私は何者なの? (村木さゆり)
目の前には吉川先生がいる。
そしてその吉川先生と二人きりな空間でだ。
かなり緊張しているし警戒している。
昨日、あの変なおじさん先生らしき人に嫌なことをされそうになったばかり言うのにまたか?と思った瞬間だった。
「頼みがあるんだ。」
もうそれ言われた時点で逃げる体制でいた。
「実はAクラスの渡辺先生からの依頼でこのクラスからも何らか出し物を出してほしいと頼まれた。」
ああ、やっぱりあの吉川先生だ。
さすがに普通に話があるだけのようだ。
やはり根っからまじめな堅物なだけな先生だったので安心した。
「そのリーダーを君に任せたい。」
「え?」
いきなりリーダーと言われてもなー…
「頼む。今のところあてになりそうなのが、村木君しかいないんだよ。」
「はぁ…でも今更なぜですか…?」
「実は学校のカリキュラムには行事単位というものがあってね…。Bクラスも運動会に全く参加しないとなると学校側からしても君たちに単位をあげることができなくなるから、君らにも何らかの形で参加してもらわないと困るんだ。」
「だから学校って、遠足や発表会といった行事とかがあるのですね。」
「うむ…」
「それで何をすればいいんですか?」
そんな訳で出し物決めとして今、柳生君の家に来ている。
集まることができたのは結局、いつもの水曜メンバーに香理ちゃんだけがいないという状態。まぁ香理ちゃんも近くにいるにはいるのだが、火曜日のお稽古事の合気道が終わっていない状態だ。
ちなみに柳生君と藤原君は合気道は上級クラスなので、遅い時間から始まるらしい。
他も誘ってみたけど、西垣君はいつの間にか帰っていたし、勝島君はボーっとしたまま何もできそうもないし、荒谷君は今日用事があるとのことで、結局他は誰も誘えなかった。
「で?どうするんだ?」
「このメンツでできることねー…」
ホントに困った…。
今日藤原君が都道君からきいたはなしによれば、Aクラスに来た渡辺先生とはホント無理難題ばかり吹っ掛けてくる先生らしい。
確かにこのメンツでできることといえば、ホントにない…。
「吉川先生曰く、応援合戦の総合となるしめをつとめろということなのだろうけど、それって前例がないし、ホントにそうすればいいか…。」
そんな時だった。
「キャーこれかわいくない?幼稚園の時の柳生君かしらー?」
「おいそこ!勝手に見るな!」
「えーいいじゃないですかー。たまにはー。」
「えー私も見せてー。」
入園式の日かな?
柳生君をセンターに男の子と女の子が一人ずつサイドにいて写った写真だった。
「あ、こっちの子は藤原君かー。でこの女の子は…?」
「誰だっけ?俺も一緒に写っているんだけど?誰だっけ?」
藤原君も思い出せないらしい。
誰も知らない女の子…。そこへ…
「ああそれ、奥宮。」
と柳生君が言ったとたん。
「えぇ――――――っ!!」
私も驚いたが、他の二人はそれを聞いたとたんすごい声をあげていた。
そういえばあの子、いつの頃からだったか覚えていないけど、いつも顔を前髪で隠すようになっていて、顔をはっきり見たのはいつのことだったか?
確かに5年生の最初のうちは普通に前髪切っていて顔を出していて、こんなような顔だったことはおぼろげに覚えている…。
あの子何が原因か判らないけど、いつの間にか前髪切らなくなったのよね…。
そのせいで髪型が全体的にボッサボサ。
嫌がらせを受けているせいで、身なりに気を遣うことまで回らないかもしれないけど、さすがに今の彼女はひどすぎる。
でも…
「3人ともすっごいかわいいー。」
「よせよ―はずかしいー。」
柳生君はすっかり顔が赤くなっている。
「もっとみせて―。」
「おいおいそれどころじゃないだろ?そんなことよりもいろいろ決めないと…。」
私は柳生君の言うことはこういう時こそ全く聞きもせず、どんどんページをめくっていった。
クラスの集合写真、幼稚園での生活の様子、春の遠足、夏の七夕会、秋の運動会と続いて、発表会のページになった時…。
「あーこれ白雪姫じゃない。築さんはまり役ねー。」
築さんあの子かわいいから、ホント白雪姫役映えてる。
「ああこれ、巽のクラスの出し物だな…。確かゼデニーワールドをモチーフにした一部だな。」
「へぇ―藤原君はなに演じたの?」
「ああ、俺はドナルジョダック。ほらここ。」
「わぁ―ほんとだぁー、船乗りさんの格好にあってるねー。」
「いやぁそれほどでも―」
「なんかなんだかんだ言って、こういうのも出し物でありなんじゃないですかー?」
そうそう、私たちは全校児童を応援する出し物を決めなければならないのでした。
真穂ちゃんの言うとおり、こういう感じも参考になる。
「でも俺は今更こういう格好もできないぞ…。」
「そう?結構いける思ったんだけどなー。」
もうホント興味本位でしかないが、柳生君のニッキーマウスのネズ耳姿もいいかと思ったんだけど、何気に却下されてしまって残念だった。
そして次のページをめくると今度は柳生君のクラスの出し物のページだった。
「えーこれかわいいじゃん。確かあの時の旬のアイドルだったキャンディ娘よね?」
あの当時、旬のアイドルたちをモチーフにして出し物にしていた
「まぁそうだな」
柳生君は自分のことを言われているわけじゃないとなると少しはホッとしているらしい。
「あ、センターの子、去年一緒のクラスだった松崎ひとみちゃんじゃない。やっぱりこういうの美少女が選ばれるのねー。」
「あぁこの時、確か先生も見た目だけで勝手に配役選んでいて、何かと大変だったという記憶が…。ん?」
「あれ?この5人組の一番右端の子って…?」
「え―――――――っ!!?」
藤原君がまた驚いていた。
「そういやそうだった…。」
柳生君もなんか思い出したようで、
「真穂ちゃんちょっとメガネ貸して…。」
「え?」
真穂から、メガネを奪ったにはそれなりなわけはあったが、とりあえず私は真穂のメガネをかけてみる…。
「うわっ、やっぱ無理だ…気持ち悪くなる…。」
やっぱり度が合わないメガネをかけるのは厳しい世界を見ることとなる。
またメガネを外して、
真穂の顔を見る。
藤原君の顔を見る。
お遊戯発表会のキャンディガールズの写真を見る。
そして最後に柳生君を目を合わせる。
「どうした?」
「うん大丈夫!いける!」
そこで本当にいい案が浮かんだ。
「ちょっとメガネ返してください。何も見えない―。」
「ああごめんね。はい。」
私は真穂ちゃんにメガネを返した。
「とりあえず、アイドルをモチーフにやってみない?
衣装やメイクは私に任せて。監督は柳生君にやってもらうわ。あとはみんなで頑張って振付とか考えてくれるかな?」
「あの今日来てない残りの3人はどうするんだ?」
「そうその3人のことなんだけど…。」
とにかくすべてが決まった。
これで何とかうまく行くはず。
そんな時だった。いきなりふすまの戸が開いた。
香理だった。
「あ、おつかれ香理ちゃん」
といったとたん、香理はそのまま倒れて寝込んでしまった。
ああ、まただ…。
一応熱がないかの確認のためオデコを触ってみるが熱がある様子ではない。
「今日よほど疲れたのね。しょうがないなー。そこの座布団の上で寝かせておこう。」
なんかここ最近香理ちゃんがいきなり寝込んでしまう事が多く、みんな何気に手際が良かった。
「ホントよく寝れるよなー。」
「…。」
藤原君の言う通りなのだが、柳生君は今回ばかりは何か知っているかのような表情をしていた。柳生君の目線は香理ちゃんの左手首に向けられていた。
「あ…」
香理ちゃんの腕にも私と似たようなブレスレットがはめられていた。
おそらく柳生君にもそれが見えるのであろう。他の二人は特に気にしている様子もなかった。よく見るとそのうちの一つだけ他とは違って透明感がない石があった。
それには柳生君も気が付いているようだった。
そして柳生君の肥立ち手首にも似たようなブレスレットをしていることに気が付いた。
柳生君もまた、私の手首のブレスレットを見て驚いていた。相互で同時にお互いのブレスレットのことに気が付いたのであった。
もちろん他の二人の手首には何もなかった。
柳生君は何か私に言いたげな感じだったが、慌てて口を閉ざして私から目をそらした。
柳生君は私以上に私が知らない何か知っている感じだった。
いつもこうだ…。
ほとんど成り行きだけで、私はここにいる。
結局、私はなんなんだろう…?
大好きな人にとっても…この人たちにとっても…あのクラスにとっても…それ以外の人にとっても…
私っていったい…?




