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四、入学前日



一週間程経ち、合格通知が届いた。私は魔法科に志願したが、技術科の一年生にも合格した。魔法科は四年生に編入である。更に特待生。特待生とは、普通人には使えない精霊魔法が使えたり、テレポート等の特殊能力があったり、二年以上飛び級した人が対象である。特待生には授業料免除や学内施設の無料使用等の特典がある。


魔法科に限らず、他の科も大体一年生は常識、二年生は基本、三年生は応用、四年生が実践で普通はここで卒業で、言わば大学卒業である。五、六年生は研究、つまり大学院生である。


私としてはさっさと五年生になり、機密資料が見たかったがしかたない。




ロミリアを出て、シシリーにての寮生活が始まる。

特待生は、特待生、学年最優秀者が集まる知識の塔に住む。部屋は一人部屋らしい。


合格通知が届いてから三日後の今日、出発する。時期外れに試験を受けたので、入学式まで時間がないのだ。


家族や近所の人が集まり見送られた。


「頑張れ!」「立派にな!」「泣かないようにね!」

等だ。


馬車には、お母さんとお父さん。ロミリアを抜けるまでは一緒にいるそうだ。


「アレシア、学園にはあらゆる人間がいる。中には小さいからって馬鹿にされることもあるだろう。だが、大丈夫、アレシアが一番だからな」


お父さん、それは励ましですか?何かただプレッシャーかけただけのような……


「さて、マリー。降りないと」


「あと少しだけ…アレシア、あっちに行っても寂しいなら帰って来てもいいからね」


私はお母さんに抱きしめられている。私も少し寂しい。情が移ったみたいだな。


「さようなら、お母さん、お父さん」




馬車に揺られて約五時間。日は高く上がり、今は大体2時だ。


シシリーの東の寮街に入る。四階建ての石や煉瓦作りの建物が並んでいる。

その中に一つだけ大きな建物がある。あれが、知識の塔だ。あの建物だけは、大理石が使われ優雅な雰囲気を醸し出している。


今日は、祭日だから人はいなさそうだな。


ちなみにこの世界には曜日はなく、三十日で一月の月が十二で一年を構成している。祭日というのは神に感謝する日であるが、この世界の神はギリシャ神話型なので信じてない人にはただの休日にしても許されるし、熱心な信者を除けば皆休日として過ごしている。

一年を三百六十日としているため、今は九月だがまだ実際は八月だ。

この世界の人々は、昔と季節がずれていることに首を傾げているだろう。


知識の塔には学年最優秀者三十人と特待生五十三人が生活しており、一階が玄関兼寮監の部屋、二階から九階は二人部屋が五部屋、十階は寮長の一人部屋と二人部屋が三部屋、寮長の部屋は二倍の大きさである。


ともかく、知識の塔の大理石の観音開きの扉を開け、中に入る。


中は、まるで高級ホテルみたいな造りだ。

中央に螺旋階段があり、入って左側にホテルのフロントがある。

寮監に挨拶しなくてはならないので、フロントのベルを鳴らす。


「はーい、何か用ですか?」


出て来たのは、茶髪に茶眼の美人のメイドさん。


「…えーっ……と。今日からここに住むアレシア‐C‐バルカです。よろしくお願いします」


「あら、あなたが…私はここの寮監のミリア‐Y‐サークリフです。こちらこそよろしくお願いしますね」


自己紹介をした後、寮の規則等の説明を受けた。門限はないが常識は守って欲しいこと、食事はキッチンがあるので各自調理すること、ただし知識の塔の近くに安い寮の食堂がある等。


私の部屋は十階の空き部屋があてがわれた。

ミリアさんに荷物運びを手伝って貰った。まあ、替えの服とか。本が多くて辛かった。


部屋は上質な木のドアにリビング兼寝室とキッチン、トイレ、シャワールーム。

六歳には余りある環境である。

ミリアさんにも


「何か困ったことがあったらすぐ言って下さい」


と心配された。

だが心配無用。私は家事については向こうでやっていたのだ。


……キッチンが、でかすぎる。椅子がないと何もできない。




次は買い物だ。自炊する以上色々買わないと。


待たせていた馬車を使い、北の商店街へ向かう。


商店街は学生がよく使う他、南の住民達も見かける。


先ずは、包丁や鍋等だ。

鍛冶屋に入る。

各種台所用具とついでに食器も買う。


……何故か値引きしてくれた。???


次に食材を………




皆が値引きしてくれる。サービスデイだったのだろう。あとはここも人情にあついようだ。頭撫でられたし、抱っこやら高い高いやらされたし。ロミリアっていい人と誘拐者が多いな。




もう日が暮れて来た。

寮に戻り、馬車には帰って貰う。荷物は機械兵に運ばせた。


「ふう」


思えば、六年ぶりの一人暮らしだ。いや、あの頃は光がいたか。


魔力灯の明かりの下、簡単な豚肉とキャベツ入り塩スープとパンで夕食。まだ、料理の腕は落ちてはいない。


夕食後まだ寮長に挨拶してないことに気付いた。面倒だなあ。でも行かないとさらに面倒な事になりそうだ。


渋々、左隣のドアをノックする。


「入っていいわ」


ドアを開けると金髪をツインテールにした美少女が立っていた。

目は碧眼で顔は気の強そうな顔立ち。身長は百六十くらい。スタイルは凹凸が少ないがそれを凌駕するものを持っている。彼女は何故か唖然としており、私もその綺麗さに若干動きが止まりかけた。


「な、何か用があって来たんでしょう?」


「あ、はい。今日から隣に住むアレシア‐C‐バルカです。よろしくお願いします」


「そ、そう。わ、私はサハリア‐F‐クラウディウスよ」


「では、これで」


「ま、待った!」


?何だろう。問題なかったと思うが。タオルでもあればよかったか?


「ダメ!我慢できないわ!!!」


何で抱き着く。幼児趣味か?………………いや、きっと小さい子供のお世話が好きなんだ。そうに違いない。


「アレシア……ちゃん、と言ったわね。今日から私と一緒に過ごしなさい」


「あ、あの。離してはくれませんか?というか、私自分の部屋ありますから」


「いやよ。……まさか人じゃないとか?エルフなの?」


何言ってるんだ?頭大丈夫?


「私は完全な人間です」




しばらく、抱き着くという拘束を受けていると


「…………ふう。とりあえず満足したわ」


何だか満足されたようだ。


「そうですか。ではさようなら」


面倒な人にあったな。さっさと逃げよう。


「言ったでしょう。アレシアちゃんは私と寝るのよ」


「遠慮させていただきます…?」


何かガチャリと音がして、首に輪が………


「フフフ。逃がさないわよさあ、オネンネしましょうね」


「え?…ちょっと、やっぱり一緒に寝ますからこれ外して下さい」


「駄目よ。そうやって逃げるんでしょう」


「というか、何でこんなの持ってんですか!?」


「私、こう見えて有名貴族の一員ですから、賊を捕らえるために用意して来たのですわ」


しかも、魔力が使えない。私が困惑しているのに気付いたのか


「フフフ、賊を捕らえても魔法を使われては厄介ですからね。魔力使用不可の魔法陣が刻まれてありますわ」


確かに厄介だが……田口家はたったの三代で日本退魔師界の中枢に登りつめた一家である。


物質創造には極めて反則的な能力が含まれているのだ。

その名も……言いたくないが、あ、後払い……いや、これが、技名なんだ。


た、確かに名称はダサいが祖父が名付けたんだ。私ではない。そして効果は絶大である。


物質創造能力を行使した時、魔力がない場合は七日以内に後で使用分を払うことで使用可能になる。

ただし、七日以内に払われなかった場合払い終えるまで眠り続ける。


つまり、物質創造ならば私は使えるのだが。

見せる訳には行かないので、寝る迄は我慢である。


しばらくすると寝息が聞こえる。寝付きは中々いいようだ。


さて、何を創造しましょう。


鎖はベッドの脚に巻き付けられ、その部分に触れると騒音を出す魔法陣。


ベッドを持ち上げれば、鎖は外れる。


機械兵2を創造限界の四体創造し、持ち上げさせる。

鎖は脚をずり落ち、拘束は解けた。

そのまま起こさないようにベッドを下ろし、寮長室を出た。


自室で、首輪を外しにかかる。首輪は鉄製品で鍵で開くタイプだ。


ピッキングの能力を欲しいと思った。

これ、外せない。

少なくとも寮生に騒音を聞かせないと外せない。




まさか、このまま明日の入学式に……いや、たしか西に森があった。あそこならストライカー切断機やレーザー切断機を使えるだろう。


私は外に出る為、階段を降り門を開けた。


「アレシアさん。何処へ行かれるのですか?」


「ミリアさん、その、夜の散歩に…」


「まだ9時とは言え六歳ならもう寝ないといけませんよ…あら、その首輪は……まさか」


やめて!そんな目で見るな!


「ち、違います!寮長さんに不審者と間違えられて付けられたんです!」


「ああ、そうなんですか……私、てっきり……」


てっきり何だ。趣味とか言う気か。


「コホン…それで、迷惑にならないように外で外そうとした訳ですね?」


「はい、その通りです」


「私が外しましょうか?」


「出来るんですか?」


「はい。では首を見せて下さい」


ミリアさんは首輪に手を添える。魔力の使用を探知。首輪は錠前の部分が粉々になっている。

…分解か………


「ありがとうございます。これで明日恥をかかないですみました」


やっと、取れた。私は満面の笑みを浮かべた。明日のことを考えると晴れ晴れする。


「………………っ!。私は寮監なのですから当然の事をしただけです」




ともかく、安心して眠りに就いた。


機械兵2

機械兵より強くて頑丈なんです。

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