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90、イブキ編 闇の中にて




フュロルと名乗る私と同年代、ほぼ同じ背格好の少女。


私が意味も分からず放り込まれた、この明かり一つない暗闇の通路内で見つけた唯一の人間です。


「ハハッ! なかなか強いじゃねえかよっ!」


ですが、戦闘大好きな人みたいなようで……何の事情も聞く間もなく斬りかかられて、大変困ってます。


赤光剣を使いこなすフュロルに対し、私はディーウァの援護を加えぎりぎり互角。いいえ、恐らくフュロルが楽しむ為にわざと生かされているのでしょう。なのでもし戦闘に飽きたりすれば私の命がどうなる事か……たやすく想像可能です。


どうにかして、フュロルを戦闘不能状態に追い込まなくては。


「どうした? 動きが鈍くなってんぞ?」


「くっ……!」


暗闇の中の唯一の光源、フュロルの赤光剣が赤い軌道を描き左から横薙ぎに迫って来ます。


私はフュロルの薙ぎ払いを自身の赤光剣で弾き返し、弾いた反動を利用して後退。【身体強化】の影響で跳躍力が上がっていた為一気に十数メートルの距離を稼ぎます。その隙にディーウァが音響閃光手榴弾を投擲。


「遅せぇ!」


ちっ……音響閃光手榴弾が発動前に切り伏せられてしまいました。


ただ距離を稼げたので、非致死性弾丸を装填した20ミリガトリング砲ファランクス改でもって射撃。殺傷は避けるため、威力と弾丸の速度は抑えてあります。しかし、そのぶん弾丸を大量にばらまき低速度による命中率低下を補う目論みです。幅二メートル、高さ五メートルの空間にガトリング砲二門を縦に配置。毎秒七十五発の連射性能を味わいなさい。


毎秒三百四十メートルの速さで放たれた弾丸は発砲音が連なる事でチェーンソーの駆動音にも似た音を響かせ、僅か十数メートルしか離れていないフュロルへ即座に着弾。


いや、フュロルは強固な【魔法障壁】をフュロル自身の前面に展開して一発たりとも当たっていないです。まあ、動きは止まりましたからいいとしましょう。


「ディーウァ!」


『はいです!』


こっそりとフュロルの後ろに付いてたディーウァ。音響閃光手榴弾を起爆させます。


「んなっ!?」


ふ、もう手遅れでした。辺りに光と音の暴力が撒き散らされます。むろん、私とディーウァは対閃光、対音響防御をしています。


「くそっ! どこにいやがる!?」


視覚と聴覚を封止されたフュロルは適当に赤光剣を振り回し暴れ回っていますが、当たるはずもありません。


私より強かったのが逆に仇になりましたね。戦闘において、油断は実力差を覆す大きな要因なのですよ。


さて、じゃ、拘束しましょう。


モノクルの兵装選択画面より……て、エイリア〇を制圧するために重機械兵小隊を選択済みでした。そして、兵装は一つしか選択出来ないのです。


まずい……。


冷や汗が頬を伝います。


「ぬぐ……ふふ、ハハハ! 見えて来たぜぇ!」


は、早っ! あぁ、ど、どうしよ……。


「なっ!? お、おまっ」


思わずフュロルに飛び掛かってしまいました。フュロルが右手に握る赤光剣は危険極まりないので柄を握り、左腕は手首を押さえます。足は絡ませる事で抜け出すのを困難にします。


「バカ! 離れやがれ!」


死にたくないんで、無理です。しかしっ、く、暴れるなっ! 私だけじゃ押さえられません、助けてディーウァ!


「ディーウァも手伝って下さい!」


『何をすれば……』


えーと、ディーウァの大きさで出来る事は……。


「赤光剣を奪い取っちゃってから右腕の関節を押さえて!」


『は、はいです!』


「オマエらやめろおぉーっ!」


私達の泥臭い戦法に屈したフュロルの情けない叫び声が、暗闇の通路に反響していきます。どうやら上手く押さえ込めたようです。よかった……。




あれから十数分が経過し、ようやく抵抗する力が弱りました。どうやら疲弊したみたいです。ここから交渉に入ります。


「あなたの拘束を解く交換条件として、私の質問に答えてくれませんか?」


「うるせー、さっさとどけ!」


あ……そういう態度取るんですか。ふふふふふふ、どうやら立場が分かっていないようですね。


「ディーウァ、お願いします」


『むっふっふー。了解です!』


意気揚々と返答したディーウァが向かったのは、フュロルの脇腹。


「あ、あははははは! ははははは!」


ディーウァが開始したくすぐり攻撃。たいしたことないように思えるかもしれませんが、これが中々きくのですよ。


「はははは、はっ。や、やめっ、お腹が痛っ、いっ、ふ、ふふふふ、あはははははは!」


「私の質問に答えてくれませんか?」


「や、やだっ! くぅ、はははは、痛いっ、あははははは!」


強情っ張りめ。条件を飲むまで、終わらないぞ。




「わ、分かった! 分かったからやめてぇ!」


涙目になりながらフュロルが甲高い悲鳴でギブアップを告げてきました。まあ、フュロルは頑張って抵抗したんじゃないですかね。十分も耐えたのですから素晴らしい耐久力と言えるでしょう。ディーウァにくすぐり攻撃を辞めさせ、さっそく質問していこうと思います。


「じゃ、質問しますね。まず、ここはどこですか?」


「……」


あれ、しゃべらないつもりですか? ならば……。


「ディーウァ、まだ足りないみたいです」


『にゅふふふー』


ディーウァは乗り気ですぜ。さあ、やってしまいなさい!


「わ、分かった! 言うよ! 言うからやめろ!」


ふう、ようやく口を割ってくれましたか。あれ……ディーウァは残念そうですね。気に入ったのかな? まあ、今は我慢して下さい。現状を把握する事が先決なのです。


「じゃ、お願いします」


フュロルはため息をつきながら、渋々話を始めました。


「……ここは牢獄みたいなもんだよ。アタシはレクーサのヤローに閉じ込められたんだ」


「牢獄? どういう事ですか?」


「あのヤローアタシにキスしようとして来たんだぜ!? 信じられるか!? それでアタシが拒否ったら私が嫌いだどうのこうので逆切れしてきやがって……うがあぁあああ!! ムカついてきた! いい加減離れろ気色悪りい! あのヤローに迫られた時を思い出すじゃねーか!」


何か嫌な事を思い出したらしいフュロルが私の拘束から抜け出そうとするので、私はディーウァを目の前に突き出し一喝します。


「フュロル、暴れない!」


「……ちっ」


ディーウァのくすぐり攻撃には大分まいったようで、大人しくなってくれました。


『ご主人様、この扱いはひどくないです?』


意外ですね、この程度でディーウァがひどいだなんて。


「私はフュロルに対して危害も加えてないし、そこまでひどくないと思いますけど」


『ディーウァは、ディーウァの扱いが雑な気がしたのです』


うっ。いやでも、ディーウァってちっちゃいから、普通の人には出来ないいろいろと便利な事を頼めるから……ちょっと自覚がある。


「そ、そんな事はありませんよ。ですよね、フュロル?」


「なんでアタシに聞くんだよ……ふふふ、ふふ。あはははは、わっ、わかっ、ははは! そ、そーだなぁ!」


フュロルも賛同してくれました。これで機嫌を直して欲しいところです。


「ほら! ここにいるみーんなそんな事ないって!」


『そうです?』


まだ懐疑的ですか……。ここはもう勢いで乗り切るしかありません。


「そうですよ! ね、フュロル!」


「あ、あぁ! そーだな!」


『むー……ま、いいです。それより、気味悪いこの場所から出たいです』


何とか納得してくれましたか。とはいえ、これからは自制しましょう。


では気を取り直して、フュロルとのお話を続けましょう。私はディーウァからフュロルへと視線を移します。


「……え?」




次の瞬間、私達は別の場所へ転移していた。


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