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コミュ力王子との契約 (都道健三)


たいへんなことになってしまった。


今辛うじて俺はトイレにいることになっている…。


それも情けないことに教室の配置的に一年のトイレを利用している事にもなっている…。

あの一年と同じトイレなんか使ってたまるかー。

あいつらの使いからマジできたねぇもん。俺は俺のプライドのため一番遠い6年のトイレまで来ていた。


そして・・こんな授業中と言ってもいい時間だというのに…



「おい!」



と後ろから声が聞こえてきた。



「どわ――――っ!!」



まさかと思うが女子トイレに花子さんとかいう都市伝説がいるように、男子トイレにもトイレの太郎さんというのが出るのだろうか?


どうしよ…?

俺…こういうオカルトなことはものすごく苦手なんだが…。



俺は一度叫んだまま硬直して動けないでいた。



「おいおいおいおいおい」


冷静に聞いてみると結構軽いノリの口調だ。

てことは人間…。

振り返ると藤原巽がそこにいた。


「仮にもクラスメート相手にそれはないんじゃないか?都道君。」


「え―――――っ!!」



あれ?こいつ、教室にいなかったよな?渡辺はいなかった奴のことは何も言っていなかったが、今日は欠席だったんじゃないか?


「…お、お前…。」



「やっと一人捕まえた。」



当の本人はにっこりしていた。


「なななな…なんなんだよっ!!?」


「まぁ落ち着けって。」


これが落ち着いていられるか!


「どうだ?Aクラスの状態は?」


何言ってるんだこいつ?


「聞いた話によるとさ。俺ら6年4組ってさ、AクラスとBクラスに分けられたと聞いたんだけどさ、そっちはどうよ?」


は?そんな話聞いてすらないぞ。

どうなっているんだ?いったい?


俺は初めて聞いた話にきょとんとしてると、



「あっれ―?まさか…。」


「なんなんだ?俺たちはお前らが運動会辞退した言う話しか聞いてないぞ。」



「え?じゃあ何も知らないんか?そっちの担任はいったいどんな奴なんだよー?そんな重要なことすら話さないなんて、マジおかしくね?」


とまで言われて…




「そうなんだよ!あの女、マジで頭おかしすぎるんだよっ!」




と思わずすごい勢いで行ってしまった。



「うわぁー」



そのすごみから、ただでさえ小柄な藤原は思わず後ろによろけていた。


「おっと、大丈夫か?」


ここはあくまで便所だ。さすがにこんなところで転ばせてしまうのも悪いと思って、俺は反射的に藤原の身体を転ばないように支えた。




「で?その担任はどんな奴なんだ?愚痴なら聞くぞ。」



愚痴ったところで意味ないとは思ったが、ここは吐かずにはいられなかった。


「実は昨日、委員長があの後、去年と競争でビリを取った益井と樹までもが運動会辞退するとまで言い出して、委員長が余計に呆けてしまったんだ…。


そこであれにあれまくっていた時に、いきなりぬっとあらわれたのが、あの変な女でさ。委員長に「運動会のことは、全部私に任せてみない?」という提案をいきなりしだしたわけ。」」



「んーそれだけだとあまりよく判らんが、とにかく新しい担任は女なんだな?それで運動会の詳細はどうなった?」



「それがさぁ、昨日あの女が勝手に決めてきた結果がそれはもう、滅茶苦茶でさー、その通りで優勝しないといけないようなことを言い出して、今クラス全員がどんよりしているわけだよ。」



「え?なんで?意義があるなら担任に言えばいいやん。なんで言わんの?」



俺は藤原の腕を見た。

よく見ると藤原の腕にはその腕輪は装着されていないことに気が付いた。

俺は自分の腕に付けている腕輪を見せた。


「これって…?」


「多分お前らBクラスというのか知らんが、そっちのグループには多分着けられてないと思うが、今俺たち全員にこの腕輪がつけられている。そしてこの腕輪の仕組みはどうなっているのかはよく判らんが、担任に逆らった者やこの腕輪を無理やり外そうとした者は小爆発を起こして、頭がチリチリパーマになってしまうということで支配されているんだよ。」



「なんだそりゃ?」



「実際昨日、谷神が田岡たちと一緒になって、担任にヤジ飛ばしていたら、頭をボムされて、そのあと谷神は人が変わったかのようにおとなしくなってしまった。」


「マジか…。」



「そしてそれが許されるのは3回までで、それ以上は許されないらしい。田岡と幹一なんてもう2回爆発した。」


「それやばいのでは?」



「まぁ幹一は、初回の犠牲者だったから、初回限定特別ボーナスとやらで、普通の人の倍の6回まで許されるらしいからあと5回だな。」



「なんか幹一らしいな。というか幹一なんかそれぐらいないと一番にアウトになるのは間違いないだろうしな。」


「それはどうであれだ。どうやら、運動会が終わるまでは無駄に欠席さえしなければ、俺たちの無事は保証してくれるらしいのだが、もし4組チームが…最下位だった場合は…。」



「あーやっぱり罰ゲームありとなったかー…。だから、運動会なんて嫌いなんだよー。」



藤原らしくおどけているが俺たちとしてはそれどころではない。



「渡辺がこのクラスの中の誰かを消すとまで言っていた…。」


俺は初めて自分の口から渡辺とか言う担任の名前を出してしまった。



「なんだって!?…それって……まさか…?」



「いろいろ考えた結果なんだが、


今まであのクラスで一番迷惑だった奴を消すかもしれないかもだ。


どうもあの女、ここに来るまでに俺たちの家庭事情のことまで事細かに調べ上げてきているようでさ、そのことをかなり赤裸々に言っていたぞ。」


「え――――っ!それは…まず……、イヤ、まじか!!?」


なんかいま一瞬、違和感を感じたが何だったんだろ?

藤原は何が言いたかったんだろう?


「でもまぁ、あの女にとって一番邪魔なのはおそらく、爆発を頻繁にするやつだと俺は考えている。だから、あの爆発をさせた数が一番多かったものか…はたまた使い切ってしまったものとかが最有力候補とも思えたが…。


もしかすると不参加を表明したお前らのことかもしれない…。」



「は――――っ!?なんだよそれっ!?なんで俺たちが!!?」



「まぁ普通に考えてみればそうだろう。今回の運動会の協議に一切参加しないのだから、6年4組全体のことを指しているとしたら、明らかになんも役に立ってないお前らだろうって考えもあるだろ?」


「それにしても運動家に役に立たなかっただけのことで、俺たちが知らないところで勝手に決められても理不尽でしかないんだが?」


「もちろん、あくまで一説でものを言っているから、そうともかぎらない。


あの女はそれがいったい誰であるかまでは明確には言わなかったから、ホントに誰だか判らないんだよな。


だからお前らも注意した方がいいぞとだけは言える。」


「そうか…判った…。」



「それに問題は罰ゲームだけじゃないんだよ!


リレーの順どうなった思う?

結局、近松の代わりに補欠の兼松が出ることになったのは当然のことだけどさ。郡二までがなぜか、こっちのクラスにとられてしまっただろ?だからその代理として誰が出ることになった思う?」



「ん――次ぐらいに早そうな子安君あたりか?」



「違う違う。なんといきなり抜擢されたのが、あの女のお気に入りの幹一でさー。」



「え――――――っ!!それは滅茶苦茶だ―――――!!」



「そうそう幹一なんか、どうあがいても普通の中の普通やん。というかはっきり言って中の下辺りな実力やん。そんな奴にアンカーまで指名してるんだから、どう考えてもおかしすぎる思わんか!?」


さすがの藤原もそれを聞いては黙ってコクコクと頷くしかなかったようだ。


「それも4組の騎馬戦大将はこの学年が始まった時から、柳生君と決まっていただろ?その大将誰になった思う?」



「…ま、まさか…それも幹一とか……?」



「それが何でか小峰…。」



「はぁ!?マジかよっ!?」


誰もがする反応だよなそれ…。


「それが大マジなんだよ!何考えてるんだよあの女―?と本気で思えたわー。」


それじゃあ大将じゃなくて、まるでお姫様を護れみたいな感じでしかない。


そういう作戦でもいいが、それだとそのお姫様に敵がたどり着く前に全部倒さんことにはほとんど勝利はない。それどころか、負けた場合はお姫様は無傷では済まないことを意味する。もしくは潔く棄権してその災難を避けるかである。


ただ、どう考えても後者は最もやってはいけない事だ。クラスの命運がかかっているのだ。今回ばかりは守ってもらうばかりのお姫様では許されない状況だ。



「それってもう最悪じゃねぇかー。俺らがだめなら、あとは他学年の4組に希望を託すしかないやん。」


「そうだよなーうちの学校ってなぜか、クラス番号で青、黄、白、赤の4つの組の縦割り学年での対抗戦だから、ホントにどうなるか判らんのだよな…。


あと他で挽回できるものがあるとしたら、6年はあと応援合戦の評価点ぐらいなものだな。」





ちなみに


我が校の運動会の協議内容は


1・2・3年は、玉入れと大玉転がし

4・5・6年は、騎馬戦と大繩


全校生徒で行うのは綱引きと徒競走


各学年ごとに行う代表リレー


6年の出し物に応援合戦の評価点。


そしてクラス対抗PTA競技


他、得点にはならないが各学年ダンス発表がある






そう、うちの学校は親と先生までも含めたPTAまでもが、クラス対抗で点数になるのだ。

その裏点ともいえるPTA競技の結果がどうなるのかがまた恐ろしい点だ。


そして今のところ、希望が持てるのは、まだ渡辺すらなにも手付かずな状態な応援合戦の出し物だ。それでももう一週間少し前になるというのにほとんどその応援合戦の内容すら決まってないのは、かなり痛手だ。これも俺たちが委員長の話を聞きもしなかったせいでもある。



「それもだぞ。そのPTA競技に誰が出るといえば、今回あの渡辺が出るらしいんだよな。ホントに期待ができないんだ。こんなことならまだ堀が出た方がマシだった…。」



そうだ、堀だったらまだ若いし、朝HR始まる前に校庭で自主的に走る訓練をしているから、行けると思う。だが今回は推定年齢50歳近いおばさんが出るとしたら絶望的でしかない。



「それで、ビリじゃなければ別に罰ゲームはないんだよな?」


「それが2位3位の罰ゲームの内容は伏せられているが、優勝以外は罰ゲームあるらしい。」


「それそっちのがもっと気になる。」



「でもまぁ少なくともこのクラスの誰かが消される言う事はないとは思う。だから少なくとも3位はとらないとやばいかと思う。」



「てか、はっきり言ってその様子だと3位でもやばい気がするぞ。」




藤原にそれ言われて俺はゾッとした。

最下位で「誰かが消える」のが罰ゲームだとしたら、伏せられているとはいえ2位3位もかなりきついものかもしれない。



だから…



「なぁお前ら、考え直してくれないか?」


「運動会出ろと?」


「ああなってしまって、本当に頼みにくいことなんだけどさ、リレーで近松が出れないどころか、原因不明に郡二までそっちのクラスにとられてホントお手上げなんだよ。それに近松がいなくてもにわかに聞いた噂によれば、実は西垣が近松に負けんほどの実力もってるらしいじゃん。」


「まじか?それは初耳だ。」


「まぁ西垣のことはあくまで噂だけどな。つまりは、このクラスで足の速い男子筆頭3人を全部取られた状態なんだよ。近松は無理にしても、郡二と西垣が参加すれば勝率は上がる思わんか?」


「んー」


「それにあとさ、お前の力で柳生を何とか説得できんか?あいつがいないから、マジでクラス全員が大パニックなんだよ。小峰なんかマジ泣きしたまま、何も動かんくなってしまったし、とにかく大変なんだよ。」


俺はこれが多分最後のチャンスかと思って必死で藤原に頼み込んだ。



「なぁ何とか頼むよ!」


さすがに藤原も困った顔をしている。

人懐っこいクラスのムードメーカーで、たいていの奴とはどうにか会話ができるとはいえ、やはり難しいのだろうか?



「……考えてはみるけど、…保証はさっぱりできないよ。」



「それでもいいからさー頼むよー。」


俺はホントに藁にも縋る思いだった。



「じゃあさ、こっちからもお願いがあるんだけどさ。」



「なんだよ?」



「そっちのクラスの状況の詳細情報を書いたレポートを、毎日俺の下駄箱の中に入れておいてほしい。でないとこっちがどう動けばいいか、はっきりわかるだろ?そこは協力してほしい。」


「判った。」



俺はそう返事をして教室に戻ろうとした。



そしたら



「それともう一つ!」



「なんだよ?」



藤原がなにを言い出すかといえば、


「そっちのクラスで紫のお守りを所持している奴がいたら、その紫のお守りを持っている全員の名前もついでに書いて提出してほしい。」



「???」



紫のお守りだ?

なんだそれ?

なんか奇妙なことを頼まれてしまった。


よく判らないものあったが…。



「判った」



と返事をしておいた。


少なくとも俺の方が藤原に難しい頼みごとをしているわけだ。

なんか意味が判らん頼まれごとだが、俺が藤原に頼んでいる事よりかは楽な頼まれごとだ。



そんなことより、すごく長い事藤原と喋ってしまって、戻った時にどうやって言い訳しようということが一番の難点だ。


前の黒島の時みたいに長いトイレと勘違いされるのだけはイヤだなー。

さてどうするかね?


答え的には俺はこのまま保健室へと逃げることに決めた。

ちょうど、膝には大きなかさぶたがあったので、かなり痛いのは承知でかさぶたをわざとめくった。


はっきり言って少しでもあの教室には帰る気はしなかったからなー。



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