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39、陸:海≒3:7




やはり甲板は寒いのでサイトの部屋に向かいます。


「あれ? 何か、おかしくないですか?」


同じ一人部屋なのに格段に大きいんですけど……


「何が?」


「え、部屋が私より広いんですけど」


「当たり前だろ。ここ、特等客室だし」


特等客室……そんなものがあったとは……


ベッドに机、椅子……まあ、多少広いだけです。大人なら大分違うんでしょうが、私は小さな子供なので自室でも十分なのです。


「さて……では話して下さい」


「何を?」


「何をって……私についてです」


「うーん、そーだな。白銀の髪を腰まで伸ばし、「違います!」


「違うって何が?」


わざとらしいですね。にやにやしながら言われても分からない振りすら出来てないですよ。


「私が過去、あなたとどう関わっていたのか聞いているんです!」


「だから、命の恩人だってー」


「では、詳細を話して下さい」


「お前が敵に光線くらって死にかけのとき助けた」


「うーん、覚えがないですね」


というか光線放つ敵って何でしょう。

何か黒くて、二足歩行で、通常兵器が一切効かないような化け物でしょうか。


「じゃ、次はオレの質問。今、この世界の事を教えろ」


「あいまいすぎて何を話していいか分からないんですけど」


「知っている事ならなんでもいい」


という事なので色々話しました。

国の数、戦争について、現在の通貨、ギルドについて……脈絡がないですよね。何も知らないのか、私がどの程度知っているのか確かめているのか…………でも、私見ですがサイトは驚いているようにも見えます。


「……と、まあこんな感じですかね」


「へぇ…………タイムマシーンに乗った気分だな」


「? 何か言いましたか?」


「いや、別に……後は、アレシアはどーした?」


「どーしたって何がですか? 主語を正確に話してくれませんかね?」


「記憶喪失になってからどうした?」


「……それはですね………………」


今度は私が今まで辿って来た道程について話します。どうしてこんなに聞きたがるんでしょう。


「何か、私ばっかり話してます。サイトも何か話して下さいよ」


「おっと、もう12時だ。お昼にするか」


ごまかそうとするサイトは腕時計を見て……腕時計!? 馬鹿な、あんな小さな時計があるなんて……


「ち、ちょっと! 腕時計なんてありえないです!! いや、あってもいいですけど何でサイトなんかが持ってるんですか!?」


「秘密〜♪」


何者!?






そうこうしている間に二十日は過ぎて行きました。


自室の窓からロウダス島が見えます。

白い建物がたくさんある中にぽつぽつと煉瓦の赤茶が浮き出ています。


もうすぐ下船です。

ペロポネア帝国とロウダス島を所領するデロス連邦は仲が良い訳ではありませんが、ロウダス学園が来る者拒まずの姿勢を取っている為、入国に身分証明書は必要ありません。


つまり私みたいな犯罪者(冤罪ですけど、多分)が簡単に入れるのです。


そんなロウダス島ですが治安が悪い事はありません。学園側が優秀な生徒を自警団としている他、騎士団も将来自国を担う人物を守るべく駐屯しています。


バックに荷物を詰め込み、黒ローブに身を包み、準備は万全です。


サイトはどうでしょうか。今までの付き合い、まあたった二十日ばかりですが、それでも彼の性格や行動パターンは少しですが理解しています。


彼なら今頃ベッドでごろごろしてそうな気がします。


心配ですね。見に行きましょう。


コンコン、ノックをしますが返事はありません。

…………この船の鍵、単純なんですよね。


あれ? 少しばかりいじると勝手に開きました。


そんな不思議現象を体験しつつ、中を探りますがやはりいません。さては甲板でしょうか。


甲板に向かうと……あ、いました。彼以外にも島を見に、又は長かった船旅に別れを告げる為に、理由はともかく幾人かいます。


「準備は終えましたか?」


私が尋ねると無言で右手に提げている革製の黒い空間拡張バックを持ち上げます。多分、肯定でしょう。


「これからはどうする?」


「私はまず過去十年間の入学者記録に自分の名前がないか調べます」


「アレシアが入学ねぇ……身長制限に引っ掛かるんじゃね?」


「そんなものありません!!」


はあ、やですねえ。どうやらサイトは私を弄るのが好きなようです。

反応してもあしらわれちゃうし、無視してもそれはそれで負けた気がします。


それはともかく、入学者記録を調べた後は謎の金髪美少女と紫髪美少女を探索しなくてはなりません。これは単純に聞き込みしかないでしょう。

しかし紫髪なんてそういないですからわりかし期待できるでしょう。


無事に接岸し陸に足を二十日ぶりにつける事が出来ました。

この船はなまじ直行便だったので二十日ぶっ続けで航行していたのです。


「やっぱり大地は安心できます」


「そうか? 土の下に潜む魔物だっているし、地属性魔法でいきなり串刺しになるかも……」


「や、やめて欲しいですね。そんな事ある訳ないじゃないですか。ロウダス島は以前言ったような気がしますが優秀な自衛部隊がいるんです。安全ですよ」


ハハハ、そんな見え見えの脅しなンか怖くありマせんよ。

だって彼、にやついてますもん。


「へー、じゃーどーしてそんな下を確認してるんですかー?」


「こ、これは、その、あの、えーとぉ……大地を久しぶりに見たから懐かしくて何度も見てるんです」


く……苦しい。我ながら何とも苦しい言い訳です。


実は私、少しだけ、若干、ほんの僅か、ですが被害妄想があるらしいです。だからあんなあからさまな………コホン、大切な仲間からの忠告ですし無下には出来なかったのです。ホントデスヨ。


「ふーん、そんな懐かしいんですかー? それは別として何で魔銃に手をかけてんですかー?」


「ぐ……これはぁー、何と申し上げれば良いのでしょうか。そうですねー、まあ、いわゆるー……」


魔銃というのは私が持つビッカース魔弾機リボルバー型モデル18、931年製造の事を指しています。……これは時間稼ぎじゃありませんヨ?


「被害妄想も程々にしとけよ?」


なっ、何か蔑んだ眼差しを向けられました!!


「被害妄想なんてしてません!! 大体サイトが地下に魔物があるなんて言うから悪いんです!!」


「あれ? 本当に被害妄想してたの?」


「う…………」


も、もうイヤ…………


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