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十六、脱出



私とお姉ちゃんの二名は拉致された。


現在、蝋燭の灯る、小麦粉の詰まった袋や樽酒がたくさんある倉庫らしき場所に監禁されている。


拉致した黒服の内二人が私達を監視、残りは外へ出て行った。その時海が見え、潮の香りが漂ったことから港町にいると想像可能、というか確定的だ。


魔力を使えなくしているのは、手錠だけだ。


物質創造にて、赤光剣を創造し手錠を破壊する。


赤光剣特有のブゥン!という音に反応し、監視A、Bが戦闘体制に入る。


咄嗟に音響閃光手榴弾を使う。


音響閃光手榴弾とは、強烈は音と光で対象の聴覚と視覚を一時的に封じる代物だ。


A、Bはそれでも魔法障壁を展開し感覚器官が回復するまでの時間稼ぎを図る。

残念。【雷撃】を一点に集中させ、魔法障壁ごと吹っ飛ばす。急いで展開したから、脆いのだ。


次に、足枷を外しお姉ちゃんの拘束も解く。


「大丈夫ですか?」


「…ええ。なんとか」


スカ……モノクルをポケットから取り出す。モノクルを魔法具と思わせるためだ。


「…それは何ですの?初めて見ますけど…さっきのアレもどうやりましたの?…それに早く逃げなくては…」


「これは索敵魔法の代わりをする魔法具です。先ず、脱出経路を調べる必要がありますから。あれらも全て魔法具になります」


うーん、この倉庫を二人一組で計四人が巡回。残りは……何処か離れた所だ。


「私は前。お姉ちゃんが後ろ。しっかり着いてきて下さい」


「ま、待ちなさい!年上の私が前に出るべきですわ!」


「このモノクルは私しか読み取れません。それに、小さい私なら発見速度が遅れて、先制攻撃が可能です。……あと、私を信じて…欲しいです…なんて………」


…クサイ言葉を吐くのは苦手だ。よく漫画とかで言えるな。

恥ずかしくないのか?


「…ああん!!そんなこと言われたら断われませんわ!!」


…くっついてる時間ないって。


「…でも……絶対…怪我しないで下さいな…」


「無論です。私に任せて下さい」


「…ふふっ」


……?


私が疑問に思っていることに気付いたようだ。


「だって……まだ六歳ですのに…背伸びして…」


私としては、もう二十年程生きてるから当然なんだが………




少し温かい気分になった後、行動を開始する。


モノクルで巡回の居場所を確認し、私が【電撃】で気絶させる。


外は倉庫が立ち並んでいる。もう一組も遠距離からの【電撃】で終わり。


意外に楽だな。


そのまま倉庫群を突っ切り、漁船や客船が停泊する港に着いた。


先ず、ここが何処か確認しないと…


税関らしき三階建ての煉瓦造りの建物へ入る。

中は暗く、誰もいないようだ。受付スペースが入って正面にあり、そこから左右に廊下がのびている。


税関らしく、受付の壁に地図が貼ってある。

………ここは、アンコナーという港街らしい。


シシリーから約百二、三十キロは離れている。


「これからどうしますかね?」


「…考えてなかったんですの?」


「…やはり、軍団駐屯地がいいですよね」


「無視ですの!?」


地図によると、この街にも軍団はいるな。


「となると………国境警備にこの街には一個小隊がいます。そこに行きましょう」


「………そうですわね」


外が騒がしくなって来た。


「…急ぎましょうか」




国境警備部隊の駐屯地は、税関から南西に三キロ離れたアンコナー郊外にある。しかし、緊急事態に備え税関にも部隊はいるはずなのだが。元々、それを当てにしていたのだ。


税関から出ようとした時、右廊下の一つの部屋から赤い液体が漏れているのが見えた。

思ったより、あのペロポネアのスパイは武力行使をしている。


また見つかったら、どうなることやら……


モノクルとMQ9無人攻撃機をリンク。

上空から駐屯軍への道程を探る。


MQ9はアメリカが開発した無人攻撃機で、偵察用カメラが付いているからこっそり飛ばしたのだ。


……魔力は使えないから直線で三キロ突っ切る訳にもいかない。敵の索敵魔法に引っ掛かる恐れがあるからだ。


最短四キロか……MQ9ご苦労様。

情報はモノクルに登録済み。


「では、行きます」


お姉ちゃんが首を縦に振るのを確認して、夜道を進む。


アンコナーは煉瓦が多様された街で、あたかも中世都市に迷い込んだかのような感じがする。


都市計画か何かで街の中心に広場を、そこから放射状に大通りがのびている作りをしている。


私達は、目立たないよう裏道や小道を進む。


人通りは明かりが松明くらいしかないらしく、あまり多くない。

しかし、夜徘徊する輩もいるのだ。


今、私達は一本の路地の前と後ろを塞がれ身動きが取れない。


「へっへっへ……上玉だぜ…」


「小さい方見ろよ……」


「ギャハハハ!!お前あんなチビが好みかあ!?」


平時ならパパッと倒すが、今魔法を使うのは危険すぎる。


ここは……物質創造しかないか?


スタンガンを両手に隠し持つ。


前、三人。後ろ、二人。


「お姉ちゃん、いざと言う時は魔法を使って下さい」


「え…?」


一気に三人側に詰め寄り、スタンガンを左の一人の腹に当て、倒す。


「ア…アレシア!?」


「な…何しやがった?」


真ん中も即昇天させる。


「なめやがって!」


最後の一人が殴り掛かるが、遅い遅い。


余裕で殲滅。


「もう!何で私がこんなことを…」


返す刀で二人組へ駆け出す。


お姉ちゃんは近くにあった箒を振り回し時間を稼いでいる。


いくら私が遠距離型でも一般人に近接戦闘で負けたりはしない。のはいいんだが、お姉ちゃんに叱られた。


「アレシア!!前にも言ったと思いますけど、一言説明して下さいな。私、心配でしたわ。いきなり走りだして…」


ああ。そういうことか…


「……すみません。次は気をつけます」


「何だか、前もこんな状況があったような気がしますわ…」




その後、比較的順調だったが………


「…駐屯地へ向かう全ての道に監視が付きました」


ある意味当然だ。

やはり退魔師辞めてブランクが長いから頭が鈍ってるな。


「アレシア。どう致しますの?」


監視されている道路は、駐屯地正面へ向かう一本、右手に出れる二本の三本。

それぞれ、四、三、三で監視されている。


でも、逆を言えば敵は動かないのでは?


アンコナー駐屯地を無視して野山へ潜り、シシリーへ向かう。

うーん、しかし食料…は何か狩るとしても、水のめどがつかない。


いや、堂々と南下してしまうとか……いいねそれ。


ん?んんんん?


ファルサリアさんの魔力波長があるぞ。

そして……現在黒服へ進撃中。


……しかし、強いな。

三人チームA、Bダウン。

僅か二、三十秒だぞ。

どうやって……それはともかく助けに行かないと。

いらないかも知れないが、多分私達の為に来たんだから。


「お姉ちゃん、ファルサリアさんが来てます。行かないと…」


「えぇ?…もうしょうがないですわね、私の友達は……行きましょうか…」


友達に誰が含まれるかは置いといて、私達はファルサリアさんの下へ向かった。


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