【47】宇宙からの使者
謎のスペースボールが襲来したが日常もある。それぞれの日常をみんなは過ごし、明義は遙をデートに誘う。
スペースボールは数日置きに地上か魔界に現れ、10分程度飛行するとどこかに飛び去って行った。遙と対峙した時は30分はそこに停止していた。これは有希の説を裏付けするような出来事だった。だが遙は他のメンバーからも出撃禁止命令を出されていた。
人間界も魔界もこの未知の飛行物体に恐怖していた。
「朝食は基本です。残さず食べて登校しましょう」
有希は普通の生活を維持することに腐心していた。
これまで魔法少女たちは、魔物が現れると颯爽と出撃し、それを駆逐することが任務だった。だがスペースボールに対しては手の打ちようが無かった。
「明義、ちょっと話があるんだが」
珍しく俊が話し掛けて来た。
もう親友とは言えない大罪を犯した俺は、彼に話し掛けることはできなかった。
「構えなくていい。非難しに来たわけじゃない、だが想像どおり真琴の話しだ」
久しぶりに学校の屋上へ二人で向かった。
「格好悪くても俺は諦めない、真琴がお前を好きでも。何故なら持て余す程の女を抱えてるお前にとって、真琴は面倒な存在なはずだからだ」
俊の言うことは合っていた。
真琴を受け入れたのは、遙を失った寂しさからで、二人を重ねて見ていたからだ。遙が戻った今、俺は真琴に対する接し方を見失いつつあった。
「概ね合ってはいるんだが、つい先日魔界での婚姻を済ませたんだ。つまり真琴は俺の嫁さんで他の男にはもう渡せない」
俊の顔が険しくなった。それでも彼は言い放った。
「それでもだ。間男になっても俺は真琴を取り戻す」
俊の決意が揺るぎないものだと分かった。それほど彼女を愛していた。
その強い意志をもっと早く真琴に発揮してあげて欲しかった。逃げられたくないなら無理矢理でも押し倒せと俺は忠告したはずだ。もう遅いのだ。
話しは済んだので帰ろうとしたが、「接点を増やすなら魔物への対策会議に参加しろ。会えなきゃ間男にもなれないだろう」
俺は甘いので敵に塩を送った。
「誠二、そういう訳で啓子は俺の嫁さんだ。魔界は重婚可って知ってるだろ」
啓子と婚姻届けを出し受理されたことを彼に報告した。
「明義、五人を愛するなんて馬鹿なことはもうやめろ。お前はただ振るのが怖いだけのチキンだ。そのしっぺ返しは必ず受ける。啓子がどうとかじゃないんだ」
醒めた顔で誠二が俺に忠告した。
二人とも俺にきちんと言いたいことを言ってくれた。だが俺にも考えはちゃんとあるんだよ。ありがたいが余計なお世話だ。
「春香、もし有希との間に子供が出来たら子育てを手伝ってくれるか?俺一人が五人をそれぞれ相手にする生活だと間違いなく破綻する。彼女たち同士の協力が欠かせないと考えているんだ」
生物学的にそれがホモサピエンスに合っているのかは分からない。
だが間違いなくそれが必要だ。誰に子供が出来ても分け隔てなく子育てを協力してあげる。夢物語かもしれないがそれが大前提だった。
「私はいいけど他の子たちはどうだろうね。やってみないとわかんないよ」
少なくとも春香は賛成してくれたことにした。
ホモサピエンス、好戦的で馬鹿な生き物だ。ネアンデルタール人の血が混ざりややマシになったとは言え、やはりダメな生き物だと思う。屑の俺が何よりの証拠だ、間違いばかり犯す。
「明義さんは考え過ぎです。私は育てられますよ。何なら遙の子も一緒に。あの子はそういうの苦手でしょうから」
途中から有希は聞いてたらしい。頼もしいがそれではお前が潰れる。
「あれは何かを探してうろうろしてる様に見える。そしてそれは遙だろう。遙と対峙した時、スペースボールの飛行停止時間が明らかに長かった」
久々に基地に来た俊は自説を説いた。有希のそれとほぼ一致していた。
「なら何故遙を攫わないんだ?誰かと同じでヘタレなのか」
不愉快な話なので俊に毒を吐いた。
自分が居ると場の空気を悪くしてしまうので、早退して家に帰った。
「真琴、話し掛けられることも不愉快かも知れないが言わせてくれ。今お前は幸せか?そうであれば俺は嬉しい」
前と変わった俊に真琴は戸惑った。
「愛されている実感があるわ。思い切って明義さんに飛び込んで良かった」
真琴は素直に今の心境を語った。
俊はそのことは織り込み済みだった。やがてやってくる危機的状況時に攫えばいい。そして今度こそ押し倒してやると考えていた。
「啓子はいつ子供が欲しい?もう結婚してるんだからいつでもいいはずだが、今は人間界の学校に通っているからな」
家に戻った彼女に聞いた。
彼女の心境としては、明義が焦って空回りしているように見えた。
「デキちゃった時かな。でもすぐじゃない方がいいかな」
いちいち俺はその言葉をノートに記載していた。
空回ってることは分かっていた。でも将来そういうことが起こることを知っていて欲しかった。例えば二人同時に子供が出来た場合、俺一人じゃどうにもならない。
遙に関しては別枠だった。最近少し彼女の特殊性が分かって来た。それに関しては憶測に過ぎないのでまだ誰にも言わない。
裏庭で生い茂る魔界の雑草を眺めていた。そもそもここは人間が作れる場所ではない。しかしその文化は人間界に酷似していた。誰が何の目的でここを生み出したのか。
「明義さん、ヒール掛けるわよ。最近のあなたはまたストレスを抱え過ぎているわ。同じ過ちを繰り返していてはダメよ」
真琴の提案に同意した。そして治療後すぐに眠ってしまった。
目が覚めると真琴に膝枕されていた。
「リラックス出来た、ありがとう真琴。それと膝を借りて悪かった」
優しく微笑む彼女は美しかった。俊がどう思おうともう返す気はない。
そしてしばらく彼女と一緒に裏庭にいた。寄り掛かって来る真琴が愛おしくて、俺からキスをせがみ長い時間唇を合わせた。
スペースボールが一週間も現れなくなり、六月を迎えた。
彼の意図は分からないが、現実とも向き合わなければならないので俺は模試に挑んだ、感触ではA判定は勝ち取れそうだった。
「遙、いい感じに模試が終わったよ。アレのことは少し忘れて遊ぼう」
魔界の湖に行って遙とボートに乗った。夏の日差しがひりひりとした。
「遙のご両親に挨拶したいんだが、こんなにたくさん嫁が居たらできないな」
「え?そのことはもう知ってるよ、二人とも」
少し恥ずかしかった、遙を下さいと真っ直ぐに言えない今の現状が。
普通と言うのは偉大だと思う。自分を過大にも過少にも評価せず、規範を守りあまり文句を言わずに生きてゆく。ここまで考えて思ったが、それは普通じゃなくて偉大だった。そんな偉大な人間に俺も憧れている時期があった。自分が奢った人間だからだ。
ボートをわざとゆっくりと漕いだ。二人はいつも慌て過ぎているので、心の安寧も必要だと感じた。湖面からジャンプする魔界バスを二人で眺めた。
「明義、今日は穏やかだね。なんかいいことあった?」
「真琴に脳をヒールしてもらったんだ。疲れたら遙も頼むといい。もっとも元気になったお前には自分で出来ちゃうかな、遙は本当に凄いよ」
そして遙がキスをねだってきたのでオールを漕ぐ手を止めた。
家に戻っても遙の部屋で二人で過ごした。最愛の人は彼女だからだ。
遙の勉強を見ながら部屋を見渡した。年の割にかなり子供っぽい漫画やぬいぐるみがあった。俺はパンダを手に取り遙の机の上に置いた。
「前にも聞いたが遙は進路どうするんだ?名門校だからちゃんと勉強すれば進学も出来るし、魔界で公務員をやる、二つ選択肢があるな」
「どっちもイメージ湧かないんだよね。お母さんみたくなるかも」
まさかの進路は魔女宣言に驚きを隠せなかった。
「魔女か。それは他の子たちも成れるのかな。それともエースの遙だけ?」
「そういうのは聞いたことがないなあ。たぶんみんな成れるよ」
ふむふむと言い記憶に留めた。
「明義さん以外はパスタになります。サラダもきちんと食べてください」
有希のメニューはあれ以来、晩飯はずっと牡蠣鍋か牡蠣フライだった。
「牛肉でもいいはずだろ?たまには違う物食いたい」
流石に反抗してみたが、亜鉛含有量の問題で却下されてしまった。
「春香って学園のスーパー女子だから緊張するんだよね。でも気が利いて優しいね。明義さんがシスコンな理由が分かったよ」
珍しい組み合わせで二人が風呂に入っていた。
啓子の言葉に、むしろ冷たくしていて、色仕掛けで落としたとは言えなかった。
「仲良かったんですよ小さい頃から。虐めっ子から守ってくれました」
もっと古い話をして春香は誤魔化した。
「ただ有希みたく子作りは出来ないのは残念だね。二人はお似合いなんだけど」
それについても研究中だが、口には出せなかった。
「結局、遙と明義さんが一番いいと思うんだけど、彼女の行動と態度は時々理解が出来ないよ。素直に愛されていればいいのに」
「ですね。遙は癖が強すぎて兄も持て余してる感じがします」
この点では二人の意見は一致した。
春香と啓子が一緒に風呂から出てきたと言うことは、ミニマムサイズ三名がこれから入ることになる。どういう訳かこちらのが興奮した。いや、重度のロリコンなのは前から分かっていたが。そして用もないのにキッチンで珈琲を飲んで三人が来るのを待った。
「何してんの明義、一緒にお風呂に入りたいのかな」
遙がきっかけをくれた。だがもう一人くらいに誘われないと入りづらい。
「下着を盗まれても困るから一緒に入りなさい」
まさかの真琴からの誘いで喜んで仲間に入れてもらうことにした。
毎日、牡蠣を詰め込まれた身体は、もはや全身精液で出来ていた。
有希が白、遙はピンク、真琴はキャラクターパンツで色は水色だった。魔法少女のパンツの色を堪能できる幸せがここにあった。
だが風呂に入ると彼女たちに背を向けて湯に入った。牡蠣効果でお腹にめり込むんじゃないかというくらいに、アレの仰角が高かった。
「出してあげるよ、明義」
後ろから遙にアレを掴まれた。流石に三人居る場所で放出するのは恥ずかしいので断ると、その場でごしごしと遙は手を動かした。身体は見えないのだが、心の目では見えていたので風呂の中で発射してしまった。
「何やってんの馬鹿!もう入れなくなっちゃったじゃない」
真琴の罵倒は最もだった。そして有希は精子濃度を調べようとしていた。
「長めに身体洗っててくれ、お湯抜いて掃除してからまた湯を貯めるから」
自分の精液交じりの浴槽を綺麗にデッキブラシで洗った。
それにしてもあんなに簡単に出ることは今までなかった。やはり牡蠣の効果なのだろうか。だとしたら危険な食材だ。
「30分待ったわ、これでゆっくりできるわね」
もう一度汚すわけにはいかないので、交代で洗い場に行った。
「この中だと遙の胸が一番大きいね、次が有希ちゃん」
当たっているので真琴は唇を噛みしめた。
「いえ、私が一番のはずです。そこに殿方がいるので触診してもらいましょう」
そんなことをしたらまた白濁液を放出する羽目になるので、身体を洗って急いで脱衣場に逃げた。
結局殆ど三人の裸が見れなかった。悶々として勉強も手に付かないので、毛布に包まり自家発電をすることにした。
「隠れなくてもまた出してあげるよ」
毛布を剥がされパンツに手を突っ込んで遙はまたごしごしし始めた。
「すいません、おかず下さい」
右手を遙のブラの中に入れ、最大限我慢してから放出した。
遙は良いタイミングでティッシュでそれを掴み取り、ゴミ箱に正確に投げつけた。遙プロと呼びたいくらい手馴れていたが、教えたことはなかった。
「抱いてくれてもいいんだよ。明義は遠慮し過ぎてる」
「有希の妊娠騒動があったでしょ?間違えたら怖いんだよ」
遙は首を傾げて考えている。
だけど遙に逃げられない様に、子どもを作ってしまうのもありかなと考えた。そうしたら無茶な行動を慎んでくれるかも知れない。
「できちゃってもいいよ。遙も有希と同じ考えだよ」
遙とこのまましたかったが、やはり危険なので自重した。
その後俺は勉強を始めたが、珍しく遙は部屋にそのままいた。
「飲み物淹れてきてあげるね」
そう言って遙が階段を降りた時に嫌な悪寒が全身を貫いた。
急いで屋根に昇ると、近距離にスペースボールが居て、魔法少女たち全員がそれに立ち塞がった。レッド・ペガススが先頭に立っていた。
「帰ってくれ、遙は渡さない。この家庭を壊さないでくれ」
ありったけの音量で俺はスペースボールに叫んだ。
奴はただの円形ではなかった。小さな目を作り出しこっちを見ている。俺と遙を交互に見ているように感じた。
数分間我が家上空で停止した後、スペースボールは飛び去った。
「スペースボールの狙いは間違いなく遙です。なので彼女を全力で守ります」
有希が会議の議事進行を務めた。
「ですが敵は我々を攻撃、殲滅して遙を誘拐しようとはしません。目があったことですし、口もあるかも知れません。話すことが出来るなら対話で解決するべきです」
有希の意見にみんなも賛同したが、狙われている遙は複雑な顔をしていた。
遙は普段は穏やかだが、強敵が現れると戦闘民族のように変わる。自分を攫おうとするなら、尚更自分の身は自分で守ろうとするのだ。
遙が魔法少女じゃなくなったら、スペースボールは彼女への関心を無くすかも知れない。だが遙は絶対にそれを拒むだろう。解決策が見つからないまま会議は終わった。
その夜から遙と一緒に寝ることにした。俺がいたところでスペースボールには敵わない。だが何とかして守ってあげたかった。
「私も一緒にいてあげるわ」
真琴がベッドを自室から俺の部屋に運び込んだので、遙は真琴と寝てもらうことにした。彼女のが強いし、平等の精神でもあった。
いつの間にが魔法少女全員が我が部屋で寝泊まりするようになった。
リーダーの遙を守ろうとする美しい想いがこの状況を作った。だが気休めにしかならないことは皆が知っている。口にしてはいけない禁句だ。
「で、なんで春香が俺の隣なの?」
「兄妹だから問題ないからよ、お兄ちゃん」
一番問題なのだが、非常時なので考えないことにした。
「考えてみたんだが、スペースボールは単一の生き物ではなく乗り物なんじゃないか?見た目通りに。金属の生命体が存在することは考えにくい」
みんなの前で自説を公表した。
遙とその母の魔女は宇宙人だと少し前から考えるようになった。根拠はほぼないのだが、二人とも人間離れしている面があるからだ。同胞が春香をスペースボールに乗って迎えに来ている、そういう妄想の様な考えに俺は取り付かれていた。
謎の存在は遙を明らかに狙っていた。明義はスペースボールをUFOだと考え、そして遙は宇宙人だという考えに至った。




