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73、学園都市




夜遅くに私はサイトに叩き起こされました。


「何ですか?」


自然と口調にもトゲが。しかしサイトはお構いなしのようですね。無神経な奴です。


「明日の準備はちゃんとしたか?」


「? えぇ、まあ」


海水で塩まみれだったのをヤニトーさんが綺麗にしてくれてたのは嬉しかったですね。おかげで、準備はかなりはかどりました。


「じゃ、行くぞ」


そう言い、サイトは私を抱き上げ、ベッドのそばのバックを持ち、枕で寝ているディーウァをつまんで歩き出します。


「どこに行くんですか?」


「学園都市」


「ま、待って下さい。学園都市には領主様も来る事になっているんですよ?」


「時間がない……」


「……何の?」


「……とにかく、早く行くぞ」


何を焦っているのですか? 何がしたいんですか?


「何故?」


「…………」


無言、ですか。


「はぁ……分かりましたよ。じゃあ皆さんを起こして来ます」


ぐむ、宿屋に行こうとしたら腕を掴まれ引き止められてしまいました。出発を早めたいのではなく、領主様達には着いて来て欲しくない、という事ですか。


「そこまでの事なんですか?」


サイトは首を縦に振ります。目つきも鋭い……真剣ですね。




「……では、せめて書き置きくらいさせてくれてもいいでしょう?」


「急いでくれ」


書き置きと言っても……紙がないですから、窓枠の木部に超低出力の【電子砲】で木を焦がして書いときましょう。


えーと……安全性を確かめるために飛ぶ乗り物の試験をしに行きます。夕方までには戻ります。


まあ、こんな感じでいいでしょうね。心配もかからない素晴らしい文面。


「いいですよ。さっさと行ってきましょう」


こっそりとヤニトーさんの家を出た私達。


「ほら、ディーウァ。起きて下さい。起きて下さーい」


『ふぇ? まだ真っ暗です』


「でも、出発です。戦闘機モードとPFMをお願いします」


『ふぁあ……分かたです』


私にはモノクルが、ディーウァには空飛ぶ機械の体が。


サイトにはディーウァに搭乗して貰い、私は飛行ユニットを創造し出発です。


ディーウァに搭載されているINS(慣性航法装置)と私の持つ地図により大体の位置関係を割り出し飛行経路を決定します。


INSとは、出発点を原点にして速度、方角などを元に複雑な計算をする事で出発点からの位置関係を知る事の出来る装置らしいです。まあ、とにかく位置が分かるという事さえ分かればいいでしょう。


それらを使い、マッハ一.二(時速千四百六十九キロ)で巡航飛行して学園都市へと向かっていきます。


さて……サイトをあそこまで焦らせる何かが学園都市には存在しているのでしょうか。それは何? 私に関係しているのでしょうか。




私は、記憶を取り戻せるのでしょうか。






空がほのかな明るみを帯びて来た頃、予測地点に到着しました。


その中に一際高い建物が…………。


……ぐ。頭が、痛い……駄目です。墜ち……る。


『ご主人様!?』


ディーウァに……助けられたみたい、ですね。




『大丈夫です?』


あの後、学園都市シシリーの郊外に不時着し事無きを得ました。


「はい、今は収まってます。それに……頭痛がするのは記憶に関係した何かがある事が多いですから」


「……中に入るぞ」


サイト……相当焦躁していますね。付き合ってあげましょう。私も、何かを得られるといいのですが…………。


とりあえず、街壁の門に向かいます。


街壁は高さ五メートル近くあり、門にも守備兵が配置されています。


「何者だ!?」


守備兵は五人。二人が灰色ローブを羽織り、三人が軽鎧を着ています。軽鎧の二人が前に、中にローブが一人、遊軍として残りが定位置につかず動点としてオールマイティーな陣形を組んでます。


戦時の空気を感じます。


しかし何者かと言われても……。


「ただの一般人です」


「ふざけるな! ただの一般人がこんな場所で何をしている!」


何をしているのか……?


「……し、シシリーに入ろうとしている?」


「…………ふざけてるだろ」


険悪な空気ですね……。しかしそんな中でも、太陽は輝いています。


真夜中に出たのに、もう朝日が昇ってきてしまいました。


…………んん? 朝日が昇ると共に守備兵の間から険悪な表情が和らいでいきます。


朝日、偉大です。


「おい、もしかして……」

「そんなまさか、死んだんじゃなかったなか?」

「と、とにかく、中隊長に連絡だ!」


守備兵の一人が門の脇にある小屋から黒い箱みたいな物を取り出し、何か叫んでいます。


「こちら南門守備隊、こちら南門守備隊。中隊長と連絡を取りたい」


『こちらシシリー防衛隊通信室。用件を述べよ』


「数年前に死亡したと思われていた例のあの人が今我々の前にいると伝えてくれ」


『……! り、了解した。しばし待て』


恐らくあれは……通信機ですね。

通信を終えた兵がこちらに振り向きます。


「あなたはもしや……アレシア−C、いやJ−バルカでは?」


アレシア−C−バルカ? アレシア−C−バルカアレシア−C−バルカアレシア−C−バルカアレシア−J−バルカアレシア−J−バルカアレシア−C−バルカアレシア。




―――――


ロミリア……煉瓦の家…………。


       ―――――



「おい! 大丈夫か!? おい!!」


あ……いつの間にか私は倒れ、サイトに揺さぶられ、兵達に取り囲まれています。


「大丈夫、大丈夫……大丈夫です」


「だが、いきなり倒れたんだぞ?」


「いや、よくある事ですから」


「それは……むしろかなり悪いのでは…………」


「とにかく、横になった方がいい。仮眠室に連れて行こう」


多少強引に小屋の仮眠室に横にさせられ、仮眠室にサイトとディーウァも入れられ、扉は開きっぱなしでつねに監視はされているものの、とある傲慢なエルフよりは待遇はいいと言えるでしょう。


「……サイト、落ち着いて」


しかし苛立ちを全開にしているサイト。雰囲気かなり悪いです。隣にいられると嫌な感じ。


おもむろに立ち上がり、仮眠室を抜けようとしますが守備兵が出入り口を通せん坊します。


「どこへ行く気だ?」


「……どけ」


「駄目だ。別命あるまで君らをここから出す訳にはいかない」


……えー。無挙動で首を手刀で叩き、意識刈り取っちゃいましたよ。


「き、貴様何をす」


二人一組でしたが、もう一人の灰色ローブも気絶させてしまいます。


「出るぞ」


有無を言わせない迫力。ついうなづいてしまうだけの威圧感。


サイトはそのままの迫力を保ち、仮眠室を出ていきます。そして聞こえる悲鳴や絶叫、切断音。


「急げ、囲まれる」


確かに。気配を断ち切っているみたいですが、配置を急ぐあまり足跡とかが聞こえてきています。


サイトの先導で小屋から出ると、既にしっかり包囲されています。


サイト、手遅れみたいですね。しかし展開が速いなー。


「……一点突破する」


な……包囲に臆する事なく突っ込んじゃまいました。


一瞬体がぶれ、音速の二倍は越えた速度で包囲を通り抜けた直後、私の前方の兵五人がいきなり倒れます。


「何だと……」


兵が呆然としている間に、私とサイトは駆け出します。


「サイト……これ、やり過ぎじゃないですか?」


まあ、一緒に逃げた時点でもう犯罪者扱いされるでしょう。後ろから兵達の叫び声が聞こえます。あーあ、選択間違えたかも……。


そのまま小屋の隣の南門へ。しかし、南門が私達の前に立ち塞がっています。ですが、私には障害になりえないのですよ……【電子砲】。


加粒子が鋼鉄の金属結合を断ち切り、円状に大きな穴をぶち開けます。




さあ、シシリーに入りますよ。


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