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64、個人火器モード(Personal Firearms Mode)




薄暗い……。


私は……?


私は、どうして私はこんなところに寝かされているのでしょうか。


『解毒完了。コード・イエロー解除』


機械的な音声と共に、上部から光が差し込み始め、やがて私は箱みたいな物に入っていた事を知ります。


取り敢えず、上半身だけ起き上がり周りを確認。


私は半透明のドームの中、多数の機関銃に囲まれ四角い箱に横たわっていたみたいです。半透明のドームの先には多数の人影が見えますが、ぼやけてて誰が誰だかは分かりません。


これは、どういう状況なんですかね?


思い出して見ましょう。

確か……私は料理を、あ。そう、料理を食べたら気分が悪くなったんでした。


そしてスライドした箱の蓋に描かれた赤い十字架。


これらから、私は何らかの医療行為を受けざるを得ない状況に陥ったのではないかと思います。


しかし何故、この十字架からそんな意味が読み取れるのでしょうか?


そこが分からないと、答えが分かるのに計算の仕方が分からない算数の問題と同じです。または、完成はしたが、製造方法を忘れた世紀の発明品。


『ご主人様〜〜!! よかったです!!!』


「ディーウァ……」


しかし思考はいきなり私に突貫してきたディーウァにより中断させられます。いや、聞きたい事があったのでちょうどいいかも知れません。


「何で私、こんな場所にいるんでしょう?」


『覚えてないです?』


「はい」


正確に言うなら覚えてはいますが、事態を理解出来ていないです。


『ご主人様は毒を飲んで、それでそれで、ご主人様の物質創造で解毒をして成功したのです』


毒……そういわれれば、箱の蓋が開く時に何かそんな感じの言葉を聞いたような気がします。ですがそれより重要な単語が出て来ました。物質創造? かなり大層な名前ですね。


「物質創造とは何ですか?」


『え〜? ディーウァを創造したのも物質創造です。覚えていな……あ、そーいえば別のご主人様に創造されたです』


「な……? 別の?」


一体どういう意味でしょう? ディーウァを生み出したのは無意識下の私でなく、別人? 冷静に考えてみると無意識だろうと意思を持つ小人なんてそうそう生み出せる訳がありません。


『ディーウァはご主人様の前の記憶から創造して貰ったです』


は……? 何て、言ったのでしょう。ディーウァは記憶喪失前の私が創造した?


「そ、それはどういう事ですか!?」


『ご主人様が気絶した時に、記憶のご主人様に創造して貰ったです』


気絶…………あぁ、船が沈没して漂流した時ですね。しかし、ディーウァを何で創造したのでしょう。うーん、確かディーウァは飛べるらしいですから、漂流の危機に記憶喪失前の私が覚醒し、記憶喪失前は使えた物質創造によりディーウァを……。


私の中にもう一人別人格がいる?


『ご主人様?』


そして私が体の主導権を失った時、表層に出て来ている?


不安が生まれます。もし、記憶を取り戻すと私はどうなってしまうのでしょうか。記憶の私により消されるのか、それとも分かれた人格として統合されるのか…………。


記憶を取り戻すのが、急に恐ろしい事に思えて来ます。


『ご主人様! ご主人様!?』


「あ、は、はい。何ですか?」


おっと、思考の波に飲まれてしまったようです。


『大丈夫です?』


「大丈夫ですよ。ただ、私ディーウァがどうやって誕生したのか知らなかったので少し考えてただけです。それより、物質創造てどんな事が出来るんですか?」


取り敢えず話題を変えます。


『記憶のご主人様によると、機械なら見た事がある物を何でも創造して、さらに改造出来る能力と言ってたです』


何というか、かなり反則的な能力ですね……。


「私も使いたいものですね……」


ついつい羨ましくて、愚痴がこぼれてしまいます。だって、ねぇ?


『ご主人様も一部なら使えるですよ?』


「ほ、本当ですか!?」


そんな力が私に!? 犯人確保の為にも是非とも欲しいです! 思わず立ち上がってしまいます。


『はい。ディーウァの個人火器もーどに、記憶のご主人様が近・中距離用兵装を厳選したそうです』


「ど、どうすれば使えますか!?」


『ディーウァに言ってくれれば出来るです』


「なら今!! 今やってみて下さい!!」




『分かったです。PFM in operation(個人火器モード実行)』


ディーウァがいきなりいつものぼんやり口調から、真面目な口調で何かを話した途端、何の前触れなく私はその個人火器モードとやらを装備してしまったようです。


「これが……物質創造の力…………」


私は今、何故か片眼鏡を掛け、背中に翼を浮かせ、腰にベルトポーチを付け、腰の左側のベルトにホルスターを付け、反対側には銀色の筒を提げています。


ホルスターの中の銃はもちろん、翼もまあ用途が分かります。しかしこのモノクルは何でしょうか。記憶喪失前は視力が低かったのでしょうか。


『記憶のご主人様は、そのモノクルに説明書を入れたそうです』


「わ、分かりました」


とは言われても……あ、何かモノクルに文字が浮かんで来ました。




〔はじめまして、イブキ‐アレシアさん。私は分割された記憶の内の一人。アレシア‐J‐バルカです。

先ず私の性格からして別人格に対して怯えている可能性が高いですから安心して貰いましょう。記憶喪失が解消されてもあなたは消えてなくなりませんよ?

私とあなたともう一人、三人は統合されます。


さて、不安が解消された所でこの個人火器モードについて解説したいと思います。これは私達の実戦経験から、主に零メートルから千五百メートル先の距離の敵を殲滅する目的で創造された物です。


先ず、ホルスターに収められたセミオートマチック拳銃P239。装弾数八発。残念ながら手が小さいので、八発しか撃てなくても両手持ちじゃないと使えません。

次に反対側に提げられているのは赤光剣。赤いスイッチを押すと、一メートルの長さの光エネルギーの剣が現れます。大抵の物質はその高温で焼き切れますから、接近戦にて使用して下さい。

ポーチの中には予備の弾倉、M84音響閃光手榴弾、M67破片手榴弾、スタンガン、スタンバトンが入っています。これらはポーチに手を入れ、上記のいずれかを欲しいと思考すると取り出せます。

そしてあなたが疑問に思っているであろうモノクル。これも思考により作動し、対象の魔力を測定、各種解析、創造した兵器との交信及び現在位置の確認など、かなり多用されると思います。

最後に翼、ですね。これは飛行ユニットと呼ばれ、やはり思考により自由に飛べます。

あ、あともう一つ。モノクルに兵装選択の項目がある筈です。そこから一つだけ兵器が創造可能になっています。さらに登録した兵器は、思考するだけで即座に使用可能です。初期設定は20ミリガトリング砲ファランクス改にしています。


以上で個人火器モードについての説明を終わります。個人火器モードを使う内に、何とか物質創造のコツがつかめて欲しいと思います。私……自分は物質創造習得に八年かかったが、イブキ‐アレシアなら五年以内に習得が可能な筈だ。頑張って欲しい。ん? ま、待て。分かった。割って入ったのは悪かっ…………。


コホン。


後伝えたいのは、あなたは無意識に魔力使用をかなり制限しています。私が調査した結果、この体は平均的な退魔師の魔力を一万として、約千百十一万五千八百三十八倍(小数点切り捨て)魔力を保有しています。さらに詳しく述べるなら、平均的な退魔師の魔力回復速度が二千/日(睡眠五時間)に対し、約五十五万倍早いです。しかしながら回復速度は別として、あなたは魔力を三十万程しか使えないように体に制限をかけています。いや、私も無意識下に制限かけて千万ちょっとしか使ってなかったので人の事言えないですが…………とにかく、私もこの制限を取り払うよう努力してみますからあなたからも何らかの揺さぶりをかけて下さい。


次に、魔族について知らせておきます。魔族は様々な政府内に潜り、世界秩序の崩壊を画策しています。戦争は第一段階に過ぎません。しかも、その潜り込んでいるスパイは現地民を洗脳しただけの下っ端です。私が傍受した情報によれば、第二段階には生物兵〕




ここで、途切れてます。


………………何というか、びっくりさせられっぱなしですね。


何が何だか…………。


「何で途切れているんでしょう……」


『それは気絶して大変だったですから、急いで書いたからです。あれ以上書いてたら間に合わなかったのです』


私の呟きに、律儀にディーウァが答えてくれます。

ん……? 何かおかしいような……。漂流は確かに恐ろしいですが、そんなに緊急性があるのでしょうか?


「船が沈没した後、漂流した程度で文を書き上げず、急いでディーウァを創造したんですか?」


『それはサイトが怪我したのです』


「あぁ」


ディーウァが私の周りを飛びながら答えます。


『そ、それよりカプセルから出ないと魔法障壁は解除されないです。みんな心配してるです』


ふえ? う……半透明の魔法障壁なのに、サイトからの怒りの感情が鮮明に見えます。




どう言い訳しましょう…………。


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