表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/116

十七、偽




私達が黒服四人組を視界に入れた時には既に三人は地面に倒れ、ファルサリアさんとチャンのみが立っていた。

私達はファルサリアさんへ歩み寄る。


「ファルサリアさん。大丈夫ですか?」


うなづくファルサリアさん。

…!?

ファルサリアさんが抱き着いて来た。


「あ、あ、あの?…」


「………心配…した………」


「そうですね。すみません」


「私からも謝りますわ。元はと言えば私が捕まらなければこんなことにはならなかったんですもの…」


お姉ちゃんの表情が暗くなる。


「……無事なら……いい……」


「そうです。世の中結果ですよ」


「そ、そうですわよね。過程なんて…」


さて、気分を一新した所で……


「………終わりですわよ、チャン!おとなしく捕まりなさいな」


お姉ちゃんが勝ち誇った表情で言った。

数時間前までの鬱憤が貯まっているのだろう。


「捕まる?クラウディウス嬢、それはまだ早いですな」


チャンが両手を上に掲げると、何かが地面から出て来て私達三人とチャンの間を塞いだ。


これは………三頭邪蛇。

長さ十五メートル程の黒い鱗で覆われていて、頭からは毒液を噴射するギルドランクAの化け物だ。


それにしても……何故ほいほいランクAの化け物を出せるんだ?

ギルド年間報告書によるとランクAが一年で討伐された数は四十二件。一月に三件くらいだ。それもロミリア国内で。


だと言うのに今日だけで二体。


「…どうしてAランクの魔物が都合よくあなたの味方をするんですか?何か操る力でもあるんですか?」


「教える必要がないでしょう。あなた方はここで死ぬ」


「私達を拉致するんじゃないんですか?」


「…」


チャンは山へ逃げていった。


キシャャアアア!!


「…お姉ちゃんにファルサリアさん。この蛇お願いします」


「……了解…」


ファルサリアさんは微笑み、お姉ちゃんは少し呆れた表情で答える。


「もう好きになさい。そして必ず捕まえなさい!」


「ありがとうございます」



モノクルでチャンを追尾する。


アンコナーの近くにある雑木林が生える山でチャンの背中を見つける。


【雷撃】。


「はっ!」


ええ?手で弾いた!?


「ふふふ。私は以前からあなたに興味を持っていました」


チャンは、埃でもたたいたかの如く平然とした表情で話し始める。


「あなたの魔力量はとても人間とは思えない。恐らく社会に出れば迫害されて、その才能は潰されるでしょう。人間とは嫉妬深い愚かな生き物ですからね」


「…何が言いたいんですか?」


「私の額をよく見なさい」


モノクルで額に何か魔法をかけているのは分かっていたが…


「まさか………」


「そう。私は魔族です」


額には、何かの紋章が刻まれている。


……成る程。だから魔物を操れたのか。


「私達の側に来ませんか?アレシア‐C…いえ、J‐バルカ」


CとJは、近衛軍団との関与を否定する為にお父さんが細工した証。本来、父親の名前の頭文字Jを付けるべき所をCにすることでごまかしていた。


「何故…?」


そういえば、西の森でも私を近衛軍団長の娘と呼んでいた。まさか……政府に内通者が?


「多分、あなたの予想は当たっていますよ。我々は各国政府にスパイを送り込み、反政府組織を援助している」


「…そんな分かりやすい悪役へは行きません」


「……残念だ。もう一度考えて下さい。我々につくんだ。アレシア‐J‐バルカ!」


「嫌です」


「…そうですか。ならば、将来脅威になる存在は生かせないですな」


「一人で私を殺せるとでも?」


「いつ、一人と言いました?」


ぞろぞろと周囲から魔族が出て来る。数は…チャンを合わせ、七人。チャン以外は黒いローブを着ている。私を円陣で閉じ込める。


隠匿魔法か…毎度毎度厄介だな。




………これは、殺し合いだ。今までの私の圧倒的魔力で気絶戦法なんて無理。

殺す気で行かないと………こちらが死ぬ。


動いたのは、私。

【灼熱】で円状にいる魔族に摂取五百度をプレゼント。


魔族AとCは咄嗟に魔法障壁を展開。

その他はバックステップし、何か黒い塊を投げてくる。闇ではなく、邪の性質の黒球。

違いは、存在自体が許せるか否か。


自動魔法障壁が発動。


【灼熱】を魔力にモノを言わせて摂氏千度まで上げ、AとCを黒焦げにする。

……殺してしまった。いや、後悔は後だ!!


Dが西洋によくある両刃剣で斬り掛かり、E、Fは魔力を手の平に集め、何やら大技を出しそう。

Bは?後ろか!!チャンは?くっ、捜す時間がない!!


Dへ【電子砲】を放つ……と見せ掛け、狙いはE、Fへ。Bの正面に【灼熱】を展開し、時間稼ぎ。


Dは思惑に気付いたが、【電子砲】の威力に阻止を断念。そのまま接近。


甘い!!横薙ぎ払い。


DとFを上半身と下半身、二つに分断。ちっ、Eには避けられた。


BとEの挟撃。どちらも邪の黒い【射炎】を放つ。


上に跳び…【落雷】二重奏。避けられたが、相手も攻撃を中断。


Bがナイフを持ち、突貫。【電子砲】で……おっと、Eが黒い火球を連射して来る。Eが後衛をして私に魔法を放たせないようにするつもりらしい。


面範囲攻撃。BとEを含む半径百メートルを【灼熱】で摂氏五百度へ。動きが止まった所を【電子砲】で狙撃。


「…はあ…………はあ………」


これで、黒ローブは全滅だ。


チャンは……逃げたか!

逃がすか!


前方二キロ。魔力を感知。ロックオン。

【電子砲】発射。


一筋の光が闇を裂き、モノクルからチャンの反応が消えた。




……チャンは恐らく私の事を報告したに違いない。それで、増援が来た。

もし、私が生きていると知れたら……魔族は全力で排除にかかる。

私の家族、友達、学園という都市自体を人質に取って………

ならば………………………………………………………生きる道は一つ。………死を偽装する。


私にそんな能力はないが、調査地帯がなくなれば?

私がこの山を吹き飛ばす。原因は死を恐れた私の莫大な魔力の暴走になるに違いない。


他にないか?

………私は自分で思うより、この環境が気に入っていたらしい。未練がかなりある。

他の方法は……ない。あったとしても思いつかない。何かないのか!?


まずい、お姉ちゃんとファルサリアさんが近付いて来る。




………さようなら。




N2爆弾設置。飛行ユニットにより、高度一万を維持。

起爆準備完了。


十……九……八……七……六……五……四……三……二……一……起爆。











視界が光に包まれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ