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参加することに意義はなし! (西垣 数)

ああ、また優等生の謎の正論かざして何とかしようっていう風向きを変えようとしてるわけか…。

いつもこの女がやりそうなことだ。この子は黒島美由貴以上に沈黙を貫き、地味に目立たず行動してクラスの空気を変えることをよくやる女だ。私はこのことも幼稚園からの付き合いなので、よく知っている。ホント良くも悪くも空気を変えることがうまい女だ。


実は彼女は3年生ぐらいまでうちの近所にいた子だ。

それまでは黒島なんかに話しかけずとも一緒に帰る相手は淑恵だった。よく遊んでいたのも淑恵だった。ホントにその頃までは普通におもしろくて楽しい子で、よく一緒に遊んでいた。淑恵が引っ越しをした後は元々長い事クラスも違っていたので疎遠になってしまった。それ以降はなんか淑恵が引っ越し先の近所にいたどこにでもいそうな一見普通っぽい女の子特有の陰湿系な性格がある子とつるむようになってからは、彼女の優しさはすごい勢いで消えていった。今では同じく中学受験に燃えている石原鈴子とだけ必死で二人で勉強にいそしんでいるただのがり勉へと化した。




私は教室のドアはすでに開けていたので、少しだけ振り返って。



「参加することに意義はありません!べ―――だっ!」




もはや私にはそんなつまらない女の言うことなど、今更聞くわけがなかった。

私は淑惠をはじめとするクラスメート全員にあかんベーしてそのまま教室を出ていった。


私が出て行った後、数秒シーンと静まり返ってはいたものの…。



「なんだよあれ?」


「面白くも楽しくもないから出たくないってよーwww」


「そりゃのろまの僻みでしか聞こえませーんwww」


「だよなー。あはははははは―――――。」


「なんなん?あの子?自分がそれ言える立場なん?ぎゃははははははーーーーっ!!


と一気に騒がしくなったが、そんなことは無視。

だってさ。あんな毎年苦痛でしかない運動会に出なくて済んだことを考えるとすごくすがすがしい気分だった。


そのあとのことは…

この回のメイン解説者にお任せして、私は教室を去ります。




――――――― その後の教室。



「てか、あんな奴いてもいなくても戦力にならないからどうでもいいしー」


「つか、いなくてせいせいしたわ――――。」


「やっと消えてくれて、万々歳!」


「正直、邪魔でしかないのが消えてくれてやりやすくなったんじゃないか――――?」



と奥宮香理の悪口大会で言いたい放題な無駄な時間だけが過ぎていきそうな気がした。


俺は勝島が、近松がいない今回の運動会をどうしていくかについての議論や作戦なら聞く耳を持てた。だが、この議論の中心人物である勝島は奥宮の違う方向性からの意見を聞いて、それが気になってか呆けたままだし、他の男どものほとんどは一部の女子と一緒になって、奥宮の悪口しか言ってない。そして一番あてになりそうな奴でもある柳生はどうやらこういう話は苦手らしく。ひたすら傍観者と化していて、何も役にも立たないと来た。まぁ柳生もかけっこは目立って得意でもないから、深く突っ込みたくないという気持ちも判る。



そして俺は…



「…悪いけど、俺も運動会出るのやめるわ…。」




と言って荷物を持って教室を出ていくことにした。



「おい数…お前…マジかよ…。」


さすがの勝島もびっくりしていた。


「おい西垣、冗談だよな?」


クラスのほとんどの奴らが、俺の退場宣言にはさすがに動揺している。

この時点で奥宮への悪口大会は沈んだが、今更遅い!



「じゃな」



俺も奥宮と同様教室を後にした。



後の教室のことは知ったことじゃねぇ!



それよりも…。





――――――― 校舎裏にて


見つけた。


「やっぱりここにいたか…。」


「わっ!えっ!?」


いきなり何も前触れもなく後ろから、話しかけた奥宮のその反応が面白かったので



「あははははは、やっぱおもしれぇなお前。」



「もう、びっくりしたじゃない。」



その小動物的なその反応もやっぱり面白い。


「ここいいか?」


俺は奥宮の隣に腰を下ろした。


さすがの奥宮もいきなりおとこかが自分の隣に座られることは慣れてないらしく、しばらくずっと下を向いていた。


「…えっと…その…」



なんか言いたげだった。

まぁそうだよな。

普段なんも接点がない俺にいきなり近づかれてもそうなるわな。


「あ?はっきりいえよ。さっき勝島に言ったみたいに…。」


「いや、いきなりのことでびっくりで…。」


そう、勝島だって奥宮からすれば、俺と同じく普段はなんも接点がない男だ。


それを勝島にはあそこまで堂々と意見を言ってのけた言うのに、俺には何も言えないのはおかしなことだ。


「あの大丈夫なの?」


「ああ、お前の隣に座ってか?」


それ言ったとたんに奥宮は顔や耳まで真っ赤にして、きょどってばかりだったがそれもまた面白いものあった。



「・・・え?・・・あ、えーっと・・・。」



なんかよく判らんけど、変な反応だ。

俺もいつもは女子などめったに相手にしないから、女子の実態など知らんが、まさかこんな反応とられるとは思わなんだというのが、生まれて初めて女子を少しだけからかってみたという感想だ。



「そんなことより、大丈夫なの?なんで西垣君までここにいるの?」


「まぁ大丈夫ではないだろうな。俺も運動会出るのやめたし。」


「え――――っ!!?どうするのよ―――!?」」


「どうするって言ったって?どうなるんだろうな?俺?」




「だって西垣君。リレーの選手じゃ…?あれ?」




あれ?今更気が付いた?



「あ――――――――!!!」



「どうしたよ?」



「なんで西垣君がリレーの選手に選ばれなかったの!?だって、西垣君。近松なんかより足早いじゃない!」


そう。実を言うと俺は近松より早いかどうかは覚えてないが、こう見えてクラスでは結構、足は早い方だということは自覚している。


「確か西垣君の方が近松より0.3秒早かったよね?」



「ん?なんでそのことを知ってるんだ?」


俺は別にいちいちそんなこと言う必要もないから、言わないでいるだけだったが、それに気づいている奴がいたとは意外だった。


「え?体力測定の時は、どの種目も西垣君がダントツトップだったじゃん。私はちゃんと見てたもん。」


あの顔も運動神経もいい派手に外交的な性格している近松のことよりも、顔も性格も地味で陰キャよりの俺をしっかり見ていて覚えていたとは、この女只者ではないぞ。こいつ運動神経はないなら、マネージャーやった方が案外向いているかもな。


「それなのに…。」


「ああそれ?俺、オーディション参加せずに逃げた。」


「え――――!?なんか違和感あったけど、そこまで気が付かなかったわ…。」


「あははははー。

まぁ俺も奥宮と同じで、運動会は楽しくない思っていたんだよなー。」



「どうして?西垣君、運動できるのに…。」


「なんというかさ、体力測定は自分のいい記録を残すことで面白い思えるけど、運動会となると、近松みたいに周りを脅迫しだす奴がいて、そういうところが不快なんだよなー。」


「へー、なんか意外な答えだー。」


「まぁみんなで楽しむ分には、楽しめる行事なんだろうけどな。俺が心から楽しめることじゃないとなんか気が進まなくてな。」



まぁクラスの代表リレーに出られるいう事はその分、人より自分が活躍することがあって光栄なのかもしれないが、その分、責任問題があるから、そういう事はできれば考えたくないというのが俺の主張だ。それもそのグループ内に「失敗した奴には、死あるのみ!」みたいな思考をした奴がそこにいるとなると途端にやる気なくす。4年のクラスも近松と同じクラスで嫌々走った。3年の時は運動会の時にまだ近松が転校して来てなかった時期なので喜んで走ったが、4年の時ははっきり言って担任が竹本先生じゃなかったら、今回みたいに全力で拒否した思う。


なんかそれだとそんな横暴な奴のために走らないといけないのか?ということになるじゃん。俺は俺の好きに走りたいという思考からは思いっきり外れる。だからそれなら、リレーの選手などに最初から選ばれたくないというのが本音だ。


よって


「参加することに意義はない!」



という奥宮が言い放った意見と俺の考えは合致しているわけで、今回の運動会は出ないことに決めたのだった。


「へーそうだったんだね。」


気がついたら、奥宮はじーっと俺を見ている様子だ。


「なんだ?どうした?」


「うん、しっかりした考え方だなと思って。」


そういわれて俺の方が、一瞬気後れしてしまった。

まさか、こんな時にそんなことを言われるとは思ってもみなかった。

それに「しっかりしてる」だなんて、はじめて言われた言葉だった。


「あ、そうだ西垣君。」


「すうでいい。その名字はあまり好かん。」


「へーそうなんだ。」


まぁ詳しいことは多分俺がまた解説者になった時があれば話す予定だが、簡単に言えば俺は自分の名字が好かん。



「おまえこそ、自分がお前呼ばわりされてるけどいいのか?」


「あまりよくは思わないけど、私は自分の名前フルネームでイヤなので、お前呼ばわりされる方がマシというか、本名で呼ばれない方が助かる言うか…。」


「そうだったのか…。」


「どうしたの?」


「んと、たまにお前呼ばわりされるといきなり怒る女がいるんで、そこがめんどくてな。」


「ああ判る。面倒くさいよねー。」


「おまえは何て呼べばいい?」


「え?私?ん―そうだな…カオリじゃなくて、カオルと呼んでくれた方がいいかな。」


「カオルか…。」


「うん、香理いう名前前に由利から、「あんた辺野さんという名字と結婚したら、「へのかおり」だね。プギャーーーっ!」とか言われたから、あまり気にいってないんだよね。」


「なんかひでぇな。それ。」


「それに香理って名前、どう考えてもかわいい子につけるような名前で、明らかに名前負けしてるって自覚あるし。だから正直呼ばれたくないんだ。」


「そうか」



「かといって、あまりにも違う名前とかで呼ぶのもなんか不自然だから、カオルがいいかな。カオルだと私の名前を少し間違えて覚えてるって感じあるから、特に違和感もないと思うし。」



なんか俺以外の名前でもいろいろあるんだなということは判った。




「じゃあ早速だけど、すう。」


「ん?」


………


俺はまさか、こんな展開になるとは思わなかった。

だが、俺は奥宮の意見には心から共感できたのは確かだったので、のちに何が起ころうと後悔はないとここで思えた。




そして…。

この様子をこのあと15分ぐらいほど、また影からこっそり見ている者がいた…。

そいつはこの時、俺たちを見つけて教室まで連れ戻しはしなかったが、そいつが原因で後の俺たちにまた、とんでもないことが起こるのであった。


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