渡辺を分析してみる (都道健三)
なんなんだよ?この先生?頭おかしいんじゃないか?
とまで思えている。
おそらくここにいるほとんどがそう思っているであろう。
なんとあの女すごいことをいってのけたのだ。
「あなたたちには今回の運動会で優勝していただきます。」
はっきり言って無理だ。思いっきり息があってない上に、不参加を表明した奴もいるというのに…。
「ちなみに優勝した暁には…。」
なんか商品が出るのか?と思いきや…。
「罰ゲームはありません!」
「なんだよー当たり前のこと言うなよー」
ヤジを飛ばしたのは田岡篤だ。
こいつは一度頭が小爆発したことがあるくせに渡辺の許可なくまた勝手に喋るとは、ホント懲りない奴だ。
「当たり前といえば当たり前ですね。でも2位からは素敵な罰ゲームが用意してあります。」
それを聞いたとたん、誰もが黙った。
今までの行動からするとこいつがやりそうなことはイヤな予感しかしない。
「とりあえず、運動会の戦力を消す気はないので、運動会が終わるまでは6年4組のメンツを消す気はさらさらないわ。」
どういう意味だ?
それを聞いたとたん、少なくとも俺は凍り付いた。
他の奴はどうだろうと隣の稲富を見ると青ざめていた。やはり誰もが凍るような一言だった。
「2位3位の罰ゲームは当日まで伏せますが、もし最下位の4位だった場合はこのうちの誰かに消えてもらいまーす。」
「!?」
俺は凍り付いて言葉すら出なかったが、それでも懲りずに反抗する奴がいた。
「どういう意味だよ!?」
ここで言葉を発したのはやはり田岡篤だ。
「あっれ―?このクラスの最下位への罰ゲームは公開処刑じゃなかった?」
「え?」
「そこまで運動会に燃えてるならさー。いっそ総合でも命をかけた戦いにした方が、貼り合い出るかと思って―。先生、昨日夜はぐっすり寝たけど、その案一生懸命考えちゃった~。だから決定ねー。」
さすがにこのセリフは俺もむかついた。だがそれ以上に…。
「っふざけるなよ――――っ!!」
やはりこの中で一番血の気が多い田岡篤が、いきなり席を立って、あの女に殴りかかろうとしていた。
「やめろ―田岡―――っ!!」
と福田が叫んだ時にはもう遅かった。
ボムっ!!!
田岡の二度目の爆発音がすでに鳴り響いていた。
田岡はその場で倒れこんでしまった。
「おっとー早速二度目の爆発音を経験するものが出たぞー。ちなみに2度目のは1度めよりもきつめになっているから、前よりもショックは大きいかもねー。」
なんか、とんでもないことを耳にしてしまったぞ…。
一度目の爆発は笑われる程度で済むが二度目は倒れるほどとなると、あと6回もある幹一はどうなる?
「ウフフフフ。冗談よー。今のは私に対して以下に反抗的かどうかで決まる反応だから、これからは注意してねー。」
恐ろしい…。
俺らはこんな奴を担任に出迎えてしまったのか?
イヤどちらにしても生徒は最初から、担任は選べないわけだが、それだとしても、これはひどすぎないか?
「まぁ私が呼ばれたのはあなたたちが悪いのよー。去年から問題あるクラスだと聞いていたしねー。まぁ去年の時点ではどこのクラスでもありそうないじめとしてかたずけられていたけど、警察沙汰、暴力沙汰、担任の死などなど相次いで起きた事件。ここまで問題が重なればさすがにおかしいわよねー。」
この女もひどすぎる存在だが、確かに俺たちのクラスのひどすぎるクラスだ。
どこかの不良高校なら、ここまでひどいクラスも当たり前のようにありそうだが、俺たちはまだ小学生でだ。言われてみれば小学生では珍しいケースだ。
「それだけ大きな問題を起こしておきながら、クラス全体を巻き込んでいるようないじめや、盗難、登校拒否児まであるこのクラスを黙って見過ごすわけにはいかなくなりました。
堀先生はほとんど何もしなくて、あなた方にとってみれば都合もいい存在だったでしょうね。」
堀…のことに関してはまさにそれだ。
結局、担任の堀が良くも悪くも俺たちに無関心だったから、こんなことになったのも一つの原因だ。
「ついでに去年より長期にわたって調べさせていただきましたが、あなたたちのおやごさんたちもかなり問題あるということは判明しました。
こんな問題児ばかりのクラスの親はやはり問題親でした。
まぁ集団懇談会でもこんなクズガキを持つ親に限って「うちの子はいい子です」と信じ切って主張しているのですからねー。
ホント痛いしい親しかいなかったから、びーっくりでしたよー。」
こいつ知らんうちに俺らの親のことまで調べたのかよー!?
「まぁこの中で一番謙虚だったのは会澤君のお母様だけでしたね。」
会澤克之
ゲーム好きグループのリーダー。
いつもは口数少ないが、いきなりとんでもないことをやらかす奴だ。
他人のものを盗むのも当たり前に盗む。そして盗んだにもかかわらず絶対に非を認めない。悪魔は最初から自分のものだという無理やりこじつけた挙句の主張をするあまり関わりたくない奴だ。俺はかなり引いてる位置から静観してるが、郡二はどっぷりこいつに絡まれている。
そんな奴の親がまともだと!?マジで信じれん!
「まぁ努力はしても治らないとお悩みのようでしたよ。むしろこの企画でうちの子の改善が望めるならと賛成してくださいましたね。そういう親御さんも少なからずとはいました。
まぁ反対された親御さんはこの中でも知っている人もいるように政府に連れていかれてしまった人もいますけどねー。」
「え?まさか…昨日から母ちゃんがいなかったのって…。」
「ご名答福田君。あなたのお母様は政府の判断により隔離することになりましたー。」
福田は絶望的な顔をしていた。
「だいたいあなたのお母さんって。学校ではいばりん坊なあなたのこと甘やかしすぎでクッソ迷惑だったのよねー。おまけに威張る相手が弱そうな女の子ばかりでさ―、器が小さいったらありゃしない。そんなあなたのことを「うちのこはいいこです」の一点張り過ぎで話にならない親でしたからねー。
完全にマークされてましたよー。福田君の親御さん。
まぁ他にもそのような親御さんは何人かいましたが、少なくとも福田君のところよりかはお利口さんだったので、察してくれるか無理やり納得して折れたかでしたねー。」
福田の顔はもう真っ赤だった。
自分のことはおろか、自分の親のことまでボロカスに言われているのだからもう無理はない。
というか少なくともうちの母がそういわれなくてよかったとは思えた。
が「少しぐらいは庇ってくれよーかぁちゃん。」と言いたかった。
あれ?ちょっと待て?こういう時もっとモンスターなおばさんがいたはずだが、そいつはどうなった?こんな状況となっては俺たちからすればまさに救世主かもしれない存在かもしれないが、なぜか名前すら出てこんぞ。
「そうそう、ここのクラスとついでにで申し訳ないけど、1組の小野和夫君は転校させました。あの子の親こそが「うちの子はいい子です」の元凶格でしたからねー。」
小野和夫?そういえばあいつ1.2年の時同じクラスだったな。
そういやあいつのおばさんもモンスターだったわー。
あいつのせいであの時のクラスは転校していく子が他のクラスよりか多かった記憶がある。
そしてなぜか、それだけ転校して出ていく子が多いにもかかわらず、俺のクラスに来る転校生は少なかった。
あいつに殴られていた奴はもれなく泣いていた。
そんななくまでのことか?という考えが甘かった。
俺も実は一回だけ殴られたことがある。
どうも俺は和夫が通ろうとしていた時に邪魔だったらしく、「邪魔だ!どけ!」言われて思いっきりぶん殴られて突き飛ばされた。その時の痛みはほんとこいつ化け物か?同じ小1か?と思うぐらいの力だったことは絶対的に忘れられない。
それ以降だろうか。俺は先の先まで読んで注意深く行動するようになったのは。
小野和夫の存在はこの学年どころか今や全学年下級生からも警戒されているほど、知らない奴はいなかった。あいつがいないだけでも安定したクラスになれるかと期待したが、やはりそう簡単にはいかなかった。
そしてなんと…
「小野君の転校先は、教護院小学校です。」
教護院って…非行少年が集まると言われている…。刑務所みたいな場所とは聞いているが。
「あくまで私立教護院小学校です。本物の教護院ではありませんが、全国から問題児ばかりを集めて性格や態度を矯正させる施設です。
みなさんも小野君みたいに教護院小学校へ転校しなくてもすむように転校を言い渡される前にいい子になりましょう。」
まさかとは思うが、この女が言っているクラスの誰かを消すというのはその教護院小学校への転校を意味することなのであろうか?
そうなると大変なことだぞ。
確かこの国のどこかにそういう学校は存在していて、あまりにも手が付けられない奴はそこへと転校させられるらしい。が転校というのは表向きなだけで、ぶち込められて、そのあとの扱いは仮に生きて卒業できたとしても、まともな状態で出られないとか聞いたことがある。またはまるで人が変わったかのように周りにすごく従順すぎる気が利きすぎる人格となって帰ってきたとかも聞く。
なににしても恐ろしい場所であることは言える。
「おまけにあの一組というクラスはもう一人影の暴力使いがいるそうで、クラスに二人もそんなのが居るせいで、あのクラスもいろいろ手を焼いているらしくてねー。さすがに二人もそんなのは見れないとのことで、小野君には転校していただきました。」
ああもう一人もだいたい見当はつく。
おそらく山本隆三だろう。
あいつを追い出すのは難しいだろうなー。
だいたいあいつは自分が決めた標的しか手をあげない卑怯なところがあるから、まず無理だろう。それに皮肉にもあいつは児童会長で教師たちからの信頼が厚い。だからあいつを追い出すことはかなり難しいだろう。
おそらく、山本のことはこの女ですら、苦戦することは目に見えて判る。
なるほどね。
この女を俺たちから少しでも目をそらさせる方法は多分、一組の山本を囮にした方がよさげだという事だけは判った。
「さぁて。6年生は毎年定番の応援合戦があるんだったっけ?」
ここでいきなり渡辺の話は変わった。
「実は本番近松君が参加できそうなものはできるだけ参加したいんだって。」
近松という名前が出ただけで、クラスのほとんどのものが青ざめた顔をしだした。
「そうねー。まずは適当にレイアウト組んで、近松君も応援合戦ぐらいは参加できるかと思うんだ。」
とすでに張り切っていた。
もう何もかもが滅茶苦茶だ…。
リレーの順番だって
普通は男女交互で、女子男子女子男子の順で並べて、最後は男子のアンカーが定番だというのに配置もバラバラだし…。
騎馬戦の大将だって本来やる予定だった柳生が不参加となったせいで、代わりの大将に指名されたのが、小峰留美子だったりで…。
はっきり言ってなんも考えてないではないか?
こんなで本当に優勝できるのか!?無理だろ?
こんな状態じゃ優勝どころか最下位にしかなれなくないか?
俺まで抜けたくなってきた…。がこの腕輪がそうはさせてくれないのだろうな…。
多分、渡辺はこの中のうちの誰かを早いところ消したいと思っているのは確かだ。
俺はそれが誰なのか?俺は運動会が来る前になんとか解き明かそうとしていた。




