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⑮魔界樹

静かな休日、有希と明義は恋人らしい一日を過ごしていた。しかし魔物が現れ二人はピンチになる。その時魔界樹が光を放った。

魔界の家に引っ越して来て一カ月が経とうとしていた。季節は晩夏から秋へと変わったが、彼女たちの制服はまだ夏服のままだった。現実世界とは気温差がありこちらはまだ夏と言っていい気候だった。木を繰り抜いて出来ている我が家は涼しく、一年のうちで最も過ごしやすい時期だった。

「明義さん、勉強お疲れ様です」

そう言って有希が珈琲を淹れてくれた。


休日なのに彼女は涼し気な水色のキャミワンピースを着ていた。可愛らしいが鎖骨がしっかり見えるところが魅惑的だった。珈琲を飲みながら彼女に見惚れていた。

「この服、あまり似合わないですか?」

不安げに有希が尋ねたので、その逆でとてもよく似合っていると伝えた。


「それではあまりお邪魔になってはいけないので私はこれで」

有希の言葉にもう少し一緒に居たいと答えて引き留めた。同居直後こそ暴走して空回りしてた彼女だが、最近はすっかり落ち着いて暮らしていた。彼女が他に二人もいる異常な環境に置かせてしまったことを申し訳なく思う。

「ここでの暮らしに慣れてきているように見えるんだけどどうなのかな」

「お陰様で楽しめてます。お二人にもとても良くしてもらってますね」

有希の言葉を聞いて安心した。俺の見えないところで彼女たちに仲たがいしてもらいたくなかったからだ。暴走から救い出して本当に良かった。


丸い絨毯の上で足を延ばして有希は本を読んでいた。俺がじっと見つめていても気が付かないほど熱中していた。春香に悪戯する用に買ったマジックハンドで、スカートの裾を掴んだらびっくりしてこっちを向いた。

「気付かず申し訳ありません。裾まくりますね」

嬉しいけどそれはいいと言って慌てて止めた。びっくりした顔を見たかっただけなんだ(もちろんスカートの中も見たいが...)


「お二人と比べて魅力がないので、少しお見せしようと思ったのですが」

「その認識が間違ってるよ。モテるでしょ?相当に」

有希は真剣に考えこんだ。

何度か校門で他校の男子生徒から告白されたが、すべて断っている。自分がつまらない女なので告白される価値はないと考えていた。それよりも入学した時に春香を迎えにきていた明義に一目惚れしていたので、他の男にはあまり興味がなかった。


「モテません全然」

五分も考えてそう言われても説得力がなく、俺は額に手を置き上を向いた。

「それはそうと恋人なんだから自分からキスしてもいいよ。もちろん義務じゃなくてしたくなったらでいいんだけど」

すぐに唇に暖かい感触がした。嬉しいので何度もねだり何度も唇を重ねたので、合計十分以上キスをしていた。終わったら二人とも息を切らせていた。


「あそこに行こう。魔界の樹に」

そういうと有希はすぐにブルー・オリオンに変身したのでおんぶしてもらった。魔法少女たちは乗り心地がいいので好きだった。

「あの、掴んでるところまた胸なのですが」

有希に乗ると必ず胸を掴んだ。そして目的地に着くまで絶対に離さない。勢い余って揉んでしまったので、木の中に突っ込んだり池に落ちそうになりながら無事到着した。


疲れ切って顔が真っ赤な有希に対して、俺は元気をいっぱいもらったので元気だった。不思議な木を触ってから幹に寄りかかると、復活した有希も来た。

「怪しい樹なんだけどここ好きなんだよね」

そういうと有希は変身したままで幹をぺしぺし叩いた。そしてそのまま飛んで木の枝に座り、手を伸ばしてストレッチをしていた。


「連れて行くので一緒に上にいきましょう」

有希は枝から降りてくるとそう言った。なのでまた背中に捕まった。やはり胸を掴んだので木の枝や幹にぶつかりながら登っていった(胸を鷲掴みにしても絶対に文句を言わないところがとてもかわいい)

「いいね眺め、相当高いよねここまで登ると」

うんうんと有希は頷いた。


「魔物って絶対にこの魔界からでてくると考えてる。だけどそれが地上を攻撃する意味はわからないし、退治する魔法少女もここで生まれるのはなんでだろう」

独り言のように言い有希に問いかけると一生懸命考えていた。

何も思いつかなかったのか彼女は目を閉じて寄りかかってきた。放っておいたら寝てしまうだろうが、可愛いのでそのままにした。


「すいません!熟睡してしまいました」

「寝顔が見たくて敢えて起さなかった。ごめんね」

二人っきりのデートが嬉しかった。街で買い物もいいけれど、誰も近寄らない大自然のが好きだ。有希は特にこういう場所が似合ってる気がした。


「こんな時に敵が来てしまったようです。傍から絶対に離れないでください。今度は私が必ず守ってみせますので」

樹の下に移動して、有希は幹を背にしてファイティングポーズを取った。パペット風の魔物だったが動きは素早くそしてなかなか降りて来ようとしなかった。

空を飛べば打撃を入れられるが、俺が枷になって有希は飛べなかった。足手まといになってしまったことが悔しかった。こちらが何もできないことを確認するとパペットは一気に降下してきた。有希は拳の蒼い焔を、全身にも光を纏いパペットを殴った。

だが撃破にはほんの少し足りなかった。すると手負いの魔物は弱点の俺に襲い掛かってきた。差し違える覚悟でファイティングポーズを取ると、その時魔界樹が強く光った。そして魔物は霧のように消えて行った。


「有希、お兄ちゃん無事?敵の結界で遅くなったよ」

春香に二人で手を振り無事を知らせた。

「このまま俺たちも城に帰る。みんなに伝えて春香」

そういうと春香は親指を立てた。次々にやってきた仲間たちは城に帰って行った。最後に遙が嬉しそうに手を振っていた。


部屋に戻った有希と俺は少しソファに並んで休んだ。

「魔界樹が俺たちを守ってくれてんだよな、あれって」

有希はうんうんと頷いた。

それはそれで大きな発見だったが、今は隣に座り身を委ねてくる女の子のが大切だった。変身を解き瀟洒なキャミワンピ姿に戻った有希の手を握った。


「明義さん、そろそろ抱いていただけませんか。愛されてる実感はたくさんあります。ですがより深い愛情が欲しい、欲張りになってしまったかも」

立ち上がりワンピの肩紐を降ろしながら有希が迫ってきた。

「ありがとう。有希にそう言われるのは本当に嬉しい。けどまだ無理なんだ、有希がまだ幼過ぎるから。責任を取れないことをしたくないんだ」


本当は目の前でワンピを脱いで下着だけになっている有希が今すぐに欲しい。未来のために今は我慢して受験をまず頑張る。そして既に三股になってることを真剣に考えながら行動したい。俺は下着姿の有希を精いっぱいの愛情で抱きしめてキスをした。

「今はこれが精いっぱいなんだ。誘いを断るなんてしたくなかった。少なくとも受験が終わるまで待っていて欲しい。ごめんな」


「でも遙さんはもう...」

「あれは過ちだった。もう遙ともしないと言ってある」

有希は不貞腐れて俺の上に座ってしまった。ところが興奮して大きくなった俺のモノに気が付きズボンとパンツを下げ触り始めた。下着姿の有希にその可愛い手で触れられ、身動きが取れなかった。我慢できずに大好きな有希の胸を触ると俺は果ててしまった。


「汚いから後片づけは自分でする。有希は服を着て部屋に戻っていいよ」

「ですがワンピースにも明義さんの白いものが」

俺は急いで替えの服を着て、下着姿の有希をお姫様抱っこで部屋に運んだ。春香と遙にすれ違ったが気にしなかった。早く洗濯しないと大変なことになる。


「来てくれてありがとう。割り込んだ私ですが問題を一緒に考えたい」

有希は遙と春香を部屋に呼んでいた。

この若過ぎる家族だけで本当にちゃんとできるのか、これは本当に一大事だった。本音を言えば明義さんと二人きりでわりと清い交際をしていずれ結婚したい。だけどここに居ると競争意識が働き誘惑したくなることがある。


「お兄ちゃんはエッチだけど、ぎりぎりで踏みとどまる感じがあるかな」

「私が一番エッチだから気を付けるね」

二人も同じ問題は共有していた。

だけど、中学二年生の女子三人と、高校二年生が一人でしかもみんな明義さんの彼女。間違いが起こる可能性のがはるかに高かった。実際に遙は一度最後までいってる。そして明義さんは超進学校ので再来年受験が待っている。


「答え見つからないでしょ。有希ありがとう」

俺は女子会議に割り込んだ。

「勝手に喋るけどさ。俺の我がままなんだよ元凶は、誰も手放したくないという」

彼は本当に我が儘なのだろうか。遙と交際を続けたかったのに、妹の愛情を叶えてあげたくて春香を受け入れた。そして魔物に飲まれそうだった私を、命懸けで助けその上願いも叶えてくれた。有希はそう考えていた。


「自分の力と意志で獲得した恋人は手放したくないでしょう。それともあれだけ頑張って恋人にした三人を、これから競争させて一人に絞るんです?」

有希が核心を突いた。

本当は無理矢理割り込んだ私が手を引けばいい。本当の恋人遙と実妹の春香の状態に戻すべきなんだ。そう考えていたら涙が溢れて止まらなくなった。


「あーあもう、無理すんな有希。考えすぎるとダメなんだこの問題は。一途に想ってくれて魔に呑み込まれながら手を伸ばしてきたお前を絶対手放さない。遙と春香も手放さない、これは譲らないから」

二人は有希を慰めながら俺の演説を聞いていた。

「特に遙、お前は自己犠牲的過ぎる。もっと我がままになっていい。春香は実家には戻さない、ずっと一緒にいてくれ」


これでは先に進めない。有希は焦っていた。

「最後に、お前たちが好き過ぎて、服を着てても見掛けるといつも興奮してるんだ。とても受験勉強に身が入らない。で、半分もう諦めてるんだ。落ちたらごめんな」

諦めてる。根性の塊明義さんが、有希は絶望的な気持ちになった。


「また行きますよ!魔界樹に」

有希の提案にみんな従った。

(あの樹は明義さんを守った。ならきっと願いを叶えてくれる)

二人のハルカが先に着いた。有希は池に落ちたり地面に穴を作りながらだいぶ遅れて到着した。先行の二人は既に枝に座り明りを灯していた。


「四人でずっと暮らしていけますように。明義さんが受験に受かりますように。そして子を授かり一生幸せになりたい。叶えて魔界樹!」

静かな有希が叫ぶと、夜なのに魔界樹は真昼に思える明るさに光り、そして消えていった。遙と春香もその願いが叶うよう両手を合わせていた。





















若い恋人たち同士で暮す四人は大きな問題を常に抱えていた。有希は自分の、みんなの想いを込めて魔界樹に祈った。その言葉に応えて大きく発光したその樹は、みんなの願いを叶えてくれるのだろうか。

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