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二十、焦りは禁物




グレリアに来て早半年。春がやって来た。


外は明るいが、室内は暗い雰囲気である。


原因はこれ。


〔ロミリア共和国内における魔族浸透率


元老院 16.3%

外務省、内務省、司法省、軍務省(課長以上) 7.1%



……どうする?かなり汚染されてるんだけど。


公的捜査機関ならば一斉検挙だな。

しかし……私はどうすればいい?

匿名の手紙でも出すか?でも誰に?


………現大統領の娘、サハリア‐Y‐クラウディウスしかない。

でも、どうやれば信じるだろうか?

例え額に紋章があってもそれだけで犯罪ではない。

ただ単にいわれのない魔族迷信を恐れただけとか言うかも知れない。


私はMQ9やM機械兵OCによる偵察によりかなりの間接的証拠を揃えている。

例えば、とある魔族は地下で毎朝魔王様万歳とか言ってたし、他の魔族はアルバランガにないはずの手の平サイズの携帯魔力話機で世界征服について論じてたり……まだまだある。


しかし、全てデータとして蓄積されている。

まさか、パソコン見せても信じないだろうしな。


うーむ、困ったな。


私が頭を悩ませ、あーでもないこーでもないと考えていると、外から大声が聞こえた。


「号外だ!号外だ!ペロポネアがロミリアに宣戦布告したぞ!!」


何だと!?


「リッパー10、リッパー18、至急国境線まで移動せよ」




数分後、液晶画面に映る映像は戦争だった。


ロミリア側が建造した防壁にペロポネア側の魔法部隊が大穴を開け、周囲には魔法攻撃を阻止しようとしたロミリア兵の死体が転がっている。


ペロポネア側の戦力は約十五万。

対するロミリア側は国境沿いに展開する一個軍団約六千、しかも指揮系統はばらばらで各個撃破されている。

近隣の六個軍団約三万八千が急行しているが、蹴散らされるだけだろう。


「…くそっ!!!」


ペロポネア側からの侵略をどうして考慮に入れなかった!?

ロミリア側が国内で自国を攻めるか論議していたんだ。

ならば、先制攻撃を…となるのは歴史を見れば十分考えられた!!


……これからどうする?

もはや戦争は始まった。戦争とは始めは理由があっても、後になると憎しみだけで続く厄介な現象だ。


ああ、こんな時頭が良ければ悩まずにすむんだろうに。


魔王は何処にいるんだ!!



ひとしきり愚痴り、頭が冷静になった。


さて……このままだと人類側が疲弊するまで待ち、その後魔王軍で軽く人類を蹴散らすというバッドエンドへ進みそうだ。


ならば……ロミリア‐ペロポネア相互不可侵条約でも結ばせるか?


…いや、駄目だ。もはやペロポネア側は本気だ。これがせめて小規模ならなあ。



現状は、国境内にペロポネア側の軍が進攻。

ロミリア側は国境警備の軍が時間稼ぎをし、主力の到着を待っている。


ペロポネア側は我が国の名誉を傷付けたから賠償金として金貨五百枚を払えと要求。つまり、約十億円。ロミリアの年間国家予算が金貨約千五百枚、つまり約三十億円だから払うことは不可能だ。


今も元老院では盛んに討論が行われている。

私が失脚させたジョージ‐K‐アムザ議員に代わり、チャールズ‐C‐ウィンズ議員が今の開戦派の中心人物だ。

彼自身は魔族ではないが彼の親友が魔族で、その親友の言葉を鵜呑みにしている。何か幻術でもかけられていないか調べたが、ただ親友なら正しいと思っているらしい。


対する慎重派は現大統領ワイヤット‐F‐クラウディウスである。

しかし、ペロポネアが攻めて来た以上は戦うしかない。事態が激化すると、たいてい慎重派の力は衰える。




ロミリア国民のナショナリズムに火がついた。

彼らは慎重派のぐだぐだした話よりも、開戦派の明快な話に惹かれ、いつまでも事態を収拾しない政府に、娘が誘拐されかけたのに何もしない情けない父親に見切りをつけた。


国民投票。

三分の二以上の票が集まれば、憲法、法律改正、そして大統領の罷免が可能だ。

国民はこれからの対応次第でこの力を使うつもりだ。


ワイヤット大統領には慎重な舵取りが求められるだろう。


……しかし、この論調を広げたロミリア国民新聞の社会面担当チーフは魔族だ。

恐らく、魔族の傀儡政権を作るつもりだろう。


極めて事態は悪い。




………裏からこそこそ動くだけでは駄目だな、黒幕を叩かないと。


魔王捜しに出よう。


先ずはヌミデア王国から回り、半時計回りでロミリア共和国カリタリア州、ペロポネア帝国、デロス連邦、ダキア王国、ロミリア本国だ。


ハイテク機器だけではなく、足でも捜そう。


幸い私はマッハ3クラスで移動出来るから日帰りも可能だ。

グレリアは週休一日制なのだ。

ギルドはさらに自由で、ノルマさえ達成すれば何してもいい。

一月の上旬をギルドに、下旬を魔王探索の旅に費やそう。




私を敵にしたこと、後悔させましょう。






……………味方になるつもりはないけど。一応。










四月のノルマを近代兵器を用いて軽々とこなし、これから魔王捜しの旅に出る。

ヌミデアは暑いとの噂だ。新しく手に入れた空間大拡張型メッセンジャーバックに色々と詰め込んでいく。


自信作は偽造ギルドカードだ。もはや本物より完成度が高い。

偽名はイブ‐K‐アインだ。イブキを分解しただけ。ランクは色々潜入する際信用させるためBである。

Bは、二つ名のつくAより知名度は低いが殆どの人がC止まりということを考えれば十分な強さを持つ目安になる。

身分隠匿は最優先事項である。大陸本土では常に黒ローブに身を包み、隠匿魔法をかけつづける事にしている。




0430テイクオフ。


グレリアの明るい夜をバックに私は飛び立った。


その後、暗闇の中を音速の三倍で飛行する。

事前に航空ルートはMQ9で調査し、モノクルに保存してある。

後は、モノクルの指示に従えばいい。


………見えて来た。

ヌミデア王国最大の港街、タンジーウだ。

やはり、アルバランガ側は灯りが僅かだ。


魔物除けの防壁を飛んでやり過ごす。

空はまだ暗い。

着陸は屋根の上で。


0512、ランドオン。




これは、午前5時から午前6時までの出来事である。


着陸。


歩く。


終わり。


………あれれ?そういえばどう聞けばいいんだ?


魔王何処ですか?何て聞いたら病院の場所教えられるし……とりあえず、モノクルで片っ端から額を解析してみるか?直接なら一分で出来る。……………………いや、そんなちんたらしてたら人類滅ぶな………


旅にばかり気を取られ、捜し方を全く考えていなかった私は途方に暮れた。




タンジーウは坂の多い街だ。そこに地中海風の家屋があると、観光に来てよかったなと思える。

さて、次は現地の朝ご飯でも食べて……はっ、つい現実逃避してしまった。


うーん、魔王ねえ。普通はお城だが……目立つからなあ、違うだろ。

目立たない場所か……しかし裏をかいて大都市地下にいるかも知れないし…………よし、やることが決まったな。


先ず、アルバランガ主要都市全ての地下を調査。これはMQ9が赤外線カメラ、X線カメラで担当。


次、森林、ジャングル、海中等視界が悪いところ。機械兵OC(光学迷彩)が担当。


最後、空。ラ〇ュタみたいに浮いているかも。

これは対空レーダーがいるな。

E767AWACS(空中警戒管制機)を派遣しよう。

AWACSとは、ジャンボジェット機の上にお皿を乗せたような飛行機だ。空飛ぶレーダーサイトで半径四百キロ内に何か飛行物体が現れたらすぐに分かる。




……私は本部で収集した情報を元に魔王を捜す。


私がタンジーウに来た意味って……あれだけ意気込んで来たのに…は、恥ずかしい。

これは多分、グレリアが悪い。私が部屋から気分転換に外に出ても、一日中霧が出ている。気が滅入っていたから、血迷ってしまったんだな。




それはともかく創造する数が半端じゃない。

かなり魔力を使うな。


……先ず、帰ろう。今日のことは忘れたい。


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