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九、大学とギルド




今日からは、学校らしい、机にかじりつき、椅子に座りながらの授業が始まった。


しかし私はおかしな状況におちいっている。


女子、と言っても十九歳だが、には近所の人達と同じような待遇を受けている。


つまり、頭を撫でられたり、抱きしめられたり、お菓子をくれたり等。


貴族の子供は小さい子供をあまり見たことがないのだろう。

私を触ったりして嬌声をあげている。


……私はこの一群のマスコット扱いだ。


え?男子はどうしてるか?

何か私が見ると顔反らされたり、顔赤くしたり、手を振り返したり。


昨日私に負けたのが、悔しいらしい。手を振る連中は、まあ、強い者に従属する手下みたいな者だろう。




午前の授業終了後、この妙な空気の講堂から抜け出すように、私は学食へと足をのばした。


「あ!ま、お待ちになって!!」


「お姉ちゃん、なんか……おかしいですよ。この群」


「ああ、無自覚とは何て恐ろしいの?」


何その呆れた表情。


「え?何がですか?じ、実はあの態度は私を油断させる為の布石?」


何てこった。危うく騙される所だった。

考えてみれば、学園四年生というエリートを自負するプライドの高そうな貴族連中が、あんな態度を取るなんておかしかったんだ。


「ち、違いますわ!皆さんあなたが気に入っていますわ!」


……うん。確かにさっきの仮説は流石に小説の見すぎじゃないかと思ったんだ。



学食は、お昼時ということもあり混んでいた。何しろ美味しいからね。


私とお姉ちゃんが隣に座りあい、絶品の数々に舌鼓を打っていると、私達の前に彼女が座って来てこう言って来た。


「………リベンジ……」


あの、【コロッセウム】の人である。今日も昨日と同じローブを羽織り、無表情は相変わらずだ。どうやらもう一回戦いたいらしい。


「あの、先ず、お名前を教えてくれませんか?」


「……ファルサリア…」


「その、ファルサリアさん、多分魔法実戦1が来週ありますからその時にやり合いませんか?」


私としては、こんな厄介な奴相手にしたくない。


「……悔しい……」


……えー、泣くのは反則だろ。


「わ、分かりました!戦いましょう!」


「…本当?…?…」


くう、上目遣いだと……断れない。


「はい、絶対です」


ここでお姉ちゃんより一言。


「それで、どうやって戦いますの?」


「「………」」


お姉ちゃんは呆れた表情をしている。

対するファルサリアさんはしまった!みたいな顔をしている。


よくあるのは、魔法師同士で一対一の決闘だ。しかし、あれは人気があり演習場は予約して一月は待つ。ならば、来週の魔法実戦1の方が早い。


「…あ、こういうのはどうかしら?ギルドで魔物退治を請け負い、多く倒した方が勝ち……とか」


「「……おぉー……」」


お姉ちゃんの方式が採用された。




ギルドとは、全土に展開する国から承認された民間魔物討伐会社である。主な業務は魔物討伐、護衛、探索、雑用などなどの斡旋である。

ギルドは国からや自分の情報網、被害者からの依頼を冒険者に斡旋してその報酬の二割を懐に入れ、一割を国へ税金として納める。

依頼にはSSS、SS、S、A、B、C、D、E、Fのランクがある。もちろん、SSSに近い程危険かつ困難な依頼だ。


学園とギルドは提携しており、戦士科と魔法科には学園証を見せるとある程度のランクが貰える。


戦士科の三年生にはEランクが、四年生にはDランクが与えられる。


魔法科の二年生にはEランク、三年生にはDランクが与えられている。


つまり、Dランクで何かぶちのめすということだ。






放課後、私達は三人で北の商店街にあるギルドへ向かう。


私はもう商店街の人達とは顔見知りだ。挨拶しながら進んで行くと、商店街の外れに木造二階建てのそれらしい建物にギルドの看板。

中に入ると荒くれ者はおらず、一般人方がうろうろしている。ギルドは、農家等収入がない期間の収入源にもなっているのだ。

また、シシリーは学園都市だけあって防御は固い。

ギルドに登録し、旅して歩く人達を冒険者と言うがそれらの人達にとってあまりうま味がない都市なのである。


奥にいる受付嬢に話をする。


「当ギルドに来ていただき誠にありがとうございます。本日はどのようなご用件でしょうか?」


「ここにいる全員の登録をお願いしますわ。私は学園の四年生ですからDランクでしたわね?」


「はい。その通りです。では、学園証を見せていただきます。はい。確認させていただきました」


まあ、後は氏名、使える技能、魔物討伐歴等を聞かれた。


「では、これがギルドカードになります。このカードでギルドのあらゆる手続きを行いますので無くさないようにして下さい。もし無くされた場合、料金銀貨十枚をいただくことになります。では、本日はご利用いただき、ありがとうございました」


誠に丁寧でした。


さて、ギルドカードは金属製で何らかの魔法が施されそれが個人を特定する。何しろ、カード自体は氏名とランクしか書いてないからだ。


「…で、何を受けますか?」


Dランクの掲示板に貼られている依頼を選ぶのはお姉ちゃんの役目だ。

何しろ対決する二人共ちっちゃい。手が届かない。


「…これかしら」


二人で覗き見る。

あれ?結構息あってない?


[依頼 トトカ村 現在わたし達の村の近くにグリーンウルフが三十位群れで住み着いた。それで畑は荒らされ、家畜も食われ、このままだと村人も襲われる。グリーンウルフの群れをやっつけてくれ 銀貨三枚]


「私はいいですよ」


「…賛成…」


決行は休みである明日午前9時。

トトカ村はシシリー郊外の村で、西の森の近くだ。


私達は次に、冒険者セットを買いに行く。

つまり、携帯食糧、水筒、バック、治療器具、毛布、ナイフなどの料理セット等だ。


「おう、アレシアちゃんはかわいいなあ!これが一番いいナイフさ!」

「あらあら、アレシアちゃん魔物退治するの?頑張ってね、携帯食糧サービスしとくよ」


などなど。大分経費は浮いたが、心苦しい。


「…可愛いさは、代金にすらなるのね…」


「…驚愕…」




そのまま、寮に戻り一番広い寮長質にて作戦会議。ファルサリアさんも当たり前だが特待生。


「先ず、これは勝負ですから勝敗が決まる戦いをしないといけません。全員が群れを一撃で倒せる以上一応言っておきます」


という訳で戦い方。私はハリソンコード22140【雷撃】だけを使い、ファルサリアさんは【火球】だけを使うこと。


【雷撃】は、【電撃】の殺傷型。【火球】はファイヤーボールのこと。


万が一、村が危険に晒された場合勝負は即座に中止すること。

お姉ちゃんがカウントすること。


が決定。


明日は、異世界に来てから……もう六年か。

六年ぶりの怪物との戦いだ。


気を引き締めよう。




夕御飯まで三人で食べる。だって、私が


「ファルサリアさん、会議は終わったので、帰っていいですよ」


と言ったら


「…私、邪魔?…」


と言って来た。これが断ることが出来ようか。いや、出来まい。




あれ?まさか一緒に寝る気?……いや、何も言うまい。


私は大穴を通り、自室に戻る。




「……何で?」


二人は一緒にお風呂に入ったらしいがその後、私のベッドに潜り込んで来た。


まさか、まさかだけど………ファルサリアさんも寂しかった?私は何故かマスコット扱いとはいえ、群にとけこめた。しかし、この無口無表情美少女は孤独だったのだろうか。そして、唯一の支えであった魔法の自信を私がミキサーにかけてぐちゃぐちゃにしてしまった。…のかも知れない。


まあ、全部推測さ。

それにしても……ちっさくなってから、眠気に勝てな……い。


無理。おやすみなさい。


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