そして、そっくりさんは…
正直、ホントこの場でだけは私は何もやらない予定でいた。
ホントに何もやりたくなかった。
本来なら、私はこの中ではほとんどこの件に関して関係ないはずだった。
なのになにこれ?
こんな眉唾物の降霊術でこんなことになるの!?
こんな呼ばわりしてるとはいえ、だから大人たちはがこれを必死でタブーを訴えていることが今になってようやく判った。
大人たちからは絶対にやるなと言われてるにもかかわらず何度も何度も懲りずにやる方が最も悪いんだけどさ。
私はホントに無理強いしてまで、ほんの数分だけ顔出しに来ただけなのに、なんで今回の主役みたいな状態になってるのよ!?
もう私の頭の中ですらごちゃごちゃだった。
そのあげく、
「地獄の果てまで許さない!」
とは何事よ―――――!?
いったい私が今回何をしたっていうのよ!?
(そっくりさんにタメ口叩いたではないか)
めちゃ理不尽すぎる!!
「…もう、いいよね?さすがに私も……もう限界なんだけど…」
とボソッとつぶやく者がいた。
あんな目に遭ってもまだ辛うじてコインに触れている木田奈江だ。
「奥宮香理さんのそっくりさんお帰り下さい。」
とこれ以上誰の断りもなく、勝手に終了させようとしていた。
一方、木田奈江の意識は、私の暴走を見たせいか少しは冷静さを取り戻していた。
そうだ。
いくら混乱していたとしても、そっくりさんへの挨拶は忘れてはならない。
私自身ですらそれをすっかり忘れていた。
結果は
「か え り ま す」
とでた。
その言葉を確認した途端、現場にいた全員が安堵した。
すべてがおわったとたん、コインに触れて木田奈江はそのまま机の上に突っ伏して倒れてしまった。
本当に一人でよくここまで耐えた思う。
身勝手に途中に消した二人の分までたった一人で背負ったのだ。
だがその安堵したのも束の間…。
「お前ら何やらかしたんだーっ!?」
という怒鳴り声が部屋の外から聞こえてきた。
神子さんの祖母だった。
「…」
私たちは何も言葉にできなかった。
「おまえらここからとっとと出てけっ!二度と来るなっ!」
現実に戻り、事の次第に気づき、私以外の子は蜘蛛の巣を散らすような勢いで部屋を出て行った。
私はだた一人この部屋に残った。
「あ、あの…。」
「まだそこにいるかっ!?」
私は再度怒鳴られそうになった。
それを後ろから、神子さんが必死で祖母の腕をつかんで止めようとしていた。
「雑巾貸していただけますか?」
「あ?」
「…あの…おもらししちゃった子がいて…。その…。」
神子さんのおばあちゃんもこの部屋の異質な臭いにようやく気付いたらしく、
「三果…。雑巾と新聞紙とちり紙を持ってくるように…。あとついでにゴミ袋も。」
「はい。」
自分の孫である三果に雑巾や掃除道具をとりに行かせた。
おばあさんはまた私の顔を見て、
「後片付けをする志には感謝いたす。
この部屋をひとまず浄化する。お前さんも一旦部屋を出るように…。」
とのことだった。
数十分後
私と神子さんはあの部屋の片づけをしていた。
「おまえさんは平気なのかね?」
規世が粗相をしたその場所を片付けていた時、おばあさんはいきなり私に話しかけてきた。
「ああ大丈夫ですよー。こういうのは弟や妹や姉の子の世話で慣れてますから―。」
とここは明るく答えておいた。
「ああなんだ。お主はイネちゃんとこの孫の三女か?」
「え…?あ…はい。」
稲子は私の祖母の名前。
どうやら、神子さんのおばあさんはうちのおばあちゃんと知り合いらしい。