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八十八、アレシア編 白




白い空間が広がっていく。


私は白い空間に127ミリ砲弾を撃ち込んでみる。


白い空間に触れた瞬間、塵も残さず消失した。


白い空間が広がっていく。


私は白い空間にGBU−28「バンカーバスター」を投下してみる。


白い空間を貫く事は出来なかった。


白い空間が広がっていく。


私は白い空間に460ミリ02式陽電子砲を放つ。


白い空間に直撃したものの、たやすく光線は弾かれる。


白い空間が広がっていく。


私は白い空間にLGM−118Aピースキーパーを発射する。


白い空間に当たる直前、弾頭が十一の300キロトンN2爆弾に分かれ、各々が着弾。しかし空間は揺るがない。


白い空間が広がっていく。


……私は何をすればいい?




女の子が情緒不安定になり、白い空間を生み出して来た。多分このままだと空間に呑まれて消し飛ぶ。


対処法として、あの女の子を落ち着かせれば何とかなりそうなんだが……。白い空間はありとあらゆる物を遮断するようで、近付く事もままならない。


どうしたらいいんだろう。空間に作用する攻撃なら、白い空間を傷付けられるかもしれない。


衛星搭載兵器「次元の渦潮」を使ってみようか。


「次元の渦潮」。衛星に積まれた加速器によって、超小型のブラックホールを生成し対象へ撃ち込む兵器。威力は半径百メートルにある全ての物質を吸い込み、消失させる。まあ、とある大怪獣には通用しないみたいだけど。




次元の渦潮、射撃用意完了。


発射。


太陽光パネルを張り付けた黒い二枚の翼を広げ、中央の加速器から光すら飲み込む黒い球体が撃ち出される。




駄目か。


白い空間に直撃したまではよかったが、呆気なく掻き消えてしまった。


ブラックホールとは言っても、サッカーボール程度の大きさしかない。反物質爆弾のN2爆弾を十一個投下して何ともないんだからなあ。


もう打つ手が思い付かない。


白い空間に呑まれていく、薄暗くどこまでも広がる空間。とりあえず明るくはなったか? はあ、その程度で気休めになる訳がない。


白い空間はどこまで広がっていくつもりなのだろうか。薄暗いこの空間を全て呑み込むつもりなのだろうか。だとしたら、非常にまずい事態だ。


薄暗い空間が有限でない事を願いたくなってしまうね。










逃げに徹して十数時間。


どうやら、この薄暗い空間は球体だったらしい。


目の前の地平線が白く染まっていき、後方からも白い空間が迫って来ている。


私がいくら壁を探してもなかった理由が今更ながら分かってしまった。




私は、四方から白い空間がにじり寄って来るのを見ているしかない状況に立たされている。




逃げ場がない。


白い空間への対処法も分からない。


どうしようもない。




しかし……まだ私にはやり残した事がたくさんあるのだ。


両親や自分では友達と思っているお姉ちゃんにファルサリアさん、学園の個性豊かな先生達、意外に使える魔法剣士、グレリアのエリート社員、私が記憶喪失になってしまって海を漂っていたのを最初に助けてくれたヘイス家の人達、親切過ぎる皇族の姉妹、ロウダスの賑やかな学生達、種族間の差別なく接してくれたエルフの皆さん……おまけとして、サイトもつけときましょうか。


これらの人々のため、といったら驕りが過ぎると言われるかも知れないが、それでも敢えて言う。これらの人々を守るために私は全力を尽くす。


彼らの生活を脅かしている魔族を私は私の敵と見なす。


魔族のトップであるあの老人が、アルバランガを搾取の対象としてしか見ないのならば私はあの老人を殺すだろう。


アルバランガの混乱の元凶である彼を潰すまで、私は死ねない。死ぬ訳にはいかない。


何のために寂しさを押し殺して、グレリアに隠遁していたんだ。




ここで諦めるという選択肢はない。


全力をもって白い空間を突き破り、白い空間を創成したあの女の子をどうにかする。




とはいえ、今の私にこの白い空間を少しでも傷付ける術はない。


何か手立てはないか。


うーん……分からない…………いや、あの白い空間を凌駕する事を考えているから考え付かないんだ。先ず、あの白い空間を作り出せれば互角にはなる。


あの空間をスカウ(規制)ーで解析……解析不可能、か。解析すら拒絶されてしまった。


模倣は無理のようだな。


どうすればいい、どうすればいい。




白い空間はもう、間近だ。広さにして東京ドーム一個分といったところ。猶予はあと数秒。


考えがまとまらない! 何をしたらいいのか分からない! でも諦めたくはない!




ならば、悪あがきでもするしかないな。


【魔法障壁】全力展開。魔力の全てを、私の体を球体として囲んでいる【魔法障壁】へと送り込む。【魔法障壁】が淡く青い輝きを放ち、もはや手を伸ばせば届きそうな位にまで近付いて来た白の空間にぶつかる。


せめぎあいは一瞬で白に軍配が上がる。


【魔法障壁】は徐々にその範囲を狭くしていく。


く……ここまでなのか?


焦って魔力の流れが僅かに乱れる。そうして緩やかな崩壊から、急激な崩壊へと変遷し……【魔法障壁】、崩壊。


「!!」


白が私に向かって溢れ出てきた。白が私の全てを飲み込もうとしている。


嫌だ! 止めろ!




自動展開型魔法障壁が最終防壁として、展開される。


無色と、白がせめぎあう。


少し寿命が延びたな……。




勝手に魔力が吸い上げられていき、自動展開型魔法障壁が私を守ってくれている。それも、あれだけ私が苦労しても傷一つ付けられなかった白い空間と互角に張り合っているのだ。


意識的に全力を尽くした様々な攻撃や【魔法障壁】よりも、無意識で展開する魔法障壁の方が白い空間と渡り合っている。私の意思はその程度という事なのだろうかと少し落胆してしまう。


……っ、自動展開型魔法障壁が削られた。


まずいっ……そうだ、何で生き延びようとも生き延びさえすればいい。だから自動展開型魔法障壁、白い空間に呑まれてくれるな。


自動展開型魔法障壁が、押し戻した。


っ、押し戻した! これはつまり白い空間に侵食された部分を侵食し返したという事だ。




自動展開型魔法障壁、これは私に残された最後の反撃のカード。


何とかしてこれを使いこなさなくてはならない。


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