⑬もし君のその表情を見ていたなら
啓子が去り難敵に苦戦した。俊は新しい魔法少女を勧誘しようと提案するが、ずっと一緒にいた有希は困惑した。啓子を連れ戻す策を明義は考えていた。
夜中まで勉強しようが起きる時間は遙たちと同じ、俺は受験までのロングスパートに入っていた。だが将来もこの状況を続けられるか心配はしていた。
「有希は煮物とか和風なんだね、いつもありがとう」
「他にもできるよ、馬鹿だからこれくらいはできないとね」
二人のハルカはあまり料理が得意ではなかったので助かった。俺はと言えば料理はできるがその時間があったら勉強をしたかった。
ところが食事をしていると、目の前がぐにゃっとなり俺は意識をうしなった。
「過労ですね。無茶はしない生活を心がけてください」内科に行くとそう言われた。そして家に帰ると彼女たちに寝てるよう厳重に注意された。
「勉強させてくれ頼む!時間はそうないんだよ」春香にそう懇願したが頑としてダメだと言う。少し身体を休めないと次はどうなるかわからないからと。
春香一人だけ残って看病してくれた、「この間の模試ではA判定でしょう?お兄ちゃん優秀なんだから少し休むくらいいいじゃない」
「甘いよ春香、日本最高峰の大学を目指してるんだからサボったら終わるんです」実際に気が抜けないので常に焦っていた。
少なくとも今日の勉強は無理そうだったので、たまに部屋に来る妹を視姦することにした。季節は秋だがまだ半袖とスカートだったので、景色はよかった。
「春香、ここ来て正座して」一瞬のうちに悪巧みがバレ制裁を受けた。
「遙と有希なら絶対に言うこと聞くのに、春香のバカ」小声で言った言葉だが、鋭い妹は聞き逃さなかった。
「お兄ちゃんや遙たちがえっち過ぎるから私は我慢してるの!」真相を聞き、あんなにえっちだった妹がお堅い女に変わってしまったことを知った。
「じゃあ今日は二人きりだから、家にいた頃の気持ちに帰ろう」そう言うとベッドから起き上がり、リビングに向かった。
「家にいた頃のことって具体的になんなの?」俺は階段を指さした。
春香が先に階段に登り、適度な距離を置き俺も登る。これで春香のパンツは丸見えだった。久しぶりなので感動していつまでも見上げていた。
「あとあれも、リビングを全裸でうろついてたよね」春香は嫌だと言った。
「ああいうエロ行為の積み重ねで好きになったんだよね。やめてしまったらお兄ちゃんの気持ち変わっちゃうかも知れないよ」
そう脅すと風呂場に急行し、シャワーを浴びて全裸で出て来た。
「おかしいな。手で隠したりしないのが春香だよね」
ものすごく恥ずかしそうに胸と股から春香は手をどけた。その恥じらった姿がかわいくて上から下まで数分間見続けた。ハイパーちょろい妹だが可哀想過ぎたかな。
満足して布団で寝ようとしたら半泣きの妹が横に座っていた。
「嫌だった?ごめんね」そう言うと春香は首を振った。
「違うの、遙や有希が積極的で羨ましかった。血が繋がってるから最後まではしてあげられないしずっと劣等感に押しつぶされそうだった」
布団の中に手招きしてその中で妹を抱きしめた、「兄妹でできる限界に今度挑戦しようよ春香、あの二人に引け目感じることないからね」
妹を抱きしめてるのが心地よく俺はいつのまにか寝てしまった。
「春香ちゃんにどんな悪戯をしたんだ。今白状すれば罪を軽くしてあげよう」遙さまの尋問を受けたが、妹の許可がないと言えないと濁した。
そして有希が過激な計画を立ててるだろうからそっちを阻止してと頼んだ。
昼寝をけっこうできたので勉強机に向かった。しかし一時間でくらくらしたので流石に自重した。歩くくらいは問題ないので有希の部屋に行った。
有希は居なかった。整然と片付いた部屋で感心していたら、枕元にいかがわしい道具があったので無断でそれを撤去した。
一階にいたら有希が居てお粥を作っていた。できたら持って行こうと思っていたらしいが、降りて来てしまったのでそこで食べた。
「最近魔法少女活動はどう?啓子いなくて寂しいか」
「まだ実感湧かないんだよ。ずっと一緒だったからね。だけどブラックホールみたいな敵はでてこないから順調だよ」
啓子の件では責任を感じていた。うまく立ち回ることができたら辞めずに済んだんじゃないかと思っている。終わったこととして済ますのは余りにも申し訳ない。
眩暈も治った頃魔界の商店街で啓子に出会った。
「久しぶり啓子、ここへはまだよく来るの?」何も言わず彼女は頷いた。
そしてなにも言わずに手を振って帰ってしまった。何もできない自分に腹が立ってしょうがなかった。そして啓子は魔法少女に戻るべきだ。
俺はほとんど魔法少女支援活動に行かなくなったが、俊はわりとよく行っていた。余裕を感じさせられ少しイラっとはするが、彼女たちには心強いだろう。
「今日も元気に行くよ!」レッド・ペガススの呼びかけで魔法少女たちが出撃する。四番目に入った遙がリーダー格なのはその色にあるのだろう。赤を纏った彼女はヒロインっぽかった。魔法もパープル・スターと並んで最強級で頼りになった。
「ちょっと今日のは変じゃない?」ポルックス・イエローが異変に気が付いた。パープル・スターとブルー・オリオンも緊張していた。
人型でも動物型、ぬいぐるみでもなく毒々しい花が相手だった。
「真琴、軽く電撃を放ってみてくれないか。相手の出方を見たい」
俊の命令に従いイエローは電撃を放った。すると花が大きくなった。
「遠距離ビーム系攻撃はダメみたい」パープル・スターは言った。
「有希と啓子が揃っていたら打撃を試せるんだが、一人では危険すぎる」
俊も打開策を見つけられないでいた。
「イエロー、パープルこっちきて。最大火力を近距離からぶつけるよ」遙が高火力作戦を提案し、他の二人もそれに従った。
たが、敵のおしべとめしべが伸びて来て容易には近づけなかった。どうも触れたら麻痺する感じだった。焦れたブルーが花の外側から攻撃を仕掛けたがおしべに捕まってしまった。苦しそうにしている彼女を助け出さないといけない。
パープルが側面に回り込んだ、『リアルラヴ!』新技の光線は花びらの半分を破壊した。さらにその反対に回り込んだイエローが叫ぶ、『レールガン!』その電撃はもう反対側の花びらを破壊し敵の防御ががら空きになった。
ここで啓子がいれば打撃でブルーを救えるのだがと俊はもどかしさを感じていた。しかしレッドが飛び出した、「たああああ!」蹴りでブルーを解放するとイエロー、パープルと共に光線を叩き込み化け物花を吹き飛ばした。
「敵撃破ご苦労だった。だが最大火力を持つレッドが、打撃で近接戦闘をしての辛うじての勝利だった。もし捕まってしまえば勝機はない危険な戦闘だった」俊の分析は当たっているので魔法少女たちは何も言えなかった。
「提案なんだがもう一人勧誘してみてはどうだろうか」その言葉に有希は凍り付いた。啓子が権利を譲ってくれたから運よく自分は明義さんに愛された。その役は本当は啓子だったはずで、彼女の犠牲の上で自分がいることが恥ずかしかった。
「最近、有希の様子が変なんだ。知ってたら教えてくれないか」遙と春香は戸惑った。啓子の代わりに魔法少女を勧誘する予定を聞いて、塞ぎこんでるなんて言えるはずがなかった。
みんなが言うのを躊躇してるのを見て状況はだいたい察せた。
有希の部屋をノックしたが今日は忙しいと言って一度は断られたが、会いたくて勉強も手に付かないというと部屋に入れてくれた。
「明義さん、何ですか?今夜は考えたいことがあって」有希の言葉を遮ってキスしようとしたら、手を払われ後ずさりされてしまった。
「嫌われてしまったか。ごめん」そう言って部屋を去ろうとしたら有希が後ろから抱きついてきた。手が震えていたので苦しんでいるのがわかった。
「自分の置かれてる状況に驚いているんだ。可愛い彼女がいてくれてることに。ただのシスコンだった自分が誰かに受け入れられるとは到底思っていなかったから」
「嘘ですよ。春香を迎えに来てたのを一年生の時から見てましたけど、窓側にびっしり女の子たちがいて明義さんを見てました」
「そうなんだ?春香だけしか見えてなかったから気付いてなかった。そんなに人気あったって誰か教えてくれたら、もっと早く彼女できてたかもしれない」
有希はこの話になんの意味があるのかわからず困惑していた。
「遙と付き合えたのは偶然なんだほんとに、頭の上に彼女のパンツが下りてきて話したのがきっかけだっだ。あれがなければ有希とも出会っていない」
「その話はどういう意味があるんです。よくわかりません」
「遙と出会わず魔界小屋に案内されてたら、啓子に告白してたかも知れない。そういう話なんだけど意味がないかな」
有希はますますわからなくなった、「そんなに適当に彼女選んでるんですか?遙がかわいそうじゃない」
「そうなのかな。でも遙に出会っていたからすぐに告白されて、ちょっと迷ったあとに付き合った。人生ってそんなもんじゃないかな。遙が空から降ってきた、これだけで運命の出会いなんじゃないかな」
当然聞いて置きたいことだったので有希は質問した、「私の場合はどうなんですか。放って置いたら人間じゃいられなくなる、だから仕方なく彼女にしてくれたんですよね?」
俺は一呼吸置いた。言い方で相当変わるデリケートな問題だったからだ。
「好きじゃない女を助けないし彼女にしない、これは本音だ」
「ありがとうございます。嬉しいです」有希は安堵の表情を浮かべた。
「要約すると俺には三人の彼女が幸運にもいるけど、出会い方はバラバラでもみんなのことを平等に愛している。公平じゃなかったら遠慮なく文句をぶつけてもらって構わない」
有希ははいと言って納得してくれた。
ここから啓子の話しにどう繋がるかは自分でもわからない。でも繋げられなかったら有希は不安なままだ。
「啓子と話しているのが一番楽で心地が良かった。でも友達のままだったのは遙がいたことと、啓子をお喋り友達と決めつけてしまったんだ。今でも悔やんでる」
本音だった。馬鹿話するなら真っ先に啓子に話した。一番リラックスできたから恋愛対象からは外してしまった。
「啓子が一番好きだったで合ってますか」有希が問いかけた。
「その可能性もあった、そういうお話し。彼女がいない状況で啓子の気持ちを知っていたなら、間違いなく救おうとしたよ」
「そうだったんですね。啓子が可哀想で涙がでてきます」
既に有希は泣いていた。自分は幸運だった、でも啓子は不幸だったことを呪った。
「色々な感情や可能性に気付かせてくれた啓子に恩返しがしたい。彼女はまだ魔法少女をやりたいはずだ。でも恋愛競争に負けたと思って心がずたずたになっている。彼女のプライドがそれを許さず去ってしまったなら、俺の気持ちを言えばいい。啓子が一番好きだったと」
「作り話じゃないんですよね」有希の問いに頷いた。
「だから取り戻そう啓子を、有希も手伝ってくれ」
「取り戻そうよ、啓子を」有希はうれしそうに同意してくれた。
翌日二人はすぐに行動に移した。啓子の家の前で待ち伏せて捕まえる算段だ。
「お、有希じゃん。明義さんと仲良くやってる?」
「ものすごく大切にされてるよ。運がよかったよ」
啓子が明義さんの名前を出すことすら苦痛だと思うと有希の心が痛んだ。
「実は居たりして」俺の顔を見ると啓子の顔色は変わり、飛んで逃げていった。
「追うよ有希、乗せて行って」有希は頷くと俺を乗せてくれた。
「あの捕まってるとこ胸なんですが...」そう言われてもそのまま掴んで離さない。
啓子が観念して地上に降りたので二人もそれに続いた。
「戻れと言われても戻らないから。頼むから見逃してよ」
「一番好きな人が苦しんでるのは放っておけない。だから帰ろう」
本音を叩きこむしか手はないと言い聞かせきちんと言った。
「じゃあなんで有希といるんだよ!出鱈目なこと言うと蹴り入れるよ」
「手違いがあった。お喋り友達と決めつけて好きなことに気が付かなかった。だから俺がぜんぶ悪い、啓子は何も悪くないから戻ってくれ頼む」
啓子の表情は困惑していた。それともの凄く色っぽかった。初めからそんな顔してくれたら、遙から乗り換えてたかもと本気で思った。
「好きだからこっちおいで!俺が嘘は付かないって知ってるだろう啓子なら」
膝を付いて顔を抑えて泣く啓子に、俺と有希は近づいて行った。
有希は啓子を抱きしめて一緒に泣いてあげていた。
「本当に一番だったの?私が?」啓子の質問にはいと答えた。
「恋人にはしてあげられない、申し訳ないと思う。でも居なくなってとても寂しかった。胸の穴の意味を啓子が教えてくれた。だからありがとう」
「ほんとに全員同時攻略すんのかよ。呆れてもう何も言えない」
そういう啓子の顔は泣きながら微笑んでいた。神秘的な美しさだった。
「有希、前言撤回。邪魔するからね本気で。年長の色気を舐めるなよ」
そういうと啓子はまたねと言って飛び去って行った。
無事啓子は魔法少女に復帰することを示唆して去っていった。有希と明義は安堵の気持ちで一杯だった。




