メンタル呆けて丸投げ (勝島宏樹)
ああ、最悪だ…。
最後の頼み綱であるあの男すら、とんでもなく変な流れになってその変な理由で、この場を去っていった。
もう俺一人じゃなんもできない。
俺ってこんなに無力だったのか…。
なんか空気的にこのままだとマジで抜けていく奴が続出しそうだ。
さすがにこれ以上参加者が減るのはまずいぞ。
いくら担任不在とはいえ、学校行事である運動会は、適当でもいいから表向きだけでもなんとか役割などははっきり決めないとまずい。
そして俺が思っていたまずいことはさらに起きようとしていた。
今度は…
「ごめん悪いけど、香理や真穂が抜けるなら私も抜けるわ。」
と奥宮と千賀の仲間である益井までもが予想通り言い出した。
もうこれは止められそうもないと思っていた時だった。
「千絵子が抜けるなら私も!」
樹 映理奈だ。
「だってさ、ここで千絵子が抜けられたら、女子で公開処刑になりそうなの確定なのって私ぐらいなものじゃん。
もう、そうなったら目だつったらありゃしない!去年だって必死で無理して笑ってごまかすので必死だったんだからねー。
あ0―やだやだ…。」
益井だけでなく樹までもが帰りの身支度をし始めた。
ああもうどうしようもない!
俺はもう肩を落としたまま黙っているしかできなかった。
「おい!お前ら!勝手なことなよ!」
「だってやってらんないじゃん!なにが楽しくて罰ゲームある行事と向き合わなきゃならんわけ?マジだっる―。」
本当なら止めなければならないのだが、もうすでに俺には誰一人も説得して引き止められそうもなかった。
これが今まで、俺たちが運動苦手なものにも無理強いして強制してきた代償なのかもしれないと、今になって反省してしまっている自分がいた。
まぁ言われてみれば、かけっこごときであんな強烈な罰ゲームなんかホント行き過ぎてるよな。
誰が考えたんだっけ?あの罰ゲーム?
確かあれ考えたの近松だったはず。
俺は絶対にビリとる気はないと確信していたことと、いままでにないおもしろそうな罰ゲームだったのでつい賛同してしまったが、それはやっぱりまずかったのかもしれない。
そして、「ビリは許さん」と一番躍起になっていたのも近松だ。
確かに運動会のかけっこでビリを取るとなるとチーム内では足を引っ張る存在となるから、優勝狙うならビリをとるものはなるべく少ない方がいいというのは頷ける。
ただ、別にそこまで躍起になって優勝何か狙わなくても、いつもと違う学校行事なんだから、楽しめばいいじゃんと思う側からすれば、罰ゲームありの運動会なんて恐怖でしかない。
昨日、あまり本意ではなかったけど一応近松の見舞いにはいってきた。あと、築と小津も同じ病院んいにゅうんしていたから、3人まとめてきってきた。(まぁ築には面会は断られたが、見舞い菓子だけは築の母親に渡して帰ってきた)
その時の近松も自分が走れないと判っていても優勝にこだわっていた。
今冷静に考えてみれば、近松本人は参加しないはずなのになんなんだ?だ。
ものすごく理不尽な要求だ。そんな要求にもこたえないといけないとなると俺たちはいったい何のために運動会を頑張るのかが見えてこない。
それを考えると俺は今の今まで、近松の言いなりだったと思う。
運動会に前向き姿勢な意欲を持っている福田や三木をはじめとするメンツはまだ、益井や樹に必死で説得しているみたいだが、俺はもう本気で疲れ切ってしまっていた。
そんな時だった。
いきなり俺の肩をたたく者がいて振り返ると、
「ねぇ?今回の運動会。私に全部託して見ない?」
全然知らないおばさんがいつの間にか俺たちの教室に来ていた。
「大丈夫、これ以上参加者を減らせはしないから。」
俺はそんな突然の申し入れに迷うことなく首を縦に振ってしまった。
その瞬快、俺は一気に肩の力が抜け、腰まで抜けてしまった。
俺はその時、もうこそない誰でもよかった。
誰でもいいから自分の責任を全部丸投げしたかった。
「え?宏樹!しっかりしろ!」
俺はもうそのまま貧血女子みたく、その場に倒れてしまった。
「この先は私が取り仕切りますから、ここにいる皆さん席に座ってください!」
「あの宏樹は?」
「大丈夫です。私の部下に保健室まで運ばせます。」
おばさんはやたらとテキパキした働きで、全員を動かしていたことを確認すると、俺は安堵のあまりにそのまま意識を失った。




