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十二、冤罪




こちらスター43、スター43。

到着まであと十分。到着まであと十分。

それまで何してでも持ちこたえよ。

……すみません。何かずっと走ってたら、テンション高くなって言いたくなりました。意味はない。


……私とお姉ちゃんとファルサリアさんは、うっかり今日授業があることを忘れていたのだ。

現在、何とか午後の魔法運用1に出席すべく身体強化魔法で馬車並、つまり約時速三十キロで走行中。

このペースならば授業開始に間に合いそうだが、体力のなさを莫大な魔力で補っているファルサリアさんと私とは違い、お姉ちゃんは速度が落ちて来ている。今は許容範囲内だが……


まあ、所詮授業だしお姉ちゃんのペースに合わせるつもりだが。


「……あれ……」


ファルサリアさんが何かを見つけたらしい。


「…何ですか?」


「……騎士戦闘中……」


前方約五百メートル。馬に騎乗した騎士五人と黒服の人達七人が交戦中。

騎兵対歩兵ならば騎兵有利なのだが、黒服に魔法師が一人おり、苦戦しているようだ。


「……どちらが敵でしょう?」


「ふ、普通黒服じゃありませんこと?」


しかし、実は騎士に化けて逃げようとしているとかで、黒服は対テロ機関かも知れない。


「わからないので、纏めて気絶させちゃいましょう」


「アレシア、待っ……………」


非殺傷で効率的に意識を奪えるのは私のみ。


【電撃】十二重奏。


「なっ、アレシア、もう少し様子を見たりとか出来ないんですの!?」


「………時期焦燥……」


「うっ……で、でももうやっちゃったんだから対策を考えないと…」


「次からは、周りの意見も聞きなさい!!」


深く反省します。……怒ると怖い。




ファルサリアさんが騎士を、お姉ちゃんが黒服を中級防御魔法【不外の部屋】という外から入れるが、中から出れない魔法で閉じ込める。

もちろん、術者は例外だ。

懐を探ったところ、私が考えた超展開はなく普通に騎士が正義で黒服が悪だった。

どうやら黒服はペロポネア側のスパイで、学園の情報を探っていたらしい。


しかし…これからどう対処しよう。


「…【不外の部屋】は展開しながら動かせますか?」


「無理ですわ」


困ったな。




その五分後くらい。


「………軍団接近…」


街道から軍団付きの魔法師が十人程近付いて来た。

ちょうどいい。

引き渡すか。

……ついでに、無断欠勤ではなく騎士に協力したという口実もできたな。フフ。


軍団の魔法師は全員灰色のローブを纏い顔までフードですっぽりおおっている。だが、ただ一人隊長格らしい人は紫のローブを纏っている。


共通なのは、胸のところに銀鷲が描かれている。これはロミリア軍団の証だ。銀鷲の下には所属軍団のマーク。第7軍団の雷のマーク。そしてここからは数字で、所属は第7軍団第31魔法中隊第1小隊。


彼らはしばらく無言でたたずんた後、動き出した。


私達を円状に取り囲む。


すぐ動かなかったのは、私達の実力を計りかねたのだろう。見た目女子供だけだし。しかし、騎士も黒服も倒れ防御魔法で拘束されていることに気付き包囲した。【不外の部屋】は不可視なのだ。

…あ、騎士とわかってたんだから解放しておけばよかった。誤解されそうだ。


「ファルサリアさん、騎士の拘束は解いて下さい(小声)」


「……了解…」


「それで…お前達は何者だ?何をしている?」


紫さんが質問して来る。


「私達は学園の生徒ですわ。ギルドの依頼を終え、帰宅途中この方々が戦っているのを見ましたので騎士側に立ち戦いました」


代表はお姉ちゃんだ。というか、子供の言葉というのはあまり信用されないものなのだ。


「では何で騎士達も倒れているんだ?おい、確認しろ!」


灰色ローブの一人が騎士の生死を確かめる。


「生きてます!」


その声で灰色ローブ達からのプレッシャーが少し減った。


「騎士方は私達の魔法に巻き込んでしまいました。それについては謝りますわ」


まさか、私の空想で間違えて騎士を倒したなんて言えないからね。


「……一緒に来て貰おう。抵抗すれば殺しかねん。頼むから抵抗するなよ?」


「もちろんですわ」


「おい、黒い服の奴らは縛っとけ!魔力遮断も忘れるな!………あと、魔力話機を出せ!……そうだ、オレだ……ああ、スパイは拘束した。護送用の馬車を寄越してくれ、いや、もう一台頼む……学園生徒がな……わかった、頼んだぞ」


魔力話機とは、魔力で動く無線のことだ。

形は四角い黒い金属の箱に有線の受話器が付いている。


電話中に、部下達は黒い服の人達をミノムシにしていく。


「…さて、お前達の名前を聞こう」


軽く名前だけ自己紹介する。


「……ん?クラウディウス…もしかすると……」


「その通りですわ。私は現大統領の娘です」


「…本当かよ…厄介だな…とにかく、馬車が来るまで待つんだ」


少し離れたところに三人で集まる。


「…これはどういう状況ですの?私達は賊を倒したのですから感謝はされても監視される必要はないはずですわ」


「…おそらく、おそらくですよ。さっきの紫ローブさんはスパイとか言ってました。そして黒服達は学園の情報を持っていた。ならば、誰かが学園の情報を漏らした……」


「つまり、私は容疑者ですの?」


「多分ですけどね……」


「………冤罪……」


そうなりつつあるよ、ファルサリアさん。

やばいなあ、こんなことなら素通りしとけばよかった。




二十分程経ち、馬四頭が引く大型馬車と二頭が引く馬車、それを護衛している騎士約三十人が来た。

物々しいな。


黒服達は大型馬車に乗せられ、監視として灰色ローブ達も乗り込む。

私達はただの馬車に乗るように指示された。


さて、これからどうなるだろう。


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