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26、治癒




「「「すいませんでしたーーーーっっっ!!!!!」」」


今、ヘイス浜では哀れな三人の男の姿が見られます。

彼らは旅行中の冒険者で、村人の好意で滞在していたんだそうです。

その好意を踏みにじり、私に暴行を働こうとしたんです。


全く、同じ人間とは思いたくないですね。


「謝ってすむなら法律はいらないんだよ!!」

「憲兵はいつ来るんだ!?」

「というかオレ達で処罰しちまわないか?」


…若干村人の皆さんも気が立っているみたいです。


カルロスさんが諌めていますが……


「皆さん!この三人を極刑にするには口裏を合わせる必要があります!!」


………私が説得しましょう。


「皆さん!聞いて下さい!!」


一瞬にして場が静まり、私に視線が集中します。

……うぅ、何か緊張して来ました。


「彼らは憲兵に渡すべきです!」


私が被害の当事者です。その当事者の発言という事もあって集団私刑に向かっていた世論は官憲引き渡し派へと戻ります。


「しかし女神様!それでは罰が軽すぎです!彼らはあろうことか女神様の純潔を狙ったのですよ!?」


……………?


「ま、待って下さい!その女神って誰ですか!?」


私の心が聞くと羞恥で死ぬ可能性を警鐘していますが、そんなのは無視して問い質します。




「誰って………イブキ様の事に決まっているでしょう」


「な…………」


…………………!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!!!!!?????


「〜〜〜〜〜〜!?」


「ぐはっ!?」

「あ、鼻血が……」

「くっ、直視出来ない……だが敢えて見る!!グボォ!!?」

「わしは…あの恥じらう姿が見れて幸せじゃ。悔いは……な……」

「あぁ!?サミー爺が倒れた!?」

「くそっ!?感動の涙で御姿を拝見出来ない!?」






………………ふえぇ!?

何、何コレ?何が起きたの?


私が先程の発言から我に帰ると、目の前では混沌とした状況が目に入ります。


……鼻血を出し倒れる人々。

……何故か泣き出している人々。

……私を拝む人々。


あの三人は鼻血組ですね。ってそんなどうでもいい事じゃなくて!!あぁ!


………冷静に、冷静に。

こういう時こそ冷静に対処しましょう。


先ず、私達は罪人三人を捕獲しましたね。


次にその後の処置を議論していました。


そこに割って入った私に…………い、言えません!私には無理です!


とにかく!例の精神攻撃をくらっている間に何かが起きたのです!!


果たして何が…?




仮説1

年端もいかない女の子に……精神攻撃的な単語をかけたので、全員で私刑に処したが意外に強く苦戦。


……こじつけすぎですね。



仮説2

レイジウイルス(人の凶暴性が増す)蔓延。

しかしアルバランガの人々には抗体があり、すぐに治る。


……28、ないない。




仮説3

私の魅力に倒れた。


……………言ってて死になくなって来ました。

こんな幼女のどこに魅力があるんでしょうか?…………あったらあったで困りそうですが。




結論

原因不明。


ともかく、ここは強引にでも話を戻すしかありません!


「み、皆さん!憲兵に渡しますからね!いいですね!!」


「「「「「はい!!!!!」」」」」




その後一頭立て馬車でやって来た憲兵さんが一言。


「……何これ?」


その御意見、最もです。






あの三人組事件から何故かヘイス家に私を…神様と崇める人が参拝に来るようになりました。


私は周囲に理由を尋ねますが、カルロスさんは淡く微笑み、ミリカさんはヒューイ君に聞けとしか言わず、ヒューイ君は顔を真っ赤にし、アンナさんは私を睨み「あんた本気で聞いてるの?」と言われ、ホークス君にいたっては会ってもくれません。


私の予想では対グリーンウルフ戦における魔法行使において一撃でグリーンウルフを蒸発させた強さを神として崇める事によりヘイス村に何らかの御利益が出ると考えたのではないでしょうか。この考えの根拠としては英雄や名君が死後に神として奉られる事があげられると思われます。つまり、何らかの能力に秀でた人間を祭り上げる事によりあやかろうという考えですね。


……ん?そういえば一人まだヘイス家にいたような?………気のせいですかね?




そんな平和な時間を過ごした私ですが、もう頭の傷も癒えたので、そろそろ別れの時なのです。


もはや毎朝の恒例となった私のストーカー達に対するミリカさんの大立ち回り。私は拍手をする位はこの惨事に慣れて来ました。


それを観戦した後、朝ご飯です。


「あの…私、明日出発します。今まで何から何までありがとうございました」


今食卓にいるのはカルロスさんにヒューイ君、ミリカさん、ハモンドさんです。


「そうですか………行きますか…」


カルロスさん、そんな顔をしたら去りにくいじゃないですか。


「そうかい。行くのかい。あたしゃ、娘にでもなってもらいたかったんだがねぇ」


……わざと泣かせるつもりなんですか?


「イブキ………何で行くんだ?家にいるのがイヤなのか?」


「違います」


「じゃあ!!」


ヒューイ君、その期待に満ちた表情に応える事は出来ないんです。


「ですが!…私にはやらなくてはならない何かがあるんです」


「そんなテキトーな理由でいなくなるのか!?オレ、イブキにいて欲しいんだ!!」


「……すいません」


「…………っ!!!」


「あ、待って下さい!」


ヒューイ君は椅子を蹴り飛ばし、どこかへ行ってしまいました。


「イブキさん、今は追ってはいけませんよ。ヒューイに心を整理する時間をあげましょう」


「……荷造りをして来ます」


私は客間にて今まで出した荷物をバックへ詰め込んでいきます。


ヒューイ君は出てってしまいましたが、私だって…辛いのです。


自分が誰か分からない。

自分が何処へ向かわんとしているのか分からない。


そんな状況で、何が起こるのか分からない旅へ出るんです。

辛くない訳がないでしょう。


しかし………私は記憶を失う前、この世界に関わる何かをしていた。それはとても、とても、大事な事だった。

それが私をせき立てます。

行かなくては。




大体一時間………ヒューイ君を捜しに行っても大丈夫でしょう。


さて………一体どこにいますかね?

秘密基地にまず行きますか。




約30分かけて訪れた秘密基地である洞窟にはアンナさんとホークス君しかいません。


「あら、遅かったじゃない。ヒューイは?」


「それが………」


私は今までの経緯を話しました。


「え………あんた、行っちゃうの?」


「はい、十日程でしたが楽しかったです。今までありがとうございました」


「…それで、ヒューイはあんたがいなくなるって言ったら走ってどっか行っちゃたの?」


「そうです」


「…ふーん、そうね。あんたに教えるのは癪だけど別れの選別として特別に!教えてあげましょう」


「何をですか?」


「決まってるでしょ、ヒューイの居場所よ。ただし………」




そうして訪れたのはヘイス浜を十分東南東へ歩いた所にあるヘイス岬。


「…綺麗な場所ですね」


その岬の先端でヒューイ君は座って海を眺めていました。


「なあ………オレも一緒に行っちゃダメか?オレ、結構強いんだぜ?」


「残念ですが、これから私がする事は結構程度の力では踏み潰されかねないでしょう」


「そっか………なら、これだけは約束してくれないか?」


「…何ですか?」


「絶対に…死ぬな」


そんな事、未来というのは誰にも分からないんですよ。と言おうとした……が飲み込み


「はい」


と答えました。だって………辛いでしょう。そんな台詞吐かれたら。




二人でヘイス家に帰ると、村人総出で集まっています。

まさか………


カルロスさんが代表で話し出します。


「イブキさんの旅の成功を祈って、乾杯!」


「「「「「乾杯!!」」」」」


とんだサプライズですが………とても嬉しいです。


「イブキ、何泣いてんだよ、明日しゅ……出発なんらぞ」


「…な…何言ってんれすか?ヒューイ君だって…」


こんな温かい村に僅かでもいられて……あぁ、言葉が見つかりません。


でも、ヘイス村で過ごせたのはそれ位素晴らしい思い出です。



御意見・御感想を切にお待ちしております。


お願いします。


私に「げんきのかたまり」を投与して下さい。


いえ、「げんきのかけら」でも「きずぐすり」でもいいので何か投与して下さい。


以上です。

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