箸休め十六品目
その部屋はとてもきらびやかだ。高価な宝飾品がふんだんに、しかし無造作に飾られている。
そしてその部屋には二人の男女がいた。
女は艶やかな金の髪を結い上げ、その美しくもきつい顔立ちで男を睨んでおり、男はそれを受け流している。その視線には慣れているらしい。
「何なのあのガキは!?」
女は苛立っている。近くにあった高価な壷を蹴り壊し、絵画を引き裂く。これらで庶民なら一生が暮らせる程高価な作品だが、女にはただの道ばたの石と同じ認識でしかなかった。
「……何でも人間だそうでございますよ」
その言葉を聞き、女は嘲笑を浮かべる。
どうやら女の機嫌は良くなった。女は人間を下等な存在だと考えているらしい。女に倣い、男も作り笑いを顔に張り付ける。
「人間……あの愚かな人間?」
「その通りでございます」
「その愚かな……愚図な……人間風情が、あの方を…………消しなさい」
「承知しました」
「あの馬鹿は?」
「見事に嫉妬しております。醜いですな」
女の部屋から退室した男は、別の男と会っている。
「そうか、よくやった。お前には近い内に褒美が降るだろう」
「……ほう。降りますか?」
「あぁ。降る」
男は、その返答にひどく満足しているようだ。
「では、準備もありますので……」
別の男がうなづくと、男は女の元へと戻って行く。
別の男は口の端を歪め、呟く。
「あぁ……降るとも」
何がだろうか。