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二十一、潜入




私はMQ9無人攻撃機八十機、機械兵OC二千体、E767AWACS四機という大規模物質創造を七ヶ月投入し続ける離れ業をやってのけ、ついに魔王の潜伏先らしき場所を見つけた。


それはアルバランガ大陸から北東百九十キロ離れた場所にある孤島である。

その島は地図にもない無人島のはずなのに、高度な結界が張られているのだ。


もし、E767に対地レーダーがなければ見つからなかっただろう。




私は現在メッセンジャーバックを片手に飛行ユニットにて現地へ向かっている。もう、時間がないのだ。











四月に起きたロミリア‐ペロポネア戦争は激化の一途をたどる。


残念ながら、慎重派のワイヤット大統領は罷免され強硬派のチャールズ‐C‐ウィンズが大統領に就任した。


チャールズ大統領は全面戦争を主張し、ロミリア側は虎の子近衛軍団まで加え計二十五個軍団十六万を投入。

ペロポネア側も以前の十五万に八万を増強させ応戦。


そこに、同盟国としてヌミデア王国がロミリア側に立ち援軍五万を送り込む。ヌミデアには竜騎兵という戦力があり、その竜騎兵も三千投入。


竜騎兵は陸上に住む飛べないグリーンドラゴンを馬代わりにした騎兵である。

グリーンドラゴンは体長三メートル程の大人しいドラゴンだが、口から火炎を吐き出す。よって、かなりの打撃力になるのだ。


今度はヌミデア王国に対抗してペロポネアの友好国ダキア王国もペロポネア側に立ち歩兵十万を出す。


デロス連邦は中立に立つが、都市国家スパウタがペロポネア側に立ち参戦。その他の都市国家はこれを裏切りだとしてスパウタに宣戦布告。


今安全な国はドク王国とキト王国だけだろう。エルフ自治領とグレリア連邦王国はアルバランガ人は入れないし。


……以上のようにとんでもない事態に発展している。

現在は戦線が硬直し主に動きはないとは言え、いつまた大規模な戦闘があるか分からない。


謎の島にはE767が張り付き、監視を続けている。私が行くまで変なことをやらかさないで欲しい。




………あれか。E767を消し、上空からモノクルで解析する。


解析不可能………か、厳重だな。





では、2230にて進攻する。私は結界に突入。


……入れない。ま、予想はしていた。


な、ら、ば……と。


海に潜る。

そして横からトンネル掘削に使うシールド工法、ただし軽く五百倍速。


ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ……ズズゥン。


十分程で謎島に入る横穴が完成。


急いで通る。固定器具なんてないので………ほら、もう崩れた。


さて…………………………………はい?


……ここは何処だ?






私の目にはコンクリート製のマンション。

見回すと……どう見ても日本の中小都市にしか見えない。

ほら、車走ってるじゃん。

……ん?ん?ん?あれ?どうなってるの?


落ち着け………落ち着け……先ずはモノクルで情報収集だ。


やはり……幻覚ではなく、現実だ。


魔王を倒しに来たら地球に来てしまったのか?

いや………あのカップル、どちらも額に紋章がある。あの酔っ払い達も、車の運転手もだ。

やはり、魔族だ。


なら、とにかく魔王を捜すか。

……っと、測定不能が二人もいる。

場所は……地下三十メートルか。

その直上にあるのは…………あれだ。


白亜色の二階建て、アメリカで見た気がする建物だ。

とにかく、行って見よう。



警備は厳重だね。屋上には狙撃手、周囲にはアサルトライフル型魔弾機を持った兵士。


だが、甘い。

光学迷彩と隠匿魔法のコンボで侵入に成功する。


中に入り、赤い絨毯をたどるとエレベーターがあった。


しばらく待つと、秘書っぽい男性がエレベーターに乗ったので、便乗。一階……地下一階……地下二階…………………………………………………地下五十階、ここだ。


秘書らしき人と共に降りる。


そして……いた。

あの茶色いローブに体を包んだ老人。あれの魔力………ヤバイな。


「リーガー、秘書とは言えくせ者を連れて来るとはいただけんな」


なっ、気付かれた!?


「…はっ、だ、誰かいますか?」


老人は右腕を突き出し………私を指差す。


冷や汗が流れ落ちる。


「…いつ、分かりましたか?」


降参とばかりに両手を挙げ、光学迷彩も解く。


「…ふふ。この島の結界内に入った時だな。あれはワシが作ったのでな。中にいる者は把握出来るのだよ」


「け、警備の者を呼んできます!」


秘書が慌てて走り出すが、老人が呼び止める。


「よい、ワシは話がしたい。それで……アルバランガの民が何用かな?」


「…魔族側の工作員は全員帰って貰いたいです。戦争を煽るのも止めて下さい」


「それは無理な相談だな。見たかね?この島を、もはや開発され尽くした。人工増加で土地がないのだよ。ないなら余っているところから取ればいい。

下等なアルバランガの民にはもったいない。彼らも高等民族の礎になれて満足だろう」


……人種差別か。救えないな。


「という訳だ。下等民族よ、死ね」


っ!!いきなり突き出した右腕から赤い閃光を発射して来た。


「くっ………」


何とか自動展開型魔法障壁により助かる。

もしこれがなかったら……死んでいたな。


閃光が次々に魔法障壁に突き刺さる。

私も音速を越えて回避を図るが、全く避けられない。

………今は魔法障壁に守られているが、いつか破られて死ぬ。


私は賭けに出る。

自身の周りに今まで構築したなかで最硬の魔法障壁を展開。


この僅かな時間を電子の収束に全力を上げる。


く……魔法障壁に早くもひびが……間に合え……




三………二………一。




【電子砲】発射!!




一筋の白い閃光が老人に突き刺さる。




「そ………そんな……」


私が最大出力で発射した【電子砲】は…老人が瞬間的に構築した魔法障壁に阻まれた。


私の持ち札で最大の貫通力を持つ【電子砲】が通用しない。

……撤退しかない。


巻き上がる粉塵に紛れ、即座に飛行ユニットを創造。エレベーターまで逃げる。ついでに、C4爆弾を設置。あわよくば死んでくれ。





「逃がすかあ!!死ねぇ!!!」


赤き閃光が空間を斬り裂きく。

今までとは桁違いに強大だ。私が放った【電子砲】の二倍の力はある。


自動展開型魔法障壁に魔力を込めるが………悲鳴を上げている。


くぅ………持たない………これまでか。

ならばせめて、あの老人を倒さないと。


このままでも三十秒と少しで魔法障壁は破られる。


それを十秒に削り………………N2爆弾を創造。


はっ、全員道連れだ。






「バカ!!さっさとそれをしまえ!!」




………は?


いきなり現れた一人の青年に閃光は掻き消された。


「な、誰ですかあなた!?」


「ここは俺が持ちこたえる!だからさっさと行け!」


「そんなことしたらあなた死にますよ!!」


「俺は大丈夫だ!だから早く逃げろ!」


「何の根拠があってそんなことが言えるんですか!?」


「………俺はあのジジイの知り合いだ!だから殺されない!」


というかそれなら私の敵対者のはずだけど……とにかく生きるのが先決だ。


「ありがとうとは言っておきます!」


軽く感謝を述べ、エレベーターをぶち壊し、飛行ユニットで急速上昇。

ちっ、下から赤い閃光が何本も昇って来る。

もっと足止めして欲しかったな。


……ぐ、閃光で片足をやられた。


爆弾はどちらも起爆前に消されたらしい。

もう逃げの一手しかない。

一階に着いて即、横に逸れ、閃光の追撃をかわす。


「侵入者だ!撃て!!」


ああもう!!今度は狙撃手と機関銃か!?


あぁ、あの老人も転移して来たぁ!


「このっ!!!」


追撃をかわす為、機械兵百体に交戦させる。

機械兵の持つブラスターはフルオート射撃(引き金を引く限り、銃弾が何発も発射される)が可能に改良済みだ。


何とか時間を稼いでくれ!!


飛行ユニットで逃げる。結界は………よし、通れた!どうやら中から出るのは制限されてなかったようだ。





ふう、あの謎島からは十キロは離れた。


モノクルにて機械兵の確認。あー………全滅か。まあ、あの老人化け物だったからな。

あの青年は大丈夫だろうか。ま、大丈夫だろう。あれだけ大見え切ってたし。


ん?モノクルに魔力反応ありだ。

何だ?後ろからっ!!、ガッ……まさっ…か…………頭に……被弾…………あか…い。





ああ…………冷たい……………冷たい………暗い。






………あ……ア………………ツメタイ……クラ……イ……











……………………………………   ………     …………………

…… … 。


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