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48、不安




とりあえず食事となり、私達は席に着きます。


出された料理はパンに、何かのスープ、やけにトゲトゲがある黄色いお魚の塩焼き。


……食べられるのでしょうか。

あ、お、お魚の事じゃアりませんヨ?


私が言っているのは、一月も飲まず食わずの人間がいきなり食べたりなんかしたら、死ぬのではないかという事です。


「私は食べても死なないでしょうか……」


「大丈夫♪ ワタシが精霊の加護をかけてるから♪」


「精霊の加護?」


「そーだよー♪」


何、ソレ?

私は疑問を心で訴えてみます。

喋るのもめんどくさいです。

やはり、一ヶ月も寝て衰弱してしまったんでしょう。


運よくエルフの男性が気付いてくれたようです。


「僕らエルフが精霊魔法を使える事は知っているかい?」


私はうなづきます。


「精霊の加護っていうのは精霊に頼んでその人の健康を維持、回復する魔法なんだ」


成る程。しかし、一ヶ月飲み食いしない人の健康を維持出来るとは……体の構成物質は何処か………………わ、私が寝たきりの間排泄物とかはどうなってたんでしょうか。聞かないべき? き、気になる……でも、もしきちんと拭いたから安心してとか言われたら立ち直れないです…………さりげなく聞いてみましょう。


「その間、食べたり、飲んだり、出したり、はどうなってたんですか?」


他の言葉を混ぜ、本音を隠します。ど、どうでしょうか……せめて、サイトには見られていない事を祈ります。


「大丈夫。加護を受けている間は体内物質だけで生きていけるんだ。三ヶ月までは、だけどね。だから少しなら食べても死んだりはしないよ。たくさん食べたりしたら死ぬけどね」


何故か微笑まれながら返答されました。というか、サラっと死ぬと言われたような?

しかし……なら、恥はかいていないようです。よかった…………。


口がカサカサなのでスープを飲みます。いや、死ぬ気はないのでスープだけをいただきます。


あ……五臓六腑に染み渡ります。

美味しい……。


「ねーねー、おいしい? おいしい?」


「はい。とても」


何だか、優しい味です。心が温まります。




ほのぼのとお昼ご飯を食べ終えた私達。

次は、お話の時間です。


「まず、エルフの男性のお名前を聞いてもいいですか?」


「そうだね、僕はヤニトーです。よろしく、アレシアちゃん」


「ワタシはプルチェだよ!! よろしくね♪」


「よろしくお願いします。あと、小人さんにも聞いていいですか?」


今まで、お昼ご飯を食べていて話し掛けなかったんですが、話し掛けられてすごい嬉しそうです。


『ご主人様、私はディーウァなのです! よろしくです!』


「ご主人様……?」


これは、私に向けて放たれた単語でしょうか。


『ご主人様はご主人様です!』


いや、意味分かりません。


「何で、私はご主人様なんですか?」


『私はご主人様に創造されたです! だからご主人様なのです!』


創造て……私は絶対神じゃないんですから…………。


「私、そんな事出来ませんけど……」


『ご主人様は出来るのです!』


「この娘も可愛い♪」


あ、ディーウァが捕まりました。確かに頬っぺたを膨らませて怒る姿は可愛いと思えるものでした。


私は、握り潰したりしないで欲しいと願いま!?


「ふふふ〜♪」


「ちょ……は、離して下さい」


私まで捕獲されてしまいました。


『つ、潰れちゃうです…………』


言葉は通じ、ディーウァは私の頭の上に置かれます。しかし、言う事は聞いてくれないみたいです。離してくれないです。


う、人肌の温もり……温かい……眠………おやすみなさい。


「あう〜♪ 寝顔も可愛いよ♪」


「……はあ。プルチェ、ベッドに寝かせておいてあげなさい」


「は〜い♪」











怖い。死ぬのが怖い。


何故?


自分という存在が消えるのが怖い。


怖い。殺すのも怖い。


何故?


殺した人の存在が消えてしまうから。


でも、ヤラなきゃヤラれるよ?


それは理解している。


でも、思ってしまう。


自分の存在は、人を殺してまで維持する価値があるのだろうか。


ナラ、シネバ?


ワタシガコロシタヒトビトガ、ワタシヲカコミ、ワタシヲキリキザミ、ワタシヲヤキ、ワタシヲコロス。










「……あぁ!……はあ……はあ……はあ…………」


……夜、ですね。


あぁ、汗まみれです。気持ち悪い。


お風呂、あるでしょうか。

私はベッドを抜け出し、食卓へと向かいます。




暗いですね。誰もいません。


この家は一階しかないみたいです。つまり、その分部屋が沢山あります。


風を感じたい。


閉塞感から逃れたい。


……外に出てみますか。




若干迷いながらも外に出られました。


いきなり、海が見えます。


暗い海……頭が、痛い。風が、冷たい。


心が、寒い。




私は、人を二桁は殺していたみたいですね。


あれは、正当防衛。私に非はない。


ただ、私はそうまでして生きていいのでしょうか。




……私は、馬鹿ですね。


生きる価値、権利なんて誰も持ってないんです。


生きる意思、それがあるかないか。


それだけ。


なのに……何故悩んでいるのでしょう。


そこが、分からない。


殺した罪悪感?


かも知れません。


多分……慣れるか、忘れるかしか対処法はないんでしょうね。


殺すのに、慣れるか……あまり嬉しくなさそうな心の成長です。


成長と、言えるのでしょうかね。


思い出した記憶。


私は魔族と敵対していて、その追っ手を殺した。


理由は、分からない。


何故追われているのか、何故殺したのか……私は、誰なのか。


それが分かれば、心に平穏を、行動に意義を見いだせる気がします。


早く……記憶を取り戻さないといけませんね。


『ご主人様! 何してるです? 寝た方がいいです』


私がいつまでも戻らない事に気付き、ディーウァがやってきました。


「……えぇ、そうですね。戻りましょう」


ディーウァ……彼女が何者か、何故私をご主人様と呼ぶのかはわかりません。


しかし、私を心配している事は分かります。


サイト……なんだかんだ言っても、私を気にかけてくれています。


私は必要とされているのでしょうか。


それとも、必要・不必要という枠を越えた関係でしょうか。


分かりません。


でも、とりあえず戻りましょう。


ただ、私に利用価値があるから付いてくるのではないと祈りながら…………。


あぁ、私はただ人恋しいだけなのかも知れません。


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