③遙と春香
遙は魔法少女として覚醒した。しかし、妹の春香と複雑な関係になってしまう近親愛?ストーリー
勝つだろうとは思って、お子様用シャンパンとお菓子の用意はできていた。それにしてもレッド・ペガススの攻撃力は想像のはるか上を行っていた。
仲間たちはその遙の覚醒に対しておめでとうと抱きついていた。
「あ、あのご褒美をいただけますか明義さん」
みんなの期待が凄いので、遙の唇にキスをした。遙はどうか知らないが、俺にとっては初めてのキスだった。割れんばかりの歓声が聞こえてきた。
「せがまれたからじゃないからね?ちゃんと近々しようと思ってたんだ」
「お前変わったな。恋は人を変えるって本当だったんだな」
「そんなこと当たり前だろう。あんなに健気な彼女の期待を裏切れるもんか」
自分でも変わったと思う。遙以前にこういうことがあっても、妹の春香がいるから無理ですと無下に断っていただろう。
「好きなんだ!わかれ」そういうと俊はわかったと言った。
「これやるよ、そう言ってポルックスのパンツを俊に渡した」
これに何の意味がと彼は聞いてきたが、恋をしたらこれがとてつもない宝物になると説明した。分かったのかどうか知らないが彼はそれをポケットに仕舞った。
下着フェチが恋のことを語っていいのかは知らない。だけど遙の下着を洗う時が人生で最も幸せな時間だった。
「あの、女子の下着っておりものとかあるので嫌じゃないですか」
また所持者が現れたが今度は堂々としていた、「まったく気にならないよ。愛を込めてるからむしろ嬉しいんだ」
そういうと彼女は手を組んできたので柔らかいものが当たった。
気になって洗濯の手が止まりかけたが、根性で使命を果たした。
「俺まだ言ってなかった気がするので言うよ。遙が好きだ」彼女の顔がゆでだこみたいに赤くなったので、このタイミングでも良かったようだ。
梅雨が過ぎ本格的な夏の雲が空を覆っていた。前から考えていた海岸トレーニングを実行する時が来たようだ、「遙、休みの日に海に行こうよ。水着とか買う?」
一緒に来てくれたら買うと言うので二人でデパートに行った。
彼女が選んだのは自分のカラーに合わせた赤で、セパレートながらフリルがたくさん付いていた。無駄に長く試着室で見た後でこれがいいんじゃないかと言った。
「実はみんなの合宿を兼ねて行きたいと思っていたんだけど、その前に遙と二人だけで行きたいな」そう言うと彼女はすぐにOKしてくれた。
都民プールで人は多かったが、コースがたくさんあって良いプールだった。
春香も連れて来たかったなと思ったがそれは未練だ。もう妹から離れた俺には必要なかった。今は遙だけを見ていたいと切に思っていた。
「どうでもいいけど、男どもの視線が遙に集中しているような気がする」
「気のせいですよ。それともそんなに気になりますか?」
気になると即答した、「迷惑かも知れないけど遙を独占したいんだ。重すぎる気持ちだったら自重するから言ってくれ」
彼女は照れて笑ってくれた。そして構わないですよと言った。
どんくさい遙は泳げないので手を取ってバタ足の練習をした。フリルの水着が可愛かったので10kmくらいこれを続けたかった。
比較的深いところに立つと、身長差で彼女の肩が隠れた。許可を取らずに彼女の身体を抱え浅いところに戻したが、いやらしい気持ちが高まってしまった。
「ごめん、今の下心。遙の身体を触りたかった」そういうと自然に彼女は水着姿で抱きついてきた。周りの視線は俺に集まり殺気をあちこちから受けた。
「煩悩で仕事も勉強も身に入らないんだ。春香どうすればいい」
仕方なく春香はスカートを脱いでパンツを見せてくれた。もっと見たい?と言われたが流石に断った。我が妹ながらちょろかった。
「遙まだ中二で14才ってこと考えてね。節度ある交際しなきゃだめだよ」
「それはきっと大丈夫だ。まだキス一回しかしてないから」
それにしてもやはり14才か。都条例に引っ掛かるから注意しないと。
「お兄ちゃんは来年18才になるからいいけど、遙はまだまだ先だよ。我慢できそうかどうかここで白状しなさい」正直にキツいと春香に伝えた。
「春香のことを愛していても、所詮妹なので手は出せない。だけど遙はそうじゃないから問題なんだ。だけど我慢してみせるよ、何年でも」
そういうと春香は安心したみたいで珍しく俺に笑顔を見せた。
「来週海で合宿をします。各自水着を用意してください」
みんな大丈夫と言ってくれたが、俊も参加するというのは意外だった。
「俺だってビーチでみんなの水着見たいんだぞ、意外か?」
「いや、俊の性格を誤解してただけだ。もっとお堅い人間かと思ってたんだ」
当日は妹の春香もどうしても行きたいと行うので参加させた。
「あれ山根さんじゃない、山根春香」
当たり前のことをイエローが言うので俺の妹だと念を押しておいた。
「彼女は勧誘リスト1位なのよ。なんで早く言わないの」
「え、今は勧誘しないんじゃなかったの?」
遙の言うことと食い違っていたので俺は戸惑った、「誰がそんなこと言ったのよ?この間の戦闘みたでしょう。新メンバーは急務なの」
ピンクの言葉で遙が嘘を付いていたことがわかった。
新しい子に俺が目移りするのが嫌だったのか、それとも異常なシスコンがばれてしまっていたのかも。だからこの件で遙に問い詰めるのはやめた。
白いスク水みたいな水着で春香ははしゃいでいた。頻繁に呼ばれておんぶをさせられたので、近親愛の疑いが掛けられた。
「仲いいねえ、を超えて度を越してるんだけどどういう兄妹関係なの」
ブルーに聞かれたが今日の春香の甘えっっぷりは分からないと正直に言った。普段は罵倒されて笑顔も見せてくれない関係だと。
「片思いシスコン?それは嘘ですよ。学校では明義さんの自慢ばかりで悪いことなんて一言も言ってない。恥ずかしいから家では隠してたんじゃないのかな」
遙の言葉に信じられない気持ちでいっぱいだった。が、今日の春香の喜ぶさまには納得せざるを得ない部分があった。両想いシスコンなんて洒落にならんぞ春香。
「お前に女難の相がでているぞ。しかも危険な」
風呂での俊の言葉に少し納得せざるを得なかった。遙が春香に警戒してすごくピリピリしていて、春香は俺への好意をまったく隠そうとしていなかった。
「お前がしっかりしろよ。遙ちゃんってもう決まっているんだろ」
そう言われ当たり前だと俊に答えた。
春香を探して部屋を回っていたら彼女から俺の手を引っ張ってきた。
宿の一番上の階段で二人は止まった、「お兄ちゃんは春香が結婚するまで一緒にいなさい。それまでは恋愛禁止」
「お前が結婚したら俺は天涯孤独か。それよりいつからなんだ」
「お兄ちゃんが春香を好きになるより前だよ。どこへ行くのも一緒だったよね」
嬉し過ぎて涙が出てくる、以前なら。だがもう無理だ遙がいる。
「じゃあ春香は結婚しない。それならずっと一緒でしょ」
俺は何も言わずにこの場を立ち去った。
「うちの妹の勧誘はやめて他を当たってくれ」
魔法少女たちにいうと驚きが走り理由を聞かれた。
「我が家の問題だから言えない。でも彼女だけはやめてくれ、お願いだ」
同じ家に住んでいれば妹のパンツが見えることはあるだろう。だけど今思えば見えすぎた。風呂上がりに裸でうろうろするしてることもあったが、それすら計算だったんだ。俺の手は怒りとやるせなさで震えていた。
「なんで春香はああなってしまったんだと思う」
恥ずかしながら他に聞く相手がないので遙に尋ねた。
「お兄ちゃんがいないから私も欲しいよ。だから春香ちゃんの気持ちはわかるんだ。だからと言って恋敵のことをそのまま許す訳にはいかないかな」
「俺みたいなのに拘らなくても春香ならいい男いくらでもできるだろう」
「明義さん自分の顔をちゃんと鏡で見ていますか。どこにでも居ませんよ」
確かに俺はいい顔だ。だが鏡の前でうっとりするナルシサスじゃない。内面で勝負したいと思い今は勉強も頑張っているんだ。
昨日は完全にバカンスしてしまったので、今日はビーチフラッグ等のトレーニングをしてもらった。しかしその度に春香が旗を取ってきて俺に抱きついた。その様を見て流石にみんなは心配した。俺の顔は複雑に曇っていたが、春香はもう愛情を隠す気がなかったからだ。急に雨が降ってきたのでみんなでビーチパラソルの中に隠れた。俺は右に遙を座らせたが、左は春香が取ってしまった。
黄色の子供水着を着たイエローがたまりかねて春香に聞いた。
「あんたね、お兄さんが恋人といるのにその態度はなんなのよ。おかしいを通り越してもう気持ち悪いわよ」
「あはは、だってお兄ちゃんはずっと私が好きなんだよ。毎日私のパンツ見て喜んでたんだから」攻撃に出た春香は無敵だった。片思いシスコンがバラされるのも時間の問題だったし、俺が折れればいいだけだ。
「うちの兄妹がおかしいんだ。春香のせいじゃない。だからみんなとは離れるよ」
去って行こうとした俺の前に遙が両手を広げて立ち塞がった。
「相手の未来を潰すようなことするなんて愛じゃない。ただの略取に明義さんは屈しちゃダメだよ。だから春香ちゃん勝負しよう」
負け続きだったビーチフラッグ勝負なんて無茶に決まってる。やめさせようとしたが遙は聞かなかった。
春香は余裕でその勝負を受けた。
「雨が降って砂浜はいい具合に固まった。だからきっとこの作戦で勝てる」遙は持って来た運動靴に履き替えた。意に返さない春香はそのまま裸足だった。
湿った砂浜に靴はめり込まなかった。それなら運動靴のが強い、だが自力に勝る春香が迫ったところでゴール。僅差で遙が勝利を収めた。
嬉しそうに私に抱きつく遙を嫉妬の目で春香が眺めていた。
「そろそろ帰る支度しないと電車に間に合わないぞ」
俊がそう言って、慌ててみんな帰り支度をした。
「お兄ちゃん、シャワー一緒に浴びよう。全部見ていいよ」春香にそう言われたが断った。遙がいいんだとはっきりと言えた。
帰りの電車では泣きはらした春香の横に座った。遙はすぐ横で監視していた。
醜態を晒してしまったのに、付いて来てくれた遙が愛おしかった。冷静になって気持ち悪いと思い、俺の元から離れてしまっても文句は言えなかった。だけど今は彼女を信じよう。
俊はいつの間にかイエローと隣の席に座っていた。けっこう手が早いのかもしれない。あぶれたブルーとピンクは同席して前の我々の方を見ていた。
人生に正解も間違いもないけれど、春香の気持ちにもっと早く気が付くべきだったと思った。サインはたくさんあった。家に帰ったら正面から向き合って話し合うつもりだ。そして彼女にとって最善の生き方を提案してあげたい。
「俊はさ、最初からイエローのことを狙っていたんだぞ」
貴様何をと言われたところで元の席に戻った。少しは他人の波乱も見たかった。
東京に帰ると春香をおんぶして帰宅することにした。
「家族だしちゃんと連れ帰るね」そう遙に言ってバイバイまたねと言った。
「時給は東京都の最低賃金だよ」小屋に行くとブルーがそう言った。高校生のバイトだから仕方ないかと思い受け入れた。
「ここはさ、よく分からない所でしょ。場所も地図に載ってない」だから普通の人は本当は出入りしちゃいけないんだ。だけど明義さんは肝が据わってるし、変態だけど筋を通すところがいいから来ていいんだ」
「妹が好きだったのは事実だよ。だけどもう違うから信頼取り戻したい」
「騙されてそう仕向けられてたんなら仕方ないよ。あの子は血のつながり無視して明義さんのことが好きみたいだね。爆弾抱えてるようなものだから気をつけて」
「アドバイスありがとね。今まで大好きだった妹を見捨てるのは無理だから、少しづつ普通の兄妹になれるように頑張るよ」
敢えて遙を外に待たせておいた。この子を俺の問題にこれ以上関わらせたくなかった。だから背一杯の愛情で手を繋いで表の世界に出て行った。
春香との兄妹関係は一応の決着をみた。まだまだ乗り越えなくてはいけない壁があるようだが。