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28、宿屋にて




………あぁ、日が暮れる。




正午から度々休憩を挟みつつも歩き続けましたが、吹雪により雪が膝まで積もり、視界も悪く、中々進めません。


そうこうしている内に辺りは真っ暗になってしまいました。


……どうしましょう。


体はクタクタでもう動きたくない……のですが止まったら死にます。


くぅ………きっと何とかなります!頑張りましょう!



それから体に鞭打って歩き続けた所、何とか村らしき集落を発見しました。


吹雪で看板が見えない中、最初に見つけた建物が宿屋だったのには自分を褒めてやりたい位です。


ドアを開け、大量の雪と共に室内へと入ります。

おー………暖かいです。


中は入ってすぐにソファーがあり、その右側に受付窓口、最後に上へと続く階段があります。

どうやら一階は宿屋の主人の自宅で、二階に部屋があるみたいです。


窓口にあるベルを鳴らします。


しばらくして妙齢の女性が現れました。


………固まったまま、動きません。大丈夫でしょうか。


「あの、一日泊めて欲しいのですが…」


私が声をかけた事で起動しました。


「あら!そ、そうね。夕食、朝食付きで銅貨二十枚、一食付きで銅貨十五枚、食事無しで銅貨十枚よ」


「では、二十枚払いますね」


バックに手を突っ込み銀貨五枚、銅貨三十枚を小分けしたお財布を取り出し銅貨を出し……くっ、手がかじかんで上手く取れなっ、ていっ、あっ、よし……あぁもう!………はあ…えいっ!……は…恥ずかしい…も、もういいです……


「………銀貨一枚からでお願いします」


何故か顔が赤い宿屋の女性。み…見られましたか。途端に自分の顔が熱くなるのを感じます。うぅ……恥の上塗り。


「………………………………そうね、寒いとよくあるわよね!………はい、お釣りね。あとこれが部屋の鍵よ。それと、食事は私が呼んだら来まししょうね?

分かったかな?」


「はい、大丈夫です。ありがとうございました」


私はこれ以上恥をかくのは御免なので急いで階段を駆け登り………転びました。何か、今日は、はあ……………


「……うぅ」


疲弊しきった体を引きずり五部屋ある内の一つへ入ります。

内はベッドに小さな机と椅子のシンプルに出来ています。


びしょびしょの服を脱ぎ捨て、ベッドに倒れ落ちました。


さて…着替え…な………い………と。






「お客さん、ご飯出来ましたよ。お客さん?……開けますよー、あら…これは………………………………………はっ。な、何て素晴らしい光景…す、少し触れるだけなら……あら!何この肌!?…もう!…してはいけないのに、手が勝手に………」


………何だか騒がしいですね。それにふとももの辺りがこそばゆいです。


「………何か御用ですか?」


「あら!………も、もう駄目だわ!」


ふえ?抱きしめられてしまいました。服が直に肌を擦り………って何で服着てないんですか!?


そ、そうでした。疲労のあまりつい横になったら寝てしまったんですね。

今日は失態ばかり。

嫌になります。

というか早く服を着ないと私が羞恥によって死んでしまいます。


「あの………ふ、服を着たいんですが……」


「…あら、でももう少し触っていたいわ…あぁ、手触りが最高ね…」


うく……背中を撫で回さないで…何かぞくぞくするぅ…はふぅ…や、やめ…か、下半身はまずいです!!


「ま……まずいわ。何か目覚めちゃいそう…が、我慢我慢、私は普通の性癖よ……」




「……………そうね。ごめんなさい。で、着替えはどこなの?」


苦悶の表情を浮かべ、背中を撫で回す手の動きを止め、ゆっくりとその手を離し、替えの服の在りかを尋ねてきました。


「え………バックの中ですけど…離れてくれませんか?」


何で勝手にバックをいじるんでしょう。


「………あ、これね。じゃあ、お着替えしましょうね〜」


「え!?いいですよ!あ、え、ちょっ……」




実害はない。ないんですがね。自尊心が傷ついたというか何というか……


「というか、どうして来たんですか?宿屋の……」


「私はサラよ。あなたは?」


「私はイブキです。で、何ですか?」


「あら!…そうよ。私、ご飯が出来たのを伝えに来たんだったわ!さ、行きましょう!」


「だ、抱っこしなくていいです。歩けますよ」


「あぁ…そんな、頬を赤く染めて言われたら…」


「な、何かその言い方恥ずかしいので止めて下さい」


「…………………」


私は何故か抱っこされたまま受付窓口の横にあるドアからサラさんの自宅へ入ります。

そこは窓口の中で机と椅子があります。

さらにもう一つドアをくぐると台所です。

台所には竃があり、その隣のテーブルには二人分の料理が並び、一方はテーブルに置かれ、もう一方はプレートに置かれています。


今日の料理はパン二切れに中に芋と何かの肉が入ったスープ。


どうやら料理は泊まった部屋に運ばれるはずだったようです。なのに何で私を連れて来たのでしょうか?


「さ、一緒に食べましょうね〜」


「…はあ。でも私、一人でも大丈夫ですよ?」


「駄目よ!イブキちゃん!食事はみんなで食べるからおいしいのよ!」


確かに………知り合いならばそれは当て嵌まりますが、初対面の人だと気まずいんですよね。


しかし抱っこという名の拘束により、逃走は出来ないのです。


「一緒に食べるにしても、この体勢じゃ無理です。離して下さい」


「…そうね」


ひどく名残惜しい表情です。子供が大好きなんでしょう。そう信じましょう。


こうしてテーブルに隣り合わせで食事を始めます。


「…おいしいです」


「あら、ありがとう。イブキちゃんはどうして一人なの?お母さんとお父さんは?」


ぐ、どう答えましょう。


「そ、そのぅ、実は記憶を失いまして…………」


「?どういうことかしら?」


食べながら簡単に今までの出来事を話します。別に隠す必要性がないですし。


そしたら………泣き出してしまいました。


「あ、え?あの、どうかしましたか?」


???また抱きしめられました。何か同情でもされたんでしょうか。


「そうだったの………辛いわね」


「辛くないとは言えないですけど……私なら大丈夫ですよ?」


記憶を全て失ったのではないのです。断片的ですが知識も残っていますし。


「我慢しなくていいのよ?……」


サラさんの体と心の暖かさに、私の瞼は徐々に重くなっていき………………………むにゃ。


「あら、寝ちゃったわ。………無理もないわね、ヘイス村から歩いて来たんだもの」




「よし、じゃあイブキちゃん。一緒に寝ましょうか………うふふ…あら?」

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