そっくりさんの説教部屋 (杉村規世)
“わ し が い い と い う ま で”
という答えが出てしまった。
「もうっ!いやぁ―――――――っ!!!」
由利がとうとう発狂してしまった。
「ちょっと由利、ここ一応病院なんだから静かに…。」
いくら病院とはボイラー室を隔てている位置の部屋とはいえ、やはりまずい。
お母さんに無理言って借りた部屋なのだから…。
それにしても、“わしがいいというまで“というからいいというまでそっくりさんをやらないといけないのだ。映理奈個人だけは、もうクリアできているから、いいとして他のメンツはまだそっくりさんから許可が出ていない。
もちろん私もだ。はっきり言って割が合わない。この中で一番割が合わないのは私ではないか…。ここにいる全員とキスしろってどういう罰ゲームやねん。私が一番やりたくないよ。いったい私が何をしたっていうの?ただ単に香理を面白がってからかっただけじゃん。たったそれだけでなんでこうなるわけ!?
「私も他の罰ゲームにしてほしい。」
といったら、
“な っ と く で き ま せ ん”
それは私が言いたいことだ。ああ、でもそっくりさんからそれを問われているのなら、
「できるわけないでしょうがっ!!」
そしたらまたそっくりさんは驚くことを言い出す…。
“か ん ち よ う”
「え?」
「かんちよう??」
ってまさか…。
「浣腸のことじゃない?」
映理奈が手で指浣腸の形を作って表現していた。
そしてそっくりさんからのメッセージはまだ続く。
“ が ”
「が??」
“ふ さ わ し い”
「なんかまぁふさわしいかと思う。」
美知子がニヤリとしながら、それを大真面目な声で言ってきた。
「ふざけるなー!ふさわしくなんかなーい!!」
私は美知子に殴りかかろうとした瞬間。
“お や め な さ い”
と指が動いた。
「美知子―!あんた意図的にやってるでしょ――――!!?」
「ち、ちがうわよ!」
「本当に指が勝手に動いてて…。」
もはやこの二人の言っていることが本当かどうかさえも怪しくなってきた。
だいたいこんなうまいこと変な答えが出ること自体がおかしい。
そしたら奈江が何を血迷ったのか…。
「あたし規世とキスするのも浣腸されるのもイヤっ!!」
そんなこと私だってごめんだ。
と言いながら自分の指をコインに戻そうとした瞬間。
「キャ―――っ!!」
奈江の指とコインの間に電気で感電するかのような電磁波が通って、奈江はコインに拒否されぶっ飛んでしまった。
そして奈江の指先は真っ黒に焼けていた。
「イヤー―――っ!!」
奈江は自分の指を見て発狂していた。
「だから静かに…」
そして無情にもまだコインが動く。
“い ま さ ら な ん で す か”
“み ぐ る し い”
とりあえず奈江はもう許されないことは確定したらしい。
もうなんなんだ?たががそっくりさんのくせにマジで生意気なんだよっ!!
「あんた何様のつもり!!?しょせん香理のそっくりな奴のくせに生意気なんだよっ!!」
と思っていることがそのまんま出てしまった。
「規世…さすがにそのいい方はまずいって…。」
と香寿美が言ったとたん、すごいいきおいで指が動く…。
“お だ ま ん な さ い”
「え…?」
“あ な た じ ぶ ん が ど う い う た ち ば か し っ か り わき ま え な さ い”
今までにない長文でそっくりさんはしゃべった。
それもそっくりさんに思いっきり怒られているかのような口調でだ…。
「…嘘……」
香寿美はコインに指を置いたまま気を失ってしまった。
「え?ちょっと!」
残された美知子は大パニックだ。
ただ運がいいことに香寿美は意識なくても判っているのか?奇跡的にコインに指を置いたままということだった。
「どうしよう…。どうすればいいの?」
美知子はマジで涙目だった。
“な お し な”
「え?」
「なおせって…なにを?」
“こ こ ろ ね が わ る い こ と”
「私そんなに性格悪い?」
やっぱり自覚ないのか??
「おまえの性格、鬼みたくやばいよ…。」
とここでもあの由利がきっぱり言っていた。
「あんたに言われたくないわよっ!!?」
その意見は誰もが由利にも突っ込みたいであろう。
それに今回は辛うじて霞の指はまだコインに残ってはいるものの、おそらく意識はないし、机に突っ伏したままなので、用紙のどこに文字があるかも見えてない。それを一つ一つジャストミートして、的確でかつ美知子が納得いかない答えがここまで出るのは、やはり美知子ではない何者かが指を動かしているのだろう。
「なによ!!?私がいったいなにしたっていうのよっ!!?」
そしたら指が次から次へと動く動く、
“ば か に し て る こ と”
“じ や ま し て る こ と”
“も ん く ば か り い つ て る こ と”
“あ し ひ つ ぱ ろ う と し た こ と”
“い じ め し て い た こ と ”
「なによ!なによ!なによ!!?それって、ここにいる全員も男子たちもそんなこと当たり前のようにやってる事じゃないの!!?私だけじゃないわよっ!!」
私もそっくりさんになんでそこまで言われないといけないのよ!?と思えてしまった。
そういう意地悪な遊びをするのは、子どもの世界では至極当たり前のことではないか。
いま、おとなとして生き残っているおとなたちだって、ガキの頃にイジメの一つや二つやって遊んでいたがゆえにメンタル崩壊せず普通に生きていられるんだろうが!
だからいじめという遊びは我々子どもにとってはやって当たり前な遊びなのである。まぁ、私たちはそれをいじめとは呼ばずにただ単に標的を一人決めて、その標的で遊んでいるだけとしか思っていない。そしてその遊びはどの遊びよりも面白すぎるからやめられないのだ。
「何がいったい不満なのよー!?」
美知子はもう発狂状態だった。
“お ま え の や ら か し に げ ん か い”
とでた。
「なによ!いつもドジして失敗してるのは香理の方じゃないっ!!私、何をやらせても完璧なのよ!勉強だって運動だってできるのに何が不満なのよ!!?」
もう、そこまでは常にクラスで3番目ぐらいか、どんなに悪くても一桁順位の成績には入っている成績らしいので、余裕で自慢できるいう事は誰から見ても判る。ついでに顔だって誰もほめてはくれないけど、実はクラスで一番品がある美人とまで言いたげな雰囲気だ。確かに美知子は和風な感じの地味目な顔だが目はやや切れ長で整ってはいる。だが残念なことにクラスで一番の美人とは言えない。それを美知子は実は自分があまりにも美人過ぎるから、誰も自分の顔のことではほめないと勘違いしてそうな感じは常に微妙に出ていてそこがまた痛い。だからそこで減点されている感じが本当に惜しい。
“じ つ り よ く あ つ て も む り”
とでた。
「なんで――――!!?なんでよ――――っ!!?
パパもママも成績がいい子こそが真のいい子であり、何も悪くないと言っていたわよ。どうすればこのくだらない遊びを終わらせてくれるのよ――――!!?」
当然だ。と思わず突っ込み屋いが、これ以上なんか余計なことを言えば、さらに最悪になりそうなので、あえて言わずにいた。
そしたらそっくりさんはさらにとんでもないことを言い出した。
“お と な し く う け い れ て”
「いやよっ!!」
美知子はあくまで拒否するらしい。
「そうよ!さっきから言っていることに矛盾あり過ぎて意味わかんない!!」
私だってごめんだ。
“お ま え の じ こ せ き に ん”
確かにそっくりさんとかこっくりさん言う類の降霊術は自己責任系なテーブルゲームだ。
かといって、知っている子からの情報では対手の場合は無事に終わらせることができたという話の方がよく聞く話だ。
もうここまで来たら自己責任を追うしかないのか?
「私たちにはそれしかないの?」
その時、奈江がボソッと言ったことにまた指が動いた。
“か ば う か ち な ど あ り ま せ ん”
「イヤー―――っ!!」
“す う す う し す ぎ“
“だ い き ら い”
“ふ ざ け な い で”
言いたい放題言われている。
これが香理の本心なら、さらにムカつく!
私らが香理のことをどう思おうが勝手だが、香理にそんな意思がある事事態は許さない!
香理のくせに生意気だ!
しかしいま呼び出しているのは、間違いなく香理のそっくりさんだ。
つまりは香理は私らのことはそう思っているのだ。
「いったいあなたは私たちのどこが気に入らないのよっ!!?」
“ぼ そ ぼ そ ぼ そ ぼ そ”
「何よぼそぼそって?気持ち悪い…。」
と思っていたら
“わるくちいう”
という結果が出た。
「失礼ね!あんたの悪口は堂々と言ってるじゃない!!?」
「あははは―ごもっとも―私たちはそこまで陰険じゃないもんねー。」
ほんとそれだ。
この人たちは陰でぼそぼそ言わなければ陰険じゃない!暗い奴じゃない!と勘違いしているのであった。
そしてそのとどめとして、
“い ん き く さ い”
とまで出た。
「なんですってぇ――――っ!!?」
これはコインおいてる美都子ですら怒り心頭だった。
「ああもうっ!これ、藤原なんかより香理のことをボコボコにしたいっ!!」
「同感。」
「ああ、私のその時は手伝うよ。」
そこにいるメンツのほとんどは、香理を殴ることに賛成していた。
そして指は
“う ざ い”
“ふ か い”
動く動く。それもイヤなことしか言ってこない。
「ウザい、不快って?それ香理のことじゃないの!?なんで私たちがそう思われなきゃならないの!!?」
“ぜ ん ぶ あ ん た が わ る い”
「私は何も悪くな――――い!!私は完璧だって、パパもママも言っていたもん。」
と自覚がないようだ。
元はといえばこのそっくりさんにしても、お前がやろうと言い出さなきゃこんなことにならなかったんだ。
ホント全自己責任は美知子がとってほしいものだ。
そこへそっくりさんは思わぬほうへと進んだ。
“ふ ま ん が あ る”
「え?」
“で も ね”
“よ そ さ ま の い え の こ に い じ わ る す る は い け な い こ と”
えっと?“不満がある?” “でも” “よそ様の家の子に意地悪はいけない?”なのだろうか?
それにしてもだ。
「なんで、香理のそっくりごときに説教されなきゃいけないのよ―――――っ!!」
そうだ!なんで私たちがそっくりさんやって説教されなきゃならないんだよ―――!!
もうすでにそっくりさんのことは呼び捨て状態になるほど私たちはムカついていた。
でもなんかよく判らんが、つまり肌。私たちが完璧にいい子にならない限り多分、やめさせてはくれないということは判った。
そんなことになって誰が一番得になるかといえば、香理だ。香理しか得にならない。
そんなたった一つのゴミ同然の相手になんで私らがそっくりさんの言いなりにならないといけないのか?ストレス発散玩具が無くなることそれだけで私たちが面白くない生活を送ることになるので、私たちになんも得はない。
そこでまたとんでもないことが起きた。
“い い か げ ん に し ろ”
「ひぃっ」
と指が動き終わったとたん。
いきなり“バシン“という音がして、
そのとたん
「いたっ!!」
「いったぁーいっ!!」
「いてててて…。」
何かにいきなりすごい力で頬をひっぱたかれた感覚がその場にいた全員が感じたらしい。
ただなぜか、気を失っている千絵子や香寿美にはそれがなかったらしく全く反応がない。
てか、滅茶苦茶痛かった。まるで大人の男性から本気で殴られたぐらいの痛さだった。
「てかなんで、許されたはずの私までが殴られなきゃならないのよ?」
映理奈にはなぜかそういう感覚があったらしい。
ひょっとしてまだ許されてはいないのでは?
“か ん ち よ う し な”
「え?浣腸しなって?どういうこと?私がみんなに浣腸する言うこと?」
そっくりさんは”はい”のところで止まった。
「わーおもしろー。」
いやな予感…
「えいっ!かんちょー!かんちょー!かんちょー!」
「きゃーっ」
「うげっ」
「いやっ」
映理奈がいきなり、香寿美、美知子、奈江と指浣腸三連発した。
「…え?何が起きてるの?いきなりおしりつつかれて、気持ち悪いんだけど?」
「なんで私にするのよ!?」
されたと意地者たちは口々に文句言いだしている。
香寿美はここで意識が戻った。
「そうよ、浣腸の罰ゲーム確定なのは規世だけでしょ?」
そういえばそうだった。
よりにもよって一番思い出したくもない余計なことを奈江は言っていた。
やめてくれ…。ブスとキスした上にブスから指浣腸なんてくらいたくない…。
「あはは、そうだった。じゃあ規世にはしっかり浣腸しなくちゃね。」
「へ?…。ヤダ…。」
私はもう部屋の外に出て、自慢の俊足でこの場を逃げて安全地帯である自宅へ逃げ込もうと考えていた。
しかしそれは最初の一歩で積んだようなものだった。
ドアを開けようとしたら、全然開かないのだ。
え?なんで?
そうこうしているうちに映理奈は私に向かって指を構えて向かってくる。
イヤっ…
「来ないで…。」
といった瞬間だった。
「どうしよ?私まで指離しちゃった。映理奈のせいよ!」
その時、騒いだのは香寿美だった。
「ちょ…それ私もなんだけど…。」
そして美知子までもがそんなことを口に出していた。
どうやら全員指を離してしまったらしい。
ここで私が指浣腸をくらう事よりも大変なことになってしまった。
今回もまたそっくりさんに失敗してしまうという有様。
ただ、このそっくりさんの失敗が本当に大変なことになるのかどうかは全く保証がない。
これまでだって私たちには何ら被害などない。
ただ千絵子曰く、堀を名指しで生贄に指名したら、堀がいきなり倒れて死んだということを聞いたこと思い出した。これが千絵子一人の意見だったら信じてなかったけど、さすがに由利も香寿美もその件にしては肯定していた、今度の今度こそは許してもらえないかもしれない。
何せ、全員コインから指を離してしまったのだから…。
マジで疲れたー。
ちょっと前の回とかと辻褄合わせるのに手間取っていて更新が遅れました。
すでにお気づきの方もみえるかもですが、実はそっくりさんをしている最中の回は毎度、実は一応前の回とか、どこかの回とかとつながりがあったりします。ちょっと無理やりこじつけているところもあるかもですが、そこのところはご愛敬として見逃してください。




