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⑱魔法少女分裂

啓子の家からほど近い場所にある洋館、誰かが住んでると思い込んでいたのだが空き家だった。一人には大きすぎたが、新居探しに多くの時間は割けないのでここに住もうと思った。みんなには反対されるだろうが、一人になりたかったのだ。それとは別にきちんと確かめたいことがあったからでもあった。


「ここの魔界樹もどきに命を奪われそうになったな、啓子と一緒に」

そして魔の樹があった場所をみると異様な花が咲いていた。いや、正確には花じゃなく草だ。見た目が最強の敵ブラックホールに似ていた。これは早いうちに抜いてしまった方が良さそうだ。


「明義、ここを出て行くつもりなんだね」

答え方を間違えるといけないので深呼吸をした。

「当面は受験に集中したいから家を探していた。だけどそれが済んだら一緒に暮らしたい人が一人だけいる。遙、君のことだ」

「そっか、うん考えておくよ」

遙は珍しく動揺していた。だがもう遙の恋愛脳暴走は止めなければならなかった。


引っ越しが終わり誰にも邪魔されることなく受験に集中できるようになった。食生活は酷いものになるかも知れないが仕方がない。

「明義さん、夕飯にどうぞ」

夕方、有希が尋ねてきた。元気はなさそうだった。

「あの、困ったことがあったら言ってください。すぐ飛んで来ます」


「明義さん出て行くんだね。私が邪魔だったのかな...」

引っ越させたのに啓子には本当に申し訳ないことをした。

「あの爛れた生活はダメなんだきっと。今もお前の裸が見たい。いや、彼女たち全員すべてだ。だけど人間はホモサピエンスになる前から一夫一婦制で暮していた。ハーレムを作る動物とは根本的に違うんだよ」

今更だった。遙がいるのに妹の気持ちに応えたくて強引に攫ってきた。そこから間違いが膨らんでいったんだ。


「つまり遙っちとちゃんとやり直したい、そういうこと?」

そうだとはっきりと言った。

「それじゃやっぱり私はお邪魔虫だね。そのうちまた出て行くね」

啓子がそういうのでスウェットの裾を引っ張った。

「遙はこの家にはたぶん来ない。もうとっくに振られてるんだ俺は」

あの遙が振るわけはない、でも二人にトラブルがあるならチャンスは今しかない。やっと訪れた遙より先手を打てる状況を逃がしちゃダメだと啓子は考えた。


「外に出てください啓子」

冷たい目で有希は言い放ち、ブルー・オリオンに変身した。全身に蒼い焔を纏った彼女ではあったが心は紅く燃えていた。

「すぐ気付くなんて流石だね有希、だけどもう遅れとりたくないんだ」

紅き炎に包まれたピンク・プレアデスは応戦の構えを取った。

「我々が積み重ねて来た絆の中にあなたはいない。資格がない人はダメです」

蒼い拳をピンクに向けて有希は放った、十分な手ごたえでピンクの腹部にパンチが入った。ピンクは腹部を抑え立っているのがやっとだった。トドメの一撃を有希が加えようとした時、空から破壊的な光線が二人の真ん中に撃ち込まれた。パープル・スターだった。


「有希、喧嘩するならいつでも相手してあげるよ。徒手でも私はあなたより上なのよ。お兄ちゃんが不在中の我が家の秩序は腑抜けた遙に代わって私が守ります」

春香は毅然としてそう言い放った。

春香と遙の能力は魔法少女たちの中で抜きんでていた。その春香が味方に向けて力を放つ状況は破滅的な事態だった。


「ヒールが出来る遙が腑抜けているので、ベッドで休んで治しなさい」

啓子を自室に招き、シップを貼りながら春香がそう言った。

「明義さんが苦しんでるのは遙のせいじゃん。責めるなら彼女に言ってよ」

わかってると一言だけ春香が答えた。


インターフォンが鳴り出てみると真琴と俊だったので、春香は家に上げて飲み物を二人に出した。あれだけ派手にやったらバレちゃうよねと思った。

「いつか起こることが今だっただけだ。馬鹿げた同居生活はやめるんだ」

俊さんの言ってることは本当のことだったので言い返せなかった。

「春香の事情は知ってるから黙っていたけど、このままじゃダメだわ」

真琴が口を挟むことは滅多になかったけど今はそれくらい危険な状況だった。


「遙、あなたがいつまでもこうなら私が明義さんをもらいます。いいですね」

「みんなに平等にチャンスはあるんだ。良いと思うよ」

その言葉を聞いて有希はカッとなり遙の頬に強烈なビンタをした。

「あなたには心底失望しました。もう明義さんに関わらないでください」


夜の魔界村はいろんな光が飛んでいたので明るかった。気になる魔の樹跡に行ってみると草が若干成長していた。だが有希の話しでは彼女たちは仲間割れして機能していない。なら俺が気にしても仕方がない。街が滅んでも別にどうでも良かった。

「明義さんこんばんは、あなたの恋人の有希です」

肩書を付けて彼女は挨拶した。当然訪問は大歓迎なのでリビングに通した。紫と黒のボーダー長袖Tシャツと黒のミニスカートがよく似合っていた。最初に来てくれたお礼に唇を重ねた。


「リーダーを失ったあの家は崩壊します。春香は懸命に維持しようとしてますが。リーダーというのは明義さんでなくこの場合遙です」

「遙が求めたユートピアは崩壊する運命だったんだ。共産主義が滅びゆく思想のように、平等を掲げた遙教もまた消失するんだ」


「理解します。資本主義は競争社会です。だから私はあなたとの結婚を目指します。叶わない願いだと認識はしています。だけど前を向いて行きたい」

静かな有希がこれほど雄弁に語るのは極めて珍しいことだった。有希の真っ直ぐな気持ちが嬉しくて柄にもなく照れてしまった。

「今晩から泊まって行ってくれ。ベッドも枕も下着もあるので問題ない」

下着の部分に若干突っ込みたい気持ちはあったが、明義さんならみんなの下着を既に用意しているだろうことは容易に想像できた。


「有希、早速だけど怪しい草があるので一緒に来て欲しい。あれはブラックホールと同じ種かも知れない」

真琴と俊にも遅い時刻ながら来てもらった。

「確かに似てるわね、今ここで処分しましょう」

真琴が即答したので、レールガンの衝撃に備えた。最悪それで覚醒してしまったら一大事だ。そもそも彼女たち総出でかかっても倒せない敵が覚醒したら手の打ちようがなかった。

『レールガン!』真琴が近距離から電撃を放つと草は木端微塵になった。有希はトドメに蒼い拳で上から大きな円ができるほどのパンチを放ち根ごと断ち切った。


殊勲の一人有希の頭を撫でてあげていた。気持ち良い時の猫みたいに目を瞑っていた。不意打ちのチャンスなのでその隙にキスをした。

『お兄ちゃん、有希がそちらに行ってませんか?こちらが大変な時なので戻る様言って下さい ~春香~』

それを見せると有希が✕のポーズをしたので、帰る気がないみたいだと春香には伝えた。一人で頑張ってる春香に申し訳ない気持ちで胸が痛んだ。


有希との二人暮らしが始まっても、春香と遙は姿を見せなかった。啓子はメッセージを頻繫にくれて、遙を励ましていると伝えてきた。


「明義、よく決断したな。崩壊する家を守っていちゃだめだ。いずれ雨漏りが酷くなり、柱が弱り崩壊する運命なんだ。新築するかリフォームしか手はないんだ。真っ先に駆け付けた有希を大事にしろ。彼女は一人でいいんだ」

俊に絶賛されたが、楽しい思い出が詰まっているいる我が家から逃げたことは心に深刻なダメージを与えていた。同じ愚行を繰り返すのだろうが早くも帰りたかった。


「明義さん。もう一度魔界樹に行きませんか。願いを上書きしたいんです」

『四人でずっと仲良くできますように』心に刺さる言葉だ。

願いの上書きに俺が躊躇していることを察した有希は、もう少し落ち着いてからにしましょうと言ってくれた。


天気が目まぐるしく変わる。まだ初秋なのに雪が降り、真夏の暑さにもなった。もし敵がブラックホールなら戦うべきではない。魔女の婆さんが生きてないか魔界中を探してくるべきだ。出撃準備をしていた有希が飛び出そうとしていたので、何処に行くのか尋ねたら魔界樹に行くと言う。

「俺も連れてってくれ」

そう言うと有希は了承してくれたので乗せてもらった。


相変わらず胸を揉み続けたので着いた時は二人ともボロボロだった。だが有希には目的があったようで立ち上がり魔界樹の幹をぽんぽんと叩いた。するとぽんっという音がして電子刀的ななにかを有希は授かった。

「また魔界を狙って来るかも知れません。ここから動かないでください」

そう言うと有希は飛び立ちあっという間に見えなくなった。


俊の命でみんなは待機して見守っていたが、ブルー・オリオンだけは堂々と敵と対峙した。敵が異様な声を上げて有希を吸いこもうとしたが、有希は刀を真っ直ぐに敵に向け突き刺す構えをした。同時に刀と有希自身が蒼い焔に包まれ巨大なオーラを纏った。

『コスモソード!』そう叫ぶと有希は特攻した。蒼い焔が優勢に敵を押している。すると一気に突き抜けソードがブラックホールを切り裂き消滅させた。


「有希の圧勝だと?そんな馬鹿な」

俊は驚きを隠せないでいた。今回のブラックホールと前回のはほぼ同等だったからだ。下から数えるべき存在だった有希が一気に大エースになった。


「遙、これであなたはエースでもないしヒロインでもない。さようなら」

ブルーはレッドにそれだけを伝え飛び去った。

魔界樹で待っていた俺を迎えに有希が飛んできた。満面の笑みで抱きついてきたので、笑いながら抱きしめた。


有希の願いを魔界樹は叶えた。上書きされたので前の願いはキャンセルされた。ただ有希の本当の願いは明義の真の恋人になることだった。その権利はまだ遙が所持している。明義さんが待っているのも遙だと知っている。


「遙、どうすんのよ。このままじゃ有希がお兄ちゃんを持って行っちゃうよ」

「一番って言われたけど、きっと順位って変わるんだよね」

遙の弱気に春香は嘆くしかなかった。


あんなに仲が良かった遙とお兄ちゃんを引き裂く有希の意図がわからなかった。力ずくでも有希を連れ戻す。変身もしていないのにパープルに輝く焔を春香は纏っていた。






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