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十三、暗殺




馬車に揺られてやって来たのは、シシリー郊外の第6駐屯地。


二重の堀があり、高さ数メートルの石壁、数メートルおきには監視塔がある。


門は恐らく鉄製だ。


ここで、カツ丼食べたりするはめになるのだろうか。



中には、三階建ての石造りのビル。

そのまま中に案内され、ドアに中隊長室と書かれたとこに入った。


中には茶髪の青年がいた。


「…おい、オレの予想はどうなった?」


「…当たっちゃいました」


「……そうか。近衛に連絡しとけ」


「…はい」


茶髪の青年はすぐ出ていった。


「オレはまどろっこしいのが苦手なんだ。はっきり言うぞ」


そう言いつつ、渋るエリソンさん。どうやら、私達の共謀疑惑は存在しなかったようだ。

ならば、何故見張られた?



「………大統領暗殺計画が起きようとしている」


彼の口から飛び出したのは、まさかのあの海外ドラマな展開。


お姉ちゃんが息をのむ。


「…私の父は無事ですの?」


「ああ、まだ起きてないからな」




「さて、事情を説明しよう………」




そこで語られた内容は………


先ず、ペロポネア側のスパイが最近各地で活動を活発化していること。

ここ、シシリーにもいてさっきの黒服達だということ。

アジト捜索中に既に物証も発見してあること。

………そして大統領の娘であるお姉ちゃん誘拐計画を黒服達は計画していたこと。である。これは…シーズン1かな。対象の大切な人を人質に取り、要求を飲ませようとしていたのか。


「はっきり言って、黒幕が見つかるまでは危険だ。さっき第5魔法戦士小隊に話をした。二人来る。そいつらにクラウディウスさん、あんたの護衛をして貰う」


「…そうですか。分かりましたわ」


護衛が付くと面倒そうだが、命の方が大事だ。お姉ちゃんもしかたなさそうにうなづいた。




第5魔法戦士小隊。隊員全員が魔法戦士であり、ロミリア軍団最精鋭の近衛の内要人警護のプロフェッショナルだ。


魔法師は、魔法に特化し、戦士は、剣技に特化している。

しかし、すると魔法師は接近戦に弱く、戦士は遠距離戦に弱い。

魔法戦士はその両方を可能にした存在だ。


魔法戦士なんて半端者役に立つかは私には疑問だが、何か魔法剣とか言う、剣をよりしろにすごい力を発揮するらしい。




その後、二時間程経ち魔法戦士二人が来た報告が入った。


「第5魔法戦士小隊ミーシャ‐E‐ハリアス、カーナ‐L‐バシド入ります」


「待て!現在、赤が発令中だ!暗号を言え、先ずはハリアスからだ」


そこまで事態は逼迫しているのか……


「…NBC43」


「…よし、次はバシド」


「16J22であります!」


「よし、入れ」


入って来たのはどちらも女性だった。警護対象に配慮したのだろう。ハリアスさんは淡い金髪をストレートにしている、目つきの鋭い女性だ。バシドさんは、黒髪を短髪にしている優しげな女性。どちらも軍服を着用しており、腰に剣を穿いている。


「「………」」


両者はしばらく私達を観察している。


「ゴホン」


わざとらしいエリソンさんのせきでやっと動き出した。


「…中隊長、警護対象は金髪に碧眼、髪を二つに分けている十五歳の学園生徒だな?」


ハリアスさんは、上司に対するに相応しくはない口調でエリソンさんに尋ねた。確か、いくら近衛でも中隊長が階級上のはずだけどな。


「ああ、そうだが?」


エリソンさんも気にしていない。なら、いいけど。ロミリア軍は規律は緩いのだろうか。


「…その、少女二人は何だ?」


バシドもうなづく。


「学園の友達だそうだ。二人共飛び級だとさ」


「…そうか、ともかく友達ならついでに聞いておいて欲しい。私はミーシャ‐E‐ハリアス、彼女は同僚のカーナ‐L‐バシドだ。今日から24時間体制でサハリア‐Y‐クラウディウスの警護をする者だ」


「紹介されちゃったけど私がカーナよ。よろしくね」


「私がサハリア‐Y‐クラウディウスですわ。白銀の髪の子がアレシア‐C‐バルカ、紫の髪の子がファルサリアですわ」


この世界の名前は、自分の名前、父親の名前、家の名前の順だ。ファルサリアさんは孤児らしいが、まだ事情は聞いてない。というか軽々とは聞けない。


私達、社交性乏しいプラス小さいコンビは軽く会釈をしておく。


「あの、私達授業に出ていないのでこれからのことも考えて、事情を教師に説明していただけると有り難いんですけど…」


「うむ、聞いたところ、あのスパイ共を君達がやっつけたらしいな。そこも含めて説明してやろう」


「ありがとうございます」


「うん、礼儀正しいのはいいことだ」


「すごいわね〜、まだ小さいのに学園の四年生ですって」


バシドさんに頭を撫でられる。今回はファルサリアさんも道連れだ。


「あ…」


何故か残念そうな表情を浮かべるハリアスさんに、若干機嫌の悪いお姉ちゃん。


「ああ!」


お姉ちゃんも頭を撫で回して来る。やめてくれ。

だが今回は、道連れがいるから屈辱感は少ない。……一番の屈辱は気持ちいいと思ってしまう自分である。

その後、馬車で学園まで送って貰い、教師を捕まえ事情を説明してそのまま帰った。教師は既にお姉ちゃんが大統領の娘と知っていたらしく簡単に了承して来た。




「…ほお、これが特待生の寮か…」


「私の部屋より広いわ…」


現在いるのはお姉ちゃんの部屋である。寮長室は面積が二倍なので寝室が別にある他は構造は同じだ。


それにしても魔法戦士はエリートだから学園で特待扱いでもおかしくない気がするが……それを聞いてみる。


「魔法戦士は素質ある人少ないから、素質ある人達は首都ロミリアの兵舎の一室で教育しているわ」


「…うむ、教室は狭い、寮は汚い、学食はまずかった」


……少し暗くなった二人に急いで別の質問をする。


「お二人はここで過ごすんですか?」


「いえ、右の二人部屋を空けて貰ったわ」


「…ああ、そういえば開いてましたね」


あれ?そういえば、ファルサリアさんは何処に住んでいるんだ?


「ファルサリアさんは寮住まいですよね?」


コクリ、首を縦に振る。


「何階ですか?」


「……十階……」


……となると部屋順は、お姉ちゃん、私、ファルサリアさん、護衛になるのか。



お二人は基本ただ一緒にいるだけで、行動の制限はないらしい。


ファルサリアさんは、別室だが私は他の人と夕御飯を一緒に食べるのは習慣になり始めている。


料理は一応全員出来る。


今回は私の番だ。

うーん、お姉ちゃん食材補充してない。

しかたない。

今日も色々あったし手を抜くか。


……入学してから、忙しいな。




今日はひき肉でハンバーグを、あとはキャベツと玉ねぎ(みたいな)のスープだ。


すると、ハリアスさんが台所にやって来てつまみ食いを始める。


「…やめて下さい」


「ちっ、違う!毒味だ!材料自体に毒を入れる手口もあるからな!…あと一口……」


言い訳してないでその手を止めろ!




「あら、アレシアちゃん。これどうやって作ったの?」


「…やはり、美味い…」


「………美味………」


「アレシアはどうして料理がこんなに上手なのかしら!」


好評で私も嬉しい。でも、食材のバリエーションが少ない。全世界から空輸している日本には遥かに及ばない。


……魔法戦士は肉体を使うので少し物足りない様子。次は多めにしよう。


「あ、あとハリアスさんとバシドさんは材料費払って下さいね」


「「え!?」」


「これから毎日来るんでしょう?それに近くの寮食堂よりいいと思いませんか?」


寮食堂は安くて、まずいが評判だ。ならば素人でも私達の料理を食べた方が得だろう。


「…私はいいわ。そこらの食堂より美味しかったし、こんな小さい子にたかる気はないしね」


こう言われては中々財布を出さないハリアスさんも渋々お支払いして下さった。



「…では、私はこれで」


皿洗いも終え、もう後は寝る準備だけだ。

夜更かししたくても、この体は睡眠を強要して来る。ならば、自分から寝るまでだ。


「え?」


お姉ちゃんに腕を掴まれる。


「あら、いつも一緒に寝ているでしょう?」


「…で、でも……」


それは、誰も見てないからだ。一緒に寝ている姿を見られる。うぅ、恥ずかしい。無理。


「駄目!寝るの!!」


私を無理矢理抱き抱えて、ベッドに押し倒す。


う…眠気が…ま、負ける……な………無理。


「ああ、いつ見ても素晴らしいわ………」


「こ、これはやばいわ…!?」


「くう……す、少しだけ」


「だ、駄目!触ったら起きるでしょ!」


「ああ!ファルサリア!アレシアに抱き着いたまま寝るなんて!!」


「いや!寧ろ二人の方がクル!!」






……何か、うるさい。


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