箸休め九品目
サハリア目線。
「………それではこれをもちましてロミリア歴412年度学園卒業式を終わります」
……全く、最後の学園長の話は長すぎですわ。かれこれ、一時間はかかりましたのよ。
それでも、最後だと思うと感慨深いものがありますわね。
「サハリアさーん。早く来てよー!」
「今行きますわ!」
私を呼んでいるのは親友であるリーナ、隣にいるのはクリスですわ。リーナは栗色の髪をセミロングにしている可愛らしい女の子、クリスは金髪を短めにした活発そうな女性ですわ。
こうして仲の良い友達が出来たのもアレシアがきっかけでしたわね。
……アレシア、それは私が誘拐された時私と共に捕まりながらも抵抗し………そして死んだ最初の心許せる女友達でしたわ。
アレシアと学園で生活を始めてから何故か友達が出来ましたの。
今は親友であるリーナやクリスに言わせるとそれまでは近寄りがたい雰囲気だったそうですわ。
つまり、アレシアのおかげで今の私があるのですわ。
「どうしたの?サハリア……アレシアちゃんのこと?」
「…ええ、でも大丈夫ですわ。行きましょう」
「そうだよ!!明日は綺麗にしなくちゃね!私に任せなさい!!」
「ダメだよ!クリスがコーディネートなんかしたら笑い者になっちゃうよ!サハリアさんにはもう専門のドレスがあるんだよ!!」
「な、リーナ!おのれ!!」
「…ちょ、やめてよ!あ、あはははは、くっ、くすぐったいよ!!」
……心配かけてしまったわね。いけない、しっかりしなくてはいけませんわ。
私が誘拐されてからロミリアは揺れていますの。
ペロポネアと開戦するかどうか………私としてはペロポネアを叩き潰して欲しいのですけれど、お父様はペロポネア側の無罪主張に耳を傾けているのですわ。
私は開戦派との政略結婚が決まった時は既に分かっていたことですもの、諦めはつきましたわ。
ロミリアでは女は十五になれば結婚するのが当たり前ですから、私も十四ですしそろそろか……との思いもありましたの。
しかし、お父様ったら!!私の初恋であり最初の親友でもあるクライブ‐C‐ウィンズを選ぶなんて!!
クライブもまんざらでもない様子で安心しましたわ。
アレシア、しつこいですけど今の私はあなたのおかげであるのですわ。
……ありがとう。
「あれ?サハリアさん、どうして泣いてるの?大丈夫?」
「ちょっと、しっかりしなさいよ。明日は幸せな日でしょ。ほら、笑顔笑顔」
「…いえ、な、何でもないですわ」
明日は結婚式。
今、私は幸せです。