箸休め十四品目
ペロポネア帝都レクサンドリア陥落。
この報は全世界に衝撃を与えた。
それは庶民の主な交通手段が徒歩と馬車にも関わらず、僅か二週間程で末端の村にまで広まった事から分かるだろう。
二大国家の一雄の心臓が潰された。
これはロミリア兵の志気を大きく上げ、ペロポネア兵の志気を大きく下げた。
その結果ペロポネアの北部・南部防衛線は各所で破られた。
特に南部防衛線を破られたのは痛い。
南部防衛線が破られた事により帝都占領軍はペロポネア軍に包囲される心配が無くなったのだから。
恐らくだが、ペロポネアは南部全域を放棄せざるを得ないだろう。
この重大事変は他方にも大きく影響を及ぼす。
ペロポネア側に付いていたダキア王国、都市国家スパルタの立場は苦しいものとなる。
しかしダキア王国は海の守りをペロポネア海軍に頼っとおり、スパルタは既に虫の息。
どうしようもない。
そしてロミリア共和国のチャールズ大統領は一転英雄扱いである。
既に講話も近いとの噂も流れる。
しかし帝都占領軍は失敗を犯していた。
皇族を取り逃がしたのだ。
現在皇帝は第二の都市ティオキアに逃れ、強固な防衛線を敷いている。
もう同じ作戦は通用しない。
皇帝レノンガルドは徹底抗戦を主張する右将軍や宰相には反対であった。
これ以上、民の犠牲を増やしたくはない。
ロミリア共和国は歴史的に潔く敗北を認めた場合、寛大な態度を取る。
ならば、潮時かも知れない。講話を打診しよう。
…………一矢報いた後で。
後々、彼は、この判断を後悔した。
さっさと講話に応じるべきだったと。
ペロポネアが有利な条件で講話を締結するには敗北のままではいけない。
皇帝は飛竜部隊による空襲を用いる事にした。
それに便乗している国家があるとは知らずに。
帝都陥落から一ヶ月。ペロポネア飛竜部隊が襲ったのは、ロミリア首都に近い小さな町。
あまり被害を与え過ぎると、ロミリアが講話に応じない可能性がある為である。
飛竜部隊は命令通り、軽く魔法を放ち、人々を驚かせた後、存在をアピールしながら帰った。
次は、首都をやるぞ。
だから今の内に講話しといた方がいい。
そう、ロミリア上層部に告げるかのように。
しかし、次はなかった。
皇帝が発した命令を傍受した魔族の国、レークティスシムスは直ちにACAC−186−1−02レークティスシムス級無人航空母艦二番艦ヘンリーを派遣。
飛竜部隊に擬装した艦載機を用いて、ロミリア首都を火の海にした。
そしてアルバランガの二大国家は総力戦を始める。
滅びの音が忍び寄る。