【35】啓子の選択
ギクシャクして上手く行ってない誠二と啓子のカップル。まだ消えていない思いを抱え、旅の列車は進んでいった。
親睦を深めるための魔界鉄道の旅、遙への悪戯は途中で中断せざるを得なかった。殆ど寝れない夜を過ごし、翌朝悶々とした気持ちで食堂車に行った。そこには我が家の三人娘が朝食を摂っていた。
「明義おはよう。なんか寝れなかった感じ?」
君をもっと悪戯したかったとは言えず、小さく頷いた。
有希が最近エッチじゃなくなってきたので、春香に視線を向けた。
「親睦の旅で変なことしたら許しません」
妹の一言でこの旅は暗黒なものになってしまった。
次の停車駅は、魔界で三番目に大きい都市だった。ここで半日停車する。
スーツを着て会社のいく魔物たち。人間界と殆ど違いがわからなかった。高層ビルは殆ど無く、中世のゴシック調の建物が並び大変美しかった。
魔界には人間と魔物問わず攻撃して来る敵性魔物もいるが、殆どは穏やかだった。
「魔界動物園に行こうか。普通の人々と区別できないだろうけど」
みんなの賛同を得たのでバスで向かうことにした。
魔界パンダが大人気のようだったが、前に戦った魔物に似てるので警戒をした。
魔界うさぎは我々が狩りしているのと同種の様だった。貴重なたんぱく源だ。
「俊と誠二は別行動していいんだぞ。その方がいいだろう」
初々しいカップルなので二人にさせてあげたかった。
別行動になると有希が背に乗ってきたのでおんぶしてあげた。
二人のハルカが前を行き、有希と俺は彼女たちに続いた。
「この虎たぶん人間界のだよね」
どこからみても魔界要素がないのでたぶんそうだった。我々がここに暮らせるように、この虎も魔界暮らしが苦にならないのだろう。
「あ、トマトだ!」
遙の声がしたので見てみると、家で留守番している謎生物と同じ種が檻に入っていた。ただ犬や猫ではなく魔界狐と記されていた。
動物園を出た後も、他の二組とは別行動した。
「真琴ちゃんと俊さんはもう付き合いが長いけど、誠二さんと啓子ちゃんはどうなんだろう。いや、絶対上手く行って欲しいな」
我が妹はとてもやさしいので、新しいカップルの成功を祈っていた。
「喧嘩に勝った方のが拳が痛いんだよ、俺のためにも成功してもらわなきゃ困る」
頭の中でさらばメロンと言いながら形式上そう答えた。
「次はあれに乗ろう、魔界遊覧船」
とんでもなく大きな河川がこの街にはあり、多くの船が行き来していた。
有希がまだおんぶされていたので、遙が不満そうだった。なので有希を降ろし遙を背負った。春香の方を見るとそういうのは求めていない様子だった。
大きな河川だが橋が何本か架かっていた。魔界の技術力の高さがよくわかる。
「こんな素敵な街で仕事をしたいな。家は田舎でもいいけれど」
春香は未来を見据えていた。そしてそうなる可能性が高いのだ。
「河を背に写真を撮ろう、だから遙降りて」
なかなか降りないので、有希に剥がしてもらった。
春香を真ん中にして右に遙、左に有希の構図で写真を撮った。家族写真は家と庭ばかりなので増やしていきたいと思っていた。
「そろそろ電車に戻ろう。食事は中で摂ればいい」
電車に戻ると別れた二組も戻っていた。
そして男性と女性チームに別れ食事を摂ることにした。
我々は魔界ボルシチやピザとサラダ、そしてステーキを頼んだ。人間界との味の違いはもうまったくわからなかった。飲み物はグレープフルーツジュースにした。
俊と誠二に別れた後にどこに行ったか聞くと、一緒に美術館や遊園地に行ったという。せっかく別行動にしてあげたのに不器用な連中だった。
「まだ二人きりは慣れてないんだ。だから俊たちに来てもらった」
小声で誠二が耳打ちしてきた。
一年前までは一番女慣れしてると思われた誠二がピュアだった。俺はこの一年で大きく差を付けてしまったようだ。
「俊は真琴という獣を飼い慣らしたぞ。啓子はその点気が利くし楽だろう」
「そうか?啓子は相当神経質だぞ。手を繋いでても何か別のことを考えてて、どうリードしてあげたらいいのかわからないんだ」
俺と誠二の啓子への評価が別れた。あの子はプライドこそ高いが接しやすかった。
いや、そうでもないのかも知れない。やたらと明るくしたり性的にからかってきたりするが、自分の弱さを隠す素振りが少し感じられた。
彼氏の前で申し訳ないが、啓子の全裸姿を思い出していた。うちの子たち三人より、ずっと恥ずかしそうにしていたのを思い出した。
「啓子は普通だよ。うちの三人がちょっとおかしいんだ...」
独り言のように呟いた。
「真琴が一番まともだな。気は強いが根は優しいからな」
合ってはいるんだが、ただのツンデレだろうと俺と誠二は思った。
「よっ、上手くやってるじゃん。明義ハーレム」
食事を終えて、社内をうろうろしていたら啓子に声を掛けられた。
「お陰様で順調に進んでいるぞ。四人みんなが仲良いんだ」
お陰様では余計だった。啓子を振ったせいで上手く行ってると思われてしまう。
「まあいいや、誠二さんが待ってるから部屋に戻るね」
有希たちによろしくという言葉も添えて、啓子は立ち去った。
夕食が終わって、みんな自分の部屋に帰った。俊は俺の真似をして、シャワー中の真琴の下着を盗もうとしたら、死ぬほど怒られて二時間説教されたらしい。誠二はと言えば会話が続かないと言って、度々こちらの部屋に遊びに来ていた。
「あ、いたいた。部屋に帰ろうよ」
流石に啓子が誠二を連れ帰った。
勘だが明らかに啓子は緊張していた。団体旅行とは言え誠二とは初めての旅行だし、まだぎりぎり中学生の彼女には難しいのかもしれない。
ガタガタと小さな物音がして起こされた。時計を見ると深夜一時だった。我が家の三人は口を開けて寝ていたので、部屋を出て通路を見渡すと啓子だけ立っていた。
「何かあったのか?それとも腹減った?」
全然そうは見えなかったが、前振りとしてボケてみた。
「誠二さんがね、胸を触ろうとしてきたの。そしたら逃げちゃった」
これは良くない。俺が触ると言ったら絶対に許しただろう。二人の絆がまだまだ深まっていないことを感じた。
「ダメだって!この現場を見られたらまた誠二が入院する」
両手を引っ張られ特大メロンの感触があった。ずっと触れたかったものなので、言葉とは反対に手をどけなかった。
人影らしきものがあったので確認すると誠二だった。当然既に手は放していた。
食堂車に行くと誰か起きてきて珈琲を淹れてくれた。
三人でいることが正しいかどうかはわからなかったが、二人きりはまずいと思い俺も同席した。気まずそうな二人にどう声を掛けるか悩んだので、黙って珈琲飲んだ。
「逃げてごめん誠二さん、まだ心の準備ができてなくて」
「いや俺が悪い。焦って手を出そうとしたんだから最低だ」
誠二は髪の毛を掻きむしっていた。そうとう焦りがあるようだった。
結局のところ啓子はまだ俺を諦めていなかった。競争率の低い俊に乗り換えたという真琴とは覚悟が違った。いや、俺は既に十分過ぎるくらいの啓子からのラブコールを受けていた。誠二に逃げた彼女をこのままにしていいはずが無かった。
「例えばの話しだが、五人家族は可能だろうか」
俺が出て行ったところで起きてしまった三人に聞いた。
「啓子ですか?彼女が望めば絶対に明義さんを裏切ることはないと思いますが」
徒手格闘部隊のエース、有希には読まれていた。いや、誰でも分かるか。
ただの一般論として聞いただけと言って、話を打ち切った。すると有希が同じベッドに入って来たが、特大メロンを触ったこの手では彼女に触れたくなかった。キスだけ数回して彼女を軽く抱きしめて寝てもらった。
結局のところ、ハーレム拡大は不可能なので誠二に頑張ってもらうしかなかった。わざわざボロボロになりながら得た彼女を手放すのは不本意だろう。
「お前は今の彼女たちを守ることに注力しろ。誠二の件は俺がサポートする」
昨日あったことをすべて俊に話すと、彼はそう言った。
遙は啓子と同じ一対一派だった。いや有希や春香もそうだ。成り行き上大家族になったが望んでこうなったんじゃない、それは俺も同じだった。
この日は一日車中だ。そして明日目的地に到着して一泊して帰る。この二日間が色々な意味で正念場だった。誠二と話し合うかどうか悩んだが、結局自分の問題でしかない。むしろ啓子の本音を引き出す方が先だった。
「ごめんね昨晩は、気が動転しててあんなことしちゃったよ。だから忘れて」
「嘘付くな。前に裸になった時でも俺には触らせただろう。それくらい分かる」
図星だったようで、啓子は言葉を探していた。だが次の言葉は無かった。
食堂車で二人きりで話していることをみんなは見ただろう。もちろん誠二も。啓子を不幸にはしたくない、だから彼女と向き合って話をしなくちゃいけないんだ。
「空いてる席があるからそこで車窓を眺めながら話そう」
啓子を連れて車内を歩き、窓側が空いている席を探しそこに座った。
車内販売に魔物の女の子がやってきたので、魔界コーラとポテチを頼んだ。彼女の顔はいつもよりも色っぽかった。もともとメンバー最年長だがそれ以上に見えた。
「誠二と付き合うと言ったのは啓子だ。だからそれを一応喜んだフリをしたが、実はもの凄く不愉快だった。意味は分かるだろう」
はいと小さな声で彼女は返事をし、少し嬉しそうに見えた。
「答えちゃんと出すから、だから待っててね」
この言葉には異論も出せないので俺は黙っていた。
真琴たちがすれ違ったが、あの口やかましい彼女まで何も言わなかった。
「魔界で暮せば魔法少女たちは高級公務員になれる。春香はそれを考えているぞ」
「春香って学年ぶっちぎりの一位だよ。思い切ったね」
「俺たちはあまりにも危ない関係だから、人間界には戻れないと思っている。だから最善の選択だと思っているよ」
啓子はそうだねと小さな声で言った。
我々家族から見たら啓子は平凡過ぎる。だが躊躇しつつ考えてくれてる。のどかな田園風景と遠くの山々を見ながら二人は黙っていた。
「遙、お前は将来の進路を考えてるか?お母さんに聞いてると思うけど」
「明義が望む通りにするよ。自分の意志はないんだよ」
無責任で何も考えていないようだが、はっきりとした強い意志を感じた。
「明義こそどうするのさ。どっちでも生きれる感じでしょう」
それは大学に入ってから考えると逃げた。でもこっちの都市に魅力を感じていた。
「有希は働かなくていいからね。俺のお嫁さんお願いします」
籍が入っているのに何を言っているのか彼女にはわからなかった。
「専業主婦ですね、了解しました。夜のお供も致します」
「三人なのでその辺は適度でお願いします」
当たり前だが嫌な顔をされ、頭を噛みつかれた。
真琴と俊が車窓を眺めていた。その横に座ると彼女は露骨に嫌な顔をした。
「真琴が昔は俺を好きだったって嘘だろう。いつも邪険にされてる」
すると珍しく俊が本当だと口を挟んだ。
ここにいちゃいけない気がして慌てて席を立った。冗談でも言っちゃいけないことを話題にしたことを反省した。だが俊は動じない、誠二とは違う。
「あんたはあたしと違って一途なのよ。だからよく考えて、自分の気持ちに正直に動いてみなさい。ただ明義さんのところは異常だけどね。。。」
真琴は啓子に助け舟を出していた。啓子はまだ分からないと答えた。
「誠二さんと付き合ってるんだから彼の言うことを聞きたい。でも、いきなり触ろうとしたからびっくりして逃げちゃった」
「明義さんには触らせてるじゃない。誰かに聞いた訳じゃなく見たわよ」
真琴が誠二はその時まだいなかったと聞いて啓子はホッとした。
啓子と話をしていたのは、遙がいたから、すぐに俊に恋愛の矛先を変えた自分への戒めでもあった。ただ彼女みたいだと苦労するなとは思った。
「春香ちゃん、マイシスター、シャワー覗いていい?」
遙への悪戯は中断させられ、巨大メロンに触れて性欲が臨界点を越えていた。
「いい訳ないでしょ!持参した遙のパンツでも食べてなさい」
妹の言う通りにした。
「私にしますか?いつ何時でも断りませんよ」
有希がそう言ってくれたので、覗こうとしたら部屋に啓子がやってきた。
「取り込み中なので後にしてくれ。大事な会議があるんだ」
シャワー室からは水の音がしている。明らかな不審者だった。
「こっちは楽しそうだね色々な意味で」
ちゃんと相手をしてあげないといけない雰囲気だった。涙を拭って覗きを諦め、啓子の話を聞いてあげることにした。
食堂車でレモネードを買ってきて、啓子と話をした。
誠二や俺のこととまったく関係ない話ばかりだったので、有希の方へ戻ろうとしたが、シャワー音が消え有希は出てきてしまった。苦渋の表情を浮かべていたら啓子が言った、「邪魔しちゃったから私のを見ていいよ」
四人目の彼女の受け入れ準備が出来ている我が家の誰も反対しなかった。
啓子は後ろ向きで下着を脱いでいき、胸を右手で隠しながらシャワー室に入った。最後まで見届けなければ失礼なので、シャワーを浴びてからボディソープで身体を洗っている彼女を見た。しっかりと全裸になっている訳だから、手で隠し切れるはずもなく大きな乳房が見えた。
啓子は視線を感じて、シャワーで泡を流す時はまったく隠さなかった。上から下まで見たことがある裸体を晒し、シャワー室を彼女は出た。
流石に更衣室も覗き続けていたら、頭を軽く小突かれた。
明義には身体を見せることに躊躇いがない啓子。初めてはっきりとした意志表示を彼にした。




