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69、心境と無理解




あ。


と、止まらないです! 墜ちる墜ちる墜ちる墜ちる!!


地面にぶつかっ……ぐうぅ。


何とか……到着しましたね。


あのお屋敷から放物線を描き一分かからず、ぎりぎり軌道修正して宮殿ではなく人気のないお庭へと着地しましたが……うん、このクレーターは元からあった気がします。あ〜、確か連れて来られた時馬車カら見えたよウな……。




それよりもサイトは!?


数十メートル離れている宮殿の破砕した高額な硝子窓の枠から入り、モノクルの生体、魔力反応履歴からサイトの位置を特定。


あ、私がいた部屋でしたか。


扉をバーンとぶち開け、中に入ると……ベッドで半身を起こしているサイトの姿が見えます。


顔色は……そこまで悪くないです。生体反応、特に異常なし。魔力反応、少し乱れてる……かな?


「サイト、何か倒れたとか聞いたんですけど大丈夫ですか?」


すると、サイトはおもむろに立ち上がり私にフラフラと近寄って来ます。


その表情は何かを必死に耐えているような……?


私との距離が目と鼻の先まで近寄ってようやく停止。


「……大丈夫、ですか? あ…………え?」


何で? 抱き着かれました。


「サイトぉ? サイト?」


返事なし、しかし抜け出そうとすると力を込めて来ます。




うーーーん、病気なんでしょうか?


そして人恋しくなった?


サイトも人間という事なんでしょうね。まあ、予想ですけど。


そのままにしてあげましょう。


私もお世話になっていますからね、借りを返さないといけません。心配とかじゃない……ないのかな? いや、ない……のではないでしょうか。どうなんですかね? 私は、サイトをどういう存在として見ているのでしょう。


サイトは……意地悪で、あんまり喋らなくて、無愛想で、そのくせ悪戯する時とか意地悪する時だけニヤリとした嫌味な笑みを浮かべて、私の記憶を知っているくせに教えてくれなくて、時々考え込んでいたりしてて、私の勘が強者と告げているのにたいした力を見た事がなくて……考えてみると、あまりサイトの事を知らない事を知ります。


…………サイトとも、いつか別れるのでしょうか。それはいつでしょうか。記憶を取り戻した時でしょうか。


何だか私も寂しい気分になって来てます。サイトを私からも抱きしめます。


暖かい。


しかしこの温もりだっていつか失うのです。ならば、今だけでも……。






「離れるんだ! 離さぬとどうなるか分かっておるねか!!」


「どうなんの?」


「生きながらに八つ裂きにしてくれるわ!!」


騒がしいですね。せっかく寝てたのに目が覚めちゃいました。


「何事ですか? そんな大声出して……」


「イブキ何をしておる! 早く離れんか!!」


離れる? あれ、何故かサイトにお姫様抱っこされてます。そしてソレをイーザル様やらウルースマ様やらイエラウ様やら使用人達やら兵士達やらに見られてます。皆さん険しい表情をしています。いや、ディーウァは喜んでいますかね?



う、うぐ、屈辱感に恥辱感が……。


「は、離して下さい。これは精神的にきついです」


く、あまりの恥さらしな体制に顔が赤くなってしまったのが分かります。そして、何とか隠そうとするとかえって意識してしまいさらに赤く……や、やめて。これ以上赤くならないで。皆さんから…………あれ? 皆さん固まってます。中には倒れている人も。サイトは……固まる派。


今の内にサイトの腕からするりと抜け出し、脱出成功です。


「……どうかされましたかー?」


これはどういう状況なんでしょうか。固まっている理由は何なんですかね?


思い当たる事は………………ないです。


えー? どうしてですか?


ま、いっか。皆さん動き出しましたし聞いてみましょう。


「サイト、何固まってるんですか?」


私の言葉に対し、驚いた表情を見せてきます。あれ、何か見落としてましたかね?


「分からないんだ……ふ〜ん、へ〜」


む、嫌味な笑みが発動。この笑みを見た時、何かしら私は不幸に見舞われる可能性があるのです。今回は一体何でしょう。ブラフだと嬉しいのですが…………。


ん? サイトが後ろを見るよう首で指図して来ます。




振り向く。


サイトを見る。


ダッシュ!!


私はさっき私が墜ら……何故か割れた窓硝子をくぐり抜け、中庭へと疾走。


何故追われてるんですか!?


くぅ……皆さん速い速い!!


徐々にじわじわと追い付かれている!!


あ、そうです!! 飛べば、飛行ユニットで飛行すれば逃げ切れます!




PFM(個人火器モード)でしかまだ使えない物質創造。つまり、発動するにはディーウァの協力が不可欠なのです。しかしサイトに会った時、モノクル以外を消去したのですが、モノクルだけは残しておけば全兵装が創造可能。


そして私は……はい、全部消去してしまいました。ディーウァは!? もう! いないです!


こうなれば【身体強化】。これでだ・ん・だ・ん引き離していけてます。


いや……数は減りましたが、来てます! く、精霊の加護とかいう奴でしょうか!?


ふふふふふ、残念ですが私の魔力はずば抜けて多いですよ。術式に魔力を強引に流し込み一気に高速化。ついでに風圧が厳しくなってきたので【魔法障壁】。




よ、よし。全員振り切りました。


ふふ……ここ、ドコ?






迷いに迷って宮殿へと帰還出来たのは、正気を取り戻し私を捜しに来た捜索隊と一緒にすっかり夜が更けた時刻でした。


捜索隊の面々は皆さん謝罪してくれるのですが、理由は目をそらして答えてくれません。詰め寄ると、大袈裟にのけ反られます。


何で? 私、悪い事しましたか?


軽く傷付きました…………。


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