【41】春香
春香とのデートの日に現れた魔物。牛の頭を持った魔獣は魔法少女たちを苦しめた。春香の大胆な作戦はどうなるのか。
遙たちは雪山の修復に追われていた。特訓の時に壊した山に対し雪山魔物が激怒したからだ。主に啓子の大剣のせいで数百メートル山頂を縮めていた。
彼女たちは数トンの岩や土を一回で運べる。魔界の民にコンテナを借りて修復をしていた。資材は魔界民が調達したので彼らにはいい迷惑だった。
「お兄ちゃん疲れた。肩揉んで」
帰ってくるなり春香が甘えてくるので言われるままにした。本当は胸を揉みたかったのだが、歯止めが効かなくなりそうなので自重した。
「春香、これヤバそうじゃないか。ドラゴンみたいなやつ」
神殿でも最近存在が確認された魔物だ。
「そうだね、いつ襲ってくるかは分からないけど注意するね」
我が妹は素直で優等生だ。我が儘は滅多に言わない。
亡霊も竜も想像上の存在なのだがなんでここには居るんだ。人間や魔物の悪意や困惑が生み出すのだろうか。そこまで考えてやめた。専門家じゃないからわからない。
ともかく彼女たちは基礎体力と魔力を増強させた。簡単には負けないだろう。だからと言って危険すぎる相手との戦いには相変わらず否定的だった。
そもそも遙と春香の光線は意味と原理が全く分からなかった。真琴の電撃は分かるが、二人の技はさっぱりわからない。きっと深く考えてはいけないのだろう。
「春香のリアルラヴとかなんらかの光線だけど、紫外線とか大丈夫?」
使っている本人が考え込んでしまった。
ともあれ俺は勉強を再開したし、春香も婚姻届けを出してくれた。禁断の兄妹が結ばれたのだ。両親には申し訳ないが、譲るつもりは毛頭なかった。
「俺たち実の兄妹だから、工夫をしてもエッチできる日が極端に少ないけどいいのか?旦那のセックスレスは問題になってるらしいし」
「一緒に居れたらそれでいいよ。それよりお兄ちゃんが辛いでしょう」
確かに俺の方が不満が欲求で爆発するかも知れない。
「親の手前、人間界からは学校以外避けているが、たまにはデートしないか」
了承してもらったので、休日に臨海地区でのデートをすることになった。
船の科学館に寄ってから、お台場潮風公園に行った。
「観覧車とか商業ビルがもっとあったらしいが、閉館したらしい」
「いい場所なのに残念だね、ウィルスや不便さが原因なんだろうね」
この地区は都心であって行きづらい場所だった。車が必要だ。
「レインボーブリッジは終わったりしないだろうからじっくり眺めよう」
東京臨海地区の仕上げとして豊洲千客万来に寄って行った。新鮮な人間界の海産物をたくさん購入した。調理は有希に任せよう。
「無理矢理連れて来たが実家に帰りたいか?」
これは聞かなければいけない。
お互い好きだから家出するという愚行を犯した。お互い了解はしているものの実家への恋しさがあるかも知れない。因みに俺には全くなかった。
「お母さんには会いたいよ。でももう無理でしょう?お兄ちゃんと一線超えちゃったもの。いつか言える日が来たら会いに行くよ」
悪戯はしないこと、綺麗な身体で18才には返すこと。両親との約束はとっくに破っていた。だいたい一緒にさせた時点でこれは予測できたんじゃないのか?そのことも踏まえていずれ親には会いに行く。もし子供が出来た場合は絶対に隠し通す。
啓子がペットと遊んでいたので混ぜてもらった。
「ゴーレムの子は小さいのに力あるな。指を引きちぎられたら治してくれ」
デートだったので春香のスカートはかなり短かった。しゃがんでペットと遊んでいると白い三角がくっきり見えた。
「明義さんと春香は凄いね。血の壁を愛の力で超えちゃったんだから」
啓子の意見は合っているが遙の協力がなければ無理だった。
買って来た魚は有希に捌いてもらっていた。流石に丸投げはまずいので料理作りを二人で手伝った。春香はそこそこ家事が出来るようになっている。
「それでは二人はここにあるアイナメを刺身にしてください。わりと高級魚ですから慎重にお願いします」
俺は焼いた方が好きだが、刺身もなかなか行ける底魚だった。
食器を洗い終え、自室に帰ろうとして時に嫌な気配を感じた。
「これって敵性反応なんじゃないか啓子、しかも特大だ」
「うん、分かってる」
そう言って啓子は変身して飛んで行った。
レッド・ペガススを先頭にポルックス・イエローが続いた。
敵は予想されたドラゴンではなく、ミノタウルスに酷似していて、持っている斧のような物が敵意を強く示していた。
ファントムの攻撃力が桁違いだったのでレッドは既に巨大なシールドを作っていた。両陣営は長く対峙していたが、牛頭が先に仕掛けて来た。
「飛んでここまで来るよ。衝撃に備えて!」
斧の攻撃を直接シールドに打ち込み、一部を損壊させた。
「守ってるだけじゃダメですね。行きます!、『コスモソード!』」
青く光るブルー・オリオンが急降下をして西洋剣を牛頭に突き刺した。
「まだダメ。ブルーは速く戻って」
レッドに言われるまでもなく、ヒット&アウェイでブルーは身を引いた。
有希の最大出力に耐えるのは強敵の証拠だった。
「イエロー、レッド、一気に攻めますよ!『リアルラヴ!』」
しかし敵の防御は固く、ダメージは少なかった。
「ちょっと危険だけど私も行くよ『大剣!』」
大きく振りかぶりミノタウルスの頭を叩き割ろうとしたピンク・プレアデスだったが、敵も斧でそれを相殺した。
「だいたい分かったよレッド。イエローと私がミノタウルスの横に回りビームを叩きこむ。そしてブルーとピンクの剣でトドメを刺す」
陣形がいつもと逆で、長距離ビーム隊三人が地上に降り、徒手格闘の二人が空に残った。ピンクとブルーは身体の光を増した。
「うあああ!『レッドウィング!』」
レッドの攻撃と共にパープル・スターとイエローも『リアルラヴ』と『レールガン』を叩き込み、敵は窮地に陥った。
すると弱ったミノタウルスはパープルに突進して来た。斧を彼女に打ち下ろそうとした時に、彼女はパープルに輝きシールドも無いのにその斧をへし折った。
「『パープルレイン!』」鮮やかな濃紫の光がミノタウルスを押し戻した。
「あと少しだよ。そうしないとうちらが空に残った意味がない」
ピンクがビーム隊を煽った。
パープルは日本刀でミノタウルスに切り掛かり、更にダメージを与えた。
やがてミノタウルスは進退窮まり宙に逃げた、「待ってたよ、『大剣!』」
「私もです『コスモソード!』」
既に弱っていた敵にピンクとブルーは満を持して必殺技を打ち込んだ。身体を突き刺し敵の背中側に出るブルー、そして頭から敵を叩き割ったピンク。勝敗は決した。
基地に戻った彼女たちを労った。かなり強かったがファントムほどではないことにホッとした。トドメを刺した啓子の手が痺れていたので、有希がそれをヒールしていた。
「春香がMVPだったな。よくやった」
以前から遙に対抗心を燃やす妹の頭を撫でた。
「遙は自分の力でごり押しすることが多いからね、作戦を考えてたんだ」
ここに来て春香は対抗心より実利を取るようになったようだ。
今回はゴーレムの手伝いは要らなかった。しかし更なる強敵なら共闘を要請するべきだ。彼も魔法少女もこの世界を守るために存在しているのだから。
「デートの日に空気を読まない敵だったな」
春香は顔を真っ赤にして小さく頷いた。
「あのタイミングで変身したからまだミニスカートのままなんだな」
「着替えるタイミング逃しちゃったからね」
下から覗こうかと思ったが、みんなも居たので自重した。
何もしてはいないが精神的に疲れはする。誰も傷ついて欲しくないから力が入ってしまうんだ。それでも受験を再開した以上やらねばならない。風呂後仮眠を一時間取り、滅多に飲まないエナドリを摂って気合を入れた。
「お兄ちゃん、今夜ははここに居ていい?」
断る理由がないので了承した。
「春香、珈琲入れてくれないか。もうすぐ夜食が来ると思うけど」
彼女が階段を降りて行く足音がした。
少し休憩を取り、子供の頃からの二人を思い出していた。いつでも一緒で、公園で虐めっ子に合うと俺が駆逐していた。春香も十分強いが虐める奴らは複数で来る。優性法を復活改良させ、不良と陽キャは殺処分にして欲しい気持ちだ。
風呂には小学三年生まで一緒に入っていた。だから五年生になって裸でウロウロしていたのには驚いた。もう年頃だから離れようという意味が風呂を別々にすることだ。だが少し成長した彼女は胸も大きくなっていて性的に困った。そしてシスコンになったのだ。
「お兄ちゃん、椅子で寝ちゃってるよ。疲れたならベッドで寝る?」
回想をしていたらうたた寝してしまった。
「まだまだ夜はこれからだ。春香こそ眠いなら部屋に戻っていいぞ」
「今夜はここに寝るから帰らないよ」
びっくりする必要は無かったのだが、積極的な妹に驚いた。
午前一時を回ったので寝る様春香に言った。だが俺が寝るまで寝ないという。
それで午前四時までの予定を三時に短縮した。もっと早くてもいいのだが遅れを取りもどす気持ちが強かった。それと妹と深夜まで一緒に居られる喜びもあった。
午前二時を過ぎ頭がぼーっとなって来た。それまでは理性で妹の存在を気にはしなかったのだが、前頭葉の血流が悪くなったのか煩悩に脳を支配された。
「春香寝てくれ、頼む。ちょっと脳がおかしくなって気になってきた」
すると寝間着の上を妹は脱いで、背中に寄りかかってきた。
根性で勉強を続けると、暖かい感触がして、妹が何も着てないことに気が付いた。
「警察来ちゃいますが。日本は法治国家なんですよ?」
「ここは魔界だから関係ないよ」
春香の誘惑に耐えることはもう不可能だった。
朝が来たので朝食まで勉強の続きをした。妹は満足そうに寝ていた。
抱いたのは彼女の罪悪感を軽くするためでもあった。最も子供ができたらそれが更に酷いことになってしまうだろうが。
「昨夜はお楽しみでしたね。朝食ですよ」
昨晩有希が夜食を届けなかったのは、春香とのことを知ってたからだった。
「お前授業中ずっと眠そうだったが、大丈夫なのか」
俊が簡潔に問いかけて来た。
「大丈夫ではない。タンパク質が足りなくなり、脳に血が回らなくなくなってる」
俊は呆れた表情をした。
「それよりお前と真琴はどうなのよ。たまに魔界の家に泊まってるんだろう?彼女、胸も大きくなって来てるし食べ頃だろう」
風呂で覗いたことがバレ、命に関わる一本背負いを喰らった。
「俺はそういうことはしない。真琴がその気になれば別だが」
良いことを聞いたので本人に直接問い合わせようと思った。
この日の放課後春香が迎えに来てくれた。説明が遅くなったが彼女たちが魔法少女なのはバレている。変身後と日常時、彼女たちの見た目が同じだからだ。早退して握手を求める生徒が殺到していたが、頭を下げて春香は断っていた。
「お待たせ春香、人気が凄かったが握手くらいいいんじゃないか」
「前は良かったんだけどね、最近は遙のお母さんが仕切ってるの。公式な握手会しか認めないって方針が出来たんだ」
「写真集を出したり、握手会も仕切るとか何考えてるんだあの婆さん(30代)は。魔法少女はアイドルなんかじゃないのに」
見た目はアイドルの比じゃないくらい可愛いのだが、独占欲があって商業化には反対だった。有名なのは仕方がないが、汚い男に媚びながら握手をして欲しく無かった。
「いいじゃない別に。それに書籍の印税はお兄ちゃんと俊さんに入るんだよ」
「毎週握手会をやって写真集も売ろう。なんなら売り歩いてもいい」
手の平を返すのは得意だった。
夕食の前に春香の勉強を見てあげたのだが、そもそも偏差値75超の彼女に必要なのか疑問だった。お茶の〇付属辺りも受かっていたが、何故か墨田女子を春香は選んだ。超進学校はゆとりがなくスパルタだ。それが嫌だったのかも知れない。
夕食時にみんなに俺の部屋に来ないかと誘った。食事以外でみんなが集まることが少ないからだ。有希をは毎日顔を出すが、啓子とかは遠慮してあまり来ない。
「やっほ、この部屋では久しぶり」
挨拶をしてから啓子の尻を触りセクハラした。驚いたようだったが文句は言われなかった。あまりにも親父的だが、距離を詰めるためなら手段は問わない。
特にやることは決めていなかったので、いつもの啓子と有希、ハルカ二人で雑談をしていた。俺はと言えば真琴を呼んでいた。俊抜きで話を聞きたかったからだ
「明義ハーレムじゃない!私は関係ないから帰るわ」
春香がやって来た途端に帰ると言う真琴を引き留めてくれた。
「最近は上手く行ってるわよ。大切にしてくれてるし頼もしくなったから」
本音を引き出していたのは遙だ。エースも二人の仲が気になっていたらしい。
「仲良しで良かったよ。でもダメだったらここにおいで」
遙の一言でコーラを拭いた。確かにハーレムだが限度があるんだよ。
「だいたいこの家にに来たら五人目よ?順番通りなら週に一日ちょっとしか会えないのよ。私はそういうのは無理だわ」
全くもってその通りだった。四股から更に進化することは許されない。
「真琴が一番熱を上げてたわよね、明義さんに。今はもういいの?」
啓子が禁句を語り掛けたので、二人を隣の部屋に放り込んだ。
知らなくても良いことは世の中に多い。知っているから俊はずっと苦しんで、真琴に対しても臆病だった。だがもう殻を破った、それでいいじゃないか。
姿が見えないと思ったら春香がサンドウィッチを作ってきてくれた。ちょっと前まで料理は苦手だったはずの妹に、有希は驚きを隠せなかった。
「夜食当番を日替わりにしますか?」
有希はそう春香に提案したが、有希の気持ちを考え遠慮した。
午後十一時に女子会+邪魔者一名の雑談会はお開きになり、真琴は自分の家に、他の女の子たちは自室に帰って言った。啓子を除いて。
座りながら肩の腱を伸ばすストレッチを彼女がしたので、すぐ傍に近づいてそれを見ていた。目を逸らして彼女は反対の肩を伸ばした。
「真琴はなんて言ってたんだ?その答えに興味がある」
伏し目がちに彼女は話してくれた。
「最初から同じだって、遙が電光石火で明義さんの恋人になった時点で諦めた、そう言ってたよ。春香はともかく、諦めなかった有希が普通じゃないんだよ」
「俺も有希と一緒だ。何があろうと啓子を諦めたくない」
驚いた顔をしたので彼女にに口づけした。
「嬉しいけど本当にこれでいいのか相変わらず悩んでいる。有希ほどぶっ飛んでないし、遙の様に達観はしていない。だから好きって言って」
「啓子がたまらなく好き。だから出て行かないでくれ」
嘘を付かない俺を知っている彼女は、小さく頷いて受け入れてくれた。
啓子が部屋に帰った後、春香が夜食を持って来てくれた。
「ちゃんと彼女を口説けたの?ねえ、凄く気になるんだけど」
勉強机から手を離し、親指をグッと突き上げた。
「魔界工務店の話しでは、あと一ヶ月で増築が終わるそうだ。啓子はまだ個室がないからそこで落ち着けるようになってもらう。もう逃げようと考えないと思う」
願望を込めた発言だった。今日の啓子の顔はかなり危なかった。だから彼女の願いに応え、言質は取れなかったが了承は取り付けた。だから離さない。
他の女の子の話をしてもうちの女子たちは嫌がらない。むしろ春香は安堵していた。ライバルではなく家族と言う考え方が浸透してきていた。これは本人の望みかは疑問だが、遙が目指したもので、春香を連れ去ってから始まったのだ。
「明日、アパートに行って母親を呼ぼう。いつまでも逃げてるのは嫌だ」
唐突な兄の言葉に春香は言葉を失った。
「私たちの全てを話すの?せめて全部してることは言わない方が...」
妹の意見を尊重して、悪戯止まりと言うことにした。それでも大きな前進だ。
母親の前で昨晩予習した通りに現状を伝えた。
「予想通りでした。だけどその先は絶対にダメよ」
やはり母は予想していた。
そしてその先まで行ってることも、見透かされているように思えてならなかった。知られてしまった方が俺は楽だった。だが春香の気持ちを尊重した。
万が一の場合と言って母はコンドームを置いていった。やはり母は知っている。
「何があっても私は見捨てないから、あなたたちも自制しなさいね」
小さい頃から兄妹をずっと見ていた母だ。普通ではないことはお見通しだったのだろう。こういうことは言ってどうにかなるものではない。常識にも逆らい、ダメだと言われている方へ進んでしまう。我らが母はやはり血が繋がっていた。
母が帰った後、小さなアパートで兄妹は二人きりになった。ここを解約していないのは、魔界暮らしがバレないようにするフェイクだ。だから家具も残っている。
ちょっと悪戯をした後で二人はベッドに入った。母の顔を立てて今晩はそれ以上はしなかった。春香もわきまえている様子で、疲れたのかすぐに寝息を立て始めた。
悩む啓子と、関係性に苦しむ春香。前に進むしかない明義は、実母に本当のことを打ち明けようとする。実際には本当のことは言えなかったが、母は概ね把握していた。一方啓子についても本気で攻略しようとしていた。




