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十四、護衛と共に




「………ん……」


「……おはよう、アレシアちゃん」


「おはようございます、バシドさん」


そうだった。今日からお姉ちゃんはVIPみたいに護衛引き連れる生活が始まるんだ。


私は、何故か顔が赤いバシドさんの横を通り過ぎ、朝の準備を始める。




朝ご飯を私、お姉ちゃん、ファルサリアさん…長いな、何か愛称でも考えよう、バシドさん…毒味なのに一人前しっかり食べている…で食べている。ハリアスさんはどうしたんだろう。


「ん?ミーシャは昨日は担当が夜だったからぐっすり寝ているわ」


「てっきり、二人一組かと思ってたんですけど一日交代だったんですね?」


「いいえ、外出は二人で護衛よ」


……?

私が不思議がっていることに気付いて説明してくれた。


「私とミーシャは、日中は二人で護衛。夜9時から6時までは三時間交代で睡眠よ」


今は8時25分。

……寝坊か。


「起こさなくていいんですの?」


「寝坊した罰よ。朝飯抜きで仕事して貰うわ」


バシドさんは若干怒っているようだ。プロとしての誇りだろうか。




皆準備を終え、ハリアスさんを起こしに行く。


中は私やファルサリアさんと違い、ベッドが二つあるせいか少し狭い。しかし同時に一つしか使っていないから近い内広くなるだろう。


「起きなさい!護衛対象には毅然とした態度で望めっていつもあんたが言ってんでしょ!」


確かに起きているハリアスさんはSPやSSシークレットサービスみたいに何か隙のなさそうな気配、態度だった。


しかし、これは……よだれで枕を汚し、腹は出て……見てはいけなかった気がする。


「…む?もう朝か……?」


「もう対象が登校するわよ!」


「なにぃ!何故起こさなかった!?」


「対象から離れる訳にはいかないでしょ!ほら!さっさと支度する!」


「…十分くれ!」


「駄目!あと五分!」


「あ…あの、私、十分ならぎりぎり待てますわよ?」


お姉ちゃんがおずおずと提案する。


「駄目よ!ミーシャはいつも朝が弱いからこの機会に改善するわ!!」


何とかハリアスさんの準備は出来たものの、長い髪はぼさぼさ、軍服はよれよれだ。


「こ、こんなみっともない格好で出たくない!」


「これはミーシャに与えられた罰よ!これに懲りたら寝坊なんてしないことね!!」


ハリアスさんは駄々っ子みたいに入り口のドアにへばり付き、バシドさんはそれを引っぺがそうとしている。

………魔法戦士ってすごいのか?




あれから攻防は続いたが、お姉ちゃんが


「これ以上待てませんわ!!もう行きます!!」


と護衛対象が動き出し、二人は慌てて後を追った。

かの攻防により、二人共突風吹き荒れる中を歩いたかのような状態だ。


「ファルサリアさん、魔法戦士ってすごいんですか?」


「……前はそう思ってた……」


……………。






学園に付き、講堂に入る。中には長机が段々畑のように高低差を付けて並んでおり、自由に座っていい。


私はいつも最前列左から二番目の後ろに座っている。

よって、お姉ちゃんとファルサリアさんも私を挟んで座る。


「ハリアスさんにバシドさんはどうしますの?」


「私達は軍から研修に来たことになっています」


という訳らしく、お姉ちゃんの前後を固める。

ちなみにお姉ちゃんが壁際でファルサリアさんは通路側。






午前の授業が終わる。

今日は久しぶりに平和そうだ。


お昼はもちろん学食だ。

あそこには、凄腕の料理人がいる。




私達は特待生なので、学園証を見せ、受け付けのおばちゃんを素通りする。


「こんにちわ、アレシアちゃん。今日もかわいいねぇ」


……不意に言われると照れる。

前もって予想していれば子供だからと分かるが、いきなり言われると私が美少女……いや、美幼女か?と勘違いしてしまう。


それは、ともかく護衛二人はただの研修生扱い。

バシドさんは普通に払うが、ハリアスさんが渋る。

おばちゃんの妙な圧力に負けて払ったが。


「くっ、後で経費で落としてやる」


「何言ってるの。領収書貰ってないじゃない」


「しまった!学食に領収書は出ないのか!?」


止めてくれ。すごい目立つ。ほら、みんな見てるよ。ああ、顔を赤くしている人がたくさんいる。

頼むから、あの二人が悪いから怒らないで。


「……他人のふり……」


私達もファルサリアさんに習い少し離れて食事する。

数分で口論はおさまり、バシドさんとハリアスさんがトレーに食事を盛ってこちらに来た。


流石に、バイキングで毒を盛るのは無理なのだろう。


「なっ、学食でこの味は……!?」


「こ、これは一流な味だ……」


あ、すっかり忘れてたがおじさんは元気にしているだろうか。


デザートが並ぶテーブルにはまだチョコレートケーキがない。


少し様子を見てみよう。


「…少し知り合いの顔見てきます」


厨房行きのドアを少し開け、様子見。

どうやら体調は悪くなさそう。


「ちょっと、厨房は立入禁止ですわよ」


あ、お姉ちゃんに見つかってしまった。

その声が意外に響き、厨房内にいた数十人が一斉にこちらを振り向く。

皆、動きを止めてしまう。


「おお!お嬢ちゃんじゃねえか!」


「久しぶりですね」


おじさんが周りを気遣い、厨房から出て来てくれた。


「おじさんのケイク楽しみにしてたんですが、まだないので様子見に来ました」


ケイクとは、ケーキである。何故か呼称が英語風、やはり文字が似ているからだろうか。


「ああ、完成した。ただ最初の一つはお嬢ちゃんに食べて貰おうと思ったんだ」


おじさんは厨房に入り、冷蔵庫からチョコレートケーキを取り出す。


「さあ、入った入った」


「いいんですか?」


「オレがいいならいいんだよ。何せ料理長だからな」


ふ、権力万歳。チョコレートがあるとき、私の辞書に遠慮という二文字はない。


「そうだったんですか……なら、失礼します…あ、友達もいいですか?」


「ああ、いいよ」


中に私、お姉ちゃん、ファルサリアさん、ハリアスさん、バシドさんとぞろぞろ入る。


厨房は料理長の新作が認められるかで全員がこちらを注視している。


早速、切り分ける。


料理長の頼みなので、初めに食べる。




「……料理長、最高です」


うう、感動の涙が……


「そうか!!」


皆も満足した様子。


何故今までチョコレート製品がなかったんだろう。

こんな美味しいのに…………


聞いた所、チョコレートの材料であるカカオがある地域とロミリアが交易を始めたのが十四年前で、ロミリアでチョコレートが出回り始めたのが二年前。

このチョコレートケーキも非常に高く、銀貨一枚したらしい。


まあ、この学食は貴族も美味しく食事出来るようそんな料理はたくさんあるが。



「また、来ていいですか?」


「ああ、いつでも来い」


私達は、至高の甘味を食べた後、午後の授業へ向かった。


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