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「やはり! 甘くっ、見てましっ、たか! 三、天王。まさか、次の、相手がっ、三天王、全員、合わせて、三つ子、とは!……反則です!」

「本当にかなりまずいわ……。ヴィーの腕は取り戻して、出血を止めたけど、残された時間は少ないわ。」


 カーンは愛用の武器を振り回しながら、四天王の1人、闇魔法と素手の使い手フーを相手にしていた。

素手での攻撃と魔法を器用に使いながらカーンとナーテルを相手にする四天王フー。


 必死に相手をしているカーンは、減らず口を止めない。

もはや、気力だけで戦ってる状況だ。


 ナーテルも同じだ。カーンに守られつつ、カーンを守り、他のメンバーが危険に晒されれば、魔法を使ってフォローする。正確な魔力コントロールと、全体を見渡せる頭脳と目がなければ、即座に他の皆がやられていただろう。


 ただ、状況は思わしくない。すでに戦って数時間が経過している。


 魔人相手に、ほぼ1人で相手をしているヴィラの片腕がすでに吹き飛ばされている。

それでもどうにかなっているのは、日々の鍛錬の賜物というしかない。


 生き残るために最善を尽くす。


 カーンの言葉が現実となった瞬間だった。


「彼をっ、早く戻しっ、たいのは、山々です、がああああ! ……彼をっ、戻せば、均衡はっ、一気に、崩れる!!」

「……私たちも、だいぶピンチだし、ねっ!!!」


 マナリアとロブが相手にしている四天王ミーが、2人の隙を見てヴィラの相手にしてる四天王バーに魔法を放ち加勢した魔法を、即座に相打ちさせる。


 徐々に削られていくカーンは、白い服を真っ赤に染めていく。


「体が、冷たくっ、なって、きまし、たよ! これはっ、訓練、して、いって! 正解、でしった!。ナー!テル! 私が、黙ったっら! 本格、的、にいいい! 終わりっ、ですよ!」

「お互い様ね、私が黙っても死ぬわ!」

「そうでっ、したね!!!」


 現状は悪くなる一方だ。

 

 ヴィラとマナリア、ロブも、かなり危険な状況だ。


「マナリア、下がれ!!!!」


 片腕を無くしてもなお、マナリアを守ろうとするヴィラに対して、マナリアは敵と戦いつつ、大きな声で叫んだ。四天王のミーとバーのコンビネーションに苦戦している、3人。


 傭兵らしくない考えのヴィラは、マナリアを、できればナーテルをどう生かすか考えていた。


 元々戦いの苦手な女の子マナリア。


 ヴィラにとって、マナリアは護衛対象の1人であった。


「ここで離れたら、ヴィラが死ぬわ!」

「下がらなくても、死にそうだけどな!! あぶねぇ、ヴィラ!」

「すまん、助かった! やはり、お前はできると男だ、ロブ!!」

「減らず口はいいから、戦いに集中しろや、ボケ!!」

「無理言うな! 喋らないと気を失いそうなんだ! もう少し付き合ってくれ!!」

「馬鹿がよ!! 無茶言うなや!」


 片腕がないせいで、動きが鈍くなっているヴィラの隙を的確に攻撃を当てようとする6本腕に様々な武器を持つ、多腕多武器の四天王バー。その隙に対して、攻撃を合わせるのが、ロブだ。


 だが、それをさせないように、もう1人の魔射手使いの四天王ミーが、ロブに攻撃しようとして、マナリアがそれを阻む。


 誰が抜けても危険な状態。


 過去最大のピンチであった。


「お前は生きろ、マナリアあああ!!!!」

「そんなのできるわけないでしょ! そもそも、逃げ切れる状況でもないでしょ!」


 その時。


 もう一方の片腕を切断されたヴィラ。


「ぐ!」


 動きが止まったところを、下から上に掬い上げるような斬撃を喰らったヴィラは、空中に浮いた。


「ヴィラ!!!」


 マナリアがヴィラの名前を叫んだ。マナリアの悲痛な叫びを聞いたナーテルは、ここまでかと、己の力を解放しようとする。


(死ぬ時は……一緒よね、みんな)


 潔く死を受け入れようとしたヴィラとナーテル。


 (ここまで、でしたか)


 カーンもまた、笑いながら武器を落とそうとする。


 マナリアも空気で察した。

みんな諦めた、もう終わりにしていいんだと。


(やっと、終わるんだ)



 だが、それを拒んだ者が1人。


「なあぁぁてえぇぇぇ!!!!」

「!!」


 空中に浮いている腕を暗器でナーテルのいる方向へ吹き飛ばし、ヴィラと四天王バーの小さい体で入り込み、宙に浮く体重の軽くなったヴィラを蹴り飛ばした。


 ロブの聞いたこともない怒号に、全員の意識が覚醒した。


「嘘でしょ、あの子!!」


 ナーテルは素早く止血の魔法を、ヴィラに使用する。

吹き出していた血が止まると、吹き飛んだヴィラの血が、自らの意思でヴィラの元に戻っていく。


「まだ、やら、せま、せん!」


 ヴィラの血を戻しつつ、両腕をくっつけたのは、カーンだ。

自分も限界のくせに、限界を超えてまで仲間をサポートする、それが僧侶の仕事だと言わんばかりに。


 血を失いすぎたはずのヴィラは、一気に熱と意識を取り戻し、叫んだ。


「ロオオオオォォォォ!!!!」

「やば」


 蹴られたヴィラは、近くにいたカーンが漏らした言葉で危険と判断し、フォローに入った。ヴィラが入ったことを確認したカーンは、途端に気を失った。


 ヴィラは四天王フーの両腕をとって、動きを止めた。血と共に入ったカーンの魔力と、怒りによって、いつもより力が入っているヴィラの握力に、四天王フーの腕がミシミシと音を立てた。


(クソ!)


 四天王フーは魔法でヴィラに攻撃を仕掛ける。手を封じられても魔法で攻撃できるのだ。どうにか避けるもヴィラだが、気絶を失っているカーンに近づいてしまう。


 ナーテルは魔法でカーンを、ヴィラから距離を取らせた。


「さすがだ、ナーテル!」

「ええ!」


 

 現状を把握するナーテルだが、これ以上は長く保てないと察する。


 ロブがどうにか作ってくれた時間ではあるが、結局は全滅の時間が少しだけ延びただけだと悔し気に血まみれの唇を嚙み締めた。


 それでも、諦めるわけにはいかなかった。諦めたら死ぬだけで、他には何も残らない。

ナーテルはマナリアという一筋の希望の光に賭ける他なかった。マナリアが覚醒するまでの時間稼ぎに全力を注いだ。


(私たちの誰かが死んだら、頼んだわよ。相棒。)

(うん。任せて)


 共存している悪魔に、誰か一人でもら死んだら、その後のことを任せて。



 一方、ヴィラの身代わりを果たしたロブは、四天王バーのハンマーによって潰されかけていた。

身体強化の魔法で体を硬化させている。咄嗟の判断だった。


 それでも、なぜ自分が助かっているのか、ロブにはすぐ分からなかった。いつものロブであれば、最も簡単に潰されていたからだ。火事場の馬鹿力かと思ったが、それにしたって異常だった。


(ゴルドなのか?)


 魂から直接、誰かから支えてもらっている感覚を、一瞬でロブは理解した。

だが、それも長くは続かなかった。


 体を支える全身の骨がギシギシと砕けて、筋肉の繊維がパチパチと切れていく音が耳の奥底から聞こえていた。まもなく、全身の骨が崩れ落ちて、ぺしゃんこに潰される未来がロブには見える。


 スッと、背中から冷気を感じ取った。現世のものとは思えぬ冷たい雰囲気と、人を人と見ていない視線。


(うわー。これ死んだわ)


 死神の鎌が、首筋に当たる感触を無意識に感じ取ったロブ。

実は、ロブだけではなかった。マナリア以外の全員が、久しぶりに濃厚な死の気配を感じていた。


 ただ、ロブだけが、死神の冷たい鎌を首筋に当てられている。


「はは……むり、かも」


 ロブは悟った。


(ごめん……マナリア、みんな)


 本当に、お迎えが来てしまったと、ロブは力なく笑った。


(まだ、大丈夫だ)

(え?)

 

 ロブが必死の思いで見上げると、ふと体が軽くなる。

四天王バーが、攻撃を緩めたのであった。



8話目は、本日18時に投稿いたします。

しばらくお待ちください。

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