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43、ロウダス寮にて




あ、まだお昼前だったんですか。

しかし……私は疲弊しきっています。

HPバーが赤になってます。


服を買いに来ただけだったのですが…………色々と周りが暴走したのですよ。


「イブキちゃん疲れてるの? おんぶしてあげようか?」


ラベンダさん……助かります。


「お願いします」


あ、すごい楽です。背中が暖かい……


「ずるいですよ!!」


「ラベンダばっかりずるいぞ!!」


眠………………




「あ、寝てしまいました。う……直視し続けていると何かが込み上げて来ます」


「分かる分かる!」


「「(静かに!)」」


「(ごめんごめん)」


「で、どうします? 確かお連れの方がいたはずですけど…」


「……誰も宿どこに取ったか聞いてないしね」


「じゃ、アタシ達の部屋に連れてくか?」


「そうしよっか……じゅるり」


「駄目です。私の部屋にすべきです」


「フフフフフ。ここは数の力を行使させて貰おう。エミリ! そいつを押さえて!」


「了解!!」


「あ、卑怯者!!」


「何とでも言うがいい! 勝つのは私だ!」


「貧乳!!」


「ば、馬鹿! それは禁句だ!」


「…………………………今、何と?」


「で、ですからあなたの胸が淋しい限りですねと言ったんです」


「ソノクチニドトキケナクシテクレル!!!!」


「はっ、速い!! きゃっ!!! な、何するんですか!!?」


「コノムネメ!!!」


「あ……揉まないで!! は、離しなさい!! くぅんっ!?」


「可哀相に……あの状態になったら一度頂点に上がるまで離さない……さ、イブキちゃん。あの二人はほっといて行こうか。…………ふふふふふ、二人きりか………」







「………うぅん…」


あれ、いつの間にか寝ていたようです。


今は……………あれ? エミリーさんが私を抱き枕にして寝ています。


ここは……どこでしょう。二段ベッドに机が二つ、本棚やクローゼットなど…………エミリーさんの自宅?


くっ……ぬ、抜け出せない……てぃ……よし。


私は二段ベッドの一段目から抜け出て、辺りを見回してみます。

どうやらエミリーさんとラベンダさんのお部屋らしいですね。


ドアを開けるとそこは廊下、同じ形のドアがずらりと並んでいます。

人の目線くらいの位置にプレートが掛けられ、だれそれの部屋か分かるようになってます。


寮……みたいですね。


あ、ラベンダさんとミシェルさんが……毎度の如く口喧嘩しながらやって来ました。


「し、信じられない!! 公衆の面前であんな事をするなんて!!」


「それは悪かったと思うけど……元々はミシェルがあんな単語さえ言わなかったら問題は起きなかったんだけどな」


「もはや次元が違います!! 幸い誰も見ていなかったから良かったものの、もし見られていたら人前に出られなくなるところです!!」


「だから、ごめんって」


今回はラベンダさんの分が悪いようですね。


「何かあったんですか?」


「聞かないで下さい」


「は、はい」


聞いてはいけない何かをラベンダさんはしたんですか。


…………気になる。


「(一体何したんですか?)」


こっそりラベンダさんに聞いてみます。


「(実はミシぇぐ…」


「聞いてはなりません。いいですね?」


ミシェルさんはラベンダさんの口を封じ、私に分かりやすいくらい強烈な威圧をして来ました。


おかしいですね。足が……膝が笑い始めました。


……私がこの話題に触れる事はないでしょう。




「お待ちなさい!!」


振り返ると三角帽子を被り、黒紫のローブを羽織っている厳格そうな五十代女性が立っています。


「ヌミデアさんにセレベルさん。そこの少女は誰ですか? 寮内に部外者は入れてはならないはずですよ」


「すみません、アウステール先生」


「それであなたは誰なんですか?」


おぉう、ぎらりと睨まれてます。


「私はイブキ‐アレシアです。ミシェルさん、ラベンダさんには人捜しの協力を私から願いました。それで流れでついくっついて来てしまいました。部外者立入禁止とは知らず規則を破ってしまいすみません」


「人捜し…………? 何やら事情があるようですね。セレベルさん、あなたのお部屋を使っていいですか?」


「どうぞどうぞ、ご自由に」


という訳でエミリーさんとラベンダさんのお部屋へ入ります。エミリーさん起きてるといいんですけど。何か叱られそうです。




エミリーさんは残念ですが熟睡中。

ラベンダさんがアウステール先生に気がつかれないように隠そうとしていますが、はみ出てますよ。


「セレベルさん、アラケルさんを起こしてあげなさい」


「はい!」


ずぼらなラベンダさんがここまでなるとは……多分先生いなかったら「私も寝る〜」とか言ってそうですからね。


「起きるんだ、エミリー!!」


「…んむ? 朝?」


「いやもうお昼だよ」


「遅刻するっ!!」


寝ぼけた時の台詞学校生徒編で上位入賞の実績があるぼけを披露してくれたエミリーさん。普段なら笑ってすむのですが……


「アラケルさん、今日はお休みです」


今日は先生がいるのでした。


「うえぇっ!? アウステール先生!?」


「アラケルさん、休日に何をしてもいいですが寝過ぎですよ」


「す、すみません……」


「では……アレシアさん、説明願えますか?」


意外と叱られなかったと思いましたが、こっちが気になるからですかね。


「はい」


という訳で今までのあらましを犯罪者である事は伏せて話しました。




………うっ……ううう…………ひっく……ぐすっ……


そしたら……泣かれてしまいました。


ラベンダさん、エミリーさん、ミシェルさんはぼろぼろと涙を流し、アウステール先生まで目を赤くしています。


「アレシアさん………不躾に過去を尋ねてしまいごめんなさい。お辛かったでしょう」


「イブキちゃん…………可哀相に……」


「記憶がないなんて……」



何か慰め合いが始まって数分、みんな落ち着いて来た頃アウステール先生がぽつりと話したのを聞きました。


「記憶喪失……ですか。噂ですがデロス連邦のジーヴス山にいる精霊なら治せるかも知れません」


それは有力情報ですね。

精霊は大気中に漂う魔力が意志を持った存在、その中でもジーヴス山にいる精霊は精神に関係する魔法に詳しいんだそうです。


「それに金髪と紫髪の知り合いも捜しているしね!! きって大丈夫だよ」


「そうですね。希望はあります」




「頑張って下さいね。応援してますよ。何かあったら私を頼って構いません」


そう言って職務へとアウステール先生は部屋から去りました。


「それじゃ、お昼ご飯にしようよ」


「そうですね。それにもうすぐ私の部下達が帰って来ます」


「じゃ、イブキちゃん。行こうね」


「はい」




あぁ……一日を濃厚に感じます。まだ午前中です。

これは、有意義に過ごしている証だといいのですが…………


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