⑪三人目の彼女
遙は一日休んだだけで学校に復帰できた。春香と一緒に仲良く登校した。俺はと言うと、学校が終わった後に啓子とデートの約束をさせられていた。
「俊、モテ過ぎて辛い」俊の拳が飛んで来たが予測してたので避けた。
「お前のハーフの様な顔立ちでモテないはずがないだろう。今まで彼女がいなかったのは、ハイパーシスコンで周りが見えてなかったからだ」
俊の言ってることはわかる。中学生の時にもらったラブレターは春香が全て処分していた。直接告白も全て妹がいるからと断っていた。
「真琴も最初はお前を狙ってたんだそうだ。だけど競争率が低い俺に乗り換えただけなんだよ」俊は悔しそうにそう言った。確かに今カノが他の男の方が好きだったと言われたらショックだろう。
「だけど真琴ちゃんが結果的に一番じゃないか?最初は口が悪かったけど、お前と付き合って穏やかになった。それってお前のお陰じゃんか」
当然だと言って俊はメガネをくいっと上げた。
遙と春香のお弁当を屋上で広げながら俊に言った。言って置きたかった。
「今日の放課後啓子とデートするんだよ。訳あって最近恋人になった」
「啓子はもともとお前が好きだったがお前は違うだろう。何があった?」
「遙に取って都合の悪いものを見られた。それを公表すると脅して迫ってきたから逆らうことができなかった。遙の未来は俺のそれと同じだからな」
俊は少し考えたが腑に落ちなかった。そんな方法で強引に奪っても逃げられるだけだ。啓子がそれを知らないとはとても思えなかった。
放課後窓際がまた騒がしかった。女子中学生が校門で待っているみたいだった。どうせ啓子だとわかっていたので見ないでいると、俊に有希が待ってると聞かされたので急いで校門に向かった。
「何をしてるんだ有希。この高校に知り合いでもいるのか?」そう言うと目の前を指さした。確かに俺と俊は知り合いだが。
「啓子に用事ができたので代わりに明義さんとデートしてこい。そう言われたんです」用事ができたならキャンセルすればすむことなのにと訝しんだ。
染谷有希、14才、黒髪ミディアム、胸サイズ中の墨田女子学園二年生。魔法少女ブルー・オリオンでは徒手格闘を得意としていることから武闘派と思われがちだが、清楚で照れやすく正統派美少女だった。
「どこ行く?と言っても遊びスポットあまり知らないんだが」有希は少し考えて動物園に行きたいと言ったが、閉園時刻が早いので難しいと伝えた。
正直啓子の性格のがさっぱりしていて話しやすかった。いや、まだこの子と話慣れていないせいかも知れなかった。
「ボウリングでいい?ドームシティにあるはずだよ」そういうと有希は頷いた。
流石に徒手格闘のエースクラス、重たいボールを持つのも苦にせず次々とピンを倒していった。春香と競ってみて欲しかった。
「上手いね。教えること何もないや」そういうと顔を赤くして喜んでいた。
「2ゲームやったしそろそろ上がろうか。親御さんも心配するだろうし」そういうと友達と遊んで来ると親には言っていて、午後十時くらいまでいいと言う。
次はパスタを食べに行き、スイーツを食べ飲み物を頼んだ。
「あの、魔女のお婆さんに二人の相性は最高だって言われましたよね。あの時本当に嬉しかったんです。明義さんには迷惑かも知れませんが...」
「迷惑じゃないよ。俺も嬉しかった」そういうと有希は必要以上に顔を赤らめた。下心なしの感想で、本当に可愛い子だなと思った。
遅くなったので彼女の家の近くまで送ることにした。魔法少女だから無敵とは言え男が守ってあげたくなる、そんな子だったからだ。
「あの、騙してごめんなさい」突然そう有希は言うと目に涙を浮かべていた。
「騙す、何を?」本当にわからないので聞き返したが放ってはおけなかった。
「啓子がああいうことをしたのは全部私のためなんです。私には脈がなさそうだから有希に権利譲るって、だから...」
泣いてる女の子を放って置くことはできないのでハンカチで涙を拭ってあげた。
二人の顔が近づいた瞬間にキスをされた。そして泣きながら俺に謝って走って家に有希は向かった。呆然と彼女の後姿を眺めていた。
家に帰ると食事はしたから風呂に入った。二人の温もりがまだ感じられた。
「明義さん、お湯加減はいかがかな」遙に聞かれ親指をたてた。
柔らかい唇の余韻がまだ残っていた。うちのチームで一番の清楚系ヒロイン、染谷有希。俺のこと好きだなんてまったく気が付かなかった。
夜の勉強をしていると春香が向かいに座った。
「何かあったでしょ。遙の目は誤魔化せても私はわかるよ」夕方あったことを正直に話した。そしてまだ動揺してることも。
「有希かあ、大人しいけど隠れファンが凄く多いんだよね。お兄ちゃんもモテ過ぎて大変だね、でも全部春香が断ってあげるからね」
「浮気!?」話し声を聞いて遙も駆け付けた。
「浮気じゃない!ちょっと驚いただけだ」嬉しかったという言葉は隠した。
久々に街を攻撃する魔物が現れた。女性の姿をしており際どい格好だったがまったく嬉しくなかった。みんな学校の時間だったが、彼女たちは関係なく出撃する。
「一気に行けちゃいそうだからお先に」ピンク・プレアデスが真っ先に飛び出した。続いてブルー・オリオンも続く。
「徒手部隊にばかり手柄はあげないよ!白い翼!!」レッド・ペガススが必殺技を繰り出した。だが敵の口から出す炎に相殺されてしまった。
「えい!」ありったけ搔き集めたイエローポルックスの電撃攻撃も同じだった。
パープル・スターは敵の隙を狙って飛び回っていた。
ピンクのハイキックで敵をぐらつかせた。その瞬間を待っていたパープルが攻撃魔法を準備していると、ブルーが異様に光り輝き拳を青い焔に包み突進した。その拳を見て敵は手で防御しようとしたが、その手ごと相手を貫き消滅させた。
戦いが終わって変身を解いてもその体は蒼い焔に包まれていた。
「頑張ったね有希、ありがとう」言い終わるか否かの隙にまたキスをされた。
俺が文句を言おうとする前に再変身したレッド・ペガススとパープル・スターが立ち塞がった。有希も白いレオタードのブルー・オリオンに変身して応戦しようとしていた。
「少し強くなっただけで強気になったね有希ちゃん。誰が本当のヒロインか見せてあげるよ」レッドも炎を纏った。レッドが出たのでイエローは少し下がった。そして三人で魔女の森目指して飛んで行った。それを見て慌ててピンクも飛んだ。
魔法少女の速度に走って付いて行くのは無理だった。しかし急がないと仲間割れのピンチだった。イエロー・ポルックスの背に乗った俊がお先に行ってくるというポーズをした。
「有希がお兄ちゃんをすきなのはわかったよ。でもあのキスは許可を得たものなの?お兄ちゃんにその気がなかったら傷つくのは有希だと思う」
正論で春香が説得しようとしていたが、目まで蒼く輝いてる今の有希には届かなかった。有希の拳が春香に向けられたところで啓子が有希に不意打ちでハイキックを決めた。倒れた有希を背負ってそのまま城を超え家まで帰ってしまった。
「親しい啓子に有希は任せて我々は城に戻ろう」俊の一言で残ったメンバーは帰投した。
そして俺はまた反対に走りだした。
「有希が暴走したのはきちんと断れなかった俺のせいだ。本当に申し訳ない」断ろうと思えば断れた。ただ可憐で可愛いと思った俺は振るのを躊躇してしまった。
「お兄ちゃんは謝らなくていい。脅されてデートさせられて勝手にキスするとかありえない」春香は堪忍袋の緒が切れたようだった。
「恋してもいいけどずるはダメ」遙も怒っていた。
「明義、シスコンじゃなくなったお前はモテ過ぎる。しばらく家で受験勉強していろ。恋人たちがいるんだからそれが安心で安全だ」
俺が直接断っても有希はきっと諦めない。そう判断し、俊の案に従ってしばらく魔法少女の仕事から身を引くことにした。
「モテ過ぎるなんて言われても、遙と春香だけを愛したい俺には意味がないんだよな。有希は確かに魅力的だけどもう遅い」風呂の中で溜め息をついていた。
「お背中流すかい?明義さん」遙の好意に甘え頼んだ。
「遙上手くなったね背中流すの、とても気持ちいいよ」
「頭洗ってあげようか、お兄ちゃん」春香の好意にも甘えた。
遙と違って春香の裸にはまだ慣れなくて照れがあった。しかしそれは春香も同じことなので段々慣れて行こう。二人のハルカだけが俺の生きる意味だ。
二人が身体を洗うので俺はもう一度湯船に浸かった。姿見で二人の裸が見れるのでそれを見てしばらく楽しんでいたが、お礼に背中を流してあげることにした。
「う~ん、生きてて良かったって感じするね」背中洗いごときで遙は大袈裟だった。でも嬉しい感想をもらったので頭も洗ってあげた。
「はい、こっちの背中もどうぞ」遙は椅子を180度回し前を向いた。
こっちの背中は恥ずかしかった。更に湯舟で春香が見ていることも羞恥心を倍増させた。だけど遙とはただならぬ仲なのできちんと依頼に応えた。
「遙、もうダメ。エッチすぎてどうにかなりそう」
「遙は気持ちいいのでやめちゃだめ、あと胸は手洗いでお願いね」
やっと終わった時にはナニの仰角が大変なことになっていた。遙は満足して出て行ったがまだ春香が居た、「春香も両背中流す?」
「お兄ちゃんのえっち」そう言いながらも春香は座ってくれた。
背中は無事終わったので、180度向きを変えて座ってもらった。ずっと片思いしてた女の子の全裸姿がそこにあった。
「遙は凄すぎる。私恥ずかしくて死にそうだよ」
「最初は普通だったんだ遙も... それはともかく胸は手洗いね」
恥ずかしさと気持ち良さに悶える春香がかわいかったので胸の先端にキスをした。目を手で隠す春香だったが丸見えは変わらないからね。
「舌で胸の泡を舐め取るから動かないでね」遙にもしたことないエロ行為だった。
言われた通りにしてくれる妹は本当に最高だった。
風呂を出たら枕で春香に何十回も叩かれた。
「おにいちゃんがこんなにえっちだと思ってなかった」スイマセンと謝った。
「普通じゃない?明義さんくらいが」遙の発言すべてに尊敬の念を抱いた。
話しは全然変わって有希のことなんだけど、これからどうなるかな。他人事みたく言って申し訳ないけど、俺が何を言っても聞かない気がするんだよね。
「ああいう大人しく見える子のが秘めた情熱があるのかも。絶対にお兄ちゃんをものにするって強い意志が感じられた」
「どういう理由があれど、相手の意志を尊重してない好きはダメ」
ちょっと遠慮気味の春香と、はっきりと意志を表明する遙で意見が別れた。
「俺がいなくてもまだおかしかったら言ってくれ。その時は流石に完全に完璧に振るから。だって俺にはハルカしか面倒みれないし」
夜の勉強の合間に、寝室で寝てる二人のハルカを見に行った。
本当に静かに侵入して二人の寝顔を交互に眺めた。奇跡的にまったく同じくらい可愛く見えて、どっちを選んでどっちを振るとかは考えられなかった。まあ、春香は実妹だから関係は続く。そういう意味では遙は絶対に手放したくなかった。
「何考えてるの?」目を覚ました遙が尋ねた。
「二人とも愛し過ぎて絶対に手放したくない。そう考えてた」
そういうと遙がキスをせがんだので軽く唇を合わせた。
「春香は実妹でいつもそれを気にしてる。だから絶対に捨てないと言ってるんだけど、まだ怯えてる節がある。だから遙が付いていてくれると頼もしいんだ。負担になるけど春香を支えてくれる?」
そう言うと腕でマルを作ってくれた。
「あ、これは」そう言うと同時に遙はレッド・ペガススに変身した。
すぐに春香もパープル・スターになった。
一緒に宙を舞い敵と対峙した。敵はブルー・オリオンだった。
「敵?あれは有希だろう。戦うのはやめてくれ」
「能力に呑み込まれてもはや人間じゃない。倒さないと大変なことになるよ」レッドは冷静に分析していたが、パープルはおろおろしていた。
イエロー・ポルックスとピンク・プレアデスも到着していた。
「危険だから有希を殺すのか?だったら原因を作った俺が死ぬべきだ。ピンク、俺をブルーのとこまで連れてってくれ。近くまででいい」
「お兄ちゃん、ダメえええ」春香が泣き叫び遙は冷静に見ていた。
「死なないでよ、明義さん」そういうとピンクは下がった。
「有希、期待に沿えないで悪かった。先着二人の彼女で締め切りだったんだ。だけどどうしても欲しいなら俺をやる。来い有希」
ゆっくりとブルーに近づくと動揺していた。間違いなく人間の意志は残っている。だったら俺を殺せるかどうかはわからない。だから。。。
「有希、愛してるから来い」そういうとブルーは嬉しそうに近づいてきた。
「嘘は付かないからたちが悪いんだ俺は」そうつぶやいて彼女にキスをした。
気絶したブルーを背負って俺はみんなの元に帰ってきた。
「ハルカごめん。彼女増えちまった」
そう言うと春香と遙が納得して頷いた。




