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45、「真冬の嵐」作戦




今、私達は夕御飯も食べ終えだらだらとしている所です。

しかし、私はサイトにある大事な事を話さなくてはならないのです。


「サイト、明日は私と一緒に来て下さい」


「何で?」


ちっ、ここでうなづいてくれればいいものを……


「それは三時間前の事でした。私は人捜しに協力してくれる仲間を見つけました。彼女達はチラシを作成し、人脈を総動員して聞き込みに回ってくれました」


「で?」


「私達は少し休息を取ろうと……あー、とにかくケイク屋さんに行きました」


オルディナさんに隠れてしまい、店名は見えませんでした。


「そして私はケイク屋さんで記憶を一部取り戻したのです」


サイトは話が読めないといった表情をしてます。まあ、本題を先延ばしにしてますからね。


「そして記憶により学園とは、ロウダス学園ではなくロミリア学園だと分かったのです。

これを聞いた仲間達は怒りました。

当然です。

今までの苦労は無駄だと分かったのですから。

彼女達は私にある要求をしました。それは彼女達が属する生徒会で送別会を開くからサイトを連れて出席せよ、というものです」


「で?」


「私と送別会に参加してください」


「めんどい」


「お願いします! サイトが来ないと私、コスプ…………」


「………………」


「ふ〜ん」


……何ですか、この心底むかつく笑みは。


「コスプレね。いいじゃん、やれば?」


「私はやりたくないんです!」


「でもオレは実害ないし」


「わ、私は精神的に多大なる損害を受けてしまいます!」


「貸し二つ」


「?」


何でしたっけ。それ。


「一つは船で落ちかけたのを助けた。もう一つは群集に追われていたのを助けた」


ぐ……確かに貸し二つありますね。


「貸しが三つになるけどいいのか?」


「いいです! だから来て下さいね!」


「……分かった」


サイトに貸しを作るのは嫌ですが、この際贅沢なぞ言っていられません。


ふぅ……とにかくこれで助かりました。






そして翌日、10時に海風亭集合です。


サイトは場所は知っているから後で行くと言って朝に消えてしまいました。


頼むから来て下さいよ…………




あの…………役立たずめぇ!!


嘘つき! 嘘つき嘘つき嘘つき!!!


「イブキ、約束は約束ですよ………あと、フードは取りなさい」


ミシェルさんがすごい嬉しそうな表情をしています。


「イブキちゃんならなんでも似合うって、大丈夫だよ」


エミリーさん……そっちの心配じゃないですよ。す、少しはありますけど…………


「安心しなって! 私が厳選しといたから!!」


むしろ不安! すっごい不安!!


私は、失意と諦観と怒りと寂寥感をまぜこぜに感じながら生徒会室に歩みを進めました。




生徒会室は以前の部屋が古くなった為、現在改修工事中。それでも業務はありますから近くの空き家を借りているんだそうです。


煉瓦造りの二階建て。お庭も完備。ちょっと贅沢ではないでしょうか。


ミシェルさんがドアを開け、みんな中へと入ります。

中にいた生徒会の皆様十五人。あぁ、この人数ならこの広さも納得です。


一階は居間と台所と多分トイレと多分お風呂。

今は居間の中央に様々な料理が並べられています。


……な、何か凝視されてます。主賓ですから当たり前ですけどあまり見つめられるのは好きじゃないですね。


「さあ、まずは食事にしましょう。皆さん座って下さい」


会長の命令により皆さん座り、私は主賓なので長方形テーブルの長い辺の中央に、右にラベンダさん、エミリーさん、左にミシェルさん、オルディナさんです。



料理は美味しかったですが、その後何があったかは黙秘権を行使します。


あれは……一生の恥。決して知られたくはないのです。


しかも、しかも……サイトは裏でこっそり見ていたんです!! 信じられません!!




そんなこんなで楽しかったロウダス島の三日間……あ、今日含めてたった三日しか経ってなかったんですね。


名残惜しいですが、今日デロス連邦へ船で向かいます。

サイトは私に何故だかついて来るそうです。


今は船の甲板からラベンダさん、ミシェルさん、エミリーさん、オルディナさんを筆頭に生徒会の人達を眺めています。


数々の見送りと激励の言葉に涙腺が決壊しそうです。あぁもう…………何で出会う人がみんないい人ばっかり何でしょう。すごい恵まれているような気がします。


「お元気で〜〜!!」


「我々!! 生徒会紳士同盟も応援しているぞ!!!!」


「頑張りなさい!!!」


「無理をしないで下さい!!! 無事が一番です!!」


「行って記憶、取り戻してこい!!!」


「皆さんありがとうございます!!!」




また、離れて行きました…………旅の辛さの中でも、一番堪えます。


「……先、部屋戻ってるから」


ふふ……サイトなんかに気をつかわれちゃいましたね。


今日も塩辛い雨が降り出しました…………




あれから甲板にずっといます。年末の寒さは凄まじいですね、体が芯まで凍りついた気がします。


それでも……今はこの寒さに身を晒したい気分なんです。


ん、誰かが後ろに……外套を掛けられました。


「サイト……」


「いつまでもここにいると風邪引くぞ」


「……放っといて下さい。私は寒くなんかないです」


サイトに心配されるなんて、私も駄目ですね。そして、心配しているサイトにつっけんどんな態度を取ってしまった事に嫌気がさします。


「手、冷たいぞ」


サイトが私を後ろから抱き抱えます。


「…………ふぇ……」


私の何かが決壊しました。


自らの存在の不安定感、それに伴う不安、絶望、焦躁、何故か追われる恐怖……気がつけば全てを打ち明けていました。


「……私は何者なんでしょう。何故、記憶がないんでしょう……自分が、分かりません…………」


「アレシア……オマエは…………!!!!」


「何を……!?」


私とサイトは船から飛び降りました。




瞬間、船は火炎に呑まれた。




響き渡る轟音。




砕け、船体が真っ二つになる。




「何…………? 何が…………」


何が起きて…………?


「アレシア……逃げるぞ!!」


私はただ、サイトに抱えられているのみ。


船を見遣れば、僅かな生存者。


そしてダダダダダダダと音がする。


空には、見慣れない金属質の何か。


ソレから何かが連続して放たれ、生存者が………………船から上がる火の明かりでよく見える。


それは肉塊。それはちぎれた腕。それは陥没した頭。それはグチャグチャに崩れた……ヒト。


死……死ぬ?

ここで、私は、死ぬ?

あの、肉塊に、なる?


イヤ……イヤダ……


―――――


ティアネェト、ノビリアネェヲタスケナキャ。


ワタシハウツ。


シタイガデキル。


       ―――――



マゾクノナイツウ。


ワタシハガクエンニハモドレナイ。


アナタタチヲ、イカスワケニハイカナイ。


クロコゲノシタイ。


アタマダケナイシタイ。


シタイスラナクシニユクモノ。


       ―――――



「……あああぁあぁああああアアァアアアァァァ!!!!!!」


「アレシア!? ちっ、錯乱か……気絶しとけ!!」










The authorization to excute Code・red.


Clause1、At present I fall into a dangerous situation because of I was trying to killed、raped、and so on.


Clause2、I lose consciousness.


Clause3、I lose power to resist.


・・・This situation is applicable to Clause1 and Clause2.


(コード・レッド施行に対する許可


条項1、現在私自身が過失問わず殺されようとしている、レイプされようとしている等、危険な事態に直面している。


条項2、意識を失っている。


条項3、戦意喪失している。


この事態は条項1、条項2が該当)




「…………Execute Code・red(コード・レッド、施行)」


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