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44、チョコリケイク




私達は寮から徒歩数分の「海風亭」でお昼ご飯を食べながら、聞き込みや人物網を使っての捜索に関して色々論議しています。


「…………という事で張り紙を今日中に製作し、各所に設置。及び生徒会の人脈を用いての捜索。これで以上です」


「ありがとうオルディナ。助かりました」


「何言ってるんですか。私に丸投げしたくせに……」


「ごめんなさい。でもオルディナに任せた方が確実でしょ?」


オルディナさんは生徒会副会長を勤めている女性の事で、最近安価になりつつある眼鏡が特徴です。聞いての通り会長であるミシェルさんに振り回されている苦労性な女の子。


さっきまでオルディナさんが計画した捜索概案を聞いていた所です。


こんな事させて何か申し訳ないですね。


「あの、協力ありがとうございます」


「いいんです、私もこれは好きでしてますから」


確かに好きでしているんでしょうね。すごい嬉しそうにしています。


今私はオルディナさんの膝上にいます。

何でも仕事代だとか。

しかし子供だという理由だけでこうなるものでしょうか。…………いや、ならないような気がします。後で考えときましょう。


「さて、では私は聞き込みでもしてきます」


「「「「駄目!!!!」」」」


せっかく意気込み新たに行動しようとしたのですが、出鼻をくじかれてしまいました。


「何でですか?」


「だってイブキちゃん危険だもん」


「???」


私のどこが危険なんでしょう?


「イブキちゃんは気付かない?」


ラベンダさん、全く分からないのですが……


「(どうしよう。自覚ないみたい)」


「(オルディナ、何か言い訳を考えなさい)」


「(無茶苦茶言わないでください)」


「(やばいよ、イブキちゃんが街中に出たら揉みくちゃになっちゃうよ)」


「(それ以前に私達が触れない……)」


「「「「とにかく駄目!!!!」」」」


うーん、何か事情があるのかも知れないです。私は助けられている身、素直に従っておきましょう。それにしても何をこそこそ話してたんでしょうか。


ロウダス事情により聞き込みは出来なくなってしまいました。


はて、何をしよう。


「じゃ、行こっか!!」


そんな折り、いきなりラベンダさんが叫び出しました。


「何処にでしょう?」


「私の部屋!!」


「それはさっきまでいたでしょう……そうですね、甘い物でも食べに行きましょう」


「賛成! 会長もたまには役に立つね」


「聞き捨てなりませんね。それではいつもは役立たずという風に聞こえるのですが?」


「え? そのまんまの意味だけど?」


その後ラベンダさんをエミリーさんが、ミシェルさんをオルディナさんが押さえ付けて何とかなりました。


店主さんに謝った時の諦観の表情に憐れみを抱きつつ、海風亭を後にしました。




しばらく歩いて着いた所はピンク色が主要素なお店。少なくとも私とは趣味が合わないでしょうね。


休日という事もあり中々繁盛しています。


そして……私は囲まれています。前にオルディナさん、右にミシェルさん、左にエミリーさん、後ろにラベンダさん。まるで大統領を狙撃から守るかの如く隙のない編成。というかオルディナさんの背中しか見えないので歩きにくいです。


お店に入ると会長特権により個室を使用。

ウェイトレスすら中に入れさせません。丸テーブルには私、ミシェルさん、オルディナさん、エミリーさん、ラベンダさんの順に並びます。

ま、いいや。何を注文しましょうか。


「…………」


「イブキちゃんは何がいい? イブキちゃん?」


「え? わ、私はこのチョコリケイクにします」


不思議ですが……これには何かがある気がします。


「イブキちゃん意外と新しがり屋?」


「何でですか?」


「このチョコリケイクは先月のロミリア料理大会で披露されてから爆発的に人気になったんです」


「へー、そうなんですか」


しばらく雑談していると注文の品が出来たようです。個室前で商品をウェイトレスから奪い、丸テーブルに並べられます。


これがチョコリケイクですか。まずは一切れ食べてみましょう。


「…………っ!!!」




―――――


ココハ?


アナタハ?


「味はどうたい、お嬢ちゃん」


ソレハ?


「へへ、まだ試作段階なんだがチョコリケイクと言うお菓子だ」


アナタガツクッタ…………



       ―――――



「イブキちゃん!?」


「だ、大丈夫、大丈夫です」


うげあ、チョコリケイクに顔を突っ込んでしまいました。

うーん、みんな心配しちゃってます。説明しないと。


「記憶が戻る時、意識がなくなるんです。だから大丈夫です。むしろ一歩進んだんです」


「ほ、本当に問題ないんですか?」


「突然倒れたんだよ?」


「大丈夫ですから」




何とかなったのはあれから十分は経った頃。


説得中は話し続けてましたからチョコリケイクは拭いきれず、べっとり顔についたままです。手で拭った程度じゃ取れなかったです。


「アレシアちゃん、顔に付いたの取りましょうか?」


そこに手には濡れタオルを持ち、準備が万端なオルディナさんが話し掛けてくれます。


「ありがとうございます」


私はオルディナさんの席へ……行こうとしましたがその前にオルディナさんがこっちに来てくれました。

濡れタオル、チョコリまみれになってますねぇ。


「イブキちゃん私も取ってあげる」


「結構です」


ラベンダさんからのお手伝いの申し出は却下させてもらいます。

そもそもオルディナさんが拭い終えましたし…………それ以前に、何で舌を出してんですか。


「ちぇ……」


「で、イブキは何が分かりましたの?」


「私はチョコリケイクの創作者と知り合いみたいです」


「「「「えぇ!?」」」」


「な…何でそんなに驚いてるんですか?」


「イブキちゃん…………」


な、何で驚嘆の眼差しを向けられているんですか?


「チョコリケイクを創作した人って……ロミリア学園の料理人なんだよね……」


それがどうし……!!


「……私の記憶には学食と書かれた金属板が掛かっていましたね」


「イブキが知っている学園はもしかしなくてもそっちだと思います。この学園には学食と書かれた金属板が掛かった学食はありませんから」


何という過ち…………会長、部下総動員してるみたいなんですよね。


いたたまれない空気…………


「ま、まあイブキちゃんの具合が良くなったんだからいいじゃん!!」


「そ、そうだよ!!」


あまり苦労してないラベンダさんとエミリーさんは気分を変える事に成功します。しかし…………


「イブキ」


「アレシアちゃん」


生徒会はフル稼動なのです。


「「落とし前付けろ♪」」


ひぃっ……何をされるでしょう。


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