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【26】決戦前夜

行方不明の遙と加速してゆく異常気象。地球存亡の戦いに出ようとする魔法少女たち。しかし遙はまだ帰ってきていなかった。

俊の判断で魔法少女たちは黒い太陽には手出しをしないことになった。そもそも宇宙規模の事象に魔法少女たちはきっと対応していない。危険を避けるための措置だが、すべて魔法少女頼みの現状に無理があった。そして遙は行方不明だった。


「24時間暗くなりましたね。人間界と魔界両方に影響がありそうです」

有希は冷静に分析していたがその顔は曇っていた。

「魔界図書館に遙と行ったんだがこんな異常なことは記されていなかった。今はブラック・サンの動きを見て、地上に与える影響を見よう」

この事態を軽んじていた俺は適当に返事をした。


トマトとカトラはわりと冷静だった。ただし遙の不在には多少動揺していた。

遙はもう一週間以上学校には行って来ていないと言う。家に戻り親に軟禁されているのかも知れなかった。そもそも彼女の両親ついて何も知らなかった。名門女子校に入学出来たのだから、セレブな家だと勝手に思い込んでいたが違うのかも知れなかった。

「春香に頼みがあるんだが、実家に連絡して内田遙のことを調べる様頼んで欲しい。我が実家ならそれくらいの金は問題ないだろう」

「お兄ちゃんの気持ちはどうなの?それが分からないと頼めない」

妹の言うことが正しいので深呼吸して答えた。


「今後遙以上愛した女性は出てこない、絶対に。だけど疲弊した彼女をここに繋ぎ止めることが無理だと判断して出て行ける状況を作った。家庭を壊して申し訳ないが、俺に取っては遙が最重要なんだ」

分かっていたが本音を聞けて春香は嬉しかった。


「高等部受験の偏差値は67だな墨田女子、わりと名門だな」

「静学館の77には及びませんが、女子校としてはかなり高い方です」

有希がそう言った。

中高一貫は中学校から入学するのが好ましい。特に静学館は高校過程を中学生のうちにすべてやってしまうので外部入学生には不利だ。

遙は学力でも磨けば賢いはずだ。でも親が居ない生活は不安だったのだろう。


「太陽が黒くなったので洗濯物がなかなか乾かない」

そう春香が言うので魔界の街に行き洗濯乾燥機を購入してきた。

太陽が黒いことで気温は一気に下がった。冬がない魔界も厳寒になり、静かな雪が我が家にも降り注いで

いた。カトラとトマトは部屋で飼うことにした。

「作物の不作などで物価が高騰しないだろうか。今まで通りに魔法少女にはただで譲ってくれるかどうかが心配だ」


まずは今の家庭を安定させることに力を入れた。いつ遙が帰ってきてもいいように、万全にして置きたかった。その可能性はまったくわからないが。


有希は雪だるまを庭で作っていた、有希だけに。

「有希はわりと慣れてきたのか?この異常事態に」

そう言って彼女の手に触れると震えていた。冷たさだけではなく怯えている様子だった。春香に頼み身体が温めるよう部屋の温度を高くしてもらった。


我々ではどうにもならない宇宙規模の自然災害が有希を苦しめていた。神殿に行き改めてこの異常事態が過去に起こったことがないか調べた。

「真琴、この壁画みたいなのは太陽だと思うんだ。黒く染めて描いてある」

「随分たくさんの生き物が死んだようね。魔界にも大きな影響があるのよ」

この事態で一番冷静そうな真琴を連れて来た。だが俊にバレたら殺される。

「結局、生物が死に絶える訳じゃないんだからサバイバルに備えるべきね」

真琴の意見に同意だった。


我々の家の前には毎朝少量の肉やパンが置かれていた。市場に出回る食料が極めて少ないので、魔法少女を崇拝する魔界民からの差し入れだった。人間界でも物価の高騰は天井知らずで未曽有の大混乱が起こっていた。

「期待されているんだ春香と有希たちは、頑張らないとだな」

遙の名前を出せないことがやるせなく悲しかった。


勉強を中断して食料のため狩りに出る時間が増えていた。我々生き物は食料がないと死んでしまう、そんな当たり前のことに直面していた。幸運なことに電気は生きていた。周りの家は暗くなっていたが、魔界民の有志たちが発電所から我が家には配電してくれた。

ここまで期待されているのは何故だろう。魔法少女が魔界の危機を救ったことがあるのだろうか。魔界書を読み漁り過去の出来事を調べた。


「何かわかったか明義、こちらも真琴と調べているがまだだ」

久しぶりに俊が訪ねてきた。学校はとっくに休校になっていて、自分の生活を守る戦いが始まっていた。俊の家も人間界の物不足の影響を受け、魔界で狩りに来ていた。


『紅き衣を身に纏いし少女、大災に立ち向かい見事にこれを打ち負かす』


既にヒントというかわりと具体的な一文を魔界書から見つけていたが、遙にすべてを託すことはしたくなかったので誰にも見せなかった。この一文には黒い太陽と戦う魔法少女が描かれていた。

「ふぅん、赤い子が鍵なのですね」

普段から静かに現れる有希に見られてしまった。

しかし有希は紅い魔法少女を青に描き替えていまった。

「そんな危険なことは絶対に許さない」

有希の頬を可能な限り左右に引っ張り牽制した。誰かが犠牲になってもそれは負けだ、みんなが生き残ることが大事なんだ。


啓子の家が停電したので我が家に引っ越してもらった。

「遙っちの部屋でいいの?ヒロイン昇格かな私」

その言葉は無視したが、遙が勝手に出て行ったので好きに使っていいと言った。

「それから啓子にお願いしたいことがある。年長魔法少女として、みんなの勝手な暴走を止めて欲しい。特に有希あたり」

思い辺りがあまりないのか少し考えていたが、彼女は了解してくれた。


狩ってきた魔界うさぎを外で焼いてると、啓子がやってきた。わりと料理は得意だから任せて欲しいと。有希も得意だが今は不安に怯えているので彼女に任せた。

レタスを収穫していた春香には掃除と洗濯を担当してもらっていた。上手く機能していた我が家だが、大黒柱の遙が居ないことにみんなが戸惑っていた。仮の家長の俺はなるべく余計なことは喋らず、やるべきことだけしていた。

「魔法少女にできることがあるなら責務を全うしたいです」

カトラを抱いた有希が座りながらそう言ってきた。

「まずは自分たちの生活を守ることが第一だ。それに魔法少女たちに手が追える相手じゃないだろう(遙を除いて)」

そういうと有希は静かになった。


「暑いな今日は、何ごとだ?」

そういうと春香が太陽の視直径が僅かながら大きくなってると言った。

本当ならただちに地球の危機だった。地球の生命体だけではなくずっと大きすぎる問題だった。それでもどうすりゃいいんだって話だ。あと四十五億年生きるはずだった地球がずっと早く消滅するだけだ。きっと宇宙はなんともない。

「明義、魔法少女たちは月面で訓練を続けているぞ、知らないのはお前だけだ。ただ当然ながらそこに遙の姿はない」

俊から衝撃の知らせがあった。

彼女たちが月面で活動できることに驚いたが、太陽の表面温度は約6000℃だ。意味がある訓練には思えなかった。そう言いながらも遙不在が不安だった。


「仮にブラック・サンを魔物が引き起こしたものだと仮定しても、太陽に突っ込んで技を放っても意味がないだろう。敵が大きすぎる」

「今までの魔物の殆どには急所があった。それを探し、全員の技を打ち込んだらどうなるだろうな。俺にはわからんが」

俊だってわかってないんじゃないか。そもそも火力最大の遙が居ない。


「ダメだって言ってるだろう!」

春香と有希が変身しているのを見て、スーツを引っ張って二人を止めた。

「冬から真夏になった気候、明義さんだって危機は分かってるはずです」

「お兄ちゃん、やれることだけはやってみたいんだよ、私たち」

俊は容認してるようだし折れるしかなかった。


「遙が戻るまで待て。呼んで来るけど付いてくるな」

目的地までは半日もあれば着く。夜中になるが銃も持っているし大丈夫だ。それよりも真冬なのに暑さで汗が止まらなかった。

魔界の池で一休みしたが、魚の腐臭が酷かった。

(もう一刻の猶予もないんだな)


目的地の魔界樹に着くと、その樹は光り輝いていた。宿泊者がいるのだ。樹の上を見上げると魔女の婆さんがいた。

「婆さん久しぶり。お孫さんを連れていくぞ」

彼女は何も言わずににっこりとした。


魔界の下にある階段。前は樹の幹にテントを張って泊まったが、本当の宿はこっちだった。階段を降りて行くと光っている部屋があった。

「遙帰るぞ。みんなが待ってる」

「もうちょっと待って支度するから」

家出の荷物を纏めるのを俺は手伝った。


遙の背に乗れば家まで数分だ、話したいことはたくさんあったが黙っていた。彼女は家に戻るときちんと有希と春香に深々とお辞儀をして謝罪をした。そして出発、そう思ったところで彼女が待ったを掛けた。

「その変身じゃ燃えちゃうよ、こうだよ」

遙はレッド・ペガススではなくコスモ・レッドに変身した。

その光り輝く赤さは、最終形態の魔法少女の姿だった。レッドの眩い美しさに目を奪われながら、春香と有希もそれぞれパープル・コスモとコスモ・ブルーに変身した。


「あんたたちなんなの、そんな変身方法聞いてないんだけど」

そういうイエローたちだったが、ポルックス・イエローとピンク・プレアデスもコスモ・イエローとコスモ・ピンクに変身した。


「そうえいばレッド、あなたは今まで」

ブルーが言い掛けたところでパープルが制止した。

「これ、最終決戦?いいね、燃えちゃうね」

本当に燃えないで下さいねとブルーに釘を刺されるピンクだった。


「お前が彼女たちの出撃を賛成するとは思わなかったな」

「真琴が行くのをお前は許した。それに俺がダメだと言ってもみんな行ったよ」

俊はわりと楽しそうだった。勝利を確信しているようだ。

俺はと言うと、婆さんがあの樹に居ることを確認するまでは懐疑的だった。遙の祖母であろうあの老人が居たから出撃を認めた。あの魔界書にあった赤い魔法少女は間違いなく彼女だった。今より若過ぎたがそれは何故かわかった。


「疲れた。休もうよ、ここで」

レッドは水星の裏側で休むこと提案したのでみんな休憩することにした。

そして遙は持ってきたテントを張った。五人には明らかに小さすぎたが、そこになんとかみんな収まり、決戦前の休息を取った。



















コスモ・レッドに変身した遙。最終決戦の主役が加わり魔法少女たちは太陽を目指した。

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