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箸休め五品目−リンク五、入学




「……料理長。これ十分うまいですよ?」


オレの下で働くジラがオレが作ったケイクを食べている。


「……いや。あと少し、何かが…何かが足りない………」


オレは学園で料理長をしている。

何故かと言うとロミリア料理大会総合準優勝の成績により、スカウトされたのだ。


学園での給料は低くないし、学生もオレの料理に満足してくれている。


だがしかし!!

準優勝ではオレのプライドが許さないのだ!!




オレは、優勝したセリエと互角だった。

だがオレは最後のデザートだけは……恥ずかしいが、軟弱なモンだと思って普通にロミリアにいた料理店のメニューにあるモンを出した。


負けた後、セリエが出したデザートを試食した。


あれには衝撃を受けたね。

あいつが出したデザートはアイスクリイムって言うんだが、何と凍ったクリイムを出したんだ。


あんなの固くて食えやしないと思ったんだが…完敗だったよ。




あれからオレはデザートの研究に明け暮れた。

同じデザートを出しても意味がない。

何か……何か独創的なデザートを!!


オレは、当時貴族達が食べていたケイクに着目した。

ケイクはスポンジにクリイムを塗ってあるお菓子だ。

これは……改良の余地があるんじゃないか?


オレはケイクが甘ったるいことから、酸味のあるイチゴをスポンジに挟んでみた。


……イケる!!


ここからオレは改良に次ぐ改良をした。

スポンジにはイチゴを練り込み、クリイムにはイチゴソウスを、最後に生イチゴを上に置いた。


……イチゴケイクだ!


だが……まだ、アイスクリイムの衝撃には勝てん。


イチゴもケイクも前からある。何か新しい食材を………




オレが行き詰まっていた時、ロミリアにとある食材が流通し始めた。

……チョコリだ。


チョコリはキト王国原産で、キトでは砂糖を入れて飲んでいる。

これを通が好んで飲み始め、ロミリアでも細々ながら流通している。


これはまだ認知されていない食材だ。

この独特の甘さ……ケイクに使える!!






「…出来た……出来たぞ!!」


オレはあれから一年かけてチョコリを研究し、ついにチョコリケイクは完成した。


……うん、これなら勝てる!!


周りからも賛辞の声。


次は必ず勝つ!!




オレはやり切った心地よさに身を任せ、ぼんやりと学食を眺めた。まだ11時か。

昼時になると賑やかになる学食もまだひっそりとしている。


………ん?誰かいるな。


なっ…………!


そこには、まだ小さい女の子がいた。

髪は白銀で陽光を反射して輝き、その整った顔立ちはまるで女神か天女だ。


神も……オレに味方してくれるのか?


オレはふらふらと彼女に近付き、色々話をした。


お嬢ちゃんは何かデザートをお望みだ。

………はっ!!そうだ!!このお嬢ちゃんにチョコリケイクを試食して貰おう!!


急いでチョコリケイクを一切れ差し出す。


すると、何と泣き出すではないか。


まさか……駄目なのか………?






しかし、それは杞憂であまりの美味さに感動したらしい。




……料理で人を感動させることが出来た。


オレはそのことに深く感動した。


彼女はにこにこと微笑みながらお土産にあげたチョコリケイク一ホールを持って帰った。


その笑顔に、オレとお嬢ちゃんのやり取りを見ていた七人が犠牲になった。


……ともかく、オレは神の加護を得たんだ。

絶対に勝つ!!


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