表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/116

八十七、アレシア編 レクーサ(拒絶)




接近する小型ミサイル群。


ファランクス改が撃墜する。


接近する小型ミサイル群。


【電子砲】で吹き飛ばす。




ディーウァの暴走。何故か私を攻撃してくる。


話し合いには応じてくれない。




ディーウァが私を攻撃してきてから数分。ようやく対処法が分かって来たような気がする。


ミサイルは推進装置と誘導装置で主に構成されている。とすると、誘導装置を電子攻撃などで無効化してしまえばただのロケット弾となり、回避も容易になるのではないか。


そして、その隙に一気にディーウァへ接近。スタンガンで意識を刈り取る。


うん、これでいこう。


となると……誘導装置が何かを調べないといけない。赤外線か、電波か、光学か、まさかのディーウァ自身が操作する方式か。


モノクルでそこの所を解析する。


あー、魔力誘導か……。私の魔力に反応している、と。想定外だなあ、どうしよう。


デコイ(囮)を使うか。


デコイ。敵の攻撃を何らかの手段で騙して、別の方向へ攻撃させるようにする事を可能にする。


魔力誘導で私を狙っているのならば、チャフの改造で対応しよう。


チャフ。レーダー妨害手段の一つで、発射筒から電波反射材をばらまきレーダーを拡散させてしまう。電波ならアルミ材をばらまくが……魔力なら? 物質創造により変質する前の魔力をばらまかなくてはならないから、工夫が必要だ。


魔力を固形化する……【魔法障壁】からその技術を貰う。


ほぼ、純粋な魔力で構成された一辺一センチの三角形の薄い板。これを大量にばらまく事でミサイルの目を騙し、その隙にディーウァへ近付き意識を奪う。


おそらく近付いたら、何らかの防御火器があるだろ。もし私ならミサイル網を突破される事は考慮するから、当然究極体ディーウァだって考えつかない訳ない。【身体強化】を強めに使っとこう。


さて、じゃあ始めるか。


チャフ発射。


私の後方へ扇状にチャフをばらまくと、それに釣られて数千ものミサイルがチャフ目掛け軌道を変えていく。


すかさず一気に前進。ディーウァを目指す。


ディーウァは空間上からミサイルを新たに多数創造して対抗しようとするが、あいにくミサイルの創造速度より私のファランクス改のガトリング砲身から放たれる弾丸の方が遥かに多い。ディーウァがミサイルを創造した瞬間、ミサイルは私へ照準を合わせる前にガトリング砲の一撃をくらい爆散する。


ディーウァの真ん前へ踊り出る。


ポーチの後ろポケットから、スタンガンを取り出す。ディーウァの首筋目掛け、腕を突き出し前へ突き進む。



何かがおかしい。ただ、それが何かは気付けていない。


今は、この一撃を与える事に集中しよう。ディーウァは腕を交差させ、私を懐に入れないようにするが、私は幸か不幸か体が小さい。腕の十字をすりぬけ、首筋に上手くスタンガンを当てる事に成功。


ディーウァは硬直。意識を奪えたか?




ディーウァが消えた。代わりに突如現れた卵型の白塗装の金属。その、金属に描かれている文字を目が追う。


20ktN2B(20キロトンN2爆弾)。


「は?」


何が起きたか理解出来ない。ディーウァはどこに行った?


金属から光りが……。


「っ!!」


まずいっ。


カッ……オォオォオォオォオォオォオォオォ!!!!!











ん……足音。誰か近付いてくる。


「まだ、生きてる……」


……? 誰の声? 人がいる?


話し掛けてみようとして、気が付く。声が出ない。体も動かない。


目は開いた。


最初、焦点を絞れないのか輪郭がぼんやりした景色しか分からなかったが、徐々にはっきり見えてくる。


純白の輝く長い髪に、透き通った紅い瞳の容貌美しい女の子が、挙動不審に体を動かしながら倒れているらしい私の右に立ち、私を上から覗き込んでいる。


「……あ」


私が目を開いたのに気付き、後ずさりする。


しばらくすると、またじりじりと近付いてくる。


目を合わせる。


「あぅ……」


ビクリと体を震わせ、また後ずさりする。


うーん、小動物的な女の子。誰なんだろう。


彼女の進んでは後退し、進んでは後退し……という奇怪かつ愛くるしい行動を見つめている内に体は徐々に自由に動かせるようになり始める。


若干よろめきながらも、立ち上がる事に成功。


「ふおっ!」


それに彼女はかなりびっくりしたようだ。


わたわたと体を動かし、少しして駆け出す。大分離れたところで立ち止まり……馬鹿な! 物質創造しただと? 彼女は、物質創造した10式戦車の影に身を潜め、ソーッと顔を覗かせては私が見ているのに気付き、またしてもビクッと体を震わせて頭を引っ込めるのを繰り返す。


何て可愛……コホン、彼女は一体何者だ?


ともかく話を聞かないと。何かこの世界について知っているかもしれない。


逸る気持ちを抑え、歩いて戦車へと近付いていく。


「すみません、ちょっと話を伺いたいのですが……」


「ひぅっ……」


ひどい脅えようだ。体が小刻みに揺れているのが、ここからでも分かる。私を恐れているのだろうか?


あと十数メートル程まで近付いていく。


「こ、来ないでっ……」


仕方ない、拒絶された時はむやみに近付かないべきだ。まあ、ここからでも話は出来るからいいか。


「あの……」


「は、話し掛けないで……」


う……ここまで嫌がられると、かなり困る。何も出来ないじゃないか。


話し掛ける事すら嫌がられるのならば、それより刺激しない対応なんて私には考えつかない。


彼女が私との接触を避けている中、どうするか……。私に気を許すまでしばらく待つしかないのだろうか。




数十分が経過した。あれから何度か意思疎通を図ったものの、ことごとく失敗。


大分長丁場になりそうだ。私は、とりあえず進展のない彼女との接触は後回しにする事に決める。


辺りを見渡す。


この世界…一体何なのだろう。気付いたらいつの間にかいた空間。どこまでも広がっていて、果てがあるのかは分からない。


確かにあると確信が持てるのは、地面だけだ。やる事がない。その地面を調べてみよう。


手で触れてみる。ひんやりしていて、質感は磨いた石に近い。


強度は? 思い切り蹴る。


「〜〜〜〜っ!!」


か……固い。か、考えてみたらディーウァの小型ミサイルが当たってもヒビ一つ入っていないん……ディーウァ!


そうだ、あれから何が起きた? ディーウァがいきなり消え、そこにN2爆弾が現れた……私は助かったのか。無意識に、【魔法障壁】を展開したのかもしれない。


いや待てよ。ディーウァが消え、N2爆弾が現れた。これは物質創造に似ていないか? そして今、物質創造が可能な人間が私の前にいる。容姿もその端整な顔立ちはともかく、身長や髪の長さ、瞳の色が類似している女の子が。


彼女は何者だ。


「っ!!」


私の疑惑のこもった目線に、目に見えて動揺している。怪しい、怪し過ぎる。彼女が何か関与しているのではないのだろうか。


「あなた……誰ですか?」


彼女は私と接触するのを恐れている。接触は慎重にしないといけない事は分かる。それでも、彼女はクロに近いハイイロだ。多少怖がられても、追求すべきではないのか?


「いや…………止めて。傷付けるのはいや」


私の問いには答えず頭を抱え、真剣に私に恐怖を訴えかけてくる。


彼女は何をそこまで恐れているんだ?


「せめて、名前だけでも聞かせては貰えませんか?」


名前が分からないと、交渉の余地がない。警察のネゴシエーターも本名にはこだわらないが、呼び名を先ず交渉により得るらしい。


ここは、あまり引き下がる事の出来るものではない。


一歩、踏み出す。


「……!」


まずい。空気が変わった。手で顔を覆い、手で覆いきれなく僅かに見える目を恐怖で見開き、口を無意味にしきりに開閉させている。いや……何かを話しているみたいだ。


「来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで来ないでコないで来ナいデコナいデコナイデコナイデコナイデコナイデコナイデコナイデコナイデ」


お、追い込み過ぎたのか? しかしあまりにも心が脆いんじゃないのか……。


慌てて宥めにかかる。


小走りで彼女に近付いていく。


「い、いや、あの、その……すみませんというか何というか……」




「モウイイ。 ワタシノマエカラ、イナクナッテ?」


背筋がゾクリとする。明確な殺意。


瞬間、彼女を中心に半球状の白い半透明の空間が広がり、私もその空間の中に取り込まれようとしている。


「……っ!?」


自動展開型魔法障壁が時をおかず発動する。何年ぶりだろうか。その魔法障壁が白い空間に呑まれていく。


魔法障壁が……この空間は、危険だ。


飛行ユニットで即座に彼女を中心に広がる白い空間から離脱を図る。


何も音を立てずただただ広がっていく白い空間。その広がる速度はマッハ二にも及ぶ。




逃げろ、逃げろ、逃げろ。


あの空間は触れた全てを掻き消す。


私は掻き消されるつもりはない。


ただ……何でこんな事になってしまったのやら。


平和な日々がすごく懐かしく感じるのは何でだ? エルフの島を出て、一日も経っていないじゃないか。




本当、平和が願わしいよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ