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38、船旅をして




とりあえず食堂に着きました。

どうやら食券を買う方式みたいです。


この船内は食堂に限らず魔力灯が設置されているので夜でも明るいです。これも学園に魔法師がいるからでしょうか。


私は……一等客室にしたから節約しないといけません。


でも知りません!! 何故かって? それはあの青年が悪いのです!!


ポッグのシチュー銅貨三枚にパン無料にアリールムの蜂蜜漬け銅貨五枚と。


アリールムというのは赤くて薄い皮の中に白から黄色の果肉が包まれている、甘さ:酸っぱい=7:3の比率な味がするシャクシャクとした食感がする果物です。

それを蜂蜜漬けをする事電話ください長持ちさせると共に甘さを強めるのです。


………? 何故か注目を集めている気がします。敵意はないですから無視しましょう。


食券を食券売りのお姉さんから買い取り、厨房に渡します。


「…………あなた様は8番でございます!」


引換券を貰い、四列ある長テーブルの内の端っこに座ります。


「…………何で、私の、正面に、座るんですか?」


殺意を飛ばしつつ、そこ座るなよと意思表示してみます。


「何処に座ろうが勝手だろ」


くっ、軽々と受け流されました。…………………少しでも反撃したいです……!


何か反撃材料はあるか?

見た目……黒髪に黒眼、切れ目に薄い唇、けっ、素晴らしい造形ですな。しかし酷薄そうです。

身長……百八十は越えてます。私は見上げるしかないです。

気配……うむぅ、中々強そうです。


あれ? 褒めてるだけかも知れません。

あ、でも、性格が悪いです。壊滅的に。


「はあ、何て性格が悪いんでしょうか……」


あえて聞こえるように呟いてみます。


「そんなお前も結構性格悪いよな」


もう嫌。勝てないです。


勝てない敵に会った場合、出来るだけ被害を少ないくする必要があります。という訳で大人な対応をしましょう。


端的に言えば、無視します。


「8番の方、料理が出来ました!」


私はお盆を受け取り感謝の言葉を述べます。


「有り難きお言葉!!」


そしたらこの反応。今日私の周りにいる人は皆変わってますね。


う……お、重い。腕がぷるぷる震えてます。

て、テーブルまで運べるでしょうか……


「あ……」


そしたら青年が持ってくれました。

…………罠?


いや、そのままテーブルに運んでくれました。あー……口は悪いですが、根はいいんですかね?


「その、ありがとうございます」


「お前こんなに食うの? 太るぞ」


キエテクダサイ。


私は怒りの力で大量の食事を片付け、さっさと食堂を後にします。これ以上あの青年といたら爆発しちゃいそうです。


流石に部屋までは来なかったですか。


はぁ、私の過去を知る青年に出会いました。

これは大きな収穫です。

しかし……この人、話してくれないです。


まあ、船はあと二十日は航行しますからその間になんとかしましょう。


そういえばバックの中の袋は何でしょうか。

早速開けて確かめてみましょう。


という訳で取り出します。材質は何かの動物の革。


あぁ、こんな高価な物をこっそり入れられる人は限られています。

中には金華が五枚に手紙。手紙の内容は、励ましやアドバイス等様々です。


「…うぅ……こ、こんなの入ってたら泣いちゃうじゃないですか……」


この晩は、目からあふれる透明な液体をいくら拭っても止まりませんでした。






あれから十日。


……………………何とかなる、そう思っていた時期もありました。


しかし! しかしですねぇ!! あの小僧、はぐらかすばかりでちっとも話してくれません。

もう船旅も十日経ち、焦りを若干覚えます。

もし、何か知ってるなら、教えて欲しい!! ……………


何かいい作戦ないですかねぇ。


私はとりあえず朝ご飯にします。

十日も経つと生鮮食品は大分減り、乾燥した物が増えてきました。


朝ご飯は硬いパンにお水。節約はちゃんとしているのですよ。


私が朝ご飯をもにもに食べていると不思議な噂を耳にしました。

船が出航した晩、食堂に世にも稀な天使が現れたんだそうだとか。どうでもいい話です。

それでも船内ってあんまりする事ないですからね。こんなしょうもない噂が流行るんでしょう。


「はあ……」


どうしますかね。

あーあ、こんな事なら暇潰し出来る物持ってくるべきでした。

私もする事ないからあの青年を追い掛けるしかない訳なんですよね。


食堂を後にし、甲板に出ます。

潮風が気持ち良いです。まあ、冬なんでそんな気持ちは三秒内に文字通り吹き飛びますが。


「今日もここにいましたね。寒くないですか?」


「心配してくれんの?」


「いや、全然。それはともかくいい加減何か吐いてくださいよ。カツ丼食べますか?」


「カツ丼?」


あ、いや、何故か口から滑り出た言葉なんで意味は分からないんです。


「そーだなー、オレの言うコト聞いてくれるなら」


「可能な範囲ならいいです」


「まず、オレと旅をする」


……うーん、どうでしょうか。

分からないならとりあえず情報は多い方がいいですし、いざとなれば盾代わりに……ケホン。


「私が行きたい場所を決められるならいいです」


「次にオレを名前で呼ぶ」


「いいですよ。知らないですけど」


「……オレの名前は流月才人。ルヅキが家名でサイトが名前な」


「ルヅキサイト、ですか。変わった名前ですね」


まあ、当分一緒に旅をするんですから名前が分かって良かったです。


「最後に、フード取れ」


…………は?


「えと、もう一回言って貰ってもいいですか?」


「だからー、フード取れよーと言ってんの」


「これ、身分を隠すのに使ってるんです」


だから脱げないんです。分かりますか?


「じゃー会った時は何だったんだよ?」


え……? あ。


「あ、あれはうっかりしてただけです。普段はこうしてるんです」


「もうばれてるから意味ねーよ」


……確かに注目されてたような気がします。あれは中にはあんな人が入っていたのか、とかそんな感じの目線だった訳ですか。


私だって好きでローブで顔や体を隠している訳じゃありません。

まあ、夏じゃないですし寒いですから着用はしますけどフードは前が見にくかったりするんです。


「うーん、二人っきりの時だけなら大丈夫ですかね?」


フードを取ります。あー、新鮮な空気。フードの中って空気が滞留してしまうんですよね。まあ、そこまで深く被る事を想定してないんでしょうけどね。


「やっぱ、そっちの方がいいな」


「そうですか?」


「あぁ、可愛いよ」


「……そ、そんな冗談よして下さい…」


「えー、オレ真剣に言ってんだけどなー」


「………………そ、そうですか……」


こんな事言われた時、どう対応すればいいんでしょう。


「ぷっ、はははは…」


なっ!! ま、またからかわれたんですか!?


……この先が思いやられます。


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