⑲激突魔法少女
有希と明義は二人暮らしをしていた。しかし、春香は許せない気持ちでいっぱいだった。そして遂に有希と春香は死闘をする。その時遙は何を考えていたのか。
有希と暮らし始めて二週間が経った。食事の世話は彼女にしてもらえるので、勉強に集中出来るようになっていた。たまに部屋に来て本を読んでいるが、大人しい猫を飼ってる感じで邪魔は一切しなかった。猫じゃらしを買い有希の顔の前で振るとじゃれて遊んでくれた。
「有希は学校でもこんなに大人しいのか?」
「わりとこんな感じですが、つまらないですか?」
有希の質問に首を振った。とても可愛いからずっと一緒に居たいと答えた。
魔界に雨が降っていた。有希と二人で窓からそれを眺めていた。そっと肩を抱き寄せると寄りかかって来てじっとしていた。
その翌日、巨大うさぎのぬいぐみが街を襲い魔法少女たちは出撃した。しかし、レッド・ペガススだけは来ていなかった。エースに昇格したブルー・オリオンは、余裕で戦況を見守っていた。
ブルーが一気にかたを付けようと刀を構えると、その前にパープル・スターが技を繰り出した、『リアル・ラブ!』
巨大な光線がうさぎを襲い黒焦げになってやがて消滅した。パープルは全身に紫色のオーラを纏い、以前よりも格段にパワーアップしていた。
「戻りました、明義さん」
変身したままの姿で有希が帰ってきた。彼女は気分で青と白どちらかのスク水風スーツを着るのだが、今日は白だった。
「頑張ったね、そこにあるオレンジジュース飲んでいいよ」
「ありがとうございます。ですが今日は春香さんの独壇場でした」
それはさっき啓子から聞いていた。もともと春香には素質があった。
「みんながどんどん強くなっていて嬉しいよ。だけど春香と遙とだけは絶対に喧嘩しないで欲しい。あの二人は別格だ」
「春香さんは分かりますが遙さんもですか?彼女は今日来てもいませんでした。それともやはり遙さんにだけは特別な気持ちがあるからですか」
有希が怪我したら困るから、それだけだと答えた。
初めて遙に会った頃は酷かった。何度も落ちて白いパンツを見せていた。だけどすぐに魔法少女たちのセンターポジションを獲得していた。周りの子たちとは何かが大きく違うと感じていた。
「たあああ!」遙は変身して魔界樹と戦っていた。勝ち目のない戦いだから全力でやれた。魔界樹も幹に急所を作り、その目印に向かって攻撃するよう彼女を応援していた。昨日から降り続いてる雨でずぶ濡れだった。
「魔界樹さんありがとうね。もうすぐ必殺技が完成するよ」
そういうと魔界樹も光って答えた。
「遙またこんなに濡れて。特訓もいいですが身体こわしちゃいますよ」
春香がそういうと笑顔で大丈夫と答えた。
「俊、みんながレベルアップするのはいいことなんだけど、バラバラなんだよね彼女たち。俺が原因だから申し訳なく思ってるけど」
「理由はどうあれ強くなるのはいいことだ。後はお前が答えをて出してやれ」
シンプルだが簡潔に俊はそう言った。
『明義さん居る?暇なら家まで来て欲しいな ~啓子~』
「有希、ちょっと行ってくる。午後九時までには戻るから」
受験生だから暇じゃないんだがとぶつぶつ言いながら彼女の家に向かった。
家に着くと啓子の部屋に通された。ちょっと待っててという彼女を待った。
「これ似合うかな」
ピンクのキャミに白いパンツ。似合うけどそうじゃない。
「用事があるっていうから来たの。エロい格好見に来た訳じゃない」
啓子は不満そうに変身して着替えたが、これだって有希のと同じスク水タイプなので十分性的に興奮する。胸が大き過ぎなんだ啓子は。
「また見つけたんだよこの樹」
「冗談じゃない。殺されかけたんだぞ?すぐに真琴呼ぶからな」
まあまあと言って啓子は短刀を構えた。巨大な赤い炎を纏いながら魔の木に走り出し、短刀で致命傷を与えるとハイキックでなぎ倒した。木はしばらく燃えてやがて息絶えた。
この樹ってさ、私が弱いから前は負けたんだよ。強くなったら練習用になることがわかったので、見つけたら退治してるんだ。
「だからって危険だよ。もっと強いのがいたらどうするんだ」
「暴走して燃やすから。その時は明義さんお願い」
「今は唯一ヒールを持ってる遙がいないからダメだ。もうやめるんだぞ」
明らかに不満そうだったが啓子は聞き入れてくれた。
家に帰ると昼間俊に言われた言葉を思い出した、『後はお前が答えをだしてやれ』
出せないから逃げてるんだよ俺は。
「明義さん、夜食です」
ありがとうと言いつつ、ちゃんと寝ないと成長できないから寝てくれと言った。有希が胸を触っていたので、背だよと言った。
「胸が小さくて背も小さい女の子がお好みでしょうから寝ません」
有希にも性癖は当然バレていた。
春香と遙は放課後スイーツ屋に来ていた。
「遙はタルトが好きなんだよね。春香は何にする?」
「このチョコのスイーツにするわ。飲み物は紅茶で」
春香は遙の口から兄の名前が出ないことが気になっていた。裏を返せばそれだけ意識してるとも言えるので彼女の行動を待っていた。
「今度は真琴ちゃんも誘おう。遠距離ビーム部隊でさ」
真琴が今の現状をどう思っているか知りたかったのでそうねと春香は言った。
「二体同時出現だ明義、しかし別の場所に現れた。今みんなはひとつじゃない。チーム編成はお前に任せる」
俊に言われ、遙と啓子そして遙。有希と真琴に別れて出てもらうことにした。
布を被ったお化け、そしてこいつも瞬間移動ができた。
有希が刀を構えて突撃する準備をしていた。
「待ってブルー・オリオン、高火力過ぎるそれが外れたらどうなるの?次はしばらく出せないでしょう。だから徒手で足止めして、レールガンで決めるわ」
ポルックス・イエローが距離を取り、ブルーが近距離で戦った。徒手でもなかなか捉えることはできなかった。それでもたまにパンチが入るので敵は徐々に弱っていった。
「いくわよ、レールガン!」最初の攻撃は外れた。それでも動きは鈍っているし読める。姿を消している敵に高火力を溜め込んでいた。
「はあああ!」ブルーのキックが炸裂した瞬間を狙って、移動される前にイエローが電撃を叩きこんだ。瀕死状態の敵にブルーは再度パンチを決めでとどめを刺した。
レッド・ペガススのチームも作戦は同じだが、消えた敵の出現予測が彼女にはできた。パープル・スターとどちらでもいいから高火力でとどめを刺せる。
「ピンク・プレアデス、下がっていいよ。もう分かった」
『赤い翼!』今までの遙の白い翼とは出力が違った。一撃で敵は爆散した。
久々に城に出向いた俺はみんなの戦闘を労った。
「遙、強くなったな。大エース復活だ」
そういうと彼女は昔と同じ笑顔でにこにこ照れていた。
遙とはもっといろいろと話したかった。家を出て行った謝罪もしたかった。それでもすぐ横には有希もいて、それ以上の会話はできなかった。
「有希も地味に頑張ったな。おめでとう」
何も言わずに彼女は頷いた。
「頑張ったお礼にお背中流してもいいですか」
頑張ってない俺にお得なだけだが、その気持ちが嬉しかったのでお願いした。
こちらの家で一緒に風呂に入るのは初めてだった。久しぶりの有希の裸が眩しかった。向かい合って湯舟で座るとほぼ全部見えてしまう、禁欲生活してたので非常に興奮した。
「いつでも私は準備ができています。両親はむしろデキ婚でも喜んでくれると思います。今夜にでも二人の子供を作りましょう」
有希が暴走モードに入ってしまったので黙ることにした。
「明義さん、お夜食お持ちしました」
ありがとうと言ったが、シースルーカーディガンなので下着は丸見えで困った。風呂は耐えたが、このあと一時間あの格好でここに居られたらピンチだった。
予想通りそのまま座って本を読み始めた。ベッドにお持ち帰ろうと足と手がぴくぴく動いたが、奇跡的に耐えることができた。
「明日からも毎日お待ちしています」
不穏なことを告げて有希は部屋に帰った。
愛おし過ぎる有希を連れて、啓子と同じく魔の樹に向かった。
「危険ですね。退治は必要ですが一人では何が起こるかわかりません」
そう言って真琴を呼び二人でこの樹を倒した。
「こんなものがある場所に住んでていいのかしら。ここは魔界よ」
真琴が的確にここの危険度を指摘した。
「家賃がただで良い物件があるのでついね。ここ以外だとワンルームになっちゃうんだよ。そうだ、みんなで危険なものを排除してくれないかな」
俊の許可があれば手伝うと真琴は言った。
「魔界の健全化?ここから魔物が出てるかも知れないの危険じゃないかな」
春香は慎重だった。
「と言うことでお兄ちゃんを連れて帰ります。魔法少女が三人居れば危険はあまりないでしょう。すぐに帰ってきてもらいます」
「私一人で十分守れるからその必要はありません」
有希の言葉に春香が激怒した。前々から兄を独占してる彼女が気に入らなかった。二人は変身し宙で対峙した。本気のようだった。
「あなたがお兄ちゃんを物みたく占有していることが許せない」
「彼の意志を尊重しただけです。あなた方こそ明義さんを縛っていただけです」
異様なオーラを放つ二人を、見ていることしかできなかった。遙はこの決闘をわりと冷静に見ていて、止めるつもりはないようだった。
春香のリアルラヴを剣で受ける有希だが、絶え間ない攻撃で防御で精いっぱいだった。勝負を掛けコスモソードで突っ込んだが、躱され至近距離でリアルラヴを受け大きなダメージを負った。見守っていた真琴が止めようとしたところで、遙が特大の赤い翼を地面に向けて放った。
「そんなのじゃ全然ダメだよ」
それだけ言うと遙は帰ってしまった。
「遙!なんで止めたんですか?お兄ちゃんを連れ戻すチャンスだったのに」
「有希ちゃんが守るって言ってるんだからそれでいいよ」
春香は身体を震わせて怒りを抑えられないでいた。
有希が明義のところに帰ると彼は玄関で待っていた。
「明義さん、なんで...」
有希は不安で動揺していた。
「俺たちは遙に負けた。だから帰らなくてはいけない。短い間だったけど二人の時間はかけがいの無いものだった。だから一緒に戻ろう」
弱い自分が情けなくて有希は唇を噛みしめた。
「遙と春香、戻ったぞ。だからもう喧嘩はするな。したらもう知らん」
笑顔で春香は迎えてくれた。
「遙、帰ったぞ」
「ちょこっと久しぶりだねえ、明義。のんびりしていくといいよ」
遙は以前と同じだった。思うに、三人を手放さないと言ったのに裏切ったことに納得が行かなかったんだろう。この子の意志は強くて固い。
有希は二人に丁寧に頭を下げていた。負けたのに受け入れてくれる二人に彼女は感謝をしていた。そして私では敵わないと。
「食卓が賑やかだといいね。今まで有希がいなかったからろくなもの食ってなかっただろう。俺は有希のお陰で健康に勉強できたぞ」
「遙も私も上達してますよ。いきなりディスって来るってなんなのよ」
本当のことを言ったのに妹は怒っていた。
「また元に戻ってしまったようだな明義。彼女たちの責任は取れるのか?」
「先のことは分かんないよ。お前だって真琴とどうなるかわからないだろう?」
それはそうだがと言いながら釈然としない俊だった。
「具体的にいうと春香は妹だから結婚はできない。重婚はできないので遙と有希どちらかとしか結婚できない。先が見えないのは変わらないよ」
「ならば早めに一人に決めるべきじゃないのか。選ばれなかった子のために」
「遙がそれを許さないんだよ。俺が全員手放さないと言ったのが悪いんだが」
俊は溜め息をついて何も言わなくなった。
窓際が騒がしいので胸騒ぎがして見てみると遙が来ていた。男どもが次々と告白して玉砕していたので急いで降りた。
「モテっぷりが半端じゃないな遙は」
「ありがたいけど意味がないんだよ、明義がいるからねえ」
不覚にも照れて赤くなってしまった。しばらく会っていなかったのに、遙がやはり一番好きだった。俺から腕を組んで所有権をアピールした。
「ちょっと離れてるけど美味しい海鮮ラーメン屋があるから一緒に行こう」
遙は頷いてくれた。そして制服姿の遙は本当に可愛かった。だから迎えに来てくれなかったことが悲しかった。二人のハルカの想いもわかる。だが実際に来てくれたのは有希だった。何を優先させればいいのか俺はもうわからないんだ。
「見てみて、家の傍で歩いてたんだよ」
小さな魔物を遙が持ってきた。
「大きくなって本格的な魔物になるんじゃないかこいつ。捨ててきなさい」
そう言うと遙はとても嫌がった。
「慣れてれば襲ってなんてこないよ。だから責任持って飼うね」
確かに魔界には無害の魔物がたくさん生活している。だけどこいつがどうかはわからない。しかし遙にはとことん甘い俺はそれを許可した。
いつの間にか春香と有希も気に入り、我が家のペットになっていた。小さな犬に見えるが、目が真ん中に一つ付いてるだけなので間違いなく魔物だ。こんなに懐いた魔物が、ある日敵になったらやっつけることができるのか。それが心配だった。
「風呂にまで入れてるのか」
有希が頭に魔物を乗せながら頷いた。魔物より、見慣れてるとはいえ有希の裸が気になった。遙と有希は羞恥心を捨ててしまってるので男の俺の前でもまったく隠さない。ただペットと遊ぶのに夢中なのでなんとか耐えることができた。しかし遙も入って来たので急いで上がった。久しぶりの遙の裸体には耐えきれる自信がなかった。
「お兄ちゃんがエッチに興味が無くなったって話題なんだけど」
春香がそう言ったが、話題にしてるのは有希と遙だけだろう...
一度タガが外れたら止められなくなる。だから必死で堪えていた。ここを出て行った理由の一つがそれなんだよ。勉強をさせてくれ...
ペット魔物が異常に怯えていた。遙たち三人は出撃準備をした。
死闘に敗れた有希は明義と共に元の木の家に戻った。何事もなかったように迎えてくれる遙。彼女の真意はどこにあるのか。




