを持ってるのです」

魔女も含めた遙捕獲作戦を決行することになった。


「作戦通りでねみんな。危険を感じたらすぐに逃げて」

パープル・スターの合図で作戦が始まった。


「みんなしっかりシールドに入ってね。レッドの攻撃は危険だから」

ピンクが最大出力で守りを固め、レッドに寄って行った。

「これ以上迫るとレッドの攻撃を防ぎきれない。ここから作戦開始して」

ピンクのシールドからレッドに攻撃を加え、隙を見て捕獲する作戦だった。


「はっ!、『リアルラヴ・プロテクト』」

パープルが更に防御を固め、遙の攻撃を待った。

レッド・ペガススはこちらのことはあまり気にしてないようだった。特に危機を感じていないような感じだ。

「試し打ちよ、『レールガン!』」

イエローの攻撃でようやくレッドは臨戦態勢なった。


「レッド・ウィングが来るよ!衝撃に備えて」

「今度は本気よ!、『ブリザード・レールガン!!』」

レッドの攻撃に真っ向からイエローは放った。

「耐えきるから行きなさい。ブルー」

イエローがレッドを引き付けている間に、ブルーが出た。徒手格闘で攪乱してレッドの攻撃を弱めた。しかしレッドはブルー目掛けて二つ目の攻撃を仕掛けようとしていた。


「一気に近づくよ。耐えてねイエロー」

シールドごとレッドに猛スピードでピンクは近づき、イエローはシールドを飛び出て遙に向かっていった。ブルーはレッドの二つ目の攻撃前に蹴りでダメージを与えて彼女を捕獲した。

「今です。イエロー」

レッドを捕まえたブルーが彼女に言った。


イエローがレッドのおでこに手を当て電流を流す。するとレッドの変身が解け、彼女は眠りに付いた。暴走程度はこれで間違いなく収まる。


遙の回復を待って全員で地球に向かった。

遙連れ去りの理由は、今後現れる強敵のために飛び抜けて強い彼女を更に強くすることだった。円盤は他星から来たので内政干渉はしない、つまり手助けはしない方針だと言う。同じ理由でゴーレム、魔界樹、活火山魔物にも強化目的で攻撃したら、思ったよりも弱く怪我を負わせてしまったのだという。


口数が少ないので大きな混乱を与えたスペースボールこと円盤。彼らはシャイ過ぎて女子と話をすることが苦手だった。

遙の母は母星から来たのではなく、カリスト星から来たのだと言う。ただカリスト出身ではなく、素質があった彼女を地球から拉致して記憶を消したのだそうだ。明らかな犯罪だが他星の人間なので無罪なのだろうか。



帰って来た遙をずっと捕まえていた、物理的に。

階段を上がる時は抱えて、部屋にいる時は抱きしめていた。もう二度と手放さないようにと、彼女の温もりを感じながら思った。


「今晩の夕食は魔界豚のチャーシュー乗せカリスト星のラーメンです」

円盤に乗った時にお土産を渡された有希がそう言った。

「こっちの物と全く同じ味ね。カリスト星ってなんなのかしら」

「地球の魔界がレプリカらしいですよ」

春香の問いに有希が答えた。


スペースボールこと円盤は敵ではなかった。そのことに安堵はしたが、遙を連れて行った理由は更なる戦闘力強化だった。まだ見ぬ強敵が居ることは明白だった。そして暴走していたという遙が気掛かりだった。ただでさえムキになる子だからだ。


「遙はリーダーなんだから、指揮を取って冷静に戦おうな」

抱きしめながらそう言った。

「皆を守ろうと頑張り過ぎちゃうのかな?気を付けるよ」

そして実力が伸びている真琴と春香にも頼るようお願いした。


「お夜食です。お邪魔でしたか?」

「お邪魔じゃないよ。こっち来て隣に座って」

有希と遙を両横に並べ、肩を抱いた。子供が出来ても問題ないという二人、かなり若い父親になりそうな気がするが、それは光栄だった。

「明義さんの自家発電ティッシュを収集研究していますが、牡蠣鍋の効果でそれ以前より精子濃度が上がっています。今度は成功するでしょう」

妊娠騒動以前からチェックされていたことが判明した。


学校に行く日数をチェックしていた。休み過ぎているので留年ギリギリで登校するためだ。成績自体は上がっている。これでも夜中は頑張っているのだ。


「啓子お疲れ様。遙相手にシールドを張るのは怖かっただろう」

労いのために増築家屋にいる彼女の部屋を訪れた。

「怖いよ本当に。遙の髪の毛は真っ赤で逆立ってるし、光線は凄いし生きた心地がしなかった。魔物相手のが楽だよほんと」

本音で怯えている啓子をやさしく抱き寄せた。

きっと啓子は戦闘には向かない。命を掛けて特攻する有希や、遙にライバル心を燃やす春香と真琴とは違う。一年後に引退するのは良いことだ。


「勉強の息抜きに今度の日曜日デートしようか。新婚デート」

旅行に行く暇はないので啓子にそう提案した。

「いいね、行く。ちゃんとエスコートしてね旦那様」

都内限定で行くことになった。


深夜に勉強を終えると再び啓子の部屋に行き一緒に寝た。彼女は常に不安に怯えている。それを少しでも癒してあげたかった。

「ちゃんと私のこと好きだよね?」

今更こんなことを言わせてはダメだ。強く抱きしめて愛していると言った。

二度目だから今度は痛がらなかった。有希の牡蠣鍋効果がちょっと恐ろしかったが、きちんと避妊対策はしている。


スペースボールこと円盤に関してはまだ謎な面が多かった。彼らが魔法少女を作った目的、地球に魔界をコピーしたこと、いずれ遙と有希を通じて全てを語らせなければならない。いや、女が苦手なのだから俺が行くべきなのだろう。



























遙奪還作戦は成功した。敵に拉致の意図はあまりなかったようだが。暴走した遙との戦いに魔法少女たちは勝利した。

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