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50、虚構と虚構




私の歓迎会という名の人間観察会。


私の一挙一動が注目されています。




歓迎会は村の広場に焚火を焚き、テーブルを引っ張り出して色々と料理を並べ和気あいあいと始まりました。


しかし……私が食器を持っては驚き、食べ物を口に入れては驚き、飲み物を飲んでは驚きって……私は珍獣か何かに近い扱いを受けてます。


後は村長さん、名前はリップだそうですが、彼女を筆頭に私を触りたがります。


少し触れると大喜び。何だかなあ…………。


今はリップさんが独占宣言をし、私を占有しています。


批判が轟々と噴出しましたが、村長という権力を振るい封殺。

エルフ内で村長という地位は高いみたいです。

或いは、リップさんが恐ろしいだけかも知れませんが……。




しばらくの触れ合いタイムが過ぎると、質問が機関銃のように飛び交いました。あまりの多さに、リップさんが一人一つに制限。


という訳で今はリップさんに髪をいじられながら、質問に答えています。

村人は約五十以上はいます。

長くなりそうです。




皆さん疲れたのでしょうか、半数以上が眠っています。


あ……私も何だか……眠い…………。











「……?」


ここは……あれ、手足が縛られています。


そして馬の蹄の音、振動、僅かな隙間から見える景色から、私は馬車に乗せられていると判断します。


私以外に人はいません。業者だけ、ですかね。


私がヤニトーさん宅から抜け出したのが朝9時頃、歓迎会は二時間程は続いてました。

そして今外は真っ暗闇。


かなりの時間寝てました。いや、村人のほとんどが寝ていた事から多分料理にでも薬が入っていたのでしょう。


つまり、村人以外の第三者の犯行。


目的は何ですかね。エルフ内での人間の希少価値は高いらしいですから、金銭? それとも実験動物として扱うのでしょうか。


何にせよ、脱出しなくては。


縄はきつーく結ばれてますね。平素なら背中に常備しているナイフは、こんな事になるとは思わなかったので持って来てません。


どうしましょう。抜け出る方法が全く思いつきません。


魔力は……? 封印されてますか、使えるのならば【灼熱】をピンポイントに縄へ発動して焼き切ろうと思ったんですが。


むー、手詰まり……。




あーうごきたいですー自由がー欲しーですー。


イライライライライライライライライライラ。


「うぎゅにゃーー!!! がにゃーー!!」




「うるさいっ!! 黙れ!!」


私の自暴自棄が気に食わないらしかったらしく、誘拐犯兼業者が小窓から顔を出し怒鳴り込んで来ました。


ちい……カッコイイじゃないか。死……コホン。


しかも正義感溢れる顔付き、何か悪はオレが見逃さない的な。死……ゴホン。


「私を解放しなさい。田舎のご両親が悲しみますよ。ああ、私達の息子はとうとう幼児趣味に走ってしまったのか……。しかも誘拐まで……」


ならばと何かこちらが正義なんだよ、と説得してみます。


「誰が幼児趣味だ!? 人間め、我々エルフはたやすく侵略なぞされんぞ! いくら美しき姿でもオレの目はごまかせん」


は? 何言ってんですこの人。侵略?


「ふっ。その惚ける演技は中々のものだ。オレも正体を知らなければ騙されたかも知れん。だがオレは知っているのだよ。貴様はエルフを侵略する為に派遣された人間側の工作員だとな!!」


わー、素晴らしいまでの被害妄想。いい迷惑。


「そしてその功績で一気に昇進!!」


それ明らかに私欲だから!!

全く正義感ない!!


「ははははは!! 今までオレを馬鹿にして来た奴を逆にこき使ってやるぜ!!」


段々悪に堕ちてます!!


「という訳でぶっちゃけオレが昇進出来るなら人間なんてどうでもいいぜ!!」


あ、完全にダークサイドに堕ちて行きました。なら、遠慮はしないですよ、ふふふ……。


「私、本当に悪い事してません。もし上司が無罪の人間を連れて来たと知ったら……」


「はっ! オレの心は硝子のように固いぜ! そんな話で揺さ振りをかけられると思ったのか!?」


硝子て……脆いんですね…………。確かに。目が泳いでます。


「上司が知ったら首どころか、人間にエルフの悪い印象を与えたとして刑罰があるかも……」


「な……う、嘘をつくなよ……」


あ、へたれた。イケる! あと少しです!


「実は私、あなたが特異な事態にどれだけ対応出来るか調査する監査部の者です」


「え……は、え?」


「残念です。私を信頼すればあなたは同期の出世頭になれたんですがね……」


「な……え、まさか、だって、耳……」


「これは私の上司に耳が丸くなるように見える幻覚をかけて頂いたのです」


「そ、そそそそんな……」


あ、何か楽しくなって来ました。


「はあ……。あなたの上司は大層期待してましたよ。彼ならやり遂げる、とね」


「あの課長が……?」


「ええ。あなたの出世祝いに大変高価なお祝いの品を既に用意してるそうです。これで失敗なんてしたら……」


「そ、そんな…………オレは、オレは何て失態を…………う……うぅっ……」


あ、泣き出しちゃいました。そろそろ持ち上げますか。


「とはいえ……あなたが言っていた可能性は全くない訳ではありません。それに気がついたあなたはやはり優秀な人のようだ」


「…………?」


「私が執り成しましょう、と言っているんです」


「ほ、本当ですか!?」


「えぇ。それにしても今までこの試験をしてきましたが、危険性を指摘したのはあなたが初めてです。むしろ、それに気がついた慧眼に皆さん驚嘆し、歓声を浴びると思いますよ」


「ありがとうございます!! 本当に……本当にありがとうございます!!!」


う……若干心苦しいです。しかし、まだ当初の目的は達成していないのです。


「ではまず、縄を解いてくれませんか?」


「あ、はい!」


おぉ……私の話術によって彼を制御していますよ。




縄を解いた後も何度も何度も謝って来ます。


や、やめて……心に何か刺さる…………。


「さて、あなたはこれから戻るんですよね?」


「はい、税を運ぶ馬車の手配もしなくてはならないですから」


うわ……すごい好青年に見える。格差がものすごい。ま、それもこれで終わり。帰りましょう。


「困りましたね。私はまだあの村でやる事があるのですが……」


「え……? 試験をしに来たのでは?」


「べ……別件も頼まれてましてね。では失礼します」


「あの! しっかりかっちり?」


「は?」


「貴様!! 騙したな!!! 我々税務官の合言葉を知らないとは……」


あれ、そんなはずでは……。う、迂闊でした。


「さあ!! 答えろ!!」


「確かに私はあなたを騙しました……しかし私は自由です!! さらば!!」


「くそ!! オレは何て馬鹿なんだ!?」






「けほっ」


「「………………」」


な…………うっかり、首輪を外して貰うの忘れてましたあ!! 


「ははははは!! 天はオレに味方した!!はーっはっはっはっはっは!!!!!」


こ、こんな馬鹿に負けた…………立ち直れません。うぅ。


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