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30、指名手配




「おい、お前。ヤラせてくれたら逃がしてやってもいいぜ?」


おいおい、騎士様がそんなんでいいんですか?


「ま、嫌と言ってもヤルけど」


「じゃ、誰からにする?」


まずい、果てしなくまずい。

密室に私と騎士が四人。逃げ出したとしても犯罪者、ここにいたら…身震いがしますね。


あぁ、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。


騎士様が悪いんだから、私は逃げます!


私は騎士を観察。確かに鎧で守られてはいますが。


「衝撃までは殺せないですよ?」


「は?」


ローブからリボルバーを取り出し鳩尾へと精密射撃。


「グボ…」


変な鳴き声を出しながら床に倒れて行く騎士達。

しかし下半身だけ脱いでいる格好は素晴らしくみっともないですね。


私はバックから灰色ローブを取り出し着替えます。もちろん顔をすっぽり隠して。


そして何食わぬ顔でギルドを脱出に成功します。

さて、逃げましょう!!

私は来た道を戻ります。さらばカラ、分かったのは以前の私は偽造ギルドカードを必要としていたような人間だという事だけです。

……何をしていたんだ私!!




カラを無事脱出しました。次はロウダス学園ですね。しかしカラがあんな事になっただけにどうなる事やら………


しかもこの地図じゃロウダス島への行き方が分からないです。

ま、それは仕方ないですね。地図は軍事情報ですから。

となると……大都市に行って図書館で調べるか、軍へ潜入して地図を盗み出すか……


……………近いのはラッカという人口二万人の都市ですね。ここから二十キロ南々西へ行けば着きます。私は出来るだけ真っ当に進んで行きます。軍へ潜入なんて………行き詰まるまでは絶対にしません!




今日の宿は街道沿いにある安宿です。

私は今や追われる立場ですからこういう寂れたところに泊まるのが定番でしょう。




朝になり出発したんですが……まずいですねぇ。指名手配されて張り紙が張られましたよ。


〔   指名手配

特徴

・女。

・白髪。

・黒ローブ。

・身長が小さい。

罪状

詐欺 

 賞金銀貨十枚    〕


わー、指名手配犯だー。やばいよー。


急いで宿を後にします。

これは本格的に記憶を失う前の自分を疑いますね。




それからは騎士とすれ違う度に内心びくびくしながら旅を続けます。おのれ、負けるか!






………私は指名手配犯の烙印を押されても灰色ローブに身を隠し、ラッカ郊外へと到着します。

僅かな救いは白髪という事から騎士達は老人を捜している事でしょうか。

手配書の不備に感謝しつつここまで来れたのですが、絶対門番手配書を見ているでしょうね。

そして気が付くでしょうね確実に。


どうやって中へと潜入しますかね。




日が暮れ、周囲が闇に包まれた頃に動き出します。

やる事は単純、壁を登るだけです。

石を切り出して造られたラッカの防壁は手を引っ掛ける場所も多いので何とかなるでしょう。


石の出っ張りに手をかけ、登り始めます。


高さは約五メートル、着々と登り進む私。案外楽勝ですね。


壁の屋上というか頂上というか、ともかく一番上は平らになっています。そこに登り詰め、近くの民家へと………跳躍!


こうして潜入に成功しました。


……やっている事を思い返すと十分犯罪です。記憶喪失以前の私を批難出来ませんね。

しかし記憶喪失以前にした所業が原因で壁を登るハメになったのです。


きっと私は悪くないです。

こうして自分のした行為を正当化していると足音がします。


屋根から下を確認……巡回の騎士のようです。


しばらく待つと足音は離れていきます。


ふう………図書館はどこでしょう?

虱潰しに捜すのは時間がかかりますし、朝になったら尋ねるのがいいでしょう。それまでは……この固くて冷たい煉瓦の屋根で待ちますか。




夜明けになり人々が動き出し、街が動き出します。


ローブをしっかりと深く被り、道を歩く人に尋ねつつ図書館に向かいます。

ラッカにある図書館は蔵書数三千冊の小規模なものですが、それでも向学心ある者には重宝されているようです。


図書館は煉瓦造りの平屋建てです。

見張りの騎士に入館料銅貨五枚を支払い中へと入ります。


中は十列程書棚が並び、それぞれ分野毎に分類されています。


その中の「地理」のスペースから縦一メートルはある世界・ペロポネア地図を取り出し、奥にある読書スペースに腰掛け読み始めます。


えー、ロウダス島へ行くには………先ず約三百キロ離れたハレッポという人口八万の都市にユーファテス湖を迂回、又は船で直進して向かいます。

次に約百キロ離れたペロポネアの二大都市の一つに当たる人口三十万のティオキアへ行き、ここから選択肢が二つ。陸路で八百キロ歩くか海路で六百キロ渡るか。


私の一日の踏破距離は雪路ですが十二キロ。

ハレッポには単純計算で二十五日。

ティオキアには八日。

そこから陸路で六十六日。船が日速三十キロとして海路で二十日。


つまり…三ヶ月位かかりますね。


さて、もはやここには用はありません。行きましょう。


門番は入る時は警戒しますが出る時は素通しです。なので簡単にラッカを脱出する事が出来ました。

ハレッポ、ティオキアはどちらも大きな都市ですから街道が通っています。よって迷う心配はありません。それに私以外にも歩いている人が結構いますからね。



「………ふわ…」


それにしても……眠い。


徹夜で冬の雪道を歩くとかもう軽い拷問ですよ。

しかも眠ったら凍死するおまけ付き。


昨日から歩き続けですからね。もうくたくたな訳ですよ。

歩く速度も次第にゆっくりとしたものになっていきます。

それでも止まらないのは私の意地です。

というか止まったらもうその場で寝ちゃいそう。


ふにゃ…………う、駄目……も、持ち直さないと…………バタリ。






「あら、どうして止まったのかしら?」


「何かあったの?」


「少し見て来ます。……道端に子供が倒れているようです」


「カシウス、その子を助けてあげて」


「し、しかし馬車はこれ一台しかございません」


「そうだよ、ノビリア姉様。子供だからと言って危険ではない保証なんてないよ」


「あら?駄目なんですか?」


「ね、姉様ぁ!!……そうだよね!助けてあげなきゃだよね!カシウス、乗せてあげよう」


「しかしですねえ!!」


「そういえばカシウスって最近彼女出来たんだってね。おめでとう。今度は長く続くといいね」


「あはははは!人助けは素晴らしいですねえ!!」




「連れて来ました」


「あれ?ローブで顔が隠れているのに何で子供だって分かるの?」


「いや、手がまだちっちゃいじゃないですか」


「容態はどうですか?」


「脈はあります。息は………」


「わあ、可愛いですねぇ………あら?お二人共どうされましたか?…えいっ」


「キャッ!!…こ、これは姉様に勝るとも劣らない……」


「グハァ!!!……ゲホッ…ゴホ……何か、差別じゃありませんか?威力が十倍は違うんですけど」


「あら、ごめんなさい。カシウスは神経が鈍そうでしたから…」


「それ謝ってない!むしろけなしてるからね!?」


「姉様にタメ口を使うな!!」


「理不尽!!!………」


是非とも御意見・御感想をお願いします。




そろそろ感想を……簡単な物で構いません。

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